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ヒトメタニューモウイルスの初期症状をチェック
ヒトメタニューモウイルス感染症の初期症状は、咳や鼻水・発熱などの一般的な風邪症状です。ヒトメタニューモウイルス特有の症状はありません。
ヒトメタニューモウイルス感染症は、子どもから大人まで何度でも感染する可能性があります。
健康な大人の場合は、感染しても症状が出なかったり軽い風邪症状程度で済んだりすることも多く、過度に心配する必要はありません。[1]
しかし免疫力が低い子ども(とくに乳幼児)や高齢者、持病がある方は重症化する恐れがあり、保育園や高齢者施設などで集団感染することもあります。[2]
咳や鼻水などの風邪症状があらわれる
ヒトメタニューモウイルスに感染すると、2~4日後から咳や鼻水などが初期症状としてあらわれ、10~14日間持続します。
感染後4~7日でヒトメタニューモウイルスが体内で増殖のピークを迎え、このときに症状が一番強くなると言われています。[3]
ヒトメタニューモウイルスによる咳症状は悪化することが多く、喘息のようにゼイゼイしたり、激しく咳き込んだりする人も多いです。
高熱が出る場合もある
ヒトメタニューモウイルスに感染すると、咳や鼻水の症状とともに、発熱することがあります。微熱の場合もありますが、高熱が出ることもあり注意が必要です。[3][4]
感染した子どものほとんどが高熱(38.5℃以上)を出し、37.5℃以上の発熱期間は平均6日(2~13日)であったという調査結果もあります。[5]
高熱が出る点では季節性インフルエンザやRSウイルス感染症などと症状が似ているため、検査するまでは判別が難しいといわれています。
子どもは気管支炎や中耳炎にも注意
子どもがヒトメタニューモウイルスに感染すると、咳の症状が悪化して肺炎や気管支炎などを合併することがあります。
とくに初期症状でゼイゼイ・ヒューヒュー音がする呼吸や苦しい咳をしている場合は、入院治療が必要なことが多いです。[6]
ヒトメタニューモウイルスにかかった子どもの約38%に、ゼイゼイ・ヒューヒューと呼吸音のする気管支炎の症状がみられたという報告もあります。[3]
またヒトメタニューモウイルスが耳管から中耳に侵入すると、合併症として急性中耳炎になることがあります。
鼻水や鼻詰まりが強いときやアレルギー性鼻炎がある子どもは、ウイルスが耳に侵入しやすくなるため注意が必要です。[7]
急性中耳炎の症状
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耳の痛み(痛みの訴えができない場合は、いじりながらぐずるなど)
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聞こえにくい
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耳鳴り
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耳から液体が出てくる
とくに0~2歳くらいまでの子どもはヒトメタニューモウイルスの感染症の発生率が高く、入院を要する重症化率も高いと報告されています。[6]
高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすい
健康な成人の場合、ヒトメタニューモウイルスに感染しても無症状もしくは風邪症状で済むことがほとんどです。しかし子ども・高齢者・基礎疾患がある人は重症化する可能性が高くなります。
カナダのある研究結果では、ヒトメタニューモウイルスに感染した高齢者のうち60%が入院していたことがわかりました。
また別の研究において、ヒトメタニューモウイルスに感染した高齢者の半数以上が肺炎または気管支炎になり死亡した例も報告されています。[8]
高齢者は免疫力の低下・持病や服用している薬の影響・咳反射の低下などから感染症のリスクが高いといわれているため、普段からの感染対策も重要です。[9]
ヒトメタニューモウイルスのような呼吸器感染症が重症化しやすくなる基礎疾患は大きく2つあげられます。[9]
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呼吸器疾患
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免疫不全疾患
ヒトメタニューモウイルスに感染すると、気道が狭くなったり気道が敏感になったりします。
ささいな刺激で息苦しさや激しい咳が出やすくなるため、基礎疾患に喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患があると症状が悪化するといわれているのです。[3]
HIV感染症や骨髄の悪性腫瘍(白血病やリンパ腫)などの免疫不全疾患がある人は、ウイルスに抵抗する力が弱いため、呼吸器感染症にかかりやすくなります。
感染症にかかってしまってしまうとウイルスがなかなか体から出ていかず、症状が長引く、または重症化しやすくなると考えられます。[3]
また基礎疾患以外にも、糖尿病のコントロール不良の場合や免疫抑制剤・ステロイドなどの使用によっても免疫力が低下し感染しやすい状態になります。[10][11]
ヒトメタニューモウイルスの初期症状かも?と思ったら
ヒトメタニューモウイルスは自宅療養で症状が落ち着く程度の風邪症状で済むことが多いですが、子どもや高齢者、基礎疾患がある人は軽い症状でも油断せずに、経過をみていきましょう。
軽い風邪のような症状のときは、自宅で休息しましょう。下記の症状がある場合は早めに受診してください。
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咳や熱が5日以上続いている
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高熱が3日以上続いている
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呼吸音がゼイゼイ・ヒューヒュー・ピーピーする
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呼吸が苦しい
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食事や水分がとれない
とくに子どもや高齢者、基礎疾患のある人は症状が悪化し、気管支炎や喘息、肺炎などになりやすいです。
6歳未満の子どもは、医師が必要であると判断した場合、保険適応でヒトメタニューモウイルスの検査が可能です(2025年3月時点)。
医療機関で迅速診断キットを使用し、インフルエンザの検査のときのように鼻の奥を綿棒で拭って検査をします。[12]
ヒトメタニューモウイルスはインフルエンザやRSウイルスとの区別が難しいですが、検査をおこない適切な治療をすることで重症化を防げます。
早く症状を治すためにも、子どもの場合には受診して検査を受けられるか相談してみましょう。
ヒトメタニューモウイルスに感染したときの治療法
ヒトメタニューモウイルス自体を治す薬はありません。薬が使用されるとしても症状を和らげるための対症療法(たいしょうりょうほう)のみになります。
具体的には、一般的な風邪のときと同じように咳止めや去痰剤(きょたんざい)、解熱鎮痛剤などが処方されるでしょう。
合併症として喘息や気管支炎・肺炎などが出現した場合はその治療をおこない、吸入薬などが処方されることもあります。
症状が強い場合や脱水傾向の場合は、医療機関で酸素投与や点滴投与などもおこないます。
ヒトメタニューモウイルス感染しているときの過ごし方
ヒトメタニューモウイルスに感染しても、一般的な風邪をひいたときと同じように過ごして問題ありません。
安静にして、睡眠・休息をしっかりととるようにしましょう。栄養バランスのよい食事と水分摂取を心がけてください。
子どもは症状が悪化しやすいため、体調変化がないか注意して確認し、症状がなかなか改善しない場合は再受診しましょう。
熱がある場合や食事がとれない、咳こんで水が飲めないなどの場合は脱水症状になりやすいです。水分と電解質を効率良く吸収できる経口補水液で脱水を防ぎましょう。
ヒトメタニューモウイルスよくある質問
ヒトメタニューモウイルスについてよくある質問をまとめました。どのようなウイルスなのかを理解して感染の対策をしておきましょう。
ヒトメタニューモウイルスってどんなウイルス?
ヒトメタニューモウイルスは2001年に発見された比較的新しいウイルスです。
いわゆる風邪を引き起こすウイルスで、感染すると咳・鼻水・発熱がおもな症状としてあらわれます。重症化すると喘息や気管支炎・肺炎などを引き起こします。
ヒトメタニューモウイルスを治療する抗ウイルス薬は存在しません。咳止めや解熱剤などが症状をやわらげるために使用されます。
ヒトメタニューモウイルス感染症は、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス、RSウイルスなどと同じウイルス性の呼吸器感染症です。
ウイルス性の呼吸器感染症全体の中で、子どもでは5~10%、大人では2~4%はヒトメタニューモウイルスが原因であるといわれています。[3]
ヒトメタニューモウイルスはほとんどの子どもが5歳までの間に感染するウイルスといわれていますが、何度も感染する可能性があり、大人でも感染するのが特徴です。[8]
ヒトメタニューモウイルスが流行する時期は?
日本では3~6月に流行します。しかし感染症が起こりにくい夏にも感染者は出現しており、1年を通して感染する可能性はあります。
ヒトメタニューモウイルスは何度も感染することがあるため、流行時期は子どもから大人まで感染予防が必要です。
日本において1年間の感染症検査をしたところ、ヒトメタニューモウイルスが検出された子どもの平均年齢は2歳6ヶ月で、1~2歳がもっとも多かったというデータがあります。
3〜6月の間は保育園で流行する可能性もあるため、感染症の多い冬が終わっても、子どもの体調に気を配っておくとよいでしょう。[3]
保育園はいつまで休ませる?
ヒトメタニューモウイルス感染症には、インフルエンザウイルス感染症のように出席停止期間が定められているものはありません。
一般的な風邪と同様、登園するのは咳や発熱などの自覚症状がなくなった時点を目安としてください。[13]
どうやって感染するの?
ヒトメタニューモウイルスの感染経路は、接触感染と飛沫感染(ひまつかんせん)の2種類です。どちらも鼻からウイルスが入り、鼻の粘膜に付着して感染します。[1]
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接触感染:感染者のウイルスが付いた手などとの直接的な接触や、ドアノブなどの間接的な接触で感染する経路
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飛沫感染:感染者のくしゃみや咳などに含まれたウイルスの飛沫を吸い込んで感染する経路
飛沫感染の予防にはマスクが有効です。飛沫感染は2m以内で起こりやすいといわれています。感染者との距離とマスク着用の咳エチケットに注意しましょう。手洗い・うがいの対策も重要です。[14]
家族に感染者がいる場合は、さわる可能性があるドアノブや手すり、子どもがふれる可能性があるおもちゃなどはこまめにアルコール消毒しましょう。
ヒトメタニューモウイルスの治療薬はあるの?
2025年2月時点でヒトメタニューモウイルスの抗ウイルス薬は存在しません。ヒトメタニューモウイルスに感染した場合、処方されるとしたら対症療法薬のみです。
ワクチン開発もおこなわれてはいますが、商品化はされていません。そのため、感染対策(手洗い・うがい・マスク・消毒)などをしっかりとおこなうことが大切です。
まとめ|ヒトメタニューモウイルスの初期症状が出たら子ども・高齢者などは早めに受診しよう
ヒトメタニューモウイルス感染症の初期症状は、咳・鼻水・発熱などの一般的な風邪症状で、自然治癒することが多いです。症状が出現しないこともあります。
しかし免疫力が低い子どもや高齢者・基礎疾患がある人は重症化して気管支炎や肺炎、中耳炎などの合併症を引き起こすリスクがあります。
ヒトメタニューモウイルスの初期症状である高熱や息苦しさ、激しい咳などが出たら早めに受診しましょう。
ヒトメタニューモウイルスの感染対策として、手洗い・うがい・マスクをしっかりとすることが大切です。
咳やくしゃみなどの飛沫から感染するため、感染者との距離をとる・さわるところを消毒するのも効果的です。
身近な人がヒトメタニューモウイルスに感染しても冷静に対応できるように、症状や感染対策を身につけておきましょう。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
夜間や休日でもすぐに医師に相談ができるように、ファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?
参考文献
[1]ヒト・メタニューモウイルス感染症ー病態解明とその制御に向けてー|第37回日本小児感染症学会シンポジウム2|小児感染免疫Vol18No22006p167
[2]高齢者施設におけるヒトメタニューモウイルス感染症集団発生疑い事例|NIID国立感染症研究所
[3]ヒト・メタニューモウイルス|ウイルス第56巻第2号2006p175-176
[4]高齢者福祉施設におけるヒトメタニューモウイルス集団感染事例について|健康危機管理ライブラリー|国立保健医療科学院
[5]重症心身障害児(者)病棟におかえるヒト・メタニューモウイルス感染症の流行|感染症学会雑誌第86巻第2号p110
[6]小児における呼吸器感染症から検出されたヒトメタニューモウイルスに関する分子疫学および臨床医学的検討|感染症学雑誌第86巻第6号p758
[7]パネルディスカッション(2)外来診療の工夫ー将来に向けて|日耳鼻2017p120-419
[8]Humanmetapneumoviruswhatweknownow|PubMedCentralp
[9]起因菌からみた呼吸器感染症の変遷|高齢者の呼吸器感染症|日本内科学会雑誌第87巻第2号p4
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。