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胃腸炎とは
胃腸炎はなんらかの原因により胃腸の粘膜に炎症が起きる疾患です。原因はウイルスや細菌、寄生虫、ストレス、自己免疫疾患などさまざまです。
おもな症状は嘔吐・下痢・発熱で、日本のような先進国ではほとんどが自然治癒します。
しかし5才以下の乳幼児で感染症による下痢性疾患は死亡原因の世界第2位とされていて、乳幼児や高齢者では重症化に注意が必要です。
湿気の多い日本は細菌やウイルスが繁殖しやすい環境ですが、一般的にウイルス性胃腸炎は秋から冬にかけて、細菌性胃腸炎は夏に流行します。[1][2]
細菌性
細菌性胃腸炎で代表的なものは食中毒です。多くの場合は細菌に汚染された食品を食べることで感染し、気温が高くなる6月から9月に多くみられます。
症状は吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・血便などで、39℃以上の発熱をともなう場合は細菌性胃腸炎の可能性が高くなります。また細菌性胃腸炎は、触診で腹部を押すと痛みを感じることが特徴のひとつです。
原因菌 |
感染源・特徴など |
サルモネラ菌[4] |
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黄色ブドウ球菌(エンテロトキシン)[5] |
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腸炎ビブリオ菌[6] |
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カンピロバクター[7] |
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腸管出血性大腸菌[8] |
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ウイルス性
ウイルス性胃腸炎は秋から冬にかけて流行する感染症です。おもな症状は吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などですが、高熱ではなく微熱をともなうことが細菌性胃腸炎との違いです。
特効薬はないため、水分補給をしながら症状に応じて対症療法をおこないます。乳幼児や高齢者は脱水症状になりやすいため、早めに医療機関を受診することが大切です。原因ウイルスには以下のようなものがあります。[1]
原因ウイルス |
感染源・特徴など |
ノロウイルス[9] |
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ロタウイルス[10] |
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サポウイルス[11] |
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ストレスでもなるの?
ストレスを受けると免疫力が落ちたり、免疫機能が正常に働かなくなったりして、胃腸炎のような症状を引き起こすことがあります。
細菌性でもウイルス性でもない過敏性腸症候群や潰瘍性大腸炎の原因は不明ですが、ストレスで悪化する可能性は少なくありません。
感染性胃腸炎とは異なり、薬で症状をコントロールできる場合もあります。
症状が長引いて生活に影響がでているときは医療機関を受診して医師に相談しましょう。
疾患名 |
特徴など |
過敏性腸症候群 |
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潰瘍性大腸炎 |
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胃腸炎の症状
胃腸炎のおもな症状は以下9点です。
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吐き気
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嘔吐
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下痢
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腹痛
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悪寒
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発熱
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関節痛
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倦怠感
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けいれん
感染性胃腸炎では突然の嘔吐から始まることが多く、そのあと下痢を何度も繰り返します。
潜伏期間は菌やウイルスの種類によって異なり、短いもので数時間、長いものでは10日にも及びます。症状のある期間は平均で5~6日程度です。
感染性胃腸炎は症状が治まったあとも便などから菌やウイルスを排出します。長いと1ヶ月以上も排出し続けるため、こまめな手洗いや消毒が大切です。[14]
初期症状はあるのか
初期症状は急性胃腸炎と慢性胃腸炎で異なります。
急性胃腸炎では突然の嘔吐や激しい下痢が特徴で、慢性胃腸炎では下痢だけでなく便秘がみられることもあります。
急性胃腸炎 |
慢性胃腸炎 |
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症状はどれくらい続く?
急性胃腸炎では嘔吐は1日程度、下痢は3日程度で治まることがほとんどです。
ただし原因によっては下痢が2週間以上続くこともあります。下痢や腹痛が2週間以上続いたり、血便がみられたりしたときは別の病気が隠れている可能性があります。
早めに医療機関を受診して必要な検査や治療を受けるようにしてください。
治ったサインはあるの?
胃腸炎は治ってくるとおならの臭いが薄くなるほか、おならがよく出るようになります。
おならが悪臭になる原因は腸内細菌のバランスがくずれて悪玉菌が増えることですが、胃腸炎が改善してくると悪玉菌は減り、おならの臭いも和らいできます。
またおならがよく出るようになると腸の動きが正常にもどったと考えられ、胃腸炎が治ったサインと言えるのです。
胃腸炎の症状を抑える治療方法
胃腸炎の基本的な治療方法は脱水症状にならないよう水分補給をおこない、症状が和らぐのを待つことです。
ウイルス性胃腸炎や細菌性胃腸炎では基本的に下痢止めは使いません。下痢を止めると便から細菌やウイルスが排泄されず、症状の悪化や回復を遅らせる原因となってしまうからです。
必要に応じて吐き気止めを使うことは問題ありません。
一方、冷えや食べすぎなどが原因の胃腸炎では下痢止めを使うことができます。
また、整腸剤はいずれの胃腸炎でも使用できます。。
嘔吐が落ち着いたら経口補水液やスポーツドリンクでこまめに水分補給をおこない、安静に過ごすようにしましょう。
胃腸炎の原因 |
下痢止め |
整腸剤 |
吐き気止め |
ウイルス性 |
使用しない |
使用できる |
必要な場合に使用できる |
細菌性 |
原則使用しない |
使用できる |
必要な場合に使用できる |
冷え・食べすぎなど |
使用できる |
使用できる |
- |
過敏性腸症候群 |
使用できる |
使用できる |
- |
潰瘍性大腸炎 |
使用しない |
使用できる |
- |
上記以外にも、胃腸炎の原因が細菌性だった場合は抗菌剤を一緒に処方するケースがあります。
抗菌剤を服用するか否かは医師の診断によって異なるため、処方された際はきちんと服用しましょう。
胃腸炎の症状があるときに登校や出勤は可能?
下痢や嘔吐、発熱など胃腸炎の症状があるときは登校や出勤はできません。原因である細菌やウイルスは嘔吐したものや便の中に排出され、感染が簡単に広がってしまうためです。
胃腸炎は腸管出血性大腸菌感染症(O157など)を除いて法律で定められた出席停止期間はありませんが、嘔吐や下痢など胃腸炎の症状がおさまって体調が安定すれば登校や出勤が可能です。
また保育所における感染症ガイドラインでは、「嘔吐・下痢がおさまり普段の食事ができるようになるまで登園を避けることが望ましい」としています。
職場や学校によっては休む期間を定めている場合があります。一度確認してみるとよいでしょう。[15]
よくある質問
胃腸炎に関してよくある質問にお答えします。
胃腸炎かどうかを確認する方法はありますか?
以下の症状があらわれたら胃腸炎の可能性があります。
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吐き気
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嘔吐
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腹痛
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下痢
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発熱 など
胃腸炎にかかったとしてもこれらすべての症状があらわれるわけではありません。
急性胃腸炎の多くは突然の嘔吐から始まり、嘔吐を繰り返すうちに下痢をともなうようになります。症状は数日から1週間程度続き、軽症の場合は適切な水分補給と安静で回復します。
ただし乳幼児や高齢者、持病がある人は脱水症状を引き起こしやすいため、早めに医療機関を受診してください。
胃腸炎を早く治す方法はありますか?
適切な水分補給をおこない安静にし、免疫力をあげることが早く治す方法です。回復を助けるために整腸剤を服用することも効果的です。
基本的に感染性胃腸炎に特効薬はありません。下痢や嘔吐、発熱で脱水症状を引き起こしやすいため、嘔吐が落ち着いたら適切な水分補給をおこないます。
水分補給にはスポーツドリンクや経口補水液を活用するとよいでしょう。とくに経口補水液は、脱水で失われた水分や電解質を効率よく吸収できるためおすすめです。あとは安静にして休養を十分にとりましょう。
胃腸炎がうつらない人に特徴はありますか?
免疫力が高い人や普段から手洗いなどを徹底してる人はうつらない、もしくはうつっても軽症ですむ傾向にあります。
免疫力を高めるには以下の6つが重要です。
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適度な運動をする
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乾燥を避ける
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体をあたためる
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栄養バランスの整った食事をする
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睡眠や休息を十分にとり、ストレスを溜めない
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腸内環境を整える
とくに冬は乾燥や寒さでウイルスが活発になる一方、人間は代謝機能が落ちて免疫力が下がります。体をあたためて、こまめな水分補給をこころがけましょう。
衣類や紙などについた菌やウイルスはいつまで生きていますか?
ウイルスの生存時間は紙では数時間から数日、衣類では2日程度とされていますが、これは気温や湿度、菌やウイルスの量・種類によって異なります。
胃腸炎に感染しないためには、こまめな手洗いや消毒が欠かせないと言えるでしょう。[16]
胃腸炎は症状がまだ出ていない人(潜伏期間)からもうつりますか?
胃腸炎は潜伏期間中の人からうつる可能性は十分にあります。
たとえばウイルス性胃腸炎の原因であるノロウイルスはわずかな量でも感染する、強い感染力を持ちます。そのためウイルスが増殖する前でも、ほかの人へうつしてしまう可能性があるのです。
ウイルスは感染者の便や嘔吐物に排出されますが、感染者が排便後に手をよく洗わずドアノブなどを触ると、そこから感染が広がってしまいます。
知らないうちに感染してしまわないよう普段から体調の変化に注意し、こまめな手洗いを欠かさないようにしましょう。
まとめ|胃腸炎の症状があらわれたら早めに医療機関への受診を
胃腸炎は胃腸の粘膜に炎症が起きる疾患です。原因は細菌やウイルス、ストレスなどさまざまですが、多くは細菌やウイルスによる感染性腸炎です。
潜伏期間は数時間から10日前後のものまであり、原因となる細菌やウイルスの種類によって異なります。
初期症状は突然の嘔吐や下痢、腹痛、発熱などで、感染性胃腸炎では症状がある期間は平均で5~6日程度です。
感染性胃腸炎に特効薬はないため、治療の基本はこまめな水分補給と安静です。
感染性胃腸炎では通常、下痢止めは使いません。下痢を止めると細菌やウイルスが便から排出されなくなり、症状を長引かせてしまうからです。
胃腸炎を早く治すにはこまめに水分補給をおこない安静に過ごしましょう。必要に応じて整腸剤や吐き気止めを使うと症状を和らげることが期待できます。
乳幼児や高齢者はとくに脱水になりやすいため、突然の嘔吐や下痢、発熱など胃腸炎の症状があらわれたら早めに医療機関を受診してください。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
[1]ウイルス性胃腸炎 - StatPearls - NCBI 本棚
[2]細菌性胃腸炎 - StatPearls - NCBI ブックシェルフ
[13]病原体検出・検査マニュアル 腸管アデノウイルス (感染性胃腸炎) 令和 4(2022)年 5 月 Ver. 2
[14]感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎を中心に) infectious gastroenteritis | 東京都感染症情報センター
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。