急にむせる咳の原因とは
食べたり飲んだりしていないのに急にむせる咳が出る原因として、以下の3点が考えられます。[1]
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気道が狭くなっている
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過度に気道が刺激されている
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感染症や刺激によって鼻水(粘液)が増えている
たとえば喘息の場合、気道が狭くなるうえに外からの刺激に敏感になって粘液(ねんえき)が増えるため、咳が誘発されます。
「むせ」とは、異物が誤って気道に入ったときに、外に排出する自然な反応のことです。
一方「咳」は、気管やのどに刺激を受けたり異物が入ったりしたときに、それを排出しようとするからだの防御反応をさします。
つまり、むせる咳とは異物が誤って気管に入ったときに排出しようとする、からだの防御反応として起こる咳のことで、気道に異常が生じているサインです。
のどに違和感があるのはなぜ?
のどに違和感をおぼえるおもな理由は、つぎのとおりです。[2][3]
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胃酸の逆流による刺激
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細菌やウイルスによる炎症
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花粉やハウスダストなどによるアレルギー反応
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声の出しすぎや喫煙、飲酒などの物理的な刺激
細菌やウイルスがのどに感染すると、炎症が引き起こされてのどの粘膜が腫れることがあります。
侵入してきた異物を外に排出しようと痰の量が増えることもあり、のどの違和感の原因となります。
日常生活のなかで、のどに違和感があるだけで不快感を感じていつもどおりに過ごせないのは嫌ですよね。
このようにさまざまな要因が、のどの不快感を引き起こすのです。
のどが詰まったような感じや異物感を感じるのはなぜ?
のどの詰まった感覚や異物感が起こるおもな原因として、以下があげられます。
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甲状腺の腫れ
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ストレスや精神的な緊張
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のどや食道の腫瘍(しゅよう)
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胃酸の逆流によるのどへの炎症
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アレルギーによるのどの炎症や腫れ
とくにストレスや緊張などで引き起こされるのどの違和感は、物理的な異物がないにもかかわらず、のどの詰まった感覚が起こるのが特徴です。
のどの詰まったような感じや異物感は、まれに深刻な病気がかくれています。症状が長引く場合、手遅れになる前に医療機関で診察を受けることが望ましいです。
急にむせる咳の原因となる病気とは?
急にむせる咳が出ている場合、おもに以下の病気が考えられます。
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気管支喘息(ぜんそく)・咳喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
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新型コロナウイルス
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肺炎
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アトピー咳嗽(がいそう)
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胃食道逆流症(逆流性食道炎)
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誤嚥(ごえん)
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マイコプラズマ感染症(肺炎)
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心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)
継続的な咳が特徴の病気もあれば、突発的に咳が出る病気もあります。体質や年齢によっても原因があるため、早い段階で医療機関で診断してもらいましょう。
これらの病気が急にむせる咳を引き起こすメカニズムと、医療機関を受診する目安について解説します。
気管支喘息(ぜんそく)・咳喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
気管支喘息や咳喘息、COPDでは、気道が狭くなったり気道が刺激に対して過敏になったりすることで、突然むせるような咳が出ます。[4]
たとえば気管支喘息では、発作を引き起こす原因物質や刺激物により気道の筋肉が縮み、気道が狭くなります。狭くなった気道を広げようとするからだの防御反応として、咳が誘発されるのです。
また気道の筋肉が縮んで、咳を引き起こす神経を直接刺激して咳が生じることもあります。
急にむせる咳の原因が喘息やCOPDなどの慢性疾患である場合、適切な治療と管理が必要です。
咳が2週間以上続いていたり、風邪のあとも咳だけがしつこく残っていたりする場合は、医療機関を受診しましょう。
関連記事:長引く咳はもしかして喘息?咳喘息と気管支喘息の違いについて解説
新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の初期症状として、咳やむせるような症状があらわれます。
のどに付着した新型コロナウイルスをからだが敵と判断し、外に排出しようとするためです。
ただし新型コロナウイルスに感染して7日前後経ったあとに咳の症状が悪化した場合は、肺炎の初期症状の恐れがあります。
新型コロナウイルスに感染してから3か月以上が経過し2か月ほど咳が続いているのであれば、新型コロナウイルス感染症の後遺症(罹患後症状:りかんごしょうじょう)である可能性も否定できません。[5]
長期間咳が出ていたり、悪化していたりする場合は、医師の診察を受けましょう。
関連記事:【2024年】新型コロナについて症状・変異株ごとの最新情報を知ろう
肺炎
肺炎にかかると、肺の奥に感染した細菌やウイルスを排出しようとするためにむせたような咳があらわれます。
くわえて痰の色が緑色や黄色である場合は、肺炎の可能性があります。[6]
とくに高齢者や免疫力が低下している方は、重症化しやすいため注意が必要です。
ひどい咳が続き、医療機関を受診して初めて肺炎と診断されることもあります。医師から診断を受けたら、適切な処置を受けましょう。
関連記事:救急車を呼んだら肺炎が判明?知っておくべき症状や予防方法
アトピー咳嗽(がいそう)
アトピー咳嗽は、気道の炎症と咳を引き起こすセンサーの過敏さが原因で起こる咳で、3週間以上続くことが診断基準のひとつです。[7]
気道(おもに中央の大きな気管の部分)に「好酸球(こうさんきゅう)」という白血球の一種が集まって、炎症が起きます。この炎症が気道を刺激して、咳が出やすくなるのです。
また気道の表面には、異物や刺激を感知して咳を引き起こす「咳受容体」というセンサーがあります。咳のセンサーが普段よりも敏感になり、わずかな刺激でも簡単に咳が出てしまう状態です。
アトピー咳嗽も、医師の診察や血液検査を受けることで正しい診断につながります。
咳以外にのどのイガイガ感をともなう場合は、医療機関の受診をおすすめします。[7]
胃食道逆流症(逆流性食道炎)
逆流性食道炎では、おもに寝ている間に胃酸が食道に逆流し、のどを刺激することでむせる咳が出ます。
以下にあげる方が、逆流性食道炎になりやすいといわれています。[8]
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肥満の方
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喫煙する方
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脂っこいものを多く食べる方
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食べ過ぎ、飲みすぎの習慣がある方
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アルコールや炭酸飲料を飲む習慣のある方
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ベルトやコルセットでお腹をしめつける習慣のある方
これらの習慣があてはまり、咳以外に酸っぱいものがあがってくる、食後にみぞおちや胸が痛くなるなどの症状がある場合は逆流性食道炎の可能性が高いです。
逆流性食道炎は、長引く咳の症状のみで発覚することもあります。[9]
気になる症状があったら、早めに医療機関を受診しましょう。
誤嚥(ごえん)
誤嚥は急にむせる咳の原因のひとつで、食べ物や飲み物、唾液が誤って気管に入ることで起こります。
むせる咳が誤嚥で起きている場合、以下の流れで咳が引き起こされます。[10]
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食べ物や飲み物が間違って気管に入る
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気管の内側にある特別な感覚細胞が異物を感知する
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感覚細胞が脳の一部である延髄(えんずい)に「危険信号」を送る
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延髄がすぐに「咳をせよ」と肺周りの筋肉に命令を出す
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肺の周りの筋肉が急に強く収縮し、肺の中の空気が一気に押し出される
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強い勢いで押し出された空気が、異物を気管から外に追い出す
とくに高齢者の方は、加齢にともなって飲み込む力が弱くなり、誤嚥を引き起こすリスクが高いです。
誤嚥によるむせる咳を放置してしまうと、誤嚥性肺炎の発症につながりかねません。
のどの診療を専門とする診療科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
マイコプラズマ感染症(肺炎)
マイコプラズマによる感染症(肺炎)でも、むせるような咳がみられます。
はじめは痰のからまない乾いた咳で、徐々に咳が強くなったり痰のからむ湿った咳になったりと変化することが特徴です。[11]
マイコプラズマ肺炎では、発熱や全身のだるさがあらわれた3〜5日後に咳が出始め、熱が下がっても3〜4週間続くといわれています。[11]
このような咳があらわれている場合は、マイコプラズマ肺炎が強く疑われます。
重症化を防ぐために、早めに医療機関を受診してください。
心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)
ストレスや心理的要因によって引き起こされるむせるような咳もあり、心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)とよびます。
心因性咳嗽の特徴は以下のとおりです。[12]
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突然くり返される乾いた咳
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普通の咳止め薬は効かず、時には精神的な薬が効果的
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季節性がなく、昼間に多く、寝ている間はほとんど咳が消失
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ストレスや心理的な要因の関係が明らかで、問題に対処できると咳が消失
心因性咳嗽は、はっきりした診断基準がありません。
ほかの病気が原因で咳が出ているのではなく、ストレスや心理的な問題が関係していると考えられたときに診断されます。[12]
内科を受診して異常のないことが確認できれば、心因性咳嗽の可能性があります。
症状に心当たりがあれば、心療内科を受診しましょう。
急にむせる咳が出たときの対処方法
急にむせる咳が出たときは、以下の方法を試してください。
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前かがみになる
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あたたかい飲み物をゆっくり飲む
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のどや胸をあたためる
咳を止めたいと気持ちが焦ることもあるでしょう。焦る気持ちが反対に咳を止めにくくする場合があるため、落ち着いて対処することが大切です。
突然の咳への正しい対処法を知り、いざというときに対応できるよう、事前に準備しておきましょう。
前かがみになる
前かがみの姿勢は、横隔膜を下げて肺を広げ、呼吸を楽にします。結果的にむせる感覚を軽減でき、咳もおさまることが期待できます。[13]
周りに家族や友人がいれば、背中をさすってもらうとよいでしょう。
ただし長時間前かがみになっていると腹部が圧迫されて複式呼吸がうまくできなくなり、呼吸が苦しくなることもあります。
前かがみの姿勢で改善がみられない場合は、自分が楽な姿勢で過ごしましょう。
あたたかい飲み物をゆっくり飲む
あたたかい飲み物を飲むことで鼻やのどが加湿され、咳の症状をやわらげることが期待できます。
また、のどや気道の血行がよくなると炎症が軽減され、咳の誘発をおさえられるでしょう。
はちみつ入りの飲み物が、とくにおすすめです。はちみつには、殺菌や荒れた粘膜を保護して炎症をおさえる成分が含まれているためです。
日常的にあたたかい飲み物を意識して取り入れることで咳へのケアができ、のどの健康を保てます。
のどや胸をあたためる
のどや胸が冷えていると気道が刺激に敏感になってしまうため、のどや胸をあたためましょう。
たとえばカイロを持ち歩き、外出先でもあたためられるようにしておくと、急にむせる咳が出てしまったときでも対応できます。
自宅では、ホットタオルを使用するのもよいでしょう。
からだ全体をあたため、のどへの刺激をできる限り減らすと咳の誘発を防げます。
急にむせる咳が続いているときに医療機関でできる検査
急にむせる咳が続く場合、医療機関では以下の検査をおこないます。
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感染症に関する検査:PCRや迅速抗原検査など
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画像検査:胸部X線やCT検査など
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血液検査:炎症マーカーや感染症の有無など
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呼吸器機能検査:肺活量や1秒あたりの呼気(吐いた息)の量など
それぞれの検査の目的やおこなうタイミングについて、くわしく解説します。
感染症に関する検査
咳が続く場合、感染症の有無を判断するために、疑われる感染症に対する検査がおこなわれます。これにより、ウイルス感染や細菌感染の診断が可能です。
とくに発熱や全身のだるさなど、咳以外の症状があらわれている場合は、感染症を疑って検査をおこないます。
あらわれている症状から新型コロナウイルス感染症を疑う場合、PCR検査や迅速抗原検査を実施します。
適切な検査を受けることで、早期の診断と治療につなげられるでしょう。
画像検査
胸部X線やCTスキャンなどの画像検査をおこなうことで、肺や気道に異常があるか確認します。
肺炎や肺の病気の有無を判断するのに必要な検査です。[14]
喘息や心因性咳嗽の疑いがある場合も、肺に異常が起きていないことを確認するために実施されることがあります。
血液検査
血液検査では、からだの炎症を示すマーカー(CRP)や、感染症の有無を調べられます。[15]
たとえばマイコプラズマ肺炎のような感染症の場合、血液検査が原因を特定する方法となります。[11]
喘息やアレルギーが疑われる場合にも、血液中の好酸球の数値やアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)を特定するためには、血液検査が不可欠です。
血液検査は、咳の原因を突き止めるために幅広く活用される検査です。適切な治療方針を決定するうえで欠かせません。
呼吸器機能検査
呼吸器機能検査(スパイロメトリー)をおこなうことで、肺の機能を評価します。喘息やCOPDなどの診断が可能です。
呼吸器機能検査では、肺活量や1秒あたりの呼気(吐いた息)の量を計測して、診断につなげます。
たとえば喘息の場合、1秒率(息を全て吐き出す中で最初の1秒間にどれだけ息が出せるか)とよばれる数値の低下が、診断材料のひとつです。[16]
呼吸器機能検査は、肺の健康状態を把握し、早期に適切な治療をおこなうために重要な検査です。
よくある質問
急なむせる咳に関するよくある質問にお答えします。
急にむせるほどの咳はストレスが原因ですか?
急にむせる咳は、ストレスや緊張によって引き起こされることがあり、心因性咳嗽がそのひとつです。
心因性咳嗽が疑われる場合、診断基準がないため、ほかの病気でないことを確認しなければなりません。かかりつけ医や内科を受診するとよいでしょう。
熱はないけど乾いた咳が出る原因はなんですか?
熱がない乾いた咳は、おもに以下の原因が考えられます。
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アレルギー
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気道の炎症
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逆流性食道炎
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風邪の初期症状
たとえば、アレルギーによる咳の場合、基本的に熱は出ません。ほかの症状もあまりみられず、乾いた咳やのどの違和感がおもな症状です。
咳が長引く場合やほかの症状があらわれた場合は、早めに医師に相談しましょう。
むせたとき、咳を止める方法はありますか?
むせたときは前かがみになり、ゆっくりと深呼吸をして落ち着きましょう。背中を軽くさすってもらうと、呼吸が整いやすくなります。
また、あたたかい飲み物を少しずつ飲むと、のどの潤いが保たれて咳症状がやわらぐでしょう。
のどを冷やさないことも大切です。カイロやネックウォーマーを使って首をあたためることで、咳をおさえる効果が期待できます。
まとめ|急にむせる咳がつらいなら早めに医療機関を受診しよう
急にむせる咳は、気道が狭くなったり過敏に反応したりすることであらわれ、感染症やアレルゲンなどが誘因となることが多いです。
咳が長引いたり、ほかの症状があらわれたりした場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
早期の診断が適切な治療につながり、症状の悪化を防ぎます。
日常生活での注意や適切なケアを心がけ、急に咳が出たときも落ち着いて対応できるよう準備をしておきましょう。
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参考文献
[1]Cough - StatPearls -|NCBI Bookshelf
[2]『逆流性食道炎(胃食道逆流症)』ってどんな病気?|日本臨床内科医会
[3]口・のどの症状|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
[4]C-01 気管支ぜんそく - C. アレルギー性肺疾患|一般社団法人日本呼吸器学会
[5]Post COVID-19 condition (Long COVID)|World Health Organization (WHO)
[7]アトピー咳嗽/喉頭アレルギー|大倉徳幸 日本内科学会雑誌 109 巻 10 号
[8]逆流性食道炎ってどんな病気?|国立長寿医療研究センター
[10]物を食べた時にむせる原因は? | 国立長寿医療研究センター
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。