腹痛の原因は何?考えられる病気と受診目安について解説

公開日: 2025/01/07
「この腹痛は何が原因で起きているのだろうか」 「腹痛で医療機関を受診する目安について知りたい」 長引いたり繰り返したりする腹痛やいつもと異なる腹痛は、何か大きな病気が隠れていないか心配になりますよね。 腹痛の原因は胃や腸などの消化器系の病気が関わっている場合や、婦人科系の病気が関わる場合、ストレスによって起こる場合とその他にもさまざまあります。原因によって治療方法が異なるため、適切な対応が重要です。 この記事では腹痛の原因について詳しく解説し、医療機関を受診する目安や腹痛をやわらげる方法を紹介します。 早く腹痛を治すための参考にしてみてください。
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腹痛の原因となる病気

腹痛には一時的な症状で次第に改善するものから医療機関を受診すべき重篤な病気が隠れているものまでさまざまなタイプがあります。

腹痛のおもな原因

  • ストレスで胃腸の動きが乱れて便秘や下痢、消化不良が起こる

  • 女性の場合、生理によりプロスタグランジンが過剰に生成され子宮が収縮する

  • 感染性胃腸炎(胃腸風邪)のウイルスが胃腸に影響を及ぼす

  • 消化器系の病気により胃腸などが痛む

  • 婦人科系の病気により子宮やその周辺が痛む

一般的に腹痛の原因が消化器系や婦人科系の病気である場合は、早めに医療機関を受診し治療を受けることが必要です。この記事では以下の病気について詳しく解説していきます。

まずは腹痛の特徴と腹痛以外の症状から考えられる病気を確認し、ご自身の症状と照らし合わせてみてください。

腹痛の特徴

腹痛以外の症状

考えられる病気

みぞおちあたりが痛む

  • 胸やけ

  • 胃もたれ

  • 吐き気、嘔吐

  • ゲップ

  • 食欲不振

  • 背中の痛み

  • コールタールのような黒色の粘性の高い便

  • 吐血

胃・十二指腸潰瘍

  • 吐き気、嘔吐

  • 37℃程度の発熱

  • 食欲不振

  • 下痢・便秘

  • お腹の張り

  • 歩くと痛みが響く

  • 右下腹部を押さえた手を急に離すと痛みが強まる

急性虫垂炎(盲腸)

  • 背中の痛み

  • 吐き気、嘔吐

  • 38℃以上の発熱

  • 食欲不振

  • お腹の張り

  • 体のだるさ

  • 下痢

急性膵炎

  • 吐き気、嘔吐

  • 食後に起こる右脇腹や背中の痛み

  • 38℃以上の発熱

  • 体の寒気

  • 食欲不振

  • 体のだるさ

胆のう炎

おへそ〜下腹部が痛む

  • 吐き気、嘔吐

  • 下痢

  • 37℃~38℃の発熱

感染性胃腸炎

  • 激しい水っぽい下痢

  • コロコロした便

  • お腹の張り

  • 便秘

  • 排便後も便が残っている感覚

  • 排便すると腹痛がやわらぐ

  • おならが出やすい

過敏性腸症候群

  • 下痢

  • 粘液と血液が混ざった便

  • 発熱

  • 貧血

炎症性腸疾患

  • 便秘

  • 吐き気、嘔吐

  • お腹の張り

腸閉塞(イレウス)

  • 排尿時の差し込むような痛み

  • 30分~1時間ごとの尿意

  • 尿の濁り

  • 排尿後の尿が残った感覚

  • 血が混ざった尿

膀胱炎

  • 激しい生理痛

  • 生理が長引く

  • 生理の出血量が多い

  • 生理時以外の腹痛・腰痛

  • 排便痛

  • 性交痛

  • 不妊

子宮内膜症

  • 不正出血

  • つわりのような吐き気

  • お腹の張り

  • 妊娠の初期症状

子宮外妊娠

右の下腹部が痛む

  • 吐き気、嘔吐

  • 37℃程度の発熱

  • 食欲不振

  • 下痢・便秘

  • お腹の張り

  • 歩くと痛みが響く

  • 右下腹部を押さえた手を急に離すと痛みが強まる

急性虫垂炎(盲腸)

脇腹が激しく痛む

  • 波のある痛み

  • 血尿

  • 38~40℃の発熱

  • 排尿後の尿が残った感覚

  • 吐き気

  • 背中と腰の痛み

尿路結石

関連記事:コロナが原因の腹痛・下痢が増えています|胃腸炎との見分け方

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍とは胃酸やピロリ菌などによって胃や十二指腸の粘膜が溶けて傷つく病気です。

胃や十二指腸が食べ物を消化するために分泌する胃液は、食べ物だけでなく粘膜も溶かしてしまうくらい強い酸です。

通常であれば胃液中の粘液が胃酸から胃や十二指腸の粘膜を守って健康的な粘膜を保っています。

しかし粘液と胃酸のバランスが崩れたり別の原因で胃が攻撃されたりすると、胃や十二指腸の粘膜が傷つき胃・十二指腸潰瘍となってしまいます。

胃・十二指腸潰瘍の具体的な原因

  • 胃酸の分泌が過剰になる

  • ピロリ菌が出す毒素によって粘膜が傷つく

  • 薬の副作用によって粘膜が傷つく

  • ストレスによって胃液から粘膜を守るはたらきが低下する

ピロリ菌の感染が原因で胃・十二指腸潰瘍となるケースは全体の7割~9割程度です。

ピロリ菌を除菌しなければ潰瘍が治りにくかったり繰り返したりすることが多いため、適切な治療を受けるために医療機関を受診しましょう。

薬の副作用が原因で胃・十二指腸潰瘍になることもあります。とくに以下の薬の副作用で起こりやすいです。

  • 解熱鎮痛剤

  • ステロイド剤

  • 骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療薬

  • 市販の解熱鎮痛剤や風邪薬

上記の薬を服用中に、次で説明する胃・十二指腸潰瘍の症状があらわれた場合は薬の副作用が疑われます。早めに医師や薬剤師へ相談しましょう。

代表的な胃・十二指腸潰瘍の症状はみぞおちの痛みです。胃潰瘍の場合は食事中~食後にかけて、十二指腸潰瘍の場合は夜間などの空腹時に痛みが出やすいです。

 

胃潰瘍

十二指腸潰瘍

代表的な症状

食事中~食後のみぞおちの痛み

夜間など空腹時のみぞおちの痛み

  • 胸やけ、胃もたれ

  • 吐き気、嘔吐、ゲップ

  • 食欲不振

  • 背中の痛み

  • コールタールのような黒色の粘性の高い便

  • 吐血

胃・十二指腸潰瘍になっていても、これらの症状がみられない人もいます。必ず出現するというわけではないため、普段と異なる症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。

黒色の便や吐血は潰瘍が進行しているサインです。痛みがなくても放置せず早急に医療機関を受診してください。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎とは以下のような細菌やウイルスの感染によって嘔吐や下痢など消化器症状を示す病気です。[1]

  • ロタウイルス

  • ノロウイルス

  • カンピロバクター

  • 腸炎ビブリオ

  • サルモネラ

  • 大腸菌

主に毎年秋~冬にかけてウイルス感染による胃腸炎が流行します。とくにロタウイルスは子どもに多く発症するため、保育園、幼稚園、小学校など集団生活を送る施設では感染の拡大につながります。

予防するためにトイレ後や食事前は石けんでの手洗いの徹底を心がけましょう。

感染性胃腸炎の代表的な症状は嘔吐や下痢などの消化器症状で、37~38℃の発熱がみられることもあります。

 

感染性胃腸炎

代表的な症状

  • 吐き気、嘔吐

  • 下痢

  • 37℃~38℃の発熱

  • おへそ~下腹部の痛み

嘔吐や下痢の症状は脱水を引き起こしやすいため、こまめな水分補給を行いましょう。ただし吐き気や嘔吐がある場合には、水分補給で吐き気が増幅するため、症状が落ち着くまで少し待ってから飲みます。

1歳以下の乳児は症状の進行が早いです。しっかりと観察し発熱や下痢、嘔吐、けいれんなど普段と異なる症状がみられたら早めに医療機関を受診しましょう。[1]

関連記事:胃腸炎で発熱することはある?症状についてや何日くらいで治るのかを解説

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは消化器疾患が特にないにも関わらず腹痛や下痢、便秘を繰り返す病気です。[2]

ストレスなど心理的な要因や慢性的な腸粘膜の炎症が原因で腸の動きが過敏になり症状があらわれます。

過敏性腸症候群は便の形や症状によって以下の4つのパターンに分類されます。

  • 下痢になりやすい下痢型

  • 便秘になりやすい便秘型

  • 下痢と便秘の両方が混ざる混合型

  • 上記3つに分類されない分類不能型

それぞれの症状は以下のとおりです。

 

代表的な症状

下痢型

  • 1日3回以上の激しい水っぽい下痢便

  • 急にくる強い腹痛と便意

  • 排便すると腹痛がやわらぐ

便秘型

  • うさぎのフンのようなコロコロした便

  • 3日以上の便秘

  • 排便時の痛み

  • 排便後も便が残っている感覚

  • お腹の張り

  • 排便すると腹痛がやわらぐ

混合型

  • 激しい腹痛を伴う下痢と便秘を繰り返す

  • 3~4日程度排便がなく、硬いコロコロした便が出たあとに下痢が1日に複数回起こる

分類不能型

  • 下痢型、便秘型、混合型どれにも当てはまらない

  • お腹の張り

  • おならが出やすい

男性は下痢型、女性は便秘型になりやすいです。

規則正しい生活や質の高い十分な睡眠、適度な運動で生活習慣の改善を行いストレスを溜め込まないようにしましょう。

普段エレベーターを使う場面を階段に変えるだけでも効果的です。負担にならない運動をすることで継続できます。

食生活の改善も重要です。アルコールやカフェイン、香辛料など刺激の強いものは症状を悪化させるため、摂取量を減らすことが推奨されています。

炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは、免疫機能が異常から自分の腸を攻撃してしまい慢性的な腸の炎症を引き起こす病気の総称です。[3]

免疫機能が異常になる原因はまだ解明されていませんが、食べ物などの環境要因や遺伝的要因、腸内細菌の異常が複雑に関連しながら発症していると考えられています。

炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの疾患に分類されます。

ともに若い人に多く見られる病気で、とくにクローン病は30代までの発症がほとんどです。

症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すという特徴を持ち、一度発症すると根治することが難しいため難病指定されている病気です。

命に関わる病気ではありませんが、QOL(Quality of life:生活の質)が下がるため、症状をコントロールして落ち着く期間を増やしていくことが治療の目的となります。

炎症性腸疾患の代表的な症状は、下痢、おへそ~下腹部の痛み、血便ですが、その他にも発熱や皮膚症状、目の炎症、関節の痛みなど全身症状が合併する場合もあります。

 

炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎

クローン病

炎症の場所

とくに大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍ができる

口から肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍ができる

代表的な症状

  • 1日5~10回前後の水っぽい下痢

  • おへそ~下腹部の痛み

  • 血便

  • 頻繁な便意

  • 発熱

  • 体重減少

  • 貧血

  • 体のだるさ

  • 脈が早い

  • 口内炎

  • 関節炎

  • 皮膚や眼の症状

  • 下痢

  • おへそ~下腹部の痛み

  • 血便

  • 体重減少

  • 発熱

  • 口内炎

  • 関節炎

  • 皮膚や眼の症状

どちらも若い人に多い疾患ではありますが、高齢者でも発症します。どの年齢層でも発症する可能性があるため、上記の症状がみられる、または続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。

腸閉塞(イレウス)

腸閉塞(イレウス)とは腸管が何らかの原因で狭くなるまたは閉鎖することで、便や水分、ガスが溜まってしまう病気です。

腸閉塞は便や水分、ガスが溜まる原因によって2種類に分類されます。

  • 機械的腸閉塞:腸管が物理的、構造的に狭くなる、または閉鎖する

  • 機能的腸閉塞:腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下する

機械的腸閉塞は腹部の手術歴がある人に多くみられます。

手術で傷ついた組織や臓器が修復する過程で本来くっついてはいけない部分同士でくっつき(癒着)、腸管を塞いでしまうことが原因です。

そのほかにも腸内の腫瘍や胆石などの異物、腸管のねじれによって腸閉塞となります。

機能的腸閉塞は腹部の手術後や腹膜炎により腸の蠕動運動が低下したり、薬やストレスで腸管がけいれんしたりすることで起こります。

腹部の手術後は腸管が物理的に狭くなる可能性、蠕動運動の低下によって閉塞する可能性の両方があるため注意が必要です。

ただし手術経験がなくても腸閉塞になる場合もあるため、手術していないから一概に発症しないと考えるのは控えましょう。[4]

腸閉塞の代表的な症状は消化器症状です。以下の表を参考にしてください。

 

腸閉塞(イレウス)

代表的な症状

  • 吐き気、嘔吐

  • お腹の張り

  • 腹痛(腸管のねじれによる腸閉塞はとくに強い痛み)

  • 便秘

  • おならが出ない

腸閉塞では便やガスが肛門から排出できないため、逆流して吐き気や嘔吐があらわれます。腹痛は弱い場合から強い場合までさまざまです。

腸管のねじれによる血行障害が起きている場合はとくに強い痛みが生じます。

急性虫垂炎(盲腸)

急性虫垂炎とは、大腸の入口の盲腸という部分から出ている虫垂(ちゅうすい)が炎症する病気で、一般的に盲腸と呼ばれています。

原因ははっきりと解明されていません。ただし虫垂のねじれや便などの異物が虫垂に溜まり、そこに細菌が侵入することで発症するとされています。

ストレスや不安定な食生活など生活習慣の乱れによっても起こるとされているため、予防のために規則正しい生活が重要です。

男女ともに幅広い年齢層で発症しますが、10~20歳代の発症がやや多い傾向です。

代表的な症状は腹痛で、痛む場所が時間とともに移動します。

最初はみぞおち付近が突然痛みだし、1日ほどで次第に右下のお腹が痛むのが特徴です。

右下のお腹を押すと痛みがあり、押していた手を急に離すと痛みが強まる反跳痛(はんちょうつう)や歩いた時に痛みが響くなどの症状もみられます。

 

急性虫垂炎

代表的な症状

  • 腹痛(みぞおち~右下のお腹へ痛みが移動する)

  • 吐き気、嘔吐

  • 37℃程度の発熱

  • 食欲不振

  • 下痢、便秘

  • 歩くと痛みが響く

  • 右下腹部を押さえた手を急に離すと痛みが強くなる(反跳痛)

急性虫垂炎の炎症は早く進みます。症状に気づいたときにはすでに重症化している場合も多いです。

重症化すると虫垂が破裂して腹膜炎となる場合もあるため放置せず早急に医療機関を受診しましょう。

炎症の度合いによって緊急で手術となる場合や抗菌薬で治療する場合があります。

手術には癒着などの合併症の可能性があるため、最近は抗菌薬で治療できる範囲であれば手術しないケースも増えてきています。[5]

いずれにせよ医療機関での適切な診断が必要のため早めの受診が重要です。

関連記事:急性虫垂炎の特徴・症状と治療法について【医師監修】

急性膵炎

胃の裏側に存在する膵臓が自己消化を始めて炎症を起こすと急性膵炎を引き起こします。

膵臓は食べ物を消化するために膵液を分泌しますが、この膵液は膵臓の中に存在しているときには消化の力を発揮しません。

しかし何らかの原因で膵液が膵臓の中で消化を始めてしまった結果、膵臓が溶けて炎症が起こります。

急性膵炎の主な原因は以下の4種類です。

  • アルコール

  • 胆石

  • 薬の副作用

  • 外傷や手術

急性膵炎の多くの原因はアルコールによるもので、男性に多いです。たくさんお酒を飲んだ数時間後〜翌日に発症します。

次いで多いのが胆石が原因で起こる急性膵炎で、女性に多い傾向です。女性はホルモンの関係で胆石ができやすいため、胆石による急性膵炎も多くみられます。

これら以外には以下のような薬の副作用で起こる場合もあります。[6]

  • 抗てんかん薬

  • 免疫抑制薬

  • 抗原虫薬(トリコモナス症治療薬)

急性膵炎の代表的な症状は急激な腹痛です。急に胃のあたりが激しく痛みだし、さらにのけぞると強くなり、かがむとやわらぐ痛みの場合は急性膵炎を疑います。

そのほか消化器症状と発熱などの全身症状がみられることが多いです。

 

急性膵炎

代表的な症状

  • 胃のあたりが激しく痛む

  • のけぞると痛みが強くなりかがむと弱くなる痛み

  • 背中の強い痛み

  • 吐き気、嘔吐

  • 38℃以上の発熱

  • 食欲不振

  • お腹の張り

  • 体のだるさ

  • 下痢

胆のう炎

胆のう炎とは胆のうに炎症が生じる病気です。急性胆のう炎と慢性胆のう炎の2種類に分類されます。

急性胆のう炎の約9割は胆石が胆のう管に詰まることが原因です。胆のう管が詰まって胆のう内に胆汁が溜まって発症します。そこへ細菌感染が起きると重症化します。[7]

慢性胆のう炎の原因は胆のうの炎症が繰り返し起こり、胆のうが小さくなり機能が低下することです。

以前に急性胆のう炎にかかっていたり、胆石があったりすると発症しやすくなります。

急性胆のう炎と慢性胆のう炎の違いは症状の強さです。

代表的な症状はみぞおち付近の痛みですが、一般的に急性胆のう炎のほうが痛みが激しく、みぞおち付近を押さえると鋭い痛みを感じます。

 

急性胆のう炎

慢性胆のう炎

代表的な症状

  • 15~60分でピークに達するみぞおち付近の激しい痛み

  • 深呼吸で痛みが強くなる

  • 吐き気、嘔吐

  • 38℃以上の発熱

  • 寒気、体のだるさ

  • 食欲不振

  • みぞおちの痛み

  • お腹の張り

  • お腹の鈍い痛み

治療は急性、慢性ともに胆のうの摘出です。高齢者や糖尿病の人や合併症を引き起こしている人は早急な処置が必要のため早めに医療機関を受診しましょう。

尿路結石

尿路結石とは腎臓でできた結石が尿の通り道である尿路に引っかかり痛みを引き起こす病気です。尿中の成分が固まり、結晶化することで結石ができあがります。

結石のできやすさは生活習慣の影響や病気の影響によります。具体的には以下のようなことが原因です。

  • 運動不足

  • 糖分、塩分、プリン体の多い食生活

  • カルシウム不足

  • 水分不足

  • ステロイド薬などの服用

  • 後尿酸血症など結石ができやすい病気[8]

尿路結石は体内の尿が濃くなるとできやすいため、普段から1日2Lを目安に水分を補給すると予防に効果的です。

一般的に40歳以降の男性に多く発症しますが、近年女性や若い男性にも多くみられるため誰もがかかる病気と認識しておきましょう。

尿路結石の代表的な症状は腰から脇腹にかけての突然の激しい痛みです。

夜間や早朝に起きることが多く、痛みに波があり徐々に強くなってピークに達した後に軽快するというサイクルが3~4時間持続します。

 

尿路結石

代表的な症状

  • 腰から脇腹にかけて突然の激しい痛み

  • 波のある痛み

  • 血尿

  • 38~40℃の発熱

  • 排尿後の尿が残った感覚

  • 吐き気

膀胱炎

膀胱炎とは膀胱内に大腸菌などの細菌が侵入し、炎症を起こす病気です。

膀胱が炎症すると尿量を感知し排出する機能が低下するため頻尿などの排尿障害を引き起こします。

男性より女性のほうが膀胱炎になりやすいです。男性の尿道は長く、狭まっている部分があり膀胱まで細菌が侵入しにくいのに対して、女性の尿道は太く短く、細菌が侵入しやすいためです。[9]

また初めて膀胱炎にかかった女性のうち25%は6カ月以内に再発しています。

治療は原因菌を殺す抗菌薬を一定期間服用することで完治します。比較的簡単に治せるため、早期に不快感をなくすためにも医療機関を受診しましょう。

膀胱炎の代表的な症状は排尿時の差し込むような痛み、30分~1時間ごとの尿意、尿の濁りなどです。詳しい症状は以下の表を参考にしましょう。

 

膀胱炎

代表的な症状

  • 排尿時の差し込むような痛み

  • 30分~1時間ごとの尿意

  • 尿の濁り

  • 排尿後の尿が残った感覚

  • 血が混ざった尿

  • 下腹部の痛み

関連記事:膀胱炎の症状をチェックしよう:原因や治療法についても解説

子宮内膜症

子宮内膜症とは子宮内膜が子宮以外の場所にできてしまう病気です。

子宮以外の場所にできた内膜は女性ホルモンの影響を受けて生理時に出血し、繰り返すたびに次第に大きくなります。

大きくなった内膜が神経を圧迫すると、生理中以外にも下腹部の痛みや腰痛があらわれるようになります。

子宮内膜症は10歳後半から発症し始め、年を重ねるごとに増えていきます。生理がきている女性の5~10%は子宮内膜症であると言われるほどメジャーな病気です。

子宮内膜症は腹痛や腰痛でつらいだけでなく不妊の原因にもなります。

腹痛があるのに消化管に異常を認めない場合は、子宮内膜症の可能性があるため婦人科を受診してみてください。

 

子宮内膜症

代表的な症状

  • 生理痛

  • 生理時以外の下腹部痛、腰痛

  • 性交痛

  • 排便痛

  • 不妊

  • 生理が長引く

  • 生理の出血量が多い

子宮外妊娠

子宮外妊娠とは受精卵が子宮以外の場所で着床してしまう妊娠のことを指し、確率は100人に1人くらいです。

通常ならば受精卵は子宮内膜に着床し胎児が育ちますが、子宮外妊娠の9割は卵管内で着床します。

処置をしなければ卵管が破裂し、激しい下腹部痛や大量出血でショック死してしまう危険性があります。

子宮外妊娠による卵管からの出血を生理だと勘違いする方が多いです。

卵管破裂は多量出血・ショックになる可能性がある危険な状態のため、妊娠する可能性があり生理痛や出血量がいつもと違う場合は早急に産婦人科を受診してください。

妊娠検査薬が陽性になった場合も必ず産婦人科を受診しましょう。

妊娠検査薬の陽性結果だけでは正常な妊娠かは判断できません。医療機関での検査で子宮外妊娠ではないか早めに確認しましょう。

また結果が陰性でも子宮外妊娠の場合もあるため、生理予定日前後の腹痛は早めの受診を検討してください。[10]

子宮外妊娠の代表的な症状は急激な腹痛や不正出血などがありますが、子宮外妊娠特有の症状とはいえません。そのため普段と違和感を感じたらすぐに受診がおすすめです。

 

子宮外妊娠

代表的な症状

  • 急激な腹痛

  • 不正出血

  • つわりのような吐き気

  • お腹の張り

  • 立ちくらみなど妊娠の初期症状

腹痛の受診目安

一般的に多くの腹痛は、一時的なもので医療機関を受診する必要がないものが多いです。

ただしなかには消化器系の病気などが隠れていて早急な受診が必要なケースもあります。

腹痛やその他の症状、腹痛の持続時間によって「緊急性が低いができるだけ早く受診したほうが良い場合」「すみやかに受診が望ましい場合」「救急車を呼ぶべき場合」と異なります。それぞれを確認していきましょう。

医療機関の受診がおすすめな腹痛

以下のような腹痛の場合は、緊急性は高くありませんが何らかの病気が隠れている可能性があります。時間を見つけて消化器内科や内科を受診しましょう。

  • お腹が張っている

  • 腹部に鈍い痛みや不快感がある

  • 食後2〜3時間たつと腹痛が起きる

  • 体重減少を伴う腹痛

  • 痛みがすぐに改善する

  • お腹を押すと痛みが増す

  • 下痢や便秘を伴う

上記以外でも腹痛を繰り返す場合や症状に不安がある場合は、医療機関を受診して原因を調べてもらうと良いでしょう。

すみやかに受診が必要な症状

以下の症状がみられる場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。

  • 突然の腹痛

  • 徐々に強くなってきた腹痛

  • 6時間以上続く腹痛

  • 白目が黄色くなる、尿が紅茶色になる症状を伴う腹痛

  • 高熱・胸痛・嘔吐・吐血・下血・発熱・冷や汗・意識低下などを伴う場合

これらの症状は放置せずに遅くとも当日中の受診が望ましいです。

さらに以下の症状は緊急性が高いため直ちに救急車を呼んでください。

  • 体を丸めていなければ耐えられないほど強い腹痛

  • 痛くて歩けない場合

  • 歩くと痛みが響く場合

  • コップ1杯以上の吐血を伴う腹痛

  • コップ1杯以上の下血やひどい血便を伴う腹痛

  • 意識消失を伴う腹痛

子ども・高齢者・妊婦は早めに受診がおすすめ

子ども・高齢者・妊婦の人は、病気のサインを見逃しやすかったり症状が重症化するリスクが高かったりするため、軽めの症状でも早めに医療機関を受診することがおすすめです。

子どもは言葉で的確に症状を表現することが難しく、赤ちゃんや子どもが「泣いてばかりで機嫌が悪い」原因は腹痛である可能性があります。[11]

さらに子どもは症状が悪化しやすいため、機嫌や泣き方に普段と違いがみられる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

高齢者は加齢に伴い、内臓の感覚が鈍くなり痛みを感じにくいです。そのため病気の初期症状に気づきにくく、症状が進行してから病気に気づくケースもあります。[12]

持病を抱えている場合は、重症化するリスクが高いため、お腹に違和感があるなら早めに受診しましょう。

妊娠中は軽い腹痛でも胎児や母体に影響を及ぼす可能性があるため早めの受診がおすすめです。

腹痛があるときの過ごし方

腹痛があるときには以下のようなホームケアをしながら安静に過ごしましょう。

  • お腹を冷やさない

  • 締めつけの少ない服を着る

  • 楽な姿勢で安静にする

  • こまめに水分補給をする

  • 消化の良いものを食べる

  • 温かいお風呂にゆったりと浸かる

  • 胃腸薬を飲む

腹痛のときに無理をすると体力の消耗により回復が遅くなる可能性があります。

お腹が冷えると腹痛が悪化するため、腹巻きやカイロ、温かい飲み物で温めます。お風呂にゆっくりと浸かりリラックスすることも効果的です。

ウエストが締まった服装はお腹を圧迫し、痛みが増幅する可能性があるためゆったりとした服装に着替えましょう。

腹痛に伴い下痢や嘔吐の症状がある場合は脱水となる危険性があるため、こまめに経口補水液で水分補給をします。

ただし吐き気があるときに水分補給をすると吐き気が増すため落ち着いてから飲むようにします。

これらの対処法を試してもまだ腹痛が残る場合は一時的に市販の胃腸薬を飲むことも良いでしょう。

服用するときには用法、用量は守るようにしてください。効果がない場合や何度も飲まないといけない場合には医療機関を受診しましょう。

腹痛に関するよくある質問

腹痛に関するよくある質問をまとめました。

  • 原因不明の腹痛が続くのはなんで?

  • 腹痛のときは、どんな検査をするの?

腹痛が続いて不安を感じている場合は参考にしてくださいね。

原因不明の腹痛が続くのはなんで?

原因不明の腹痛で考えられるのは、ストレスや精神的な負担による心因性の腹痛や過敏性腸症候群です。

腹痛の原因には消化器系や婦人科系の病気、心因性のものまでさまざまあります。

原因を突き止めて治療を開始するために、まだ医療機関へ受診していないのであれば、まずは内科や消化器内科を受診しましょう。

必要な検査をおこなってもこれと言った原因が見つからない場合は、過敏性腸症候群などストレスが影響している可能性もあります。

ストレスや疲労、精神的な負担や悩みがある場合には心療内科の受診も検討しましょう。

また女性は婦人科系の病気が関連している可能性もあるため、婦人科へ相談するのもおすすめです。

腹痛のときは、どんな検査をするの?

腹痛の原因を探るための検査には以下のようなものがあります。

  • 胃カメラや大腸カメラなど内視鏡検査

  • 血液検査

  • 腹部エコー

胃カメラでは食道や胃、十二指腸などの異常を見つけることができます。

口や鼻から細いチューブを入れて内部の様子を直接観察します。大腸カメラは肛門からチューブを入れて大腸や小腸の様子を観察する検査です。

痛みが心配な人は麻酔や鎮痛剤を使い苦痛を少なくして検査可能です。医師と相談し体への負担を減らしながら適切な診断ができる方法を選択しましょう。

血液検査では消化器系や婦人科系、泌尿器科系の臓器に炎症が起きていないかを調べます。

腹痛は場合によっては下血や血便を伴うことがあり、血液検査で貧血の程度を調べることで病気の進行具合を推測することも可能です。

腹部エコーではお腹にゼリーを乗せて超音波を当てることで、跳ね返ってきた音波を分析し臓器の様子を観察します。

レントゲンやCTと異なり被爆の心配がなく、さらに内視鏡検査のような痛みも生じないため気軽に検査できます。

消化器系から婦人科系、泌尿器科系の臓器すべてを観察できるため汎用性の高い検査です。

まとめ|腹痛の原因として病気が隠れている可能性も。続く場合は受診しよう

腹痛の原因は大きく分けると以下の3つです。

  • 消化器系の病気が関わっている場合

  • 婦人科系の病気が関わっている場合

  • ストレスによって起こる場合

多くの腹痛は一時的なもので医療機関を受診する必要がないものが多いです。

しかし、なかには腹痛の原因として病気が隠れている可能性もあるため、激しい痛みを伴う腹痛など以下のような場合は早急に医療機関を受診しましょう。

  • 突然の腹痛

  • 徐々に強くなってきた腹痛

  • 体を丸めていなければ耐えられないほど強い腹痛

  • 6時間以上続く腹痛

  • 白目が黄色くなり、尿が紅茶色になる症状を伴う腹痛

  • 高熱・胸痛・嘔吐・吐血・下血・発熱・冷や汗・意識低下などを伴う場合

  • 痛くて歩けない場合

  • 歩くと痛みが響く場合

上記以外の腹痛でも子どもや高齢者、妊娠中は軽めの症状でも早めに医療機関を受診するのがおすすめです。症状の重症化を事前に防ぐことができます。

腹痛があるときには体を温めて安静に過ごしましょう。腸の調子が戻るまで消化の良い食事を心がけて、脱水を防ぐためにこまめな水分補給も重要です。

症状がこれ以上悪化しないか不安ではないですか?

症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。

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参考文献

[1]感染性胃腸炎|厚生労働省

[2]過敏性腸症候群の原因としての腸管の微細炎症

[3]炎症性腸疾患-診断と治療の最前線-

[4]腹部手術歴のない腸閉塞に対する治療方針の検討

[5]急性虫垂炎に対する保存的治療奏効の予測

[6]重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性膵炎(薬剤性膵炎)

[7]急性胆嚢炎の診断

[8]尿酸と尿路結石

[9]尿路感染症

[10]尿中妊娠反応が陰性であった異所性妊娠破裂の一例

[11]腹痛・嘔吐・下痢

[12]高齢者の腹痛

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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TOP医療コラム腹痛の原因は何?考えられる病気と受診目安について解説