マイコプラズマ肺炎の原因と症状
マイコプラズマ肺炎は「マイコプラズマ・ニューモニエ:Mycoplasma pneumoniae」という細菌の一種によって引き起こされる病気です。
幼児から成人まで幅広い年齢層でかかるとされていますが、6~12歳程度の子どもに最も多くみられます。[1]
症状は発熱症状が数日間続き、その後咳症状があらわれます。咳症状とともにのどの痛みがあらわれることも少なくありません。
子どもの場合は乾いた咳が3週間ほど続くのですが、大人だと乾いた咳から湿った咳に変わるのが特徴です。
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マイコプラズマ肺炎はうつるの?
マイコプラズマ肺炎はうつる病気で、おもな感染経路は飛沫感染と接触感染です。厄介なことに症状が軽く済む場合があるため、まわりへ感染させやすいです。
発熱もせず日常生活を問題なく過ごせているなかで、咳症状だけがあらわれているとまわりへどんどん菌を拡散させてしまいます。
マイコプラズマ肺炎が「歩く肺炎」と呼ばれているのは、知らず知らずのうちに肺炎をまわりの人へうつしているからなのです。
うつされないように、外出後や食前の手洗いなどの感染症対策を日頃から継続しておこないましょう。「風邪かも」と思ったらマスクを着用するなどして周囲に配慮する必要があります。
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マイコプラズマ肺炎がうつる期間
マイコプラズマ肺炎がうつる期間は2~3週間です。
発症して症状があらわれているときが人から人へうつるピークといわれていますが、もちろん潜伏期間中もうつる可能性があります。
症状がおさまってからも、ピーク時には欠けますが4~6週間程度は保菌している状態にあります。発症前、発症してから約1か月間はうつる、うつされる可能性が十分あることを知っておきましょう。
マイコプラズマ肺炎がうつる確率
マイコプラズマ肺炎がうつる確率は5.2~27.4%です。
感染力はインフルエンザのように強くありませんが、市中肺炎(しちゅうはいえん)のなかで最も一般的な病原体のひとつだといわれています。[2]
そのため比較的長時間一緒に過ごす家族間や、保育園や学校でうつる確率も高いです。とくに家族間では一緒にいる時間が長いことから感染率はかなり高いと予測できるでしょう。
マイコプラズマに感染しても、必ずマイコプラズマ肺炎になるわけではありません。
90%の人はマイコプラズマ菌に感染しても風邪症状で済み、自然治癒するのですが、5~10%は肺炎になってしまう傾向にあります。[3]
マイコプラズマ肺炎がうつったら学校や仕事は?
マイコプラズマ肺炎にうつってしまったら、感染拡大を防ぐためにも学校や仕事は休んだ方がよいでしょう。しかしマイコプラズマ肺炎には明確な出勤停止期間が設けられていません。
医療機関でマイコプラズマ肺炎だと診断された際には、以下3点に注意しましょう。
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学校は基本休む
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家族に感染者がいるときは出勤時に注意
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大人がマイコプラズマを発症したら解熱して2日間は様子をみる
マイコプラズマ肺炎は、感染症法では5類とされ、学校保健法では第三種学校伝染病に指定されている病気です。
しかし明確な出勤停止期間は定まっていないため、家での様子や医師の判断で登校できるかどうかが変わります。
家族にマイコプラズマ肺炎を発症した方や、大人が感染して発熱してしまった際も出勤停止期間がないことから自己判断で出勤の有無を決める必要があります。
学校は基本休む
マイコプラズマ肺炎は学校保健法で第三種学校伝染病に指定されていることから、発熱症状や咳症状がひどい急性期は出席停止です。
大人とも共通していますが、子どものマイコプラズマ肺炎の症状は発症してから高熱症状が数日続きます。
数日の間に咳症状があらわれ、夜も眠れないほどのしつこい乾いた咳が数週間続くため、睡眠がしっかりとれていない間は登校しないことが推奨されます。
家族に感染者がいるときは出勤時に注意
家族のなかに感染者がいたら、自分自身も保菌している可能性があることを知っておきましょう。体のなかにマイコプラズマが存在していても、まだ発症していない段階である可能性が高いです。
保菌中でも咳やくしゃみなどの飛沫により、まわりの人に菌を拡散してしまうかもしれません。出勤時はマスクの装着やこまめな手洗いなどを心掛けてください。
大人が発症したら解熱して2日間は様子をみる
大人がマイコプラズマ肺炎を発症した場合、発熱症状は子どもと変わらず数日間続きます。症状が悪化する可能性があり、咳が乾いた咳から湿った咳に変化し、息苦しいと感じるかもしれません。
気管支炎や中耳炎などの合併症を引き起こすこともあります。もし熱が下がったとしても、解熱して2日間は様子をみた方がよいでしょう。
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マイコプラズマ肺炎は一度かかるともう感染しない?
マイコプラズマ肺炎は一度かかっても一生続く免疫ができるわけではありません。そのため麻疹などのウイルス性疾患とは異なり、抗体がなくなれば何度でも感染します。
罹患後(りかんご)数週間や数か月で再感染することはありませんが、数年経つと抗体数も少なくなるため再感染することもあります。
場合によっては1年程度でも再感染するため、まわりに感染者がいたらうつらないように注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎をうつされたときの治療法
マイコプラズマ肺炎の原因とは細菌であるため、マクロライド系抗生物質が効果的です。ほかの肺炎治療に使用されるペニシリン系やセフェム系製剤では効果がありません。
近年では、マクロライド耐性株がアジアを中心に急速に拡大しています。中国では90%以上、韓国では 80%以上、台湾では 70%以上、そして日本においては2012年頃で80~90%でした。
2018~2020年には30%以下におさまっていると報告されています。地域差もみられるため、一部では60%以上が耐性を示しているとのことです。
マクロライド系抗菌薬で改善しなければ、ニューキノロン系やテトラサイクリン系(※テトラサイクリン系は8歳未満には原則禁忌)を使用します。[4]
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まとめ|マイコプラズマ肺炎はうつるとつらいため感染に注意
マイコプラズマ肺炎は人から人へうつる細菌感染症です。うつる期間は2~3週間だといわれていますが、発症しているときだけでなく潜伏期間中もまわりへうつしてしまう可能性があります。
一般的な風邪と変わらない感染力を持っているため、マイコプラズマがうつる確率は5.2~27.4%といわれています。
発症すると発熱症状が数日続くつらい病気であることから、できるだけうつされないように対策をすることが重要といえるでしょう。
参考文献
[2]Mycoplasma pneumoniae infection: Basics
[4]マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。