感染性胃腸炎がうつる期間ってどのくらい?家族感染の予防ポイントを詳しく解説

公開日: 2025/02/07
「子どもが感染性胃腸炎って診断されたけど、うつる期間っていつまで?」 「なんとかして家庭内感染を防ぎたい。感染性胃腸炎の正しい予防方法は?」 感染性胃腸炎は感染力が強く、うつるのではないかと心配している方もいらっしゃるでしょう。 感染性胃腸炎がうつる期間は1週間〜3週間と長めで、予防策をおこなわなければ簡単に感染が広がってしまいます。 この記事では感染性胃腸炎がうつる期間や家庭内感染を防ぐポイントについて、詳しく解説します。 感染を広げず1日でも早く安心した生活を送りたい、予防方法をあらかじめ知っておきたい方は、ぜひ最後までお読みください。
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目次

感染性胃腸炎がうつる期間は長い

感染性胃腸炎のうつる期間は長く、症状がおさまったあとも1週間〜3週間は感染予防に努めたほうが安心です。

理由は、潜伏期間や発症期間、症状がおさまったあとまで病原体が排出され、すべての期間を通じて感染拡大のおそれがあるためです。

潜伏期間や病原体の排出期間は、病原体ごとに異なります。[1][2][3][4][5][6]

<感染性胃腸炎のおもな病原体との潜伏期間と排出期間>

病原体の分類

おもな病原体

潜伏期間

病原体の排出期間

ウイルス

ノロウイルス

12時間~48時間

3日~7日

ロタウイルス

1日~3日

3週間以上

腸管アデノウイルス

3日~10日

10日~14日

細菌

腸炎ビブリオ

10時間~24時間

抗生剤使用:2日

使用なし:1週間以上

カンピロバクター

1日~7日

抗生剤使用:1週間以内

使用なし:2〜5週間

サルモネラ

12時間~72時間

2〜4週間

症状だけではどの病原体に感染したか判断がつきません。

なかでも細菌性の胃腸炎である場合は抗生剤治療が回復を早める傾向であるため、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

潜伏(せんぷく)期間

潜伏期間とは感染してから症状が出るまでの期間のことで、感染性胃腸炎の場合はおおむね1日〜3日とされています。[7]

ただし腸管アデノウイルスは、ほかの病原体と比べて潜伏期間が長い傾向です。[8]

潜伏期間中は症状が出ていないだけで、病原体はからだのなかで増えつづけています。そのため、症状があらわれる前に周りにうつってしまうことも少なくありません。

発症期間

感染性胃腸炎にかかると嘔吐や下痢などの症状があらわれます。

<感染性胃腸炎のおもな症状>

  • 嘔吐

  • 下痢

  • 腹痛

  • 発熱(病原体によってみとめない場合もある)

症状があらわれている期間を「発症期間」とよび、1週間程度で消失することがほとんどです。[2][3][9][10][11]

高齢の方や子どもの場合は、免疫力や体力が低いことから長引くケースもあります。

おもな病原体

発症期間

ノロウイルス

1日~2日

ロタウイルス

2日~7日

腸管アデノウイルス

発熱・嘔吐:2〜3日

下痢:7日以上

腸炎ビブリオ

1日~2日

カンピロバクター

2日~3日

サルモネラ

7日

記載した発症期間はあくまでも一般的な期間です。

症状が長引いたり発症期間内でも症状が強かったりする場合は、脱水症状を引き起こして状態が悪化するおそれもあるため、感染性胃腸炎と思われる症状が出たら早めに医療機関を受診しましょう。

治った人からもうつる可能性がある

症状がおさまっても数日〜数週間はからだに病原体が残り、便中の病原体から胃腸炎がうつる可能性があると言われています。

たとえばノロウイルスの場合、1か月近く便中にウイルスが排出された例や12日以上前に汚染したカーペットからうつった例もありました。[9][12]

症状がなくなったからといって油断せず、子どもや高齢者のオムツや汚染されたものを扱う際は、少なくとも1週間はウイルスが排出しているものと認識して処理しましょう。

関連記事:胃腸炎で発熱することはある?症状についてや何日くらいで治るのかを解説

感染性胃腸炎がうつる期間に家族感染を予防する法

感染性胃腸炎を家庭内で広げないためには、手洗いの徹底や塩素消毒液の使用などが効果的です。

感染者の汚染物が付着したものからうつらないように、適切な処理方法を知っておく必要があります。

手洗いの仕方

感染性胃腸炎の原因ウイルスはアルコールが効かないことが多いため、正しい手洗いが感染予防に不可欠です。洗い残しが多い部分を中心に洗浄しましょう。[13]

<洗い残しが多い部分>

  • 指先、指の間、指の付け根

  • 親指の周り

  • 手首、手の甲

  • 爪の間

2度洗いをおこなうと、さらに効果的です。

感染性胃腸炎を予防するために、とくにおこなうべき手洗いのタイミングとしてトイレの使用後や食事前などがあげられます。[13]

  • トイレを使用した後

  • 調理をする前

  • 調理をしている最中(料理を盛り付ける前や肉・魚にふれたあと)

  • 食事をする前

  • 感染者の汚染物が付着したものを片付けたあと

正しい手洗いが感染拡大を防ぐと言っても過言ではありません。

記載したタイミング以外にも、気になったときに手洗いをおこなうとよいでしょう。

家庭内での過ごし方

感染性胃腸炎の感染拡大を防ぐには、家庭内での過ごし方がカギとなります。

  • 感染者が吐いたものやオムツはすぐに処理する

  • 食器やタオルは共有しない

  • 食事の時間をわける

  • 室内の換気を十分におこなう

小さい子どものいる家庭では、子どもがさわりそうなもの、口に入れそうなものの管理も必要です。布製品は洗浄と消毒、プラスチック類は消毒を徹底しましょう。

ノロウイルスをはじめとした多くの病原体では、加熱による消毒も有効です。消毒液の使用に抵抗がある場合は、85℃以上の熱湯で1分間以上の加熱をしましょう。

なお、セレウス菌やウェルシュ菌に熱湯消毒は効きません。感染拡大を防ぐには手洗いを徹底しましょう。

塩素消毒液の作り方

感染性胃腸炎のなかでもノロウイルスは、塩素消毒液が有効です。[9]

あらかじめ作成手順を知り、いざというときに焦ることのないよう準備しておきましょう。以下は、一般的な塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度:約5〜6%)を使用した消毒液の作り方です。

消毒する目的

消毒液の作り方

塩素濃度

床・表面の消毒

500mlの水に塩素系漂白剤1 mlを加える

200ppm

汚物の廃棄

500 mlの水に塩素系漂白剤5 mlを加える

1,000ppm

金属部分に使用すると腐食する可能性があるため、ドアノブをはじめとした金属に使用したら、10分経過後かならず水拭きしてください。

消毒液を保管する場合、消毒液の入った容器は誤って飲むことがないよう、消毒液であることをはっきり書いておきましょう。

吐いたものやオムツの処理方法

感染者の吐いたものやオムツは、乾燥する前に処理することで感染拡大を防げます。

吐物や便が乾燥してしまうと病原体が空中に舞いやすくなり、空気感染を引き起こすおそれがあるためです。

注意すべきポイントを把握し、処理する方も感染しない対策をとりましょう。[13]

処理手順

方法

ステップ1:汚物の拭き取り

  • 防護具(ガウン、マスク、手袋)を着用する

  • 汚物が飛び散らないように、静かにペーパータオルで拭き取る

  • 汚物をペーパータオルで包み、すぐにビニール袋に密閉する

ステップ2:消毒液での拭き取り

  • 消毒液(200 ppm)を含ませた布やペーパータオルで床を拭く

  • 再度水拭きをして消毒液を取り除く

ステップ3:廃棄物の処理

  • オムツや拭き取りに使ったペーパータオルを、密閉できるビニール袋に入れる

  • 消毒液(1,000 ppm)を袋内に入れ、廃棄物が十分浸るようにする

  • ビニール袋をしっかり閉じて廃棄する

感染性胃腸炎になる前にあらかじめ使用する物品を準備しておくと、いざというときに落ち着いて行動できます。

自宅に物品がそろっているか確かめておきましょう。

服などに付いたときの洗濯方法

服や布製品にウイルスが付着したときも、正しい処理方法があります。[9]

正しい洗浄方法を守れば感染リスクを下げられるため、今から手順を覚えておきましょう。

手順

詳細・注意点

汚物を処理

飛び散らないように静かに拭き取る

下洗い

しぶきを吸い込まないように、洗剤を溶かした水でもみ洗いする

消毒

  • 熱水洗濯が可能

85℃以上の熱水で1分以上洗濯

  • 熱水の使用が不可能

次亜塩素酸ナトリウム(200ppm)で消毒してしっかりすすぐ

乾燥

高温乾燥機を使用する

洗えない布団や衣服はスチームアイロンや布団乾燥機を活用する

下洗い場所の掃除

消毒液で拭き取り、洗剤で仕上げ掃除をする

次亜塩素酸ナトリウムは漂白作用があるため、 色柄物は色落ちをしてしまう可能性があります。薬剤の使用上の注意を確かめて安全に使用しましょう。

関連記事:下痢の治し方って何が正解?自宅での対処法と受診目安を解説

感染性胃腸炎の原因や流行る時期は?

感染性胃腸炎の原因はウイルス性や細菌性、寄生虫によるもので、多くはウイルス性と言われています。[14]

<感染性胃腸炎のおもな原因>

病原体の分類

おもな病原体

ウイルス
  • ノロウイルス
  • ロタウイルス
  • 腸管アデノウイルス
細菌
  • 腸炎ビブリオ
  • カンピロバクタ
  • サルモネラ
  • 病原性大腸菌
寄生虫
  • クリプトスポリジウム
  • アメーバ
  • ランブル鞭毛虫

感染性胃腸炎は初冬から発生が増加し、12月にノロウイルスによるピークを迎えます。[14]

春にはロタウイルスが原因で別のピークが発生し、夏は腸炎ビブリオや食中毒による細菌性胃腸炎が多い傾向です。[14]

感染性胃腸炎の多くがウイルス性であることから、罹患しやすいのは幼児や学童期の子どもたちが中心です。

家庭内や学校などで発生するケースが多く、食品を介した集団感染が起こることもあるため、予防と早期の対応をおこないましょう。

関連記事: 胃腸炎の症状は?原因となる細菌やウイルスも紹介

関連記事:アデノウイルスとはどんな病気?症状についても解説

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感染性胃腸炎と思われるときはどうする?

感染性胃腸炎は周囲の人から感染する場合や、飲食店で提供された食事が原因で発症することがあります。

症状が出たら、まずは早めに医療機関を受診しましょう。

食品からの胃腸炎が疑われる場合、感染の原因を特定するため飲食店に行った日時や食べたものを医師に伝えましょう。

家で食べた食材や飲食店での食事の一部が残っていれば保管し、持参すると調査に役立ちます。

食中毒が広がる恐れがある場合、医師が保健所に報告し集団感染の可能性を調査することもあります。

高齢者や子どもの場合は、感染性胃腸炎で脱水症状を引き起こしやすいです。

原因が食品であるかにかかわらず、感染性胃腸炎が疑われたら早めに消化器内科や内科を受診しましょう。

関連記事:胃腸炎、うつらない人の特徴とは?ノロウイルスにかからない人もいる?

感染性胃腸炎になったら職場や学校は何日休むべき?

感染性胃腸炎の出席・出勤停止については厳密に定められていません。

ただし「保育所における感染症対策ガイドライン」によると、嘔吐や下痢などの症状がおさまって普段の食事ができるまで登園は控えるべきとされています。[15]

保育園や福祉施設ではとくに集団感染が起きやすいため、周りにうつさないためにも完全に症状が治るまでは休むことをおすすめします。

職場や保育園など、施設で独自に出席停止期間を定めていることがあるため、あらかじめ確かめておきましょう。

関連記事:胃腸炎になったとき、仕事は何日休むべき?

関連記事:ウイルス性胃腸炎の治ったサインはおなら?大人特有の症状とは?

感染性胃腸炎のよくある質問

感染性胃腸炎について、よくある質問にお答えします。

感染性胃腸炎の疑問を解消し、いざというときに行動できるようにしておきましょう。

感染性胃腸炎の感染力は?

感染性胃腸炎の原因であるウイルスや細菌は感染力が強く、食べ物や吐いたものなどから簡単に感染します。

なかでもロタウイルスは、わずか10個〜100個のウイルスが体内に入るだけで発症します。[16]

便中に排出されるウイルス量も多く、手洗いをおこなっても爪の間に数億個のウイルスが残ったままの場合もあるため、洗い残しのないよう十分に手を洗いましょう。

また汚染物の処理や手洗いをする際には、指輪や腕時計なども外しておくと安心です。[16]

感染性胃腸炎の人に接触したらうつりますか?

感染性胃腸炎の人にふれるだけでもうつる可能性は十分にあります。

感染性胃腸炎のおもな感染経路は2つです。[7]

感染経路

感染例

接触感染

病原体が付いた手で口をさわる

経口感染

汚染された食品を食べる

感染者にふれることで起こる可能性があるのは「接触感染」です。キスや食器の共有などでもうつるおそれがあるため、排出期間が終了するまでは避けたほうがよいでしょう。

感染性胃腸炎は空気感染しますか?

感染性胃腸炎は基本的に空気感染はしません。

しかし感染者の吐いたものや便などをすぐに処理しないと乾いてしまい、病原体が空気中にただよいやすくなります。

空気中の病原体が口のなかに入ると、結果的に空気感染が成立してしまいます。

カーペットの上に吐いた、オムツの処理が遅れたなどは空気感染が発生しやすくなるため、すぐに処理や消毒することが感染予防に重要です。

まとめ|感染性胃腸炎がうつる期間は予防の徹底が重要!うつったら早めに医療機関を受診しよう

感染性胃腸炎がうつるのは症状があらわれている最中だけではありません。

1日〜3日の潜伏期間、症状消失後1週間〜3週間もうつるリスクは十分にあります。

少量のウイルスが体内に入った場合でも発症する病原体もあるため、すべての期間を通じて感染対策が重要です。

吐いたものや排泄物を正しく処理するには、必要な物品や手順を理解しておかなければなりません。すぐに対応できるよう、この記事を参考にあらかじめ準備しておきましょう。

対策を十分におこなっても、看病している方が感染してしまう場合もあります。

医療機関を受診し早期回復に努め、感染拡大を防ぐ行動をとりましょう。

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参考文献

[1]ノロウイルス感染症とは|NIID国立感染症研究所

[2]17)②ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス感染症)|厚生労働省

[3]4 腸管アデノウイルス|内閣府食品安全委員会事務局

[4]健康成人の腸炎ビブリオ保菌率および保菌期間|西尾隆昌ら

[5]カンピロバクター感染症とギラン・バレー症候群|NIID国立感染症研究所

[6]14.サルモネラ・エンテリティディス|内閣府食品安全委員会事務局

[7]感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎を中心に) infectious gastroenteritis | 東京都感染症情報センター

[8]アデノウイルスによる感染性胃腸炎|NIID国立感染症研究所

[9]ノロウイルスに関するQ&A|厚生労働省

[10]腸炎ビブリオ感染症とは|NIID国立感染症研究所

[11]細菌性腸炎(サルモネラ及びカンピロバクター感染症)|北九州地区小児科医会

[12]ノロウイルス陽性となった調理従事者の陰性確認検査―東京都|国立感染症研究所感染症情報センター

[13]ノロウイルスによる食中毒|厚生労働省

[14]感染性胃腸炎とは|NID国立感染症研究所

[15]保育所における感染症対策ガイドライン|厚生労働省

[16]ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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