知っておこう!熱性けいれん4つのポイント
乳幼児の発熱で起こる
子どもの高熱に伴って起こるけいれんのことを一般的に熱性けいれんといいます。
ひきつけと呼ぶこともあります。
生後6か月〜5歳くらいまでの子どものうち、10人に1人の割合で起こる症状です。
一度熱性けいれんを起こした子どものうち7割は再発しないといわれており、発症しても一生に一度しか起きず繰り返さないことも多いのです。
大人が熱性けいれんを起こすことは一般的にありません。
大人でけいれんの症状がある場合は別の病気が隠れている可能性が高いです。
後遺症は残らない。まず落ち着いて対処を
一般的な熱性けいれんによって後遺症が残ることはほぼありません。
子どもが発症してしまったら、まずは落ち着いて対処しましょう。
※スマートフォンでの動画撮影は必須ではありません。撮影を意識するあまり他の手順を忘れないように注意しましょう。
実際に我が子が白目をむいてけいれんしている様子を目の当たりにすると、パニックになってしまう方もいるかもしれません。
まだ熱性けいれんを起こしたことがないという方も、もしもの場合の対応を事前に確認しておきましょう。
5分がカギ!けいれん時間は必ず計る
けいれんが起きたらまず正しい手順を踏んだ上で、時間を計ってください。
けいれんが続いた時間によって、緊急度や病院での対処が変わります。
目安として5分以上けいれんが続くようなら、速やかに薬での治療が必要です。
時間を計ることが救急車を呼ぶべきか、病院で詳しい検査が必要かなどの判断材料になります。
また、スマートフォンでの撮影は必須ではありません。
撮影を意識するあまり他の手順を忘れてしまったということがないようにしましょう。
初めてけいれんしたら必ず医師の診察を
初めて熱性けいれんが起きたら、症状が続いた時間に関わらず必ず医師の診察を受けましょう。
状態が落ち着いていれば救急車を呼ぶ必要はありません。
自家用車やタクシーを利用して病院へ行きましょう。
夜間であれば救急外来を受診してください。
タクシー会社の電話番号や受診先などはもしもに備え事前に書き出しておくと慌てずにすみます。
知っておきたい豆知識
こんなときは熱性けいれん以外の可能性も
以下の場合は熱性けいれん以外の病気である可能性があります。詳しい検査が必要なので、必ず医療機関を受診しましょう。
・3歳以降に初めてけいれんを起こした
・7歳を過ぎても熱性けいれんを起こす熱性けいれんはどんな症状?
原因
38℃以上の発熱に伴う体温の急激な変化により起こる。
症状
- 全身がつっぱる
- 白目をむく
- 呼びかけに応えない(意識障害)
- 手足がガタガタ震える
- 呼吸が荒く不規則
熱性けいれんが関連する病気
高熱が出る病気
- 突発性発疹
- 溶連菌感染症
- インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
- 咽頭結膜熱(プール熱)
- アデノウイルス感染症
- ヘルパンギーナ
- RSウイルス
- ヒトメタニューモウイルス感染症
- マイコプラズマ感染症
- 川崎病
けいれん時発熱がないこともある病気
- 細菌性髄膜炎
- 急性脳症
- 急性脳炎
- てんかん
- 電解質異常
- 低血糖
- 高アンモニア血症
- 脳腫瘍
熱性けいれんの対処方法は?
熱性けいれんの対処方法
1.患者の顔と体を左側を下にして横向きにする
・呼吸しやすい体勢にし、吐いたものが喉につまったり、肺や気管に入ることを防ぎます
・呼びかけたり、揺さぶることは避けましょう。刺激になってしまいます
2.けいれん開始時刻を正確に記録する
・スマホで時刻をスクショして記録するとよいです
・余裕があればタイマー起動して間隔を把握しましょう
3.余裕があれば動画を撮影する
・医師に動画を見せることで、診察がスムーズに進むでしょう
※近年固定電話のない家庭が多い中、スマートフォンでの動画撮影を優先してしまうことで対処が遅れてしまう場合もあります。まず患者の安全確保をおこないましょう。
熱性けいれんの対処法Q&A
解熱剤を飲んでいれば安心?
解熱剤で熱性けいれんは予防できません。
熱性けいれんをすでに起こしていて繰り返す可能性が高い場合にのみ、予防薬を処方されることがあります。
てんかんとの違いは?
てんかんは脳の慢性疾患で、熱があってもなくてもけいれんが起こる、けいれんを繰り返す、どの年齢でも発症するという特徴があります。
熱性けいれんはなぜ起きるの?
原因はまだはっきりとはわかっていないのですが、一例として次のようなものがあります。脳は弱い電気信号を送って働いています。
発熱で体温が急激に変化すると、脳が電気信号をいつものように送れなくなってしまいます。
子どもの脳は大人に比べて未成熟なこともあり、脳が送る電気信号が放電してしまうことで起こります。
そのため一般的に、大人では熱性けいれんは起こりません。大人がけいれんを起こした場合には別の病気が隠れている可能性が高いです。
【対面で診察?救急車?オンライン診療?迷ったら】今の症状と適した受診先
受診が必要な症状について知っておきましょう。
緊急度チェックでは、症状に応じた受診先をすぐに判定できます。
判断に迷う時の相談先
- 緊急度チェックで症状に応じた受診先を判定
- #7119や♯8000(子ども)へ電話
- オンライン診療(24時間対応)で医師に相談
119番(救急車)
以下の症状に一つでも当てはまる場合はすぐに119(救急車)へ連絡しましょう。
- 5分以上けいれんが続く
- けいれん後も意識がはっきりしない
- 呼吸がおかしい
- けいれん後も意識が戻らない
- 呼吸が苦しそう
- 顔や唇が青白い
- 我慢できないほど頭が痛い
- 高熱に加えて激しい嘔吐がある
- 明らかに様子がおかしい
至急受診を
以下の症状がある場合は至急医療機関を受診しましょう。夜間には救急病院を受診してください。
- 初めてのけいれん(5分未満で治った)
- 熱性けいれんを1日に複数回起こす
様子を見よう
- 2回目以降の発症であり、熱性けいれんが5分未満でおさまって意識状態がしっかりしている
判断に迷う場合はオンライン診療で医師の診察を受けることが可能です。
医師に伝えること
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けいれんしていた時間
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初めてのけいれんかどうか
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高熱が出たきっかけの病名を知っていれば伝える
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持病はあるか
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今使っている薬があるか
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家族にけいれんを起こす病気を持っている人がいるかどうか
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市販薬を使った場合は薬品名と使用時間
病院の持ち物リスト(優先順)
緊急時(救急車)も必ず持参
- スマートフォン/携帯電話
- 家族の連絡先がわかるもの
- お財布
- お薬手帳(持病がある場合は必ず)
持参が必要
- 保険証
- 医療証
- 診察券
※保険証・医療証が無いと、費用が一時的に10割負担となることがあります
子どもに必要
子どもは下記も準備しましょう。
- 着替え
- おむつ
- おしりふき
- ビニール袋2−3枚
- 大きめのタオル(フェイスタオル等)
症状が出る前に備えられること
家庭内感染対策の準備
家族が感染した時を想定し、感染した人と他の家族の生活空間を分けられるように備えましょう。
可能であれば個室で過ごしてもらうことが望ましいです。
また、感染対策に必要な備品を事前にストックしておくと便利です。
必要品の例
マスク、消毒用アルコール
近隣の病院を確認しておく
近隣の夜間・休日に対応している病院やかかりつけ医の診療時間を確認しておきましょう。
タクシー会社の連絡先を確認しておく
自分や家族が体調不良のときは運転を避けましょう。
運転に気を取られ子どもの体調変化を見落としてしまったり、普段より慌ててしまい、事故につながるリスクもあります。
こうした事態を防ぐためにも、体調不良時に備えてタクシーの連絡先を確認しておきましょう。
緊急連絡先を確認しておく
勤務先や学校、幼稚園など緊急時の連絡先を確認しておきましょう。
受診に必要な物の場所を決めておく
保険証や診察券、お薬手帳、医療証、母子手帳などの置き場所を決めておき、すぐに持ち出せるよう備えましょう。
「対処法を調べる」監修医師

こうだたかゆき
神田貴行医師
日本小児科学会専門医/博士(医学)
島根大学医学部臨床教授
コンサータ登録医
鳥取大学医学部卒業後、小児科医として16年間病院勤務、11年間発達障害児対応クリニック院長を務めた。現在は小児科を中心にオンライン診療等を行うフリーランス医師としても活動中。
この記事は医師監修のもと、ファストドクター株式会社が制作しています。