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ヒトメタニューモウイルスになったら保育園は何日休む必要がある?
ヒトメタニューモウイルス感染症には、出席停止の決まりはありませんが、症状が強く出ているうちは登園を控えることが推奨されます。[1]
回復には4〜7日かかることが多いため、その期間は休むことを想定しておくとよいでしょう。
症状が強い期間に登園を控える理由は、以下の2つです。
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回復には十分な休息が必要
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症状が出ている間は感染力が強い
ヒトメタニューモウイルス感染症には、ウイルスを抑える薬がありません。特別な治療をしなくても、熱は4〜5日程度、咳やほかの症状も1週間ほどで自然に落ち着きます。[2][3]
乳幼児の場合は重症化するケースもあり、肺炎や気管支炎などの合併症を引き起こす可能性もあります。
重症化や回復の遅れを防ぐには、無理せず十分な休息をとることが大切です。[2]
症状が出ている期間は感染力が強く、周囲の子どもにうつしてしまうおそれもあります。
咳や熱が落ち着くまでは登園を控えましょう。
子どものヒトメタニューモウイルスの症状は?
子どもがヒトメタニューモウイルスに感染すると、一般的な風邪とよく似た症状があらわれます。
おもに咳や鼻水、熱などの症状ですが、感染が気管支や肺に広がると、ゼーゼーしたり息苦しくなったりします。
感染部位 |
症状 |
特徴 |
上気道感染 (鼻・のどなど) |
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下気道感染 (気管支・肺など) |
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その他 |
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咳や発熱、鼻水は90%以上の子どもでみられます。[2]
ヒトメタニューモウイルスの症状は、コロナやインフルエンザ、RSウイルス感染症とよく似ており、症状だけで区別することは困難です。[5]
6歳以下の乳幼児は、気管支炎や肺炎に進行する可能性もあるため、経過を慎重に観察することが大切です。[2]
咳が悪化していたり、高熱が続いたりするようなら早めに医療機関に相談しましょう。
関連記事:子どものヒトメタニューモウイルスの症状は?子どもが発症した際の受診目安やよくある質問も解説
ヒトメタニューモウイルスは保育園で感染しやすい?
ヒトメタニューモウイルスは、保育園や幼稚園などの保育施設で感染しやすいウイルスです。
感染しやすい理由は、ヒトメタニューモウイルスが「飛沫(ひまつ)感染」と「接触(せっしょく)感染」によって感染を広げていくためです。[1][8]
感染経路 |
詳細 |
飛沫感染 |
感染者が咳やくしゃみをしたときに飛び散るウイルスを吸い込むことで感染 |
接触感染 |
ウイルスが付着した物にふれたあと、手を介して目や口をさわることで感染 |
保育園は子どもたちが密に接触するため、咳やくしゃみによってウイルスが広がりやすい環境です。
遊具やおもちゃ、イスなど共有する物を介して感染する可能性もあります。
多くの子どもは、5歳までにヒトメタニューモウイルスの感染を経験します。 [9]
しかし一度ヒトメタニューモウイルスに感染したとしても「終生(しゅうせい)免疫」は得られません。
繰り返し感染する可能性があるため、感染経路にもとづいた予防が大切です。 [9]
ヒトメタニューモウイルスの感染力はいつまで続く?
ヒトメタニューモウイルスの感染力は1〜2週間程度続くと考えられます。[2]
感染力の特徴は以下のとおりです。
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発熱や咳など症状が強い期間(4〜7日目)は感染力が強い
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症状がおさまっても、ウイルスは体内に残り排泄が続く
ウイルスの増殖のピークは4〜7日であり、症状が強い期間と一致します。その後もウイルスの増殖は10〜14日間ほど続きます。
子どもの体調がよくなったあとも、ウイルスは体内に残り排泄が続くため、家族間での感染に気をつけなければなりません。
親やきょうだいが感染しないよう、食器や箸、タオルの共有は控えてください。
感染力が長く続くことをふまえ、家族皆で手洗いや消毒など感染症対策をおこないましょう。
ヒトメタニューモウイルスが流行りやすい時期はある?
ヒトメタニューモウイルスは、冬の終わりから春にかけて流行しやすい傾向があります。[5]
とくに3月から6月に感染が増加しやすいウイルスです。[9]
しかし近年、海外ではヒトメタニューモウイルスが12月頃から感染拡大しているとの報告がありました。[10]
ヒトメタニューモウイルスは夏にも検出されており、一年を通して感染する可能性があります。[2]
冬はインフルエンザやRSウイルスなどほかの感染症も流行するため、ヒトメタニューモウイルスに限らず感染症全般への対策が欠かせません。
季節を問わず、手洗いや消毒、咳エチケットなど感染予防につとめましょう。
ヒトメタニューモウイルスになった場合の登園目安は?
登園の目安は「熱や咳が落ち着き、全身の状態がよいこと」です。
以下の点を目安にしましょう。
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解熱している
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咳が落ち着いている
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元気に遊べる
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食事や水分がとれる
日本小児科学会の「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」(2024年5月改訂版)では、登園基準を以下のように示しています。
「咳などが安定したあと、全身状態のよい者は登園可能であるが、手洗いを励行する」[1]
症状が回復しても、ウイルスの排泄は1〜2週間ほど続きます。
登園を再開したあとも周囲にうつす可能性があることをふまえ、手洗いや咳エチケットなどできる限りの感染症対策を講じましょう。
お子さんが手洗い習慣を身につける機会にしてくださいね。感染対策が十分にできない赤ちゃんは、完全に回復してからの登園が望ましいでしょう。
登園許可書は必要になる?
登園許可書の必要性は、保育園や各自治体によって異なります。一定の決まりはありません。
一般的に医師が記入する「意見書」までは求められませんが、保護者が記入する「登園届」の提出が必要な保育園もあります。[11]
流行時期や地域の感染状況により、保育園独自のルールで提出が求められる場合も考えられます。
ヒトメタニューモウイルスの感染が発覚した際は、保育園に連絡し、登園許可書の提出が必要か直接確認しましょう。
ヒトメタニューモウイルスにかからないようにするための予防策は?
ヒトメタニューモウイルスの予防には、感染経路である「接触感染」「飛沫感染」を防ぎましょう。
感染を防ぐポイントは以下のとおりです。
感染経路 | |
飛沫感染 |
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接触感染 |
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※保育園では、乳幼児に対しマスクの着用を求めていない。とくに自分で着脱できない2歳未満には奨められていない。(保育所における感染症ガイドラインを参照[12])
ヒトメタニューモウイルスにはインフルエンザウイルスのように有効なワクチンはありません。
「飛沫感染」と「接触感染」を防ぐことが、もっとも効果的な予防法です。
子どもがヒトメタニューモウイルスに感染している場合、家族間での食器やタオルの共有は避けてください。ドアノブや机などのこまめなアルコール消毒も効果的です。
保育園での感染を防ぐには、子どもが正しい手洗いを身につけられるように親子で練習しましょう。
ウイルスに負けないような体づくりも大切です。
免疫力を高めるために、日頃から生活リズムを整え、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠を意識しましょう。 [13]
ヒトメタニューモウイルスに感染しないよう、感染経路にもとづいた予防策と整った生活習慣を心がけてくださいね。
よくある質問
はじめてヒトメタニューモウイルスに感染した場合、疑問はさまざまあるでしょう。
ここではヒトメタニューモウイルスについて、よくある質問にお答えします。
ヒトメタニューモウイルスは大人も感染しますか?
ヒトメタニューモウイルスは、大人も感染するウイルスです。大人の呼吸器感染症のうち、2〜4%はヒトメタニューモウイルスが原因とされています。[2]
大人の感染には以下の特徴があります。[14]
おもな症状 |
咳、鼻づまり、呼吸困難、のどの痛み |
症状の幅 |
無症状から軽度の風邪症状、重症の肺炎まで個人差がある |
年齢ごとの傾向 |
若い成人:声がれが多い 高齢者:喘鳴(ゼーゼーする)、呼吸困難が多い |
重症化リスク |
高齢者や肺や心臓、免疫などの病気がある人 |
ほとんどの人は、5歳までに感染を経験し、その後も繰り返し感染します。感染のたびに免疫ができるため、大人は無症状や軽症ですむことが多い傾向です。
ただし高齢者や肺・心臓に病気がある人、免疫不全者は、免疫が弱いため重症化する可能性があります。[14]
高齢者や小さな子どもがいる家庭ではとくに、家族全員でマスクや手洗いを習慣づけましょう。
保育園でヒトメタニューモウイルスが流行っているとき、熱はないが咳だけの症状がある場合ヒトメタニューモウイルスの可能性がありますか?
咳だけの症状でも、ヒトメタニューモウイルスに感染している可能性はあります。ヒトメタニューモウイルス感染症の症状には個人差があり、かならずしも熱をともなうとは限りません。
症状だけではウイルスの判断は難しく、確定診断には検査が必要です。[14]
6歳以上の場合、ヒトメタニューモウイルスの検査は保険適用外となり一般的にはおこなわれません。
多くの場合自然に回復するため、ウイルスを特定する必要がないためです。
ただし6歳未満で肺炎が強く疑われる場合は、検査されることもあります。[15]
ゼーゼーする、息苦しそうにしている場合は、肺炎や気管支炎に進行している可能性もあるため、早めに医療機関を受診してください。
保育園でヒトメタニューモウイルスが流行している場合は、念のため医師に伝えましょう。
まとめ
ヒトメタニューモウイルス感染症には、出席停止期間の規定がありません。ただし症状が出ている間は感染力が強いため、登園を控えましょう。
気管支炎や肺炎など重症化を防ぐためにも、回復するまで十分に休息することが大切です。 登園の目安は「熱や咳が落ち着き、全身の状態がよいこと」です。
多くの場合4〜5日で解熱し、1週間ほどで回復するため、4〜7日程度の休みを見込んでおくとよいでしょう。
症状が落ち着いたあとも、感染力は1〜2週間ほど続きます。ヒトメタニューモウイルスは飛沫感染と接触感染で広がるため、登園を再開したあとも手洗いや消毒などの対策を心がけましょう。
ぜひお子さんと一緒に、正しい手洗いや咳エチケットを練習してくださいね。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
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参考文献
[1]「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説」
[2]菊田英明:ヒト・メタニューモウイルス.ウイルス.2006;56(2):173-182.
[3]RSウイルス感染症|ヒトメタニューモウイルス感染症について|香川県
[4]わたしたちの健康2023年3月号 ヒトメタニューモウイルス|和光市公式ホームページ
[5]Human metapneumovirus (hMPV) infection
[6]Human Metapneumovirus Infection in Japanese Children - PMC
[7]一般社団法人 加古川医師会|ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症
[9]小児におけるヒトメタニューモウイルス感染症とRSウイルス感染症に対するModified Pulmonary Index
[10]北半球におけるヒトメタニューモウイルスを含む急性呼吸器感染症の動向
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。