マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎とはマイコプラズマ・ニューモニエと呼ばれる細菌による咳をともなう呼吸器感染症です。[1]
4年に一度流行する傾向があり、小児や若い人に比較的多い肺炎のひとつといわれています。ここ数年は流行している様子がありませんでしたが、2024年は8年ぶりに大流行しています。
若い人だけでなく、幅広い年齢層で感染を拡げているのです。
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原因は?
マイコプラズマ肺炎の原因は、マイコプラズマ・ニューモニエ(=Mycoplasma pneumoniae)と呼ばれる細菌です。細胞壁をもたないという特徴があり、一部の抗生剤では死滅しません。
アルコールや界面活性剤(洗剤や石鹸)に弱いといわれているため、石鹸での手洗いやアルコール消毒が有効なのも特徴です。
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マイコプラズマ肺炎とマイコプラズマ感染症の違い
「マイコプラズマ肺炎」と「マイコプラズマ感染症」は原因も症状も同じものです。最初に発熱や咳など風邪のような症状があらわれたときは、マイコプラズマ感染症です。
5日~7日間で治るはずの症状がひどくなり、上気道だけではなく気管支や肺に菌が侵入すると気管支炎や肺炎となります。
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエが気管支や肺に感染して炎症を起こしたときの状態を指すのです。
マイコプラズマ肺炎の大人と子どもの症状をチェック
マイコプラズマ肺炎の症状は、大人と子どもで大きな違いはありません。[2]
おもな症状 |
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そのほかの症状 |
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しかし発熱症状と咳症状は少し異なる場合があります。マイコプラズマに感染すると、まず発熱症状が数日間続きます。
子どもの場合だと体温の変化はなく、1日中高熱状態が続く傾向です。大人は少し異なり、弛張熱(しちょうねつ)になることも少なくありません。
弛張熱(しちょうねつ)とは、1日のうちで体温が1℃以上変動し、低くても微熱状態のことを指します。熱が上がったり下がったりすると、体力的にも精神的にもつらいですよね。
咳症状も異なり、子どもの場合は乾いた咳が数週間続きますが、大人は湿った咳となることがあります。
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どんな咳が出るの?
マイコプラズマ感染症、マイコプラズマ肺炎による咳症状は発熱後にあらわれるケースが多いです。発症後3~5日目から乾いた咳があらわれます。
子どもは乾いた咳症状が解熱後も続き、3週間ほどはコンコンと咳で眠れない状態が続くケースも少なくありません。
大人も発症後すぐは同じように乾いた咳が続きます。その後は痰をともなった咳が出始め、咳の頻度が少なくなってからも痰がらみの咳が目立つようになるのです。
肺炎だと診断されても比較的軽い症状で済むマイコプラズマ肺炎ですが、数週間続く咳はやはり日常生活に支障をきたしてしまうでしょう。
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熱がなくてもマイコプラズマ肺炎である可能性は?
発熱症状があらわれなくても、マイコプラズマ肺炎の可能性はあります。マイコプラズマ・ニューモニエに対しての抵抗力が高ければ、熱が出ないもしくは軽い発熱で済むことがあるのです。
2024年の傾向では、子どものマイコプラズマ感染は発熱するケースが多いです。
しかし熱がないために日常生活を普段通りに過ごせてしまい、周囲へ感染させてしまうケースもみられます。
「咳があまりにもひどいから念のため検査をしたら、陽性だった」ということもありえるのです。
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マイコプラズマが悪化するとどうなるの?
マイコプラズマは悪化すると肺炎や気管支炎になってしまいます。
感染初期は「マイコプラズマ感染症」と診断されますが、原因菌であるマイコプラズマ・ニューモニエが気管支や肺に侵入すると炎症を起こし、マイコプラズマ肺炎になります。
さらに悪化するとほかの疾患を併発し、中耳炎や副鼻腔炎、胃腸炎などを引き起こしてしまうのです。重症化した際は重症肺炎や髄膜炎などを発症してしまうため、注意が必要です。
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マイコプラズマ肺炎がうつる確率
マイコプラズマ肺炎は、感染者と長い時間一緒にいればいるほどうつる確率は上がります。学校や保育園などで集団生活をしていると、一緒にいる時間が長いためにうつる可能性が高まります。
ですが正直に申し上げて、感染力の高さはそれほど高くありません。短時間一緒にいたくらいでは、感染している可能性は低いのです。
免疫抵抗力の強さで、うつるかうつらないかは異なることを知っておきましょう。[2]
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家族がマイコプラズマ感染していたらうつる可能性は?
家族のなかにひとりでもマイコプラズマに感染した人がいたら、うつる可能性は十分にあります。うつらないように対策をとっていたとしても、子どもの場合は難しいです。
とくに兄弟は一緒に遊ぶ時間もあり、距離も近いです。うつる可能性はむしろ高いといってもよいでしょう。
感染対策をしていなくても、個人の抵抗力が高ければ当然うつっていても発症しないケースがあります。うつる確率は高いが100%発症する、というわけではないのです。
マイコプラズマ肺炎の診断方法
マイコプラズマに感染した際の診断方法は、2024年時点では簡易検査法が一般的です。植毛スワブ(綿棒)でのどの「ぬぐい液」を採取し、15分程度で簡便に検査できます。
マイコプラズマ肺炎の診断というとPA法(血清抗体検査)やLAMP法(遺伝子増幅検査)などが確定診断として使われますが、専用機器や高度な検査手技が必要です。
培養して菌を見極めるまでには時間を要すというデメリットがあります。近年で登場している簡易検査キットは、臨床試験で優れた感度と特異度が確認されています。
早い段階から治療にはいれるのは簡易検査の長所といえるでしょう。[3]
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎の治療は、抗生剤の投与が基本です。[2]
抗生剤のなかでもマクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤が使用されます。ペニシリン系やセフェム系などのβ-ラクタム剤は効果がありません。
医師の処方では、マクロライド系を第一選択としていますが、学童期以降では効果が見られなかったときにテトラサイクリン系を処方することもあります。
抗生剤は飲まないとダメ?
マイコプラズマ肺炎の治療時は、抗生剤を絶対に飲まないといけないわけではありません。症状が軽ければ医師の判断で抗生剤を処方されないケースもあります。
ただし医師から抗生剤を処方されたのに「こんなに長い期間、抗生剤を服用していて大丈夫なの?」と不安がって服用しない人もいますが、その場合は必ず服用してください。
医師が「抗生剤を服用して体内から細菌を早くなくす必要がある」と判断しているためです。自己判断で薬の中止はやめましょう。
抗生剤を飲んだのに熱がぶり返すことはある?
指定された抗生剤を服用している間は症状が軽快していたが、飲み終えた途端に熱がぶり返すケースも見られます。
もしかしたら体内にいる細菌が服用した抗生剤に対してあまり効果を示さなかったためかもしれません。
抗生剤は「体の中にいる菌をやっつける」効果をもっているため、服用している期間は一時的に発熱症状が治まっただけの可能性があります。
服用し終えたのに熱がぶり返してしまった場合や、抗生剤を服用しているのに熱が引かないときは、必ず再受診して医師にその旨を伝えるようにしてください。
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マイコプラズマ肺炎が再発する可能性
マイコプラズマに感染したからといって、もう二度と感染しないというわけではないことを理解しましょう。感染後は一時的に抗体が作られるため、感染する確率は下がります。
しかしマイコプラズマ・ニューモニエに対する免疫は一生作られるものではないため、数か月もしくは数年後には再度感染する可能性が否定できません。
「一度マイコプラズマに感染しているし、もうかかることはないだろう」と思わず、治癒したあとも感染予防に努めましょう。
マイコプラズマ肺炎に感染しないための対策
マイコプラズマ肺炎に感染しないためには、感染経路を絶つしかありません。
おもな感染経路は2つです。[2]
飛沫感染 |
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接触感染 |
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自分がマイコプラズマに感染していると気づかずに他者と接触すると、感染を広めてしまうかもしれません。
発熱と咳の症状がいつもよりひどいかも、長引いているかもと思ったときは、早めに医療機関に相談しましょう。
まとめ|マイコプラズマ肺炎の症状だけでなく治療方針についても理解しておこう
マイコプラズマ肺炎は細菌による呼吸器感染症のひとつです。
原因はマイコプラズマ・ニューモニエで、上気道に感染するとマイコプラズマ感染症を発症します。
一般的な風邪と同様、発熱や咳症状があらわれ、気管支や肺に感染するとマイコプラズマ肺炎となってしまいます。
大人と子どもで症状に大きな差はありませんが、大人の場合は熱が上がったり下がったりする弛張熱(しちょうねつ)を起こしかねません。
咳症状も初期は子どもと同じように乾いた咳が出ていますが、時間とともに痰のからんだ咳が出て息苦しいと感じることもあります。
医療機関でマイコプラズマ感染症・肺炎だと診断された際は、必ず医師の指示に従い薬を服用しましょう。
「抗生剤を飲むのは怖い」「抗生剤を飲まなくても治るだろう」と自己判断で中止すると重症化する恐れがあります。
マイコプラズマ肺炎というものをきちんと理解し、感染してしまった際の治療方針も医師の指示に従うようにすれば重症化や他の疾患の併発を防げるでしょう。
参考文献
日中はあまり咳が出ていなかったのに、寝るときになったら咳が悪化すると眠れなくてつらいですよね。
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自宅からオンラインで診察を受けることができるため、夜中の体調悪化に備えておきましょう。
[3]NIID国立感染症研究所|マイコプラズマ肺炎検査マニュアル
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。