インフルエンザの初期症状をチェック
インフルエンザは、高熱や頭痛、だるさなどの全身症状がいきなりあらわれるのが特徴で、一般的には高熱がでた時点を発症日とみなします。
しかし高熱があらわれる前にも、頭痛やのどの痛みなどの初期症状を感じることもあります。
インフルエンザの初期症状は、あらわれる人もいればあらわれない人もいます。
症状 |
症状の特徴 |
発熱 |
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頭痛 |
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全身倦怠感 |
強い全身のだるさや疲労感があらわれる |
筋肉痛・関節痛 |
全身の痛みやこわばりが突然あらわれる |
悪寒(おかん) |
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のどの痛み |
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一般的にはこれらの初期症状ののちに咳や鼻水などの上気道炎※症状が続き、約1週間の経過で軽快します。[1]
ただし初期に咳やのどの痛みが生じることもあり、個人差がみられます。
※上気道炎:のどや鼻、気管支の炎症。咳、鼻水、のどの痛み、くしゃみ、鼻づまりなどの症状があらわれる。
ここでのチェックはあくまでも自己判断になるため、症状が続いたり重くなったりする場合は医療機関を受診して正しい診断を受けるようにしましょう。
インフルエンザの初期症状で「下痢」は起こる?
インフルエンザの初期症状では、下痢はあまりみられません。
しかし小児や一部の大人では、インフルエンザの初期の段階で高熱は出ずに吐き気や下痢などの消化器症状があらわれることがあります。
インフルエンザで下痢をする原因は、主に3つあります。
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インフルエンザウイルスへの免疫反応によるもの
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インフルエンザウイルスを胃腸内から排泄するはたらきによるもの
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抗インフルエンザウイルス薬の副作用によるもの
インフルエンザウイルスへの免疫反応 |
インフルエンザへの免疫反応によって他の器官にも影響を与える。 消化器官への影響により腸の動きが乱れて下痢が発生する。 |
インフルエンザウイルスを排泄するはたらき |
インフルエンザウイルスが胃腸内にも増えている場合は、ウイルスを体から出そうとするはたらきによって下痢が起こる。 |
抗インフルエンザウイルス薬の副作用 |
インフルエンザの治療薬であるタミフルやイナビル、リレンザなどは、おなかの調子の悪化が副作用のひとつとして報告されている。 |
関連記事:タミフルの効果と副作用について知ろう|服用方法や副作用対策について解説
インフルエンザにかかると解熱後もしばらくしばらくはウイルスが体内にとどまるため、治りかけの頃に下痢の症状が出ることがよくあります。
下痢が続くと体力的にも精神的にもつらくなってしまいますが、自己判断で下痢止めを飲むのはやめましょう。
ウイルスを出す反応により下痢になっているため、無理やり止めると治りが遅くなってしまいます。下痢の回数が一日10回以下の場合や水分がとれている場合は、安静に過ごし水分補給をしながら様子をみましょう。
脱水症状を起こしている場合や下痢、嘔吐の症状が激しいときは、はやめに医療機関を受診してください。
とくに子どもは元気にみえても急に体調が悪化するため、下痢の回数や性状の確認、こまめな水分摂取を促すなどの注意が必要です。
インフルエンザの初期症状で「のどの痛み」は感じる?
インフルエンザのひき始めには発熱や頭痛、だるさなどが多くみられますが、高熱が出る前に「のどの痛み」を感じることもあります。
インフルエンザによるのどの痛みは、通常次のような特徴があります。
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急な発症:のどの痛みが急にあらわれます。
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症状が重い:風邪の場合は軽いのどの痛みだけかもしれませんが、インフルエンザの場合はより強い痛みが出ます。インフルエンザワクチンを打っていると症状が軽くなることもあります。
のどの痛みは風邪やコロナなどでもよくみられるため、インフルエンザかどうかを判断するのは困難です。ほかの症状もあわせてインフルエンザかどうかを考えるとよいでしょう。
インフルエンザの初期症状は感染後何日で出る?
インフルエンザの初期症状は、感染した当日から3日の間にあらわれる場合があります。
のどの痛みやだるさなどの症状がまったくあらわれずに、発症することも少なくありません。
インフルエンザは 感染からおよそ1〜3日間の潜伏期間を経たのち、発症します。[1]
症状があまりない場合でも、無理は禁物です。
インフルエンザの症状は急にあらわれるため、水分をとりつつ安静に過ごしましょう。
また潜伏期間中にもウイルスが体内で増殖し、気づかないうちに他の人に感染させてしまう可能性があります。
もし「インフルエンザにかかったかも」と思ったときは、感染を拡大しないよう発症前から咳エチケットなどの感染対策をとりましょう。[5]
子どものインフルエンザの初期症状
子どものインフルエンザの初期症状は下痢や吐き気などの消化器症状や、咳やのどの痛みなどの呼吸器症状がよくみられます。
子どもは具合の悪さに気づけなかったり、自分でうまく症状を説明できなかったりするため、周囲のかたが注意深く様子をみてあげましょう。
子どもの観察ポイントを知っておくと、早めに異常を発見できます。[6]
活発さ |
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行動 |
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顔色 |
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呼吸 |
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反応 |
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水分摂取 |
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尿量 |
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消化器症状 |
嘔吐や下痢が何度も続く |
けいれん症状 |
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2024年のインフルエンザの症状の特徴
インフルエンザは流行時期にあわせて厚労省から情報提供がおこなわれるため、2024年10月時点では情報があまりありません。
2023年8月末~24年8月末は、AH1pdm09(A型 H1N1/Aソ連型)、AH3亜型(A香港型)、B型Victoria系統が流行していました。[7]
2024年~2025年もこれらの型が流行する可能性もあるため、それぞれの特徴や症状の違いについて表にまとめました。
インフルエンザの初期症状は、あらわれる人もあらわれない人もいます。また、どの型も初期症状に大きな違いはありません。
型 |
遺伝子系統 |
特徴 |
症状 |
A型 |
AH1pdm09(A型 H1N1/Aソ連型) |
2009年に「新型インフルエンザ」としてパンデミックを引き起こした。その後、季節性インフルエンザとして定着している。 |
一般的なインフルエンザの症状(発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感、のどの痛み、咳など)に加え、若い人や妊婦、肥満の人で重症化しやすいとされており肺炎を起こすリスクが高い。 |
AH3亜型(A香港型) |
1968年に「香港インフルエンザ」として世界的に流行した。 この型は変異が起こりやすく、毎年流行がみられる。 |
重症化することが多く、高齢者や持病を持つ人に強い影響がある。 発熱や全身のだるさがとくに強く、合併症として肺炎を引き起こす。 | |
B型 |
B型Victoria系統 |
B型はA型と比べて流行の規模は小さく、変異も少ない傾向がある。 B型には「Victoria系統」と「Yamagata系統」があり、近年はVictoria系統の流行が目立つ。 |
A型に比べると発症は緩やかで軽症の場合もあるが、子どもや若年層で発症することが多い。 A型ほどではないものの、発熱や頭痛、全身の倦怠感、消化器症状(下痢や腹痛)もみられる。 |
インフルエンザと風邪やコロナとの見分け方
インフルエンザと風邪、コロナの症状の違いについて表にまとめましたので参考にしてください。
「インフルエンザかな?」と思ったとき、同時に風邪やコロナなど他の病気の可能性も考えるのではないでしょうか。医療機関へ行く前に自分でチェックできると安心ですよね。
いずれも似ている症状が多いため、確実に知りたい場合は医療機関で診察や検査してもらうとよいでしょう。
症状 |
潜伏期間 |
発症 |
その他の特徴 | |
インフルエンザ |
悪寒やだるさなどの全身症状
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1~3日 |
急激に発症 |
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風邪 |
鼻、のどなど局所的症状
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2~4日 |
比較的ゆっくり発症 |
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コロナ |
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1~14日 |
比較的ゆっくり(急激に重症化する場合あり) |
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関連記事:似ている様で異なる?コロナウイルスとインフルエンザ:症状から治療法まで、両者の違いをわかりやすく解説
インフルエンザの初期症状があるときの受診と検査のタイミング
インフルエンザの初期症状を疑うとき、以下の場合は発症からの時間に関係なく早めに受診してください。
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解熱剤を持っていない
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日中はひどくなくとも、夜に咳などの症状が酷くなる
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呼吸困難がある
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意識がはっきりしない
インフルエンザを疑う症状があっても、必ず受診しなければならないわけではありません。
症状が比較的軽く、解熱剤などの常備薬があるときは治るまで自宅で過ごしても大丈夫です。
子どもや高齢者、持病のあるかたなど、インフルエンザの感染で重症化するリスクのあるかたは早めに医師に相談しましょう。
また症状があらわれたらいち早く結果が知りたいところですが、初期症状がでてすぐに検査をしてもきちんとした結果は出ません。
インフルエンザの発症後12時間以内では検査に必要なウイルスの量が足りず、正確な判断ができないためです。
インフルエンザの検査をおこなう最適なタイミングは、症状が出はじめてから12時間~48時間以内の間です。
発症後12時間を経過するまでは自宅で注意深く過ごしましょう。[12]
関連記事:インフルエンザ検査のギモンを解決|病院での検査方法やベストなタイミングも詳しく解説
インフルエンザの初期症状があるときの市販薬の使用について
咳やのどの痛みなどがどうしてもつらいときには、市販薬で症状を抑えることができます。
基本的には医療機関を受診して処方を受けるのが一番ですが、まだ受診のタイミングではない…と困るときもありますよね。
インフルエンザの初期症状に効果的な薬の成分は、おもに以下の5種類です。これらの成分が含まれている市販薬を選ぶとよいでしょう。
すでに服用している薬があるとき、妊娠・授乳中・乳幼児・高齢者のかたは、購入前に登録販売者や薬剤師、医師などに相談してください。
効能・効果 |
成分名 |
注意点 | |
咳止め薬 |
咳を抑える |
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気管支拡張薬 |
呼吸を楽にする、咳を和らげる |
テオフィリン |
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去痰薬(きょたんやく) |
たんを流れやすくする |
カルボシステイン |
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鼻炎薬 |
鼻水や鼻詰まりを改善する |
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解熱鎮痛剤 |
のどの痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛を抑える 熱を下げる |
アセトアミノフェン |
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抗インフルエンザ薬は、症状が出始めてから48時間以内に服用することで最大限の効果を発揮します。
検査のタイミングも加味すると、インフルエンザの症状があらわれてから12時間以降にできるだけ早く医療機関を受診して、薬を処方してもらうとよいでしょう。
インフルエンザの初期症状があるときの家族や職場への感染リスク
インフルエンザを疑う初期症状がある場合、家族や職場への感染リスクは非常に高いといえます。
なぜならインフルエンザ発症直後の数日間はとくにウイルスの排出量が多く、感染力が強いためです。
またインフルエンザは飛沫感染や接触感染で広がるため、同じ空間にいると感染しやすい特徴があります。
会話やくしゃみ、咳などからウイルスが空気中に拡散されたり、手でさわった物を通して他の人に広がる可能性があります。
周囲への感染を防ぐためには、発症初期からの感染予防行動が大切です。
インフルエンザの感染予防のポイント
インフルエンザの感染を拡大しないよう、早いうちから適切な対応を心がけましょう。
早期対応 |
初期症状があらわれた時点で、家族や職場での感染を防ぐために予防策をとる |
手洗いの徹底 |
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マスクの着用 |
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家庭内での対策 |
家庭内では感染者と接触を避ける、部屋を分ける、共用物を消毒するなどの予防策が有効 |
隔離と感染期間 |
発症後5日間ほどは感染のリスクがあるため、自宅での安静や隔離が推奨される |
無理して出勤しない |
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持病があったり妊娠している方などが同居していたりする場合には、なるべく別の部屋で過ごすようにするなど、より確実な感染予防をおこなってください。
医師の判断により、家族の感染を防ぐための予防薬が処方される場合もあります。[13]
インフルエンザのときに家庭でもできる対処法
インフルエンザにかかった場合、医療機関での治療に加えて自宅でも対処法をおこなえば、症状が軽減され早期回復につながります。
家庭でもできる対処法のポイントを5つ紹介します。
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こまめに水分をとる:発熱や下痢などの症状により、体内の水分が失われやすくなります。
脱水症状を防ぐためにも、こまめに水分をとりましょう。水やスポーツドリンク、経口補水液などがおすすめです。 -
栄養バランスのとれた食事をとる:食べられるものや消化しやすい食べ物(おかゆ、汁物、ゼリーなど)を少量ずつとりいれましょう。
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安静にして休養をとる:体がウイルスと戦っているため、エネルギーを多く消費します。
体力を回復させるためにも十分な休息が大切です。 -
室内環境を整える:乾燥した環境ではのどや鼻の粘膜が弱くなり、回復が遅れる可能性があります。加湿器を使用して、湿度を50~60%に保ちましょう。
快適に過ごせるように室温は夏は25℃〜28℃、冬は18℃~22℃程度に調整してください。 -
市販薬(解熱剤や鎮痛剤)の使用:症状がつらいときには、市販の解熱剤や鎮痛剤が使用できます。使用の際は用法容量を必ず守ってください。
ただし解熱剤の中でも、アスピリンは避けるように注意しましょう。子どもの場合はライ症候群(脳と肝臓に影響を与える病気)のリスクがあるので使用しないでください。
関連記事:インフルエンザを最速で治すには?5つのポイントについて解説
関連記事:インフルエンザを早く治すために食べた方が良いものは?
よくある質問
インフルエンザの初期症状について、よくある質問をまとめました。
ぜひ参考にしてください。
インフルエンザのひき始めや前兆となる症状は?
インフルエンザの初期症状は、微熱やのどの痛みが特徴としてあらわれることが多いです。
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微熱
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のどの痛み
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頭痛
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全身倦怠感
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筋肉痛・関節痛
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悪寒(おかん)
子どものインフルエンザの初期症状は、下痢や吐き気などの消化器症状や、咳やのどの痛みなどの呼吸器症状がよくみられます。
インフルエンザは熱と咳のどちらが先に出ますか?
インフルエンザの多くは、熱が先に出ます。
インフルエンザの典型的な初期症状は突然の高熱(38〜40℃)であり、頭痛や全身の倦怠感、筋肉痛などもみられます。
咳やのどの痛みといった呼吸器症状は、発熱に続いて出るのが一般的です。
一方でインフルエンザの症状の出方には個人差があるため、咳やのどの痛みが先に出る場合もあります。
インフルエンザにかかると何日で症状が出ますか?
インフルエンザの症状は感染後1~4日であらわれます。
症状があまりない場合でも、無理は禁物です。
インフルエンザの症状は急にあらわれるため、水分をとりつつ安静に過ごしましょう。
感染を拡大しないよう、発症前からの感染対策も大切です。
まとめ:インフルエンザは初期のうちに対応して悪化を防ぎましょう
この記事では、インフルエンザの初期症状について解説しました。
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インフルエンザの初期症状は微熱やのどの痛み、頭痛などが特徴です
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子どものインフルエンザの初期症状は消化器症状や呼吸器症状がよくみられます
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インフルエンザの初期症状は感染後1~3日であらわれます
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症状があまりない場合でも、無理せずに水分をとりつつ安静に過ごしましょう
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インフルエンザ、風邪、コロナかどうかを確実に知りたい場合は医療機関で診察や検査してもらいましょう
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インフルエンザ検査の最適なタイミングは、症状が出始めてから12時間~48時間以内です
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周囲への感染を防ぐためには、発症初期からの感染予防行動が大切です
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インフルエンザにかかった場合、自宅でも適切な対処法をおこなえば症状が軽減され早期回復も期待できます
記事の内容を参考に適切な対処をとって、症状の悪化を防ぎ早期回復につとめましょう。
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参考文献
[3]医療用医薬品 : イナビル (イナビル吸入粉末剤20mg)
[7]インフルエンザの流行状況(東京都 2024-2025年シーズン)
[11]新型コロナウイルスに関するよくあるご質問 |東京都保健医療局
[12]一般成人及び高齢者におけるインフルエンザ迅速診断キットの有用性についての検討
[14]2023/24 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針 ―2023/24 シーズンの流行期を迎えるにあたり― 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。