大人のマイコプラズマ肺炎の特徴
マイコプラズマ肺炎は、子どもに多い感染症ですが、大人もかかります。
子どもと大人の症状は似ていますが、大人の場合は、症状が長引いたり、重症化する可能性があり注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の症状を、大人と子どもの違いに分けて解説します。
子どものマイコプラズマ肺炎との違い
マイコプラズマ感染症は「免疫力が強い大人のほうが、症状が悪化しやすい」という特徴があります。
子どもに比べて免疫力が強い大人は、病原体であるマイコプラズマ・ニューモニエが体内に侵入すると、強く攻撃する反応が出てしまい、肺を傷つけてしまうため、症状が悪化しやすいです。
一方、乳幼児や高齢者は、免疫力が弱く、マイコプラズマが体内に侵入しても攻撃する力が強くないため、重症化する可能性が低いです。
ただし、高齢者においては一般的な肺炎により胸水や心不全を起こす可能性があります。心臓のポンプ機能は、加齢とともに弱くなります。
高齢者の弱った心臓に加え、肺の炎症により心臓の酸素不足がすすむと、さらに動きが悪化してしまい、胸水や心不全を招く可能性が高いのです。
大人と子どものマイコプラズマ肺炎の違いを表にまとめました。
大人と子どものマイコプラズマ肺炎の症状の違い
大人のマイコプラズマ肺炎 |
子どものマイコプラズマ肺炎 |
乾いた咳から湿った咳に変わる 大人の場合は、気道の炎症により痰の量が増え、乾いた咳から湿った咳になることがある。 |
痰のない乾いた咳 痰がからまない乾いた咳が特徴。熱が下がった後も咳が3〜4週間続くこともある。 |
熱が上がったり下がったりする 発熱のパターンは、一日中同じではなく、弛張熱(しちょうねつ)と言って、午後になると高熱が出たり、夜になると低下したりすることがある。 |
鼻水、鼻づまりが少ない 頭痛などの風邪に似た症状もありますが、鼻水、鼻詰まりが少ない。 |
症状が悪化しやすい 大人は、重い肺炎など重症化しやすい。特に高齢者は、胸水や心不全になる可能性がある。 |
耳の痛み 耳にマイコプラズマ・ニューモニエが入ると、中耳炎になる可能性がある。耳の痛みと咳が長く続く場合は、注意しましょう。 |
尚、すでに医療機関を受診し、風邪と診断されている場合でも、症状が続き改善しない場合は、内科や呼吸器内科に相談しましょう。[1]
マイコプラズマ肺炎についておさらい
マイコプラズマ肺炎の原因は「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌です。
症状は、風邪に似ていますが、特徴的な症状もあります。
症状チェックシートと風邪との見分け方に分けて解説するので参考にしてみてください。
症状チェックシート
以下の症状がある人は、マイコプラズマ肺炎の可能性があります。
マイコプラズマ肺炎・症状チェックシート ▢発熱した後に咳が出るようになった ▢乾いた咳から、痰がからむ咳に変わった ▢早朝や夜に激しく咳こんでしまう ▢朝は熱が低いのに夜になると上がる ▢全身がだるい ▢耳が痛い ▢下痢や嘔吐をしている ▢頭痛や胸痛がある |
ただし、診断は医師が行います。
症状が当てはまる場合、早めに内科を受診し、咳がひどい場合は、呼吸器内科を受診しましょう。
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風邪との見分け方
マイコプラズマ肺炎は風邪の症状によく似ています。ただの風邪だと思って効果のない市販薬を飲み続けてしまうと、咳が悪化する可能性があります。
ここでは、マイコプラズマ肺炎と風邪の見分け方を表で解説します。
一緒に見ていきましょう。
マイコプラズマ肺炎と風邪の違い
マイコプラズマ肺炎 |
風邪 |
|
|
マイコプラズマ肺炎は、市販の咳止めが効かず、鼻詰まりがなく乾いた咳が続くのが特徴です。
風邪のように軽症で済むことが多いですが、重症化する可能性もあります。
マイコプラズマ肺炎の症状に当てはまると思ったら、医療機関を受診しましょう。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の症状は?かぜとの違いを解説」
マイコプラズマ肺炎は人にうつる?
マイコプラズマ肺炎は、うつる病気です。
感染力は風邪ほど強くありませんが、注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の感染経路や、流行する時期について解説します。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説」
大人のマイコプラズマ肺炎の感染経路
マイコプラズマ肺炎の感染経路は、飛沫感染と接触感染の2つがあります。
注意が必要なのは、飛沫感染です。
飛沫とは、咳やくしゃみの際に飛ぶ細かい水分です。
マイコプラズマ肺炎は、咳やくしゃみなどの飛沫で感染しやすいため注意しましょう。
接触感染では、濃厚接触が必要であり、感染拡大の速度は遅いと言われています。
飛沫感染と接触感染については、以下の通りです。
マイコプラズマ肺炎感染経路
飛沫感染 |
接触感染 |
咳などで出た飛沫を吸い込んだり、飛沫が鼻や目などの粘膜に付着することで感染する |
感染者と接触したり、菌がついた物に触れることで感染する |
くしゃみ、咳、会話、大声を出すことで感染する |
コップや食べ物の共有、ドアノブや手すりを介して感染する |
マイコプラズマ肺炎には、予防接種がありません。
予防には手洗いやうがい、マスク着用が効果的です。
保育園や学校、職場、家庭内など集団で生活する場では、感染が広まりやすいため注意しましょう。
流行時期
マイコプラズマ肺炎の流行時期は、11月〜12月と言われています。ただし、年間を通じて全年齢層に発生する可能性があるため、注意が必要です。
4年に1度流行する、と言われていた時がありました。しかし現在では、診断技術の発達とともに正確な診断が可能となり、年間を通して発生しています。
冬に流行する理由は、空気の乾燥と気温の低下が原因です。
気温が低下すると、体温も低下し免疫力が下がります。冬場は、乾燥と気温の低下によって、他の季節より感染症にかかりやすくなります。
また、マイコプラズマ肺炎は、症状が軽い場合が多く、本人も気づかないうちに感染しているため、他人にうつしてしまうと言われています。
マイコプラズマ肺炎は、他の感染症と同様に冬場に流行する可能性が高いです。
手洗いやうがい、マスクの着用で感染を予防しましょう。[3][4]
検査方法
マイコプラズマ肺炎に関わる検査は4つです。
それぞれ特徴があるため、どの検査をするかは医師が判断します。
マイコプラズマ肺炎に関する検査
①抗体検査 |
採血検査 病状初期とその2週間後の2回採血をします。 2回の採血結果を比較し、2週間後の抗体価の方が優位に上昇していれば陽性です。 過去に、マイコプラズマに感染したかどうかを調べる検査です。 |
②抗原検査 |
のどの奥を綿棒でぬぐう検査 20分ほどで結果が出ます。ただし、感染の有無を正確に判断できないという欠点があります。 |
③胸部レントゲン |
左右両方の肺に影が写ります。ただし、胸のレントゲンだけでは、マイコプラズマ肺炎を断定できません。 発症初期は、レントゲンに肺炎像が映らない場合があります。咳がひどくなってから、レントゲンを撮ることがポイントです。 |
④遺伝子検査 |
LAMP法と言って、のどの奥を綿棒で拭う検査です。 発症初期の頃にも、高精度で検出するとい言われてます。結果がでるまで2日ほどかかりますが、マイコプラズマ・ニューモニエを見逃しにくい検査です。 |
治療方法
マイコプラズマ肺炎の治療は、抗菌薬が基本です。
マイコプラズマ肺炎に効く薬は限られており、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系薬剤などの薬剤を使います。
呼吸困難がある場合はステロイド薬を点滴したり、入院治療をしたりします。
マイコプラズマ肺炎に多く使われる抗菌薬は、以下の通りです。
マイコプラズマ肺炎の抗菌薬
薬剤名 |
作用 |
副作用 |
エリスロマイシン (マクロライド系抗菌薬)
|
“マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす”[5] |
消化器症状 吐き気、下痢、腹痛など 循環器症状 心室頻拍やQT延長症候群などがあるため心疾患がある方は注意が必要 |
クラリスロマイシン (マクロライド系抗菌薬)
|
“マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす”[6] |
消化器症状 吐き気、下痢、腹痛など 循環器症状 心室頻拍やQT延長症候群などがあるため心疾患がある方は注意が必要 |
ミノサイクリン (テトラサイクリン系抗菌薬)
|
“呼吸器感染症、尿路感染症、精巣上体炎や子宮内感染などクラミジア属による感染症”などに対して有効と認められている[7] |
消化器症状 吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢など めまいの危険があるので運転は避ける 「歯牙の着色」「エナメル質形成不全」「一過性の骨発育不全」の可能性あり 8歳未満の小児へは原則として使用を避ける 妊娠中の婦人への使用は原則として避ける |
成人にはマクロライド系のエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどを処方されることが多いです。学童期以降ではテトラサイクリン系のミノサイクリンも使用される場合があります。
抗菌薬は、指示通りに飲み切ることが重要です。副作用が出た場合は、主治医に相談しましょう。
自己判断で内服を中止すると、耐性菌といって抗生物質が効きにくい菌が発生する可能性があります。処方された薬剤は、医師の指示通り飲み切りましょう。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の治療薬について解説 子どもにも使える市販薬はあるの?」
市販薬は使っていいの?
マイコプラズマ肺炎は市販薬で治すことはできないため、むやみな服用は避けてください。
マイコプラズマ肺炎に効く薬は限られており、マクロライド系抗菌薬などの前途した抗菌薬でないと、咳などの症状は治りません。
早く薬を飲んで治したいという気持ちはわかりますが、医療機関に受診して適切な薬を服用しないとかえって症状が長引いたり、悪化する可能性があります。
市販薬を使用していて、症状が改善しないと悩んでいる場合は、すぐに近くの医療機関に受診しましょう。
熱がない場合、会社に出勤してもいいの?
熱が下がっても、出勤は控えましょう。
マイコプラズマ肺炎は、熱が下がった後も、痰からマイコプラズマ・ニューモニエが排出されています。排出される菌は、症状が強かった時期をピークに1週間ほど高いレベルで続きます。
その後も1か月以上排出されるため、感染に注意が必要です。
熱が下がっても出勤せず、自宅療養が望ましいです。
1か月程度は、リモート勤務に切り替えるのが感染予防には良いでしょう。
マイコプラズマ肺炎で重症化した場合はどうなる?
マイコプラズマ肺炎が重症化した場合、入院が必要なケースがあります。
症状が悪化し、呼吸困難になってしまった場合、ステロイドの点滴治療が必要になったり、1か月ほど入院治療が必要になったりする場合があります。
軽症であることが多いですが、合併症にも注意が必要です。
関連記事:「マイコプラズマ肺炎の入院の目安、入院中の治療などについて解説」
マイコプラズマ肺炎の合併症
【比較的多く出現する合併症】
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気管支喘息
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気管支炎
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発疹
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鼻炎
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中耳炎
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副鼻腔炎
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消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢等)
【稀な合併症】
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重症肺炎
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無菌性髄膜炎
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胸膜炎
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肝炎
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膵炎
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心筋炎
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関節炎
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溶血性貧血
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ギラン・バレー症候群(手や足に力が入らなくなる末梢神経の障害)
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スティーブンス・ジョンソン症候群(眼、鼻、口唇・口腔、外陰部などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に赤い斑点、水ぶくれなどが多発する病気)
マイコプラズマ肺炎は、早期に適切な治療を開始するのが重要なポイントです。
重症化するケースはまれですが、入院を避けるためにも
と気になる症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
大人のマイコプラズマ肺炎について解説しました。
マイコプラズマ肺炎は小児に多くみられますが、大人も感染します。
大人に特徴的な症状は、乾いた咳から湿った咳にかわることや、弛張熱といい熱が上がったり下がったりすることです。
症状が軽い場合、市販の咳止めで治療できると思うかもしれません。
しかしマクロライド系や、テトラサイクリン系と呼ばれる適切な抗菌薬を使用しないと、マイコプラズマ肺炎は治りません。
風邪ほど感染力は強くありませんが、抵抗力がある大人の方が重症化しやすく脳炎などの合併症の恐れもあるため、注意が必要です。
症状がおさまったあとも、1か月程度は排菌が続いていると言われています。感染予防の観点からも、会社への出勤は控えるのが望ましいでしょう。
軽症であるイメージのマイコプラズマ肺炎ですが、大人がかかると重症化のリスクがあります。
咳などの症状が長く続いている場合は、重症化予防のためにも早めに医療機関を受診しましょう。
2024年5月現在、マイコプラズマ肺炎の陽性率が上がっています。
「ただの風邪かも」と思って放置する前に、医師に症状を相談しませんか?
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マイコプラズマ肺炎の検査はもちろん、インフルエンザやコロナの検査も可能です。
診察後は症状に合わせて自宅にお薬をお届けします。
周りに感染を広げる前に、まずは一度症状をお聞かせください。
参考文献
[1]マイコプラズマ肺炎は咳だけではない?症状や特徴についてチェック
[2]マイコプラズマ肺炎とは
[6]https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00055350.pdf
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。