中国で大流行の「歩く肺炎」マイコプラズマ肺炎に要注意

公開日: 2024/02/01 更新日: 2024/02/06
2024年に入ってからニュースで大きく取り上げられている「歩く肺炎」。 未知のウイルスが再び中国からやってくるのでは…と不安に感じている方もいらっしゃるかもしれません。 この「歩く肺炎」とは、いったいどのような病気なのでしょうか。 現在、中国で大流行している“歩く肺炎”と呼ばれているのは、「マイコプラズマ肺炎」という感染症のことです。 マイコプラズマ肺炎は、もともと日本国内でもよく知られた感染症のひとつで、未知のウイルスによる感染症ではありません。 では、なぜ世界各国でマイコプラズマ肺炎がこんなにも大流行し、国内でも感染の拡大が警戒されているのでしょうか。 「歩く肺炎」と呼ばれる理由も含め、マイコプラズマ肺炎の症状や流行の理由、予防策についても確認しておきましょう。
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「歩く肺炎」マイコプラズマって何?

中国で救急外来に長い列をつくる様子が2023年末に日本のメディアで報じられたこともあり、未知のウイルスへの不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

中国からはじまり、2024年1月時点では韓国にまで急激に感染が拡大しているといわれる「歩く肺炎」。

感染者の8割は14歳以下の子どもで、特に6歳以下の幼い子どもたちが多く感染しているとの報道もありました。

中国では各地でクラスター感染を引き起こし、救急外来への受診が殺到。

韓国でも1か月の間に患者数が2倍に増えるなど、急激に感染が拡大していることが2024年の年明けからメディアで報じられています。

しかし、マイコプラズマの正体は新型コロナウイルスのような未知のウイルスではなく、もともと日本国内でもよく知られた細菌のひとつです。

マイコプラズマは季節を問わず年間を通して感染する可能性があり、新型コロナウイルスやインフルエンザのように強い感染力を持つわけではありません。

しかし、そのようなごくありふれた細菌による感染症が爆発的に流行しているとあって、注意の目が向けられています。

2024年1月時点では中国や韓国のみならず、アメリカやデンマークなどでも感染者が増えており、日本でも近々大流行するのではないかと懸念されています。[1][2]

マイコプラズマ肺炎の症状

では、マイコプラズマ肺炎にかかると、いったいどんな症状があらわれるのでしょうか。

その特徴を以下にまとめました。

  • 感染してから2~3週間で症状が出る

  • 発熱・倦怠感・頭痛・のどの痛みなどからはじまる

  • 咳は発症から3~5日後にはじまる

  • コンコンといった乾いた咳が3~4週間続く

  • 場合によっては重症化することも

マイコプラズマ肺炎は、感染してから2〜3週間で症状があらわれます。

37〜38度の発熱・倦怠感・頭痛・のどの痛みなどからはじまり、3〜5日遅れて咳の症状が続きます。

他の感染症と違って鼻水の症状が出ることは少なく、痰が絡まないコンコンという乾いた咳が特徴です。

新型コロナウイルスやインフルエンザとの大きな違いは、長引く頑固な咳。熱が下がった後も咳の症状だけが3〜4週間にわたって続くことがあります。

症状が悪化すると、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)を伴い、呼吸不全を引き起こすことも少なくありません。

症状が軽い場合には薬を飲んで自宅で様子をみますが、重症化すると入院での治療が必要となります。

なお、マイコプラズマに感染してもすべての方が肺炎を引き起こすわけではありません。肺炎を引き起こすのは、感染者の2〜3割といわれています。

軽症であれば軽い風邪のような症状で終わることもありますが、基礎疾患がある方は重症化しやすいため注意が必要です。

関連記事:「マイコプラズマ肺炎は咳だけではない?症状や特徴についてチェック」

関連記事:「マイコプラズマ肺炎の症状は?かぜとの違いを解説 」

マイコプラズマ肺炎が「歩く肺炎」と呼ばれる理由は?

では、どうしてマイコプラズマ肺炎が「歩く肺炎」と呼ばれているのか気になるところですよね。

その理由は、感染に気付かずに出歩いて、多くの方に菌をうつしてしまうケースが非常に多いからです。

マイコプラズマ感染といえば特徴的な症状は「咳」ですが、軽い症状で済む方や自然に治ってしまう方も少なくありません。

新型コロナウイルスで感染者が急激に増加した時も、無症状の感染者が出歩くことによって感染が一気に広がりましたね。

実は、2023年末から起こっているケースも同じような広がり方をしています。そのことから、「歩く肺炎」と呼ばれているのです。

実際、少し咳が出ているくらいでは「ただの風邪かな…」と思って、仕事に出勤してしまったり普段通りに外出してしまったりする方は多いですよね。

それ以外にも、マイコプラズマ肺炎は他の感染症と見分けるのが難しいという点が感染拡大に関係しています。

咳は、普通の風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などでもあらわれる一般的な症状です。

周囲に陽性者がいない限り、初診の段階でマイコプラズマへの感染を疑うのは難しいでしょう。

実際、高熱・倦怠感・咳などで病院を受診しても季節性の感染症が流行っていれば、すぐに「マイコプラズマの検査をしましょう」とはならないのが現状です。

新型コロナウイルスやインフルエンザの検査をして陰性だったら、多くの場合はそのまま家に返されてしまいます。

さらに、マイコプラズマの迅速検査キットは精度が劣るといわれており、確定診断がつきにくいことも診断が難しいといわれる理由のひとつです。[3]

つまり、マイコプラズマ肺炎によって咳が治まらなかったり症状が酷くなったりして再受診しても、陰性となってしまうケースがあるのです。

そのため、マイコプラズマ肺炎は感染に気づかないまま様々な場所へ菌を持ち歩いてしまうリスクが非常に高いといえます。

まるで病原菌自体があちこちへ歩き回っているかのように感染が広がっていくため、「歩く肺炎」と呼ばれるのにも納得できるのではないでしょうか。

関連記事:「マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説 」

マイコプラズマ肺炎が中国や韓国で流行している理由とは?

マイコプラズマ肺炎が中国や韓国で流行しているのには、おもに2つの理由が関係しているといわれています。

  • 病原体に対する免疫力の低下

  • 抗生剤への耐性菌の出現

ひとつは、病原体への「免疫力の低下」です。

コロナ渦と言われていた2020〜2022年の間、「できるだけコロナに感染しないように…」と感染対策を徹底してきた方は多いでしょう。

人混みを避け、マスクを着用し、こまめに手洗い・うがいをするなど、病原体から身を守る行動が求められてきました。

しかし、コロナ禍で病原体から遠ざかる生活を送っていたために、人々の病原体へ対する免疫力が下がったのでは…といわれています。

中国や韓国でもコロナ禍にパンデミック対策が行われ、2023年に行動制限の緩和がされたことで「歩く肺炎」の感染拡大に繋がったのではないかと考えられています。

実際に、中国では行動制限の解除がされてからマイコプラズマの他に、インフルエンザ・ライノウイルス・RSウイルスなどの感染者数も増加しています。

このように病原体を遠ざけることによって免疫力が低下した状態は「免疫負債」ともいわれ、日本でも人々の免疫力低下による感染拡大が心配されています。

そして、もうひとつは「抗生剤への耐性菌の出現」です。

中国ではコロナ渦の期間中、抗生剤を使いすぎることによって耐性菌(薬が効きにくい菌)ができ、治療の効果が得られなくなってきているという報告もあります。

特に、マイコプラズマの治療に用いられるマクロライド系抗生剤への耐性率は高く、北京での薬物耐性率は70〜90%ともいわれています。

2023年12月頃から流行しているマイコプラズマも抗生剤への耐性があるのでは…といわれており、耐性菌の出現が「歩く肺炎」の収束に待ったをかけているともいえるでしょう。

薬が効きにくいということは、病気が治るまでの期間が長引くということです。その分、病原菌を広げる恐れがあるということはいうまでもありません。

日本は欧米諸国に比べて抗生剤の使用量自体は少ないものの、マイコプラズマに有効なマクロライド系抗生剤の使用割合は高いというデータがあります。

日本でマイコプラズマが流行した場合にも、薬物耐性菌による感染拡大の可能性があることは知っておくとよいでしょう。[4]

日本での流行状況(2023年12月時点)

そこで気になるのは、日本で「歩く肺炎」が流行し始めているのかということではないでしょうか。

日本では、2023年12月の時点でマイコプラズマ肺炎が流行しているという報告はありません。

しかし、日本も他の国と同様に2023年5月にコロナ禍の規制が緩和され、コロナ禍前の人の流れが戻りつつあります。

さらに、同年の年末年始には国内外を含めて人々の移動が多くなったことにより、水面下で感染が広がっている可能性は十分に考えられます。

日本では、2024年1月〜3月あたりに感染拡大のピークを迎えるのではないかといわれているため注意が必要です。[5]

「歩く肺炎」マイコプラズマ肺炎にかからないようにするためには?

対策に関しては、インフルエンザや新型コロナウイルスと基本的に変わりはありません。

  • 手洗い・うがい

  • 体調管理

  • マスクの着用

マイコプラズマも新型コロナウイルスやインフルエンザと同様に、菌を体内に入れないことが重要です。

飛沫や接触による感染を防ぐために、手洗い・うがいを行うように心がけましょう。

免疫力があれば軽症で済むことも多い感染症ですので、十分に睡眠をとり、体調管理をしっかりすることも大切です。

そして、もうひとつ意識しておきたいのは「咳エチケット」です。

ご自身が感染しないことはもちろんですが、感染を広げないようにすることも大切です。

もしもご自身がマイコプラズマにかかっていたとしたら、知らず知らずのうちに周りの方にうつしてしまうかもしれません。

マスクを着用したり、体調が悪いと感じるときには外出を控えたり早めに受診したりするようにしましょう。

関連記事:「マイコプラズマ肺炎は咳だけではない?症状や特徴についてチェック」

日本では抗生剤が品薄なので要注意

2023年7月から2024年1月時点に至るまで、日本では抗生剤が品薄状態となっているため注意が必要です。

この状況は、コロナ禍で抗生剤を必要とする感染症にかかる方が大幅に減ったことが背景にあります。

市場に出回る薬の量が少なくなっていたところに感染症が流行し、抗生剤の需要が一気に増えたことにより薬が足りなくなる事態が発生しています。

マイコプラズマに有効なマクロライド系にだけでなく、現在流行している溶連菌感染症に有効なペニシリン系などの抗生剤も手に入りにくい状況です。

抗生剤が処方されて薬局に行ったのに薬がない…という可能性もあります。

スムーズに必要な薬を購入するためにも、処方せんが出たら先に調剤薬局へ在庫の有無を確認するとよいでしょう。

抗生剤が安定して供給されるようになるまでは、しばらく時間がかかりますが、系列店や近くの店舗との調整によって入手できる可能性もあります。[6][7]

まとめ:流行の可能性があるので十分に注意を

「歩く肺炎」ともいわれるマイコプラズマ肺炎。

軽症で済むことも多い感染症とはいえ、世界各国で急速に感染拡大しているため、日本でも警戒が必要です。

2023年の3月の段階で国内ではマイコプラズマ肺炎は流行っていないと報告はあるものの、2024年1月〜3月には大流行する可能性が高いといわれています。

手洗い・うがいを徹底し、感染対策を心がけましょう。

また、マイコプラズマは軽症であれば知らず知らずのうちに周囲へ感染を広げてしまうことも考えられます。

ご自身が「歩く肺炎」にかからないことはもちろんですが、感染を広げないように咳エチケットを心がけることも大切です。

通年において、秋から春先にかけては様々な感染症が流行しやすい時期です。

体調管理には十分にお気を付けてお過ごしください。

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参考文献

[1]小児の呼吸器疾患の急増について-中国北部

[2]中国で小児を中心に増加が報じられている呼吸器感染症について

[3]マイコプラズマ|名古屋市中村区の内科・小児科|名駅ファミリアクリニック

[4]薬剤耐性(AMR)に関する背景、国際社会の動向及び我が国における現状について(厚生労働省)

[5]マイコプラズマ肺炎の流行状況 | 東京都感染症情報センター

[6]経口抗菌薬の在庫逼迫に伴う協力依頼について(厚生労働省)

[7]経口抗菌薬の在庫逼迫に伴う協力依頼

記事監修
  • 名倉 義人
    救急科専門医

    ・平成21年 名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事 ・平成23年 東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得 ・平成27年 東戸塚記念病院で整形外科として勤務 ・令和元年 新宿ホームクリニック開院

    日本救急医学会、日本整形外科学会

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