長引く咳はもしかして喘息?咳喘息と気管支喘息の違いについて解説

公開日: 2023/12/06 更新日: 2024/06/24
咳喘息は「症状が長引く咳のみ」という特徴があります。実は3週間以上つづく咳の原因疾患でもっとも多いのが、「咳喘息」です。 喘息と聞くと不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし「咳喘息」は一般的に知られている喘息とは別の疾患です。 この記事では咳喘息はどんな疾患なのか、一般的な気管支喘息との違いはなにかについて詳しく解説します。 ご自分やご家族の症状とあてはめながら読み進めていきましょう。
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風邪や肺炎、喘息など様々な疾患が考えられます。

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長引く咳は咳喘息の可能性あり

長引く咳で悩んでおられる方は近年増加傾向にありますが、その原因疾患としてもっとも多いのが「咳喘息」です。

咳喘息は「長引く咳」を唯一の症状とする、喘息の一種です。

熱も他の症状もないのに、咳だけが治らない場合に咳喘息が疑われます。

「喘息」と聞くと不安に感じる方もいるかもしれませんが、一般的に知られている喘息は「気管支喘息(きかんしぜんそく)」とよばれるもので、同じ喘息の一種でも咳喘息とは別の疾患です。

ただし、咳喘息を放置してしまうと気管支喘息に移行する可能性があります。

「咳喘息」かもしれないと思ったら、早期に受診することが重症化予防につながります。

そもそも咳がどのくらい続くと「長引いている」とされるのかというと、およそ3週間です。

以下は、咳がどのくらい続いているかによって分けられる咳の分類です。[1]

医学用語で咳のことを咳嗽(がいそう)といいます。

  • 急性咳嗽:3週間以内

  • 遷延(せんえん)性咳嗽:3~8週以内

  • 慢性咳嗽:8週以上

咳喘息の場合は、8週以上つづく咳を診断基準とするので「慢性咳嗽」、ただの風邪であれば1〜2週間ほどで症状は治まるので「急性咳嗽」です。

3週間以上つづく咳から考えられる疾患は咳喘息以外にも多くあります。

以下に「重篤な疾患、緊急性の高い疾患」と「考えられる疾患、状態」に分けてまとめました。

 

重篤な疾患、緊急性の高い疾患

肺がん

心不全

肺血栓塞栓症

細菌性肺炎

喘息発作

気道異物

 

考えられる疾患、状態

感染後

肺結核

マイコプラズマ肺炎

百日咳

喫煙後

クラミジア肺炎

気管支喘息

咳喘息

胃食道逆流症

COPD

アトピー性咳嗽

間質性肺炎

非結核性抗酸菌症

後鼻漏症候群

気管支拡張症

慢性誤嚥

副鼻腔炎

心因性咳嗽

 

参考:咳が続く・長引く咳|うえなみ内科クリニック[1]

このように、単に「長引く咳の症状がある」といっても呼吸器疾患、循環器疾患、消化器疾患とさまざまな分野にわたる病気が考えられます。

ただし、咳喘息以外の疾患では咳以外の症状があるケースがほとんどです。

とにかく咳の症状を抑えたいのなら

・咳がひどくて眠れない

・家族の咳を少しでも和らげてあげたい

症状をお伺いしたのち、医師が判断した場合は往診への対応やお薬の処方が可能です。

咳喘息と気管支喘息の違い

咳喘息と気管支喘息はどちらも喘息の一種で混同されがちです。

しかし2つの疾患には大きな違いがあります。以下で詳しく解説していきます。

咳だけが続くのが咳喘息

前項で少し触れましたが、咳喘息の唯一の症状は長く続く咳です。

その症状の特徴は以下の通りです。

【咳喘息の症状】

  • 咳のみが最低でも2週間以上続いている

  • 乾いた咳で、痰がらみはない

  • 息を吐くときに咳が出る

  • 夜間に症状が強くなる

診断基準では「8週間以上つづく咳」となっていますが、あくまでも目安であると覚えておきましょう。

その理由は、初めて咳喘息と診断された方の多くが2週間ほど咳が続いているタイミングに受診しているからです。

咳喘息では、気管支喘息のように呼吸が苦しい、痰が出るなどの症状はありません。

長引く咳以外の症状を認める場合は、他の疾患である可能性があります。

気管支喘息では咳や痰・息切れ・呼吸困難も

気管支喘息はアレルギー物質(アレルゲン)などを原因として気管支の炎症が長く続く(慢性化する)ことにより気道が過敏になってる状態です。

それにともなって以下の症状が現れます。

【気管支喘息の症状】

  • 喘鳴(ぜんめい)

  • 痰(たん)

  • 息苦しさ、胸苦しさ

  • 呼吸困難感

気管支喘息の症状のうち、最大の特徴は「喘鳴(ぜんめい)」です。

喘鳴とは、呼吸をするときに聞こえる「ヒューヒュー、ゼーゼー」という音のことで、気管支の炎症により、呼吸をする通り道(気道)が狭くなるために聞こえます。

気管支喘息は聴診器を使わなくても喘鳴がはっきり聞こえるのに対し、咳喘息の場合は喘鳴がまったく聞こえません。

また、気管支喘息は咳喘息と違い、咳以外の症状が見受けられます。

これらが2つの喘息の違いです。

咳喘息の原因と診断・治療について

では咳喘息はどのようにして引き起こされるのでしょうか。その原因や診断基準を解説していきます。

また、気管支喘息と同様に長期の治療が必要なのかも合わせて説明します。

咳喘息の原因

咳喘息の原因は「気道の炎症」によるもので、気管支喘息と同じです。

気管支喘息の場合は炎症により気道が狭くなりますが、咳喘息では気道がそこまで狭くならないため、喘鳴が聞かれません。

咳喘息の気道炎症は、好酸球(こうさんきゅう)とよばれる白血球の仲間がなんらかの原因で気道に集まって起こります。[2]

そのため気道が敏感になり、咳が誘発されます。では、なにがきっかけで咳喘息を発症するのでしょうか。

実は咳喘息が引き起こされる素因ははっきりわかっていません。[3]

ただし、以下の場合に咳喘息を発症しやすいと考えられています。

  • アレルギー体質である

  • 家族がアレルギーをもっている

  • たばこを吸う

  • 飲酒をする

  • 過労やストレスを感じている

気管支喘息ではアレルギー物質(アレルゲン)が喘息発作を誘発させることが多いですが、咳喘息の場合も同様です。

代表的なアレルゲンに、花粉やハウスダスト、ペット、ダニがあげられます。

また、アレルギー体質は遺伝的要素も関与しているため、自分がアレルギーをもっていなくても家族にアレルギーがある場合は誘発要因とされます。

アレルギーに遺伝性はありますが、喘息そのものに遺伝性はありません。

もしお子さんが咳喘息のような症状に悩まされている場合も、ご両親が必要以上に自分たちを責めないようにしましょう。

アレルギー物質以外に、たばこの煙やアルコールの刺激で咳喘息が誘発されることもあります。

また、機序ははっきり解明されていないものの、過労やストレスと喘息発作が深い関係性にあることも報告されています。[4]

自分が咳喘息かもと思ったときに、「家族や他の人にうつるのでは」と心配される方もいらっしゃるでしょう。

ご安心ください。咳喘息の感染性は報告されていません。

咳喘息の診断

咳喘息は以下に基づいて診断されます。

 

【咳喘息の診断基準(咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019)】

下記1~2のすべてを満たす


  1. 喘鳴を伴わない咳嗽が8週間以上*持続

  2. 気管支拡張薬(β2刺激薬など)が有効


*:3~8週間の遷延性咳嗽であっても診断は可能だが、3週間未満の急性咳嗽では確定診断をしない


参考所見

(1)末梢血・喀痰好酸球増多、FeNo(呼気中一酸化窒素濃度)高値を認めることがある

(2)気道過敏性が亢進している

(3)咳症状にはしばしば季節性や日差があり、夜間~早期優位のことが多い

参考:咳喘息|葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック[5]

 

「wheeze」とは、気道の下側(下気道)が狭くなることで聞こえる喘鳴のことをいいます。息を吸っても吐いても聞こえることが特徴です。

咳喘息では強い狭窄を認めないため、この音は聞こえません。

参考所見にある3つの項目は気管支喘息と共通してみられることから、咳喘息の診断を満たす場合でも、追加検査が行われる場合があります。

追加検査は気管支喘息ではないことを確定するために行われます。[5]

また、咳喘息と診断された方のうち、約3〜4割は喘息へ移行すると言われているため、慎重に経過を見ていくことが重要です。[5]

咳喘息の治療

咳喘息の基本的な治療は薬物療法ですが、市販されている咳止めや総合かぜ薬などは効果がありません。

それは、咳喘息の原因が「好酸球による炎症」だからです。この好酸球による炎症を抑えることが治療の柱です。

これに相当する市販薬は販売されておらず、医療機関を受診して診断を受ける必要があります。

咳喘息の治療指針は「咳嗽・喀痰のガイドライン2019」によって以下の通りに定められています。

【咳喘息の重症度と治療指針】

重症度

軽症

中等症以上

症状

症状は毎日ではない

日常生活や睡眠への妨げは週1回未満

夜間症状は週1回未満

症状が毎日ある

日常生活や睡眠への妨げは週1回以上

夜間症状は週1回以上

長期管理薬

中用量ICS

(使用できない場合はLTRA)

中~高用量ICS

+LABAまたはLTRA、LAMA、テオフィリン徐放製剤(LABAは配合剤の使用可)

発作治療薬

吸入SABA頓用

効果不十分なら短期経口ステロイド薬

吸入SABA頓用

中用量BFCのmaintenance and reliever療法

効果不十分なら短期経口ステロイド薬

参考:咳喘息|日本内科学会雑誌第109巻第10号[6]

咳喘息と診断される方の多くは「長引く咳」が主な訴えです。

そのほとんどは毎日症状があるため、「中等度以上」に該当するでしょう。

中等度以上の場合、中~高用量ICS(吸入ステロイド薬)と、LABA(長時間作用型β2作動薬)やLTRA(ロイコトリエン受容体拮抗薬)、LAMA(長時間作用型抗コリン薬)などの気管支拡張薬を組み合わせて治療にあたります。

吸入ステロイド薬は、好酸球による炎症を抑えるために必要不可欠です。

それに加えて、咳喘息では吐くときに気道が狭くなるため「気管支拡張薬」を使用して呼吸を楽にします。

これらは気管支喘息の薬物療法で使用される薬剤と同じものになります。

治療初期は薬を併用することが基本ですが、症状が改善していけば減薬が可能です。

上記の長期管理薬に加えて、発作が起きたときにすばやく症状を改善してくれる発作治療薬を併用する場合があります。

基本的にはSABA(短期間作用型β2刺激薬)の頓用使用です。効果が乏しい場合は経口ステロイド薬の使用が検討されます。

重症度が中等度以上の場合、BFC(ブデソニド/ホルモテロール配合剤)を短期間吸入する治療法もありますので、症状や体質に合わせてさまざまな治療薬が選択可能です。

気管支喘息の場合は重症度などがさらに細分化されて治療にあたります。

ではこれらの治療を続けていけば完治はするのかと疑問に思いますよね。結論からいうと、現在の医療では咳喘息の完治は難しいです。

しかし「咳の症状をなくす」ことは可能です。そのためには以下を守って治療することが重要になります。

  • 症状がなくなったからと薬を自己判断で減らしたりやめたりしない

  • 原因がはっきりしているのであれば原因を除去する

自己判断による薬の調整は喘息を再発および悪化させるおそれがあります。

また、咳喘息を引き起こす原因がわかっている場合、原因を除去することで治療効果が上がります。

咳喘息の治療目標は「症状がない状態を続ける」ことです。

どんなに小さなことでも医師に相談し、自分にあった治療で日常生活を快適に過ごせるようにすることが大切です。

まとめ

咳喘息は喘息の一種で、長引く咳が唯一の症状です。

一般的に認知されている喘息はほとんどの場合が気管支喘息で、それとは別の疾患となります。

2つの大きな違いは、空気の通り道(気道)が狭くなることで聞こえる喘鳴があるかどうかです。

咳喘息の場合は、気道の下側が狭くなるものの喘鳴はまったく聞こえません。

この2つの喘息は別物ではありますが、咳喘息を放っておくと気管支喘息へ移行し、重篤な状態になる可能性があります。

咳がなかなか治らないなど、思い当たる症状があれば早めに受診をしましょう。

止まらない咳以外に不安な症状はありませんか?

咳喘息の症状は咳だけではありません。

あらわれている症状以外にも不安なことがありましたら、ファストドクターの無料医療相談を頼ってください。


参考文献

[1]咳が続く・長引く咳|うえなみ内科クリニック

[2]咳喘息(せきぜんそく)って何?長引く咳の原因で一番多い。 |クリニックプラス

[3]咳喘息とはどのような病気か?原因・症状・治療について|横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック

[4]ストレスで喘息がひどくなるのはなぜ?改善策・おすすめの漢方など|健達ネット

[5]咳喘息|葛西よこやま内科・呼吸器内科クリニック

[6]咳喘息|日本内科学会雑誌第109巻第10号

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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