咳や喉の痛みが出るときに考えられる病名一覧|風邪から感染症、がん、外的要因など

更新日: 2025/01/01
「コロナは陰性だったのに咳だけじゃなく喉の痛みも出てきた」 「喉の痛みが強い。ただの風邪ではないかも?」 咳と喉(のど)の痛みは、風邪による症状であることがほとんどです。 しかし風邪以外にもさまざまな病気が考えられることをご存じでしょうか。人にうつる感染症やがんをはじめとする重大な病気が隠れている可能性があります。 この記事では、咳と喉の痛みの症状があらわれる病気を一覧にして、症状や特徴についてくわしく説明します。 最後までお読みいただくと、医療機関への受診を判断する手助けとなるでしょう。

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咳・喉の痛みはなぜ起きる?

咳や喉の痛みは、気道や喉の粘膜に炎症が生じることで引き起こされます。

病原体や刺激物などが体内に侵入すると、からだは異物が入ってきたと認識して免疫システム(からだの防御反応)が働いて異物と戦います。

異物と戦うための炎症反応によって喉の粘膜が腫れて、痛みが生じるのです。また異物を排出しようとする反応として咳が出ます。

考えられるおもな原因は以下のとおりです。

  • ウイルスや細菌

  • がん

  • 寒暖差やハウスダストなどの外部からの刺激

これらの刺激が咳を引き起こす受容体を活性化させて脳に信号を送り、呼吸筋が収縮して咳が発生します。頻繁な咳は喉の粘膜を傷つけ、さらなる喉の痛みにつながります。

ウイルスや細菌が原因で考えられる病気

咳や喉の痛みは、ウイルスや細菌による炎症で引き起こされることが多く、以下の病気が考えられます。

  • 風邪(上気道炎)

  • 新型コロナウイルス感染症

  • インフルエンザ

  • マイコプラズマ肺炎

  • 咽頭炎

病原体によって炎症が起きた場合、症状だけでどの感染症か判断するのは困難です。

ただしそれぞれの特徴を知ることで、どの感染症にかかったか予測できたり、周りへの感染予防をおこなったりするのに役立ちます。

風邪(上気道炎)

風邪(上気道炎)は正式には「かぜ症候群」とよばれ、病原体によって咳や喉の痛みを引き起こす急性呼吸器感染症の総称です。

かぜ症候群の原因となる病原体は80~90%がウイルスと言われており、おもなウイルスは以下のとおりです。[1]

  • RSウイルス

  • ライノウイルス

  • アデノウイルス

  • パラインフルエンザウイルス

  • コロナウイルス(新型コロナウイルスとは別ウイルス)

ウイルス性のかぜ症候群の場合、安静と水分補給などをおこなえば1週間ほどで自然に治癒します。

鼻水や咳などがつらく休めないときは、症状をやわらげる薬が処方されることがあります(対症療法)。

1週間以上咳や喉の痛みが続く、あるいは呼吸の音が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と聞こえる場合は、かぜ症候群以外の病気かもしれません。気になる症状があらわれたら、医療機関を受診しましょう。

新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルス感染症は喉の痛みや咳をともなう感染症で、症状のピークは発症から2〜4日目と言われています。

くわえて以下の症状がみられる場合は、新型コロナウイルス感染症の可能性があります。[2]

  • 発熱

  • 頭痛

  • 下痢

  • 嘔吐

  • 倦怠感(だるさ)

  • 嗅覚・味覚障害

2025年月時点では、新しい変異株の「KP.3」や「XEC」が流行中で、どちらの変異株も咳や喉の痛みがあらわれます。症状だけで変異株を区別することはできません。[3]

あてはまる症状が多い場合は、内科や発熱外来を受診しましょう。

関連記事:【2025年1月】コロナの最新症状や潜伏期間について確認しよう

インフルエンザ

インフルエンザはインフルエンザウイルスが原因で発症する気道感染症です。大きな流行となるのはA型とB型で、いずれも喉の痛みや咳、発熱などの症状があらわれます。[4]

A型とB型は共通する症状がほとんどですが、症状のあらわれ方に違いがあります。

たとえばA型は急激に症状が出やすく、発症時が痛みのピークです。一方B型は、発症時は比較的症状が軽く徐々に強くなります。また、B型はA型と比べて下痢や腹痛などの消化器症状が出ることがA型との違いです。

インフルエンザの流行は冬が中心でしたが、2024年時点では春や夏にも感染者が発生しているため、通年で感染対策が必要です。

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌によって引き起こされる肺炎です。

発熱や全身のだるさ、頭痛などから症状が始まり、3〜5日後に咳があらわれるのが特徴です。

マイコプラズマ肺炎は、以下のような咳の特徴があります。[5]

  • 初期は乾いた咳が出る

  • 徐々に咳が強くなり3~4週間続く

  • 後期には湿った咳に変化する

くわえて声のかすれや強い喉の痛みがある場合、マイコプラズマ肺炎である恐れがあります。

マイコプラズマ肺炎は一般的な咳止めが効かないため、抗菌薬による治療が必要です。あてはまる症状があるときは、かならず医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

咽頭炎(いんとうえん)

咽頭炎とは、咽頭の粘膜やリンパ組織に細菌やウイルスの感染が起こる病気のことで、上気道炎の一種です。[6]

咽頭は口や鼻を通して外と接しているため、感染が生じやすい部位とされています。

おもな症状は以下のとおりです。

  • 頭痛

  • 発熱

  • 倦怠感

  • 喉の痛み

痛みのピークは発症後2〜3日目で、1週間程度で自然に治ります。

水分が飲めないほど喉の痛みが強いと、脱水症状を起こす可能性があります。早めに内科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。

アレルギー反応

アレルギー反応は、鼻や口から入ってきた異物が原因で炎症を引き起こすことです。炎症によって、咳や喉の痛みが生じます。

寒暖差をはじめとする外部の刺激や、ダニやハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)が原因です。

アレルギーの症状やメカニズムを理解し、予防対策を講じることが大切です。

寒暖差

寒暖差アレルギーは、季節の変わり目に鼻水やくしゃみなどアレルギー性鼻炎のような症状があらわれる病気です。鼻炎症状のほかに、気道や咽頭の粘膜に起こる炎症によって咳や喉の痛みがあらわれます。

急激な温度変化が鼻や気道の粘膜に影響を与え、自律神経の乱れによりアレルギー症状が誘発されると言われているのです。[7]

対策として、外気に直接ふれないようマスクを着用し気道の保護を意識しましょう。室内の温度を一定に保ち、急激な温度変化を避けることも効果的です。ストレスや生活習慣の改善も自律神経を整えるための重要なポイントといえるでしょう。

2024年10月時点、急激な気温の低下によって、咳が止まらなくなる症状を訴える人が全国的に増えています。

咳や喉の痛みが季節の変わり目にあらわれている場合は、寒暖差が原因かもしれません。内科に相談すると、抗アレルギー薬をはじめとした症状に合った薬を処方してもらえます。受診を検討してください。

ダニやハウスダスト、花粉

ダニやハウスダストなどのアレルゲンが気道や喉の粘膜に付着すると、アレルギー反応を引き起こして咳や喉の不快感があらわれます。

アレルギー反応を予防するためには、以下のような対策が有効です。

  • 掃除:ハウスダストの溜まりやすいカーペットや布団、枕は定期的に洗濯

  • 換気:室内に溜まりやすいハウスダストや花粉を取り除くためのこまめな換気

  • 空気清浄機の利用:アレルゲンを減らす目的で使用

とくに家の中で症状が強くなる場合は、こまめに掃除をしてアレルゲンを取り除くことが大切です。

そのほかの原因

病原体やアレルギーによるものでなければ、以下の原因が考えられます。

  • 声帯ポリープ

  • 睡眠時無呼吸症候群

  • がん

  • タバコの吸いすぎ・受動喫煙

思い当たる症状が多い場合、耳鼻咽喉科や内科の受診をおすすめします。

声帯ポリープ

声帯ポリープは、喉の使いすぎによって声帯に「ポリープ」とよばれる小さなこぶができる病気です。[8]

喉の違和感や痛み、声のかすれがあらわれることが多く、喉の違和感から強い咳が出ることもあります。症状が進行すると気道が狭くなり、息が吸いづらくなったり、唾液が飲み込みづらくなったりします。

とくに声を多く使う歌手や声優、ナレーター、教師などに見られる傾向です。

通常は安静と薬物療法で回復しますが、放置して悪化すると手術による切除が必要です。[8]

声を使う職業の方で思い当たる症状がある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりする状態を指し、閉塞性と中枢性に大別されます。[9]

SASの種類

閉塞性

中枢性

原因

舌や喉の筋肉がゆるむことで気道が閉じやすくなり、いびきや無呼吸が発生

脳から呼吸を促す信号が一時的に出なくなることで無呼吸が発生

なりやすい人

  • 肥満

  • 加齢

  • 寝姿勢

以下の既往を持つ人

  • 心不全

  • 脳の病気

睡眠時無呼吸症候群の大部分を占める閉塞性では、睡眠中に舌の筋肉がゆるむことで気道が狭くなり、空気の流れが妨げられます。

気道が狭められると狭いところを空気が通ろうとするため、気道の周りの粘膜が振動し、喉の炎症につながるのです。これが続くと以下のような症状があらわれ、咳や喉の痛みを引き起こす可能性があります。

  • 喉の炎症

  • 喉の乾燥

  • 喉の粘膜の負担

  • 喉の炎症による咳反射

喉の痛みや咳があらわれている方で、以下にあてはまる場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。[9]

  • 夜中に何度も目が覚める

  • 日中の異様な眠気がある

  • 起きたときに頭痛やだるさを感じる

  • 睡眠中にいびきがうるさいと指摘される

睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧や心筋梗塞など、命にかかわる病気を発症するリスクが高まります。からだに酸素が十分に供給されず、ストレスを感じやすくなるためです。咳や喉の痛みが睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合、まずは内科に相談しましょう。

がん

喉の痛みや咳の原因が、がんである可能性もあります。

とくに咽頭にできるがん(咽頭がん)は、喉の痛みを感じやすい病気で、がんの部位によって血痰をともなうことが特徴です。[10]

咽頭がんの部位別のおもな症状

上咽頭がん

中咽頭がん

下咽頭がん

  • 耳が塞がる感覚

  • 治りにくい中耳炎

  • 鼻血

  • 鼻づまり

  • 視力低下

  • 首の腫れ

  • 喉の違和感

  • 喉の痛み

  • 血まじりの痰(血痰)

  • 声がれ(嗄声:させい)

  • 喉の違和感

  • 喉の痛み

  • 血まじりの痰(血痰)

  • 飲み込みづらさ

  • 呼吸困難

参考:咽頭(いんとう)がん|国立がん研究センター 東病院

がんによる咽頭の刺激や炎症で、咳や痰の量が増えることもありますが、初期のうちは風邪と見分けがつきにくいです。

喉の痛みや咳の症状が1か月以上続いたり、痛み止めの薬が効かなかったりする場合は、早急に受診しましょう。

タバコの吸いすぎ・受動喫煙

タバコの煙にはニコチンやタールなどの有害物質が含まれており、気管支や肺を刺激して慢性的な炎症を引き起こします。

タバコの有害物質は、直接喉に刺激を与えて気道の働きを低下させます。気道に汚れが溜まりやすくなり、痰として排出しようと咳が発生するのです。また、喉への直接刺激で炎症が強くなり、喉の痛みが生じます。

タバコを吸わない方でも受動喫煙による影響で、咳や喉の痛みなどの症状があらわれます。副流煙が主流炎より粘膜への刺激が強いことが原因です。[11]

紙巻タバコの受動喫煙経験者の 29.2%、加熱式タバコ受動喫煙者の 23.0%が、煙を吸入したあとに喉の痛みを経験したと発表した研究結果もありました。[12]

非喫煙者で副流煙を浴びる機会が多い方は換気をしたり、煙の多い場所を避けるなど工夫をしてください。

またタバコを吸う習慣のある方は、吸う本数を減らす・分煙を心がけるようにしましょう。

上記以外で子どもによくみられる病気

ウイルスや細菌、アレルギーなどは年齢関係なく発症するものが多い一方、ヘルパンギーナや溶連菌感染症は子どもが喉の痛みを訴えるケースが多いです。

いずれの場合も医療機関での検査であきらかになります。喉の違和感や咳の症状があらわれたら、原因を特定するためにも受診しましょう。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは夏風邪の一種で、コクサッキーウイルスがおもな原因の感染症です。[13]

5歳以下の乳幼児がかかることが多く、5〜7月の夏季に流行します。

ヘルパンギーナのおもな症状は以下のとおりです。[13]

  • 突然の発熱(2~4日程度で解熱)

  • 喉の痛み(初期から発症、水ぶくれが破れて潰瘍になると増強)

  • 口の中にあらわれる水疱性の発疹(解熱からやや遅れて消失)

ヘルパンギーナそのものが咳を引き起こすことはまれですが、喉の痛みや違和感から咳が誘発されることがあります。

ヘルパンギーナは治療薬がなく、対症療法が中心です。

ただし口の中の痛みから食事や水分摂取が十分にできず、脱水症状を引き起こす恐れがあります。口の中が乾いていたり、尿が普段より少なかったりする場合は、早急に小児科を受診して適切な治療を受けましょう。

関連記事:ヘルパンギーナについて知っておきましょう

連菌感染症

溶連菌感染症は、溶血性レンサ球菌が原因の細菌感染症です。

とくにA群溶血性レンサ球菌に感染すると咽頭炎を起こしやすく、おもに以下の症状があらわれます。[14]

  • 38℃以上の発熱

  • 喉の赤みや痛み

  • ぷつぷつ(苺状)の舌

ヘルパンギーナと同様に、溶連菌の感染で咳があらわれることはほとんどありません。しかし溶連菌感染症では喉の痛みや違和感が強くなる傾向があることから、咳が誘発されやすいです。

どの年齢でも発症するリスクはありますが、学童期の小児に最も多い傾向です。[15]

溶連菌感染症を発症したら、抗菌薬での治療が必要であるため、医療機関を受診しましょう。腎炎をはじめとする合併症を防ぐため、症状が改善しても医師に指示された期間、薬を飲むことが大切です。[14]

関連記事:溶連菌とは?溶連菌感染症の原因・症状や治療法について

まとめ

咳や喉の痛みは、風邪や感染症、アレルギーなどの身近なものから、がんや声帯ポリープといった重大な病気まで多岐にわたる可能性があります。

症状が長引いたり、日常生活に支障をきたしていたりする場合は、適切な診断と治療を受けるために内科や耳鼻咽喉科の受診が必要です。子どもの場合は、小児科に相談しましょう。

この記事を症状に合った対策や受診の判断に役立ててください。

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参考文献

[1]A-01 かぜ症候群 - A. 感染性呼吸器疾患|一般社団法人日本呼吸器学会

[2]新型コロナウイルスに関するよくあるご質問|東京都保健医療局

[3]New XEC Covid variant: What are the symptoms and is it spreading in the UK?

[4]インフルエンザの基礎知識|厚生労働省

[5]マイコプラズマ肺炎とは|NIID国立感染症研究所

[6]急性咽頭炎・扁桃炎|日本大学医学部附属板橋病院

[7]保健管理センターだより|兵庫医科大学

[8]声帯の病気|慶應義塾大学病院

[9]睡眠時無呼吸症候群|独立行政法人国立病院機構 近畿中央呼吸器センター

[10]咽頭(いんとう)がん | 国立がん研究センター 東病院

[11]喫煙の健康影響・禁煙の効果|一般社団法人 日本循環器学会 禁煙推進部会

[12]インターネット調査による加熱式タバコの普及実態、受動喫煙、および受動喫煙による症状の推計|厚生労働省

[13]ヘルパンギーナとは|NIID国立感染症研究所

[14]A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)について|東京都保健医療局

[15]A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは|NIID国立感染症研究所

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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