マイコプラズマって何?
マイコプラズマとは「マイコプラズマ属」の細菌の一種で、細胞壁を持っていない特徴があります。
通常、細菌による感染症の場合、抗菌薬を用いて治療をするイメージがあるでしょう。
ペニシリン系やセフェム系のよく処方される抗菌薬は細胞壁をもろくして、抗菌効果を発揮するのです。
そのため、細胞壁を持たないマイコプラズマ属には効きにくく、治療の際は特定の抗菌薬に限られてしまいます。[1]
マイコプラズマと聞くと気道の炎症を引き起こすことで有名な菌ですが、実は性感染症を引き起こす菌も存在します。
同じ「マイコプラズマ」ですが、実は違う菌によって引き起こされていることを理解しておきましょう。
マイコプラズマ肺炎を起こすのは「マイコプラズマニューモニエ」と呼ばれる菌です。
飛沫(ひまつ)感染や接触感染によって感染し引き起こされます。
4年に1度の周期で流行する傾向があることから、「オリンピック熱」とも呼ばれています。
一方、性病を引き起こす菌は「マイコプラズマ・ジェニタリウム」や「マイコプラズマ・ホミニス」です。[2] [4]
性行為による粘膜の接触によって感染します。
名前は同じマイコプラズマですが、マイコプラズマ肺炎にかかったからといって、性感染症のマイコプラズマに感染している訳ではありません。
マイコプラズマの感染は年間を通してみられ、マイコプラズマ肺炎については冬場にやや増加します。[3]
自然界に存在する菌なので、誰でも感染する可能性はあると理解しておきましょう。
関連記事:マイコプラズマ肺炎は咳だけではない?症状や特徴についてチェック
関連記事:マイコプラズマとは?風邪や一般的な肺炎との違いを解説
マイコプラズマ肺炎の症状を簡単チェック
マイコプラズマ肺炎に感染すると主に以下の症状が現れます。[3]
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発熱
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全身倦怠感(だるさ)
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頭痛
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咳
また、初期症状が現れて3日〜5日経った頃から、痰を伴わない乾いた咳が徐々に強くなるケースが現れます。
熱が下がった後も咳が3〜4週間と長期間にわたって続くため、とにかく咳がつらい点が特徴です。
ほとんどの場合マイコプラズマ菌に感染しても、一般的な風邪と似たような症状が1週間程度続き改善傾向となります。
ただし、感染が進むとマイコプラズマ肺炎を引き起こしてしまい重症化してしまうこともあるのです。
小児の場合もほとんど同じ症状が現れますが、大人よりも軽症で全身状態が良いことが特徴です。
マイコプラズマ肺炎になると、上記の他にも様々な症状が存在します。
症状がマイコプラズマ肺炎かどうかもっと詳しくチェックしたい人は以下の記事を確認してみましょう。
マイコプラズマがうつる確率はどのくらい?
マイコプラズマ菌の感染力はインフルエンザのように強くはなく、濃厚な接触をすることで感染するとされています。[1]
そのため、比較的長時間一緒に過ごす家族間や学校内でうつる確率が高いと言えるでしょう。
マイコプラズマ肺炎を引き起こす「マイコプラズマニューモニエ」と呼ばれる菌に感染しても、必ずマイコプラズマ肺炎になるわけではありません。[5]
マイコプラズマ菌に感染して、肺炎になってしまう確率は5〜10%とされています。
残りの90%の人はマイコプラズマ菌に感染しても、いわゆる風邪症状で済むため自然治癒するケースも少なくありません。
ただし、本人はただの風邪だと思っていても、マイコプラズマ菌に感染してしまっている以上、他の人に感染させてしまう可能性があるのです。
特に、生活を共にしている家族間では、90%の高確率で感染してしまいます。
もちろん、多くの人が集まる保育施設や学校、職場などで感染してしまうことも考えられます。
また、マイコプラズマ肺炎にかかってしまったとしても、一般的に重症になりにくく外来受診のみで治癒する人も多くみられます。
そのため、感染力があるにも関わらず比較的元気な状態で日常生活を過ごせることから、周囲に菌を撒き散らしやすいのです。
その結果、「歩く肺炎」と呼ばれ、時に流行することもあります。[6]
関連記事:マイコプラズマ肺炎は人にうつるの?症状や治療法についても解説
大人と子どもで症状の違いはあるのか
マイコプラズマ肺炎は大人も子どももかかる病気ですが、約80%は14歳以下です。[3]
大人といっても40歳未満に多く、60歳以上の感染は5%前後と高齢者の発症は多くありません。
子どもを中心に流行しますが、子どもが発症した場合は比較的軽症で済むことが多いです。
一方で、大人がかかると子どもよりも重症化しやすいといわれています。
特に家族内で子どもが発症した場合や、子どもと接する機会が多い職業の人は注意が必要です。
感染した直後は一般的な風邪症状と変わりないため、初期段階でマイコプラズマと診断されることはほとんどありません。
解熱後も3〜4週間程度、乾いた咳が続いている場合は受診をしましょう。[7]
大人のマイコプラズマ肺炎には、子どもの症状とは違う特徴があります。詳しい症状の違いは以下の記事で確認してみましょう。
関連記事:大人のマイコプラズマ肺炎の特徴とは?症状チェックシートでセルフチェック
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マイコプラズマ肺炎は一度かかっても再感染する
マイコプラズマ菌に感染すると抗体はできますが、生涯続くものではなく徐々に減少していきます。その期間は様々であり、再感染することもよくみられます。[1]
5歳ごろまでにおよそ70%が感染し、大人の場合95%程度の人が感染していると考えられています。
ほとんどの人がマイコプラズマ菌に一度は感染しているものの、十分な免疫は獲得できないため再感染リスクがあると知っておきましょう。
ひどくなると合併症を引き起こすことも
マイコプラズマ肺炎がひどくなると、合併症を引き起こす可能性があります。
ほとんどの場合は軽症で済むことが多いですが、重症化すると多彩な病気に繋がるのです。
特に子どもの場合は、喘息発作が生じることもあります。また、初期症状の高熱に伴う熱性痙攣(けいれん)にも注意が必要です。
まれに重症肺炎となり、胸水貯留に繋がるケースもみられます。
その他、マイコプラズマ肺炎で引き起こされる主な合併症は以下の通りです。[1]
【比較的多く出現する合併症】
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気管支喘息
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気管支炎
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発疹
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鼻炎(幼児によくみられる)
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耳痛
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咽頭痛
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胸痛
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消化器症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢等)
【まれにみられる合併症】
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中耳炎
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脳炎
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胸膜炎
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肝炎
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膵炎
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心筋炎
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関節炎
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溶血性貧血
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ギラン・バレー症候群(手や足に力が入らなくなる末梢神経の障害)
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スティーブンス・ジョンソン症候群(眼、鼻、口唇・口腔、外陰部などの粘膜にただれが生じ、全身の皮膚に赤い斑点、水ぶくれなどが多発する病気)
このように、様々な合併症を引き起こす可能性があります。
軽症だからと軽く見ることをせず、悪化する前に受診することが大切です。
関連記事:マイコプラズマ肺炎の入院の目安、入院中の治療などについて解説
マイコプラズマの感染経路と予防方法
マイコプラズマは飛沫感染と接触感染によって感染します。
飛沫感染はマイコプラズマに感染している人の咳やくしゃみに含まれる病原体(マイコプラズマ菌)から感染することです。
接触感染は病原体がついている手で口や鼻を触ることで感染します。[1]
特に、濃厚接触してしまうと感染しやすいとされているため、家族間や友人間で感染が広がるケースが多いです。
感染後は症状が一番強く出ている時をピークとして、1週間程マイコプラズマ菌を高いレベルで排出し続けます。
その後、症状が軽快したとしても4〜6週間以上も菌が排出されるため、感染リスクがある時期は注意しましょう。
マイコプラズマの予防方法は、一般的な風邪と同じく手洗いやうがいなどを習慣として行うことです。
また、感染した人が身近にいる場合は濃厚接触を避けた方が良いでしょう。
マイコプラズマ肺炎に既にかかってしまっている人は、咳やくしゃみから感染させてしまう恐れがあります。
マスク着用や咳エチケットを心がけましょう。
関連記事:マイコプラズマ肺炎の原因は?感染経路や予防策についても解説
まとめ:感染経路をしっかり確認して予防対策を
マイコプラズマの基本的な知識と感染について解説しました。
周りに感染者がいる人も、感染経路やうつる確率を再確認できたのではないでしょうか。
マイコプラズマは感染しても終生免疫がつくわけではないので、何度もかかってしまう可能性があります。
一度かかったことがあるから・・と予防をしなかった場合、合併症を引き起こし重症化してしまうケースもあるのです。
マイコプラズマ肺炎の感染経路を再確認し、まずはしっかり予防対策をしましょう。
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参考文献
[2]クラミジア、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム(尿道・子宮頚管炎、咽頭・直腸感染)|日和見疾患の診断・治療|診断と治療ハンドブック (ncgm.go.jp)
[4]腹腔内膿瘍を繰り返しMycoplasma hominis が原因と思われた1例 (niid.go.jp)
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。