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ノロウイルスの症状
ノロウイルスの症状の特徴は、激しい嘔吐・下痢が急に起こる点です。
次の症状をともなうケースもあります。[1]
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腹痛
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頭痛
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発熱(37~38℃程度)
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悪寒(おかん)
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筋肉痛
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倦怠感(けんたいかん)
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脱力感
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咽頭痛(いんとうつう)
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ゲップ
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しびれ
嘔吐や下痢などの激しい症状があるのは1日ほどで、発症して2〜3日目には完治することがほとんどです。
なかには軽い風邪のような症状で終わる方や無症状の方もいます。[2]
ただし下痢や嘔吐が数回~十数回続くため、体から水分やナトリウムなどの電解質が過剰に出てしまい脱水症状を起こす可能性もあります。
とくに乳幼児や高齢者などは脱水症状を起こしやすく重症化もしやすいため、経口補水液や麦茶などでこまめに水分補給しましょう。
ノロウイルスの初期症状
ノロウイルスの症状は突然の吐き気・嘔吐で始まることが多く、次に腹痛・下痢を初期症状としてうったえる人が多くいます。
人によっては嘔吐の前に胃の不快感や膨満感(ぼうまんかん)、37〜38℃程度の発熱がある場合もあります。
感染してもまったく症状がない方もいますが、発症していない人にノロウイルスをうつす可能性はあるため、日ごろから手指衛生をしっかりとおこないましょう。
ノロウイルスの症状は大人と子どもで違いはある?
基本的なノロウイルスの症状は大人も子どもも同じです。
ただし子どもでは嘔吐が多く、大人では下痢が多いとの報告もあります。
嘔吐物は下痢よりもノロウイルスの拡散力が強いため、子どもが感染したときは家庭内感染を防ぐためにも嘔吐物の処理方法を確認しておきましょう。
また以下の理由から子どもは大人に比べて、下痢や嘔吐による脱水症状を起こしやすいです。
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腎機能や体温調節機能が未熟である
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体が小さく体内の水分量が少ないため、一回の下痢・嘔吐で失う水分の影響が大きい
ぐったりしていたり尿量が減ったりしている場合は、点滴で水分や電解質などを補給することもあるため早めに医療機関を受診してください。
嘔吐物が気管に入ることによる窒息や肺炎にも注意が必要です。
症状が落ち着くまでは仰向けではなく横向きで寝かせるようにしましょう。[3]
子どもがノロウイルスにかかったときの注意点
乳幼児は自分で症状を訴えることが難しいため、以下の症状がないか保護者が注意深く観察しましょう。
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便がゆるい
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熱がある
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顔色が悪い
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不機嫌、ずっと泣いている
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ミルクや食事をとりたがらない
水分や食事をとれていない状態が続くと脱水や低血糖となり、けいれん・意識障害などの合併症を引き起こす可能性もあります。[4]
嘔吐後30分~1時間程度経過してから、様子をみて少しずつ水分を飲ませましょう。
水分が飲めなかったり、次のような脱水の症状が続いたりするときは早めに医療機関を受診してください。[5]
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ぐったりしている
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反応が鈍い
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泣いても涙が出ない
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尿量が減る
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くちまわりや口の中が乾燥している
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あやしても不機嫌な状態が続く
おむつや嘔吐物の取り扱いにも注意が必要です。
おむつや嘔吐物にはウイルスが大量に含まれているため、誤った処理をしてしまうとすぐにまわりの人に感染してしまいます。
普段の消毒ではアルコールを使用することが一般的ですが、ノロウイルスにはアルコール消毒はあまり効果がありません。
おむつや嘔吐物の適切な処理方法を確認し、感染拡大を最小限に抑えましょう。
<おむつの処理方法>[6]
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窓を開けて換気する
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使い捨ての手袋・マスク・(あればガウン)をつける
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おむつを静かに交換し、使用済みのおむつは速やかに閉じる
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使用済みのおむつ・おしりふき・手袋などをビニール袋に入れ、0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を浸し密封して捨てる
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石鹸を泡立てて手を洗い、流水で十分にすすぐ
<嘔吐物の処理方法>[7]
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窓を開けて換気する
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使い捨ての手袋・マスク・(あればガウン)をつける
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0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を浸したペーパータオルで嘔吐物を静かに拭き取る
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床を0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を浸したペーパータオルで拭いたあと水拭きする
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拭き取った嘔吐物・ペーパータオル・手袋などをビニール袋に入れ、0.1%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を浸し密封して捨てる
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石鹸を泡立てて手を洗い、流水で十分にすすぐ
ドアノブや便座などは、0.02%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を浸したペーパータオルなどで消毒します。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、500mlのペットボトル水と家庭用の塩素系漂白剤(※)を入れて混ぜるだけで作成可能です。(※次亜塩素酸ナトリウム濃度約5%)
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0.1%濃度にする場合:水500ml+塩素系漂白剤ペットボトルキャップ2杯(約10ml)
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0.02%濃度にする場合:水500ml+塩素系漂白剤ペットボトルキャップ半分弱(約2ml)
次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒したあとは、10分ほど放置してから水拭きします。
金属製のドアノブや調理器具などは次亜塩素酸ナトリウムで傷むため、消毒後は念入りに水拭き・水洗いしましょう。
ノロウイルスの症状のピークはいつ?
症状が出はじめてから1〜2日がピークで、そのうち激しい下痢・嘔吐などの症状がみられるのは1日ほどです。
下痢・嘔吐の回数は通常数回ほどですが、重症例では10回以上みられるケースもあります。[8]
ピーク時の症状は下痢や嘔吐のどちらかのみであったり、風邪症状のみであったりなど、人によってさまざまです。
健康な成人であれば水分・栄養をとりながら安静にすることで自然治癒しますが、乳幼児や免疫力の低下している入院患者などでは重症化する可能性もあります。
水分がとれなかったり症状が改善しなかったりする場合は、医療機関で適切な処置をしてもらいましょう。
関連記事:つらいノロウイルス感染症 ピーク時の症状とは?早期回復のための対策についても解説
ノロウイルスの症状はいつまで続く?
ノロウイルスの症状のピークは1日ほどですが、完治するまでに最大で3日間ほどかかります。[9]
ただし免疫力の低い11歳未満の子どもや入院患者では、4〜6日以上症状が続くという報告もあります。[10][11]
一度診察を受けたあとでも、症状が治まらない場合は再度受診を検討してください。
ノロウイルスはうつる?
ノ ロウイルスは人から人に簡単に感染します。[12]
少量の菌量で感染するといわれる食中毒の原因菌のなかでも、ノロウイルスは10〜100個という少ない量で感染するためです。
1gの便に約10億個のノロウイルスが含まれているため、手洗いや環境の消毒をおこなっていても感染拡大することも少なくありません。[13]
そのため普段以上にしっかりと感染対策をおこなう必要があります。
症状が出る前の潜伏期間中でも人にうつす可能性がある点にも注意が必要です。
ノロウイルスを人にうつさない・人からもらわないように、潜伏期間と感染経路を確認しましょう。
ノロウイルスの潜伏期間
ノロウイルスの潜伏期間は平均1〜2日ですが、12時間以内や3日以上の場合もあります。[14]
症状があらわれるまえから人にうつす可能性もあるため、日ごろからトイレのあとや食事の前にしっかりと手洗いをすることが感染予防のために重要です。
ノロウイルスの排泄期間は平均2〜3週間で、小児や免疫力の低下している患者などからは1か月以上排泄されるとの報告もあります。[15][16]
感染後に症状が出ない不顕性感染(ふけんせいかんせん)の場合でも、便からノロウイルスが排出される点も知っておきましょう。
家族や職場でノロウイルス感染症が発生した際は、ノロウイルスをもらわないようにするのはもちろん自分が感染源となっている可能性もふまえ、手洗いや環境の消毒をおこなってください。
ノロウイルスの感染経路
ノロウイルスのおもな感染経路は経口感染や飛沫(ひまつ)感染です。[12][14]
感染対策には3つのポイントがあります。
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病原体の排除
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感染経路の遮断
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宿主の免疫力向上
なかでも感染経路の遮断は感染拡大予防にもっとも重要な要素です。[17]
感染を広げないために感染経路の具体例を確認しましょう。
感染経路 |
感染の具体例 |
経口感染 |
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飛沫感染 |
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塵埃(じんあい)感染 |
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ノロウイルスはほかの食中毒原因菌より少ない量で感染するうえ、飛沫として空気中にただようため呼吸するだけで感染する可能性があります。
感染を広げないために、食材の加熱やこまめな手洗い、環境・リネン類の消毒、換気などをしっかりとおこないましょう。
ノロウイルスの治療法・対処法
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬は存在しません。
健康な人であれば、脱水しないよう水分・栄養をとり安静にすることで自然に回復します。
ただし乳幼児や高齢者は脱水しやすく重症化もしやすいため注意が必要です。
ノロウイルス感染症から早く回復できるよう正しい対処法を確認しましょう。
脱水を防ぐ |
嘔吐直後は水分摂取を避け、30分~1時間後くらいから少しずつ経口補水液・麦茶などを摂取する 水分を口にできないときは点滴で補うケースもあるため医療機関を受診する |
体を休める |
嘔吐・下痢は体力を消耗するため、できるだけ体を休めて体力の回復に努める お風呂は湯船に浸からずシャワーのみで済ませる |
食事は無理せず消化のよいものをとる |
嘔吐が治まるまでは固形物は避ける 嘔吐が治まったら消化のよいもの(おかゆ・煮込みうどん・野菜スープ・味噌汁など)を食べる |
下痢止めの使用を避ける |
ノロウイルスの排出を遅らせるため下痢止めは使わないようにする |
脱水症状が長引くとけいれんや意識障害などのリスクが高まるため、下痢や嘔吐が治まらない場合や水分を摂取できない場合などは医療機関で処置をしてもらいましょう。
嘔吐がひどいケースでは、脱水予防の観点から吐き気止めの薬を使用する場合もあります。[19]
水分がとれないほど嘔吐がひどいときは、医師や登録販売者に相談して吐き気止め薬の使用を検討してください。
関連記事:つらいノロウイルス感染症 早く回復するための対策について
ノロウイルスの予防方法
ノロウイルスには予防接種や予防薬がありません。
感染を防ぐためには、未加熱・不十分な加熱の食べ物を避け、手洗いを頻繁におこなうなどの対策が重要です。
ノロウイルスを予防するために次のポイントに気をつけましょう。[2]
予防方法 |
内容 |
生ものを避ける・食品を加熱処理する |
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食器・調理器具を消毒する |
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手洗いの徹底 |
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感染者との接触を避ける |
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便や嘔吐物の処理に注意 |
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リネン類や環境の消毒 |
<リネン類>
<環境>
(※金属はサビたり変色したりするため、念入りに水拭きする) |
ノロウイルスにアルコールは効かないため、消毒には85℃・1分以上の加熱と次亜塩素酸が使用されます。
500mlのペットボトルと家庭用の塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム濃度約5%)を使った次亜塩素酸ナトリウム水溶液の作り方を確認しておきましょう。
次亜塩素酸ナトリウム濃度 |
家庭用の塩素系漂白剤の量 |
水の量 | |
0.1% |
ペットボトルキャップの2杯分(約10ml) |
500ml |
便や嘔吐物が直接付いた床・衣服・シーツなど |
0.02% |
ペットボトルキャップの半分弱(約2ml) |
500ml |
ドアノブ・便座・スイッチ・床など |
作成した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は時間の経過とともに効果が落ちるため、都度作るようにしてください。
石鹸にはノロウイルスを直接死滅させる効果はありませんが、手の汚れを洗い流す際にノロウイルスも洗い流す効果があります。
ハンドソープを使った10秒間のもみ洗いを2回繰り返すと、約100万個のウイルスを数個にまで減らせたという実験結果もあります。[22]
手洗いは簡単にできるうえ効果の高い感染予防対策です。
ご自身や家族、まわりの人を守るためにこまめにおこないましょう。
関連記事:ノロウイルス感染症とは?症状や経過、感染を広げないための方法を解説
よくある質問
ノロウイルスに関するよくある質問と回答をまとめました。
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ノロウイルスは人にうつる?
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ノロウイルス感染症かどうかの判断はどうおこなう?
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ノロウイルスの大人の症状は?
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ノロウイルスの初期症状は?
ノロウイルスをまわりにうつさないか不安な方や、どのような症状があらわれるのか心配な方はぜひ参考にしてください。
ノロウイルスは人にうつる?
ノロウイルスは10〜100個という少ないウイルス量で感染するため、人から人に簡単にうつります。
潜伏期間中や症状が落ち着いたあとでも便からウイルスが排出されるため注意が必要です。
手洗いや環境の消毒を徹底し、感染が拡大しないようにしましょう。
ノロウイルス感染症かどうかの判断はどうおこなう?
嘔吐や下痢などの症状だけではノロウイルス感染症かどうかの判断はできません。
通常まわりの感染状況や前日までの食事内容などをふまえて、ノロウイルス感染症であると推定され診療されます。[2]
ノロウイルス感染症と診断されてもされなくても、必要な治療が変わらないためです。
便中のノロウイルスを検出する検査もありますが、3歳未満・65歳以上の方かつ医師が必要性を認めた場合のみ保険適応となります。
ノロウイルスの大人の症状は?
ノロウイルス感染症にかかった大人のおもな症状は、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛です。
そのほか、頭痛・発熱(37~38℃程度)・悪寒・筋肉痛・倦怠感・脱力感・咽頭痛などがあります。[1]
嘔吐や下痢が続くと体から水分や電解質が出てき、脱水症状を起こすリスクがあるため、麦茶や経口補水液などをこまめに飲みましょう。
ノロウイルスの初期症状は?
ノロウイルス感染症では、突然の嘔吐から始まりそのあと下痢の症状があらわれるケースが多いです。
嘔吐の数時間前に胃のむかつきやお腹が張って苦しさを感じたり、微熱が出たりする方もいます。
感染初期から完治するまで風邪様症状のみの方や無症状の方もいますが、便からはノロウイルスが排出されている点に注意が必要です。
感染の可能性があるときは手洗いや環境消毒を徹底しましょう。
まとめ:ノロウイルスの症状があるときは水分をとりゆっくり休みましょう
この記事では、ノロウイルス感染症の症状・潜伏期間・予防方法などについて解説しました。
ノロウイルスの症状は次のとおりです。
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吐き気
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嘔吐
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下痢
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腹痛
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微熱
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筋肉痛
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咽頭痛
潜伏期間は平均1〜2日で、激しい下痢や嘔吐などの症状が1日続いたのち、3日以内で完治することがほとんどです。
ノロウイルスにはアルコールが効かないため、石鹸での手洗い・次亜塩素酸ナトリウム水溶液での消毒・85℃で1分以上の加熱で感染を予防しましょう。
とくに乳幼児や高齢者などでは、脱水症状や嘔吐物による窒息などに注意が必要です。
ぐったりしていたり水分を摂取できなかったりする場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
夜間や休日でもすぐに医師に相談ができるように、ファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?
参考文献
[1]食品健康影響評価のためのリスクプロファイル ~ ノロウイルス ~|農林水産省
[3]ノロウイルス(感染性胃腸炎)に注意しましょう!|足立区
[4]ノロウイルス感染症低年齢児にみられる重症化要因*|松永 健司ほか
[5]脱水症に気をつけて-子どもの嘔吐・下痢-【健康ぷらざ No.333】|日本医師会
[6]ノロウイルスによる感染性胃腸炎患者のふん便や吐ぶつを処理する際の注意点を知りたい。|川崎市
[8]ロタウイルス感染症とノロウイルス感染症との比較検討-奈良県感染症サ-ベイランス一定点より|IASR
[9]2018年02月19日更新 ノロウイルスQ&A-WPRO|厚生労働省検疫所FORTH
[11]医療現場におけるノロウイルス胃腸炎の臨床症状|ベン・A・ロップマンほか
[12]ノロウイルス感染症(Norovirus infection)|厚生労働省検疫所FORTH
[13]10億個(109/g)のノロウイルスの量とは|厚生労働省
[15]東京都内における非発症調理従事者のノロウイルス排泄期間|林 志直ほか
[18]Q11 発症した場合の治療法はありますか?|厚生労働省
[20]ノロウイルスなど感染性胃腸炎 の対応について|青森市保健所 感染症対策課
[21]次亜塩素酸ナトリウムを 使用するときの注意点|石川県
[22]Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた 手洗いによるウイルス除去効果の検討|森 功次ほか
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。