できるだけ早く熱を下げる方法は?
体の温度を下げるために、以下の5つのポイントをおさえて対応しましょう。
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体を冷やす
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服装や室温を調整する
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水分・栄養補給をする
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安静にして、睡眠をよくとる
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解熱剤を適切に使用する
発熱すると体の代謝が上がり、思った以上に体力を消耗します。
発熱の原因が熱中症であれば、早急に体を冷やして熱を下げることが重要です。
とくに子どもや高齢者は、体温調節機能が低いため高温による体への影響が大きいです。
「熱がでて体がつらい」「できるだけ早く熱を下げたい」という場合は、以下の対処法をためしましょう。
体を冷やす
体を冷やす際は、首筋・脇の下・足の付け根などの太い血管が通っているところに保冷剤や氷枕などをあてましょう。
保冷剤や氷枕は直接肌にあてると凍傷の危険性もあるため、タオルや布に包んで使用してくださいね。
太い血管を冷やすことで冷やされた血液が全身に早くまわり、スムーズに体から熱を放出できます。
さらに衣服をゆるめると熱を逃しやすいです。
なお、貼るタイプの冷却ジェルシート(冷えピタ、熱さまシートなど)には、体温を下げる効果はありません。
肌の表面を部分的に冷やすのみで、体の中の熱そのものには影響を与えないためです。
貼ると一時的に冷たさを感じますが、これはジェルに含まれている水分が蒸発して起こる「気化熱※1」と、「メンソール※2」の冷感効果によるものです。
※1 気化熱:液体が蒸発して気体になるときに、まわりから吸収する熱。※2 メンソール:ミントなどに含まれる成分。冷感効果、リフレッシュ効果などがある。
ただし額を冷やすことで気持ちよさが得られるため、リラックス効果は期待できます。
子どもに貼ってあげるときには、かぶれや誤飲(ごいん)、シートのずれによる窒息などのリスクがあるため、必ず保護者の見守りのもと使用しましょう。
服装や室温を調整する
服装や室温を身体の状況に合わせて調整することで、体の負担を減らし、熱を早く下げることにつながります。
寒気がする場合と、暑く感じる場合の工夫をまとめました。
寒気がしたり体が震えたりするときの工夫 |
暑く感じたり汗をかいたりしたときの工夫 |
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発熱初期は、寒気や手足の冷えを感じることがあります。
これは体温調節の一環で、体温をさらに上昇させるための生理的な反応です。
熱が高くても寒気がある場合には、保温性のある衣服や靴下を着用したり、毛布をかぶったりして体を温めましょう。
室温も寒さを感じない程度に高くしておきます。
一方で、熱が上がりきったあとは暑く感じてきて発汗しはじめます。
体に熱がこもらないように薄手の衣服に着替え、かけものも薄手のタイプにしましょう。
室温も心地よく感じる程度まで下げます。
汗で体が冷えるのを防ぐため、汗をこまめにふき取ったり、無理のない範囲で着替えたりするのも大切です。
体の状態をみながら、適切な服装や室温を選びましょう。
水分・栄養補給をする
発熱時はいつもより汗をかきます。
体内の水分が失われ、脱水や消化、代謝機能の低下が起こる可能性があります。
脱水が起こると血液の流れが悪くなり、熱を逃がしにくくなります。
脱水がすすむと、嘔吐(おうと)・頭痛・意識障がいなどの症状があらわれ、ときには命にもかかわるため注意が必要です。
また体内の水分不足により消化器官が正しくはたらかなくなると、食べ物の消化や栄養の吸収力が低下します。
代謝機能の低下によりエネルギーの供給もスムーズにいかなくなります。
その結果、原因の病気も治りづらくなり熱もなかなか下がりません。
これらを防ぐためにも、こまめに水分を補給しましょう。
また体内に侵入してきた病原体を退治し、体の健康を維持するためには、水分だけでなくタンパク質や脂質、ビタミンなどさまざまな栄養素が欠かせません。
胃腸に負担をかけない柔らかいものや口当たりのいい飲食物は、食欲が低下しているときにも食べやすいため、積極的に摂取しましょう。
発熱時におすすめの飲み物や食べ物の例をまとめましたので参考にしてください。
発熱時におすすめの飲み物 |
発熱時におすすめの食べ物 |
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少しずつでもいいので口にできそうなものから摂取しましょう。
安静にして、睡眠をよくとる
発熱しているとき、体は普段より多くのエネルギーを消耗します。
安静にすると余計な体力の消費が抑えられ、回復に集中できるのです。
また十分な睡眠は免疫機能を高めるとされています。[2]
発熱時はトイレや食事など必要最低限の活動にとどめ、体の回復に努めましょう。
解熱剤を適切に使用する
熱が出たからといって必ずしも解熱剤を使う必要はありません。
解熱剤を使う目安としては「高熱で体がつらい・水分や食事がとれない・眠れない」などのケースです。
一般的には37.5〜38.0℃以上が解熱剤を使用する目安とされていますが、平熱は人によって異なるため明確な基準はありません。
高熱のせいで食事や水分がとれずにぐったりしていたり、苦しくてゆっくり休めなかったりする場合は、医師や薬剤師に相談のうえ使用を検討しましょう。
解熱剤には大きくわけて「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と「非NSAIDs」の2種類があります。
人によっては使用できないタイプの解熱剤もあるため、ドラッグストアやスーパーなどで購入する際には注意が必要です。
それぞれの解熱剤の効果効能・副作用・注意点をまとめたので購入時の参考にしてください。[3]
NSAIDs |
非NSAIDs | |
成分名 |
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アセトアミノフェン |
効果効能 |
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熱や痛みを抑える(NSAIDsより緩やか) |
メリット |
熱や痛みを速やかに抑えるほか、のどの痛みや関節痛などの炎症も抑える効果がある |
脳症のリスクが少なく小さな子どもや機能が低下した高齢者も安心して使える |
副作用 |
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多量の使用で肝臓に障害を引き起こすことがある |
注意点 |
一部のNSAIDsについて、小児に起こりやすいインフルエンザ脳炎・脳症に何らかの関与をしている可能性がある ※インフルエンザ治療に際してはNSAIDsの使用は慎重にすべき |
肝障害のある人は使用量に注意 |
市販の解熱剤によるリスクを避けるためには次の点を守るようにしましょう。
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薬局・ドラッグストアなどの薬剤師・登録販売者に相談する
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薬の箱に入っている紙(添付文書)に書いてある注意事項や用法用量をよく読む
解熱剤の使用は根本的な病気の治療にはならず、感染症を長引かせる可能性もあります。
熱が下がると体のウイルスや細菌と戦う力が弱くなり、ウイルスも弱りにくくなるためです。
持病をもっている場合、人によっては併用してはいけない解熱剤も存在します。
解熱剤を使っても体調が改善しない場合は使用し続けるのを控え、病院やクリニックなどの医療機関を受診しましょう。
熱中症には解熱剤の効果があまりない
熱中症による発熱の原因は、体温調節がうまく機能しないことです。
解熱剤ではその根本的な問題を解決できません。
解熱剤は体温の調節をつかさどる体温調節中枢が「体温を上げろ」という指令を出しているところに「体温を下げる」ようにはたらきかけ体温を下げます。[4]
熱中症はすでに「体温を下げろ」と体温調節中枢が指令を出しているにもかかわらず、脱水により体から熱を逃せない状態になっている状態です。[5][6]
そのため熱中症による熱を下げるには、体を冷やしたり脱水を改善したりするしかなく、解熱剤は効果を発揮しません。
脱水時にNSAIDsを服用する際は腎機能障害を生じるリスクが高いため、熱中症のときに使用するのは危険です。[7]
熱中症が疑われる場合には、すみやかに涼しい環境に移動させ、水分補給や体を十分に冷却するなどの対応をしましょう。
関連記事:熱中症の原因|一度なると癖になりやすいのはなぜ?なりやすい人の特徴とは
解熱剤なしでも熱は下げられる?
解熱剤を使わなくても熱は下げられます。
効果が高いのは、保冷剤や氷枕などで、首・脇・足の付け根など、大きな血管が通っている部位を冷やすことです。
薄着に着替えたり室温を下げたりしても、上がりすぎた体温を下げられます。
十分な栄養や睡眠も、本来もつ免疫力を高めるために重要です。
ただし高熱を我慢すると、症状を悪化させる可能性もあります。
つらいときには無理せず、解熱剤の使用も検討するようにしましょう。
発熱時にやってはいけないこととは?
発熱時に次の3点をおこなうことで、逆に体調が悪化することもあります。
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無理に熱を下げようとすること
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我慢・無理をしすぎること
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シャワーや入浴をすること
熱が高いときは、とにかく体が回復に専念できる環境を整えることが重要です。
ただし熱を下げることやシャワーに入ることは、体調や経過によっては問題のないこともあります。
無理に熱を下げようとすること
熱を下げると一時的に体が楽になりますが、病気が根本的に治るわけではありません。
むやみに体温を下げてしまうと、発熱の原因となる病気が長引くこともあります。
なぜなら、発熱は体がウイルスや細菌と戦うための大切な体の反応だからです。
感染症にかかったとき、体内では次のような反応が起こります。
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ウイルスや細菌などが体内に侵入する
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脳が反応して体の設定温度を上げるよう指令を出す
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熱に弱いウイルスや細菌が退治される
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脳が元の体温に戻すように指令を出す
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血管の拡張や発汗が起こる
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体表面から熱が放出して体温が下がる
このように発熱は、ウイルスや細菌と戦うために必要なプロセスであることがわかります。
熱がある場合でもよほど体がつらくない限り、いきなり体温を下げようとするのは避けた方がいいでしょう。
我慢・無理をしすぎること
食事や睡眠がとれないほどの発熱を我慢しすぎることも、体調回復を遅らせる原因となります。
発熱の原因となる病気はさまざまあり「このくらいなら大丈夫」と思っていても、体調が悪化するケースは少なくありません。
十分な栄養や睡眠がとれなかったり体がつらすぎたりする場合は解熱剤を服用してください。
それでも回復がみられない際には、医療機関や周囲の人へ頼るようにしましょう。
シャワーや入浴をすること
体温が高い状態のときにお風呂につかると、脱水を起こしたり体力を消耗したりする可能性があります。
発熱時には、お風呂やシャワーに頑張って入る必要はありません。
どうしても汗で気持ちが悪い場合は、ぬれタオルや汗拭きシートで体を拭くとよいでしょう。
熱が下がりはじめていたり元気が出はじめていたりすれば、短時間の入浴やシャワーをしてもかまいません。
受診するべきか迷うときは
発熱で受診するかどうか迷うときは、#7119に電話してみましょう。
#7119は、救急安心センター事業へつながる電話番号です。
急な発熱や嘔吐(おうと)などで医療機関を受診すべきか、救急車を呼ぶべきかどうかの相談ができます。
ただし地域によっては実施していなかったり、対応していない時間帯があったりするため、ご確認のうえご利用ください。
0~15歳の小児の場合は、全国対応の#8000を利用しましょう。
関連記事:救急車を呼ぶタイミングや基準は?迷ったときに使える無料診断窓口と♯7119
関連記事:#7119って何?救急車を呼ぶべきか教えてくれる安心電話相談窓口
発熱で動くのもつらい、短時間で診察してほしいなどの場合、オンライン診療という選択肢もあります。
オンライン診療とは、スマホやパソコン、タブレットを利用してリアルタイムに医師の診察や診断および処方を受けられる診療システムです。
ほぼ予定時間どおりに診察が受けられ、薬を郵送で受け取れる場合もあります。気になる方は以下の記事も参考にしてみてください。
関連記事:オンライン診療とは?メリット・デメリットと受診方法を解説
子ども、高齢者、妊婦の発熱時の場合は?
子どもや高齢者、妊婦であっても、基本的に熱を下げる方法は大人と同じです。
ただし解熱剤は使えるものがそれぞれ異なります。
胎児に影響を与える場合や副作用のリスクが高く命にかかわることもあるため、購入前に解熱薬の成分をしっかりと確認しておきましょう。[8]
使える解熱剤成分 |
商品名 |
注意点 | |
子ども・妊婦 |
アセトアミノフェン |
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高齢者 |
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持病(腎疾患・肝疾患・高血圧・糖病病など)のある場合には使用できないことがある |
持病のない成人男性であっても、薬による副作用が起こる可能性はゼロではありません。
服用後に吐き気や下痢、発疹(ほっしん)などの異変があらわれたら使用を中止して、医療機関に相談しましょう。
また現在使用中の薬がある、薬でアレルギー反応を起こしたことがあるなどの場合も注意が必要です。
いずれの場合も自己判断せずに、必ずかかりつけの医師や薬剤師に相談のうえ使用してください。
子どもの熱性けいれんを見逃さない
子どもは高熱により「熱性けいれん」を引き起こす可能性があります。
熱性けいれんが起こったときは落ち着いて次の対応をしましょう。[9]
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嘔吐(おうと)物で窒息しないように体を横に向ける
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けいれんが全身なのか、一部なのか、片側なのか観察する
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けいれんの時間を測る
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スマートフォンなどでけいれんの様子を撮影する(診察や治療に役立つ)
熱性けいれんは発熱初期に起こり、次のような症状がみられます。[10]
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突然意識がなくなる
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白目をむく
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体をそらせるように硬くする
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手足を震わせる呼吸が不十分で顔色が悪くなる(チアノーゼ)
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嘔吐(おうと)している
ほとんどの場合は2〜3分で発作がおさまり、重症化することはまれです。
発作が5分以上続く場合には薬物治療の開始を考慮すべきとされているため、すぐに救急車を呼びましょう。
また「2回以上熱性けいれんを発症したことがある」「15分以上の発作を起こしたことがある」という場合に、予防的に坐薬を使うこともあります。[11]
副作用もあるため、医師の指示やルールを守って使用することが大切です。
5分以内におさまった場合も、初めての熱性けいれんであれば落ち着いたのちに医療機関を受診しましょう。[12]
関連記事:熱性けいれんの特徴・症状と治療法について【医師監修】
発熱時に便利なコンビニで買えるグッズや飲食物
発熱時に役立つ保冷剤やスポーツドリンクなどはコンビニでも購入できます。夜間の急な発熱や、近くにスーパーやドラッグストアがない場合の参考にしてください。
グッズ |
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飲食物 |
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保冷剤やジェルシート、保存のきくレトルトおかゆやスープなどは、事前に家にストックしておくと安心です。
新型コロナウイルス感染症による発熱の場合
新型コロナウイルスによる発熱時の対応は、風邪のときと基本的には変わりません。
水分や栄養、睡眠を十分にとってください。あまりにも体がつらすぎて栄養・睡眠がとれない、ぐったりしているなどの症状があるときは、解熱剤の使用を検討しましょう。
コロナの発熱時に使用できる市販の解熱鎮痛薬は、アセトアミノフェンやNSAIDsです。
熱を下げるだけでなく痛みを抑える効果もあるため、のどの痛み・関節痛や頭痛にも効果が期待できます。
ただしNSAIDs(イブプロフェン・アスピリン(アセチルサリチル酸)・ロキソプロフェン)は、インフルエンザ脳炎・脳症に何かしらの関与をしている可能性があるため、子どもには使用しないようにしましょう。
また、妊婦・高齢者・持病のある人も、使用してはいけない薬剤があります。
リスクを避けるためにも、市販の解熱剤を買う場合には、薬剤師や登録販売者に相談のうえで購入してくださいね。
関連記事:新型コロナになった!つらい高熱や強いのどの痛み、関節痛などコロナに効く解熱剤は?
関連記事:コロナの発熱は何度から?微熱のみの場合や発熱したときの対処法まで
関連記事:【2024年11月】コロナの最新症状や潜伏期間について確認しよう
インフルエンザによる発熱の場合
高熱が出やすいインフルエンザですが、発熱時におこなうことは普通の風邪とほぼ同じです。
水分・栄養・睡眠をしっかりとり安静にします。
熱があるからとすぐに解熱剤を使うことはおすすめできませんが、高熱による頭痛や関節痛などがひどい場合や、水分・栄養がとれないなどの場合は、使用を検討しましょう。
インフルエンザにかかった際は、服用の有無にかかわらず転落などの事故につながる異常行動にも注意が必要です。[13]
就学以降の小児・未成年者の男性で、発熱から2日間以内に発現することが多いとされています。
ベランダのない部屋で休ませる、玄関の鍵をかけるなどの対策をしましょう。
NSAIDsといわれる一部の市販されている解熱剤は、子どものインフルエンザ脳炎・脳症に何かしらの関与をしている可能性がある点にも注意です。
もし子どもに市販の解熱剤を使うのであれば、アセトアミノフェンが成分のものを選ぶようにして、必ず薬剤師や販売登録者へ相談のうえ購入しましょう。
関連記事:インフルエンザの症状は?感染期間中の症状の経過もチェック
関連記事:インフルエンザで熱が上がったり下がったりするのはなぜ?理由や対処法を解説
どうして熱がでるの?発熱のしくみ
熱がでると早く下げなければと思う方もいるかもしれません。
しかし、熱は体がもつ大切な防御システムのひとつです。
発熱のしくみや発熱する理由を知ることは、発熱時の正しい対応につながります。
関連記事:高熱が一晩で下がった!?急な発熱の原因と受診の目安を医師が解説
発熱とは
発熱とは、体温が平熱よりも高い状態のことです。
人によって平熱は異なりますが、一般的には体温が37.5℃以上の場合を発熱といいます。
発熱が起こる理由は、体に入り込んだウイルスや細菌を退治するためです。
人の体温は、体温調整機能をもつ脳の視床下部でコントロールされています。
視床下部で設定された温度のことを「セットポイント」といい、平常時は37℃前後です。
しかし感染症などにかかり体温を高く保つ必要が生じた場合には、セットポイントが通常より高く設定されます。
その後、ウイルスや細菌が減少してきたら、セットポイントを下げ、平熱へと戻ります。
熱が上がっていくときや発熱している最中、また熱が下がっていくときの症状は次のとおりです。[14]
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寒気
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体の震え
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手足の冷え
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体を熱く感じる
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脈拍や呼吸が速くなる
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関節や筋肉が痛む
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汗をかく
熱の上がりはじめには、相対的にまわりの温度が下がったように感じて悪寒(おかん)※が起こり、ガタガタと震えることがあります。
※悪寒(おかん):ウイルスや細菌が体内に侵入してきたときの免疫反応。熱を産生しようと筋肉を動かすことで震えが起こる。
平熱に戻るときには、熱を放出させるために汗がでます。
身体の状態に合わせて、衣服や室温などを調整して、水分・栄養・睡眠をしっかりとることで体の回復が早まります。
発熱の原因
発熱の原因を以下の5種類にわけて解説します。
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感染症によるもの
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がんによるもの
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治療によるもの
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ストレスによるもの
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熱中症によるもの
発熱の原因 |
特徴 |
必要な対応 |
注意点 |
感染症によるもの |
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がんによるもの |
医師の診断のもと、ナプロキセン・アセトアミノフェンなどを使用する[17] |
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治療によるもの |
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最近開始された薬剤や原因となる可能性の高い薬剤から中止していく[19] |
発熱のほか、皮膚が赤く腫れたり、吐き気や呼吸困難などが起こるリスクがある |
ストレスによるもの |
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感染症が原因の発熱とはメカニズムが違うため、熱中症と同様、解熱剤が効かない[20] |
熱中症によるもの[21] |
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早急に以下の応急処置をおこなう 状況によっては救急車を呼ぶ
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熱中症の症状があらわれた状態で無理に活動を続けると、脳に障害が生じて意識障害がいやけいれん発作などの症状を引き起こす危険性がある |
発熱の原因は感染症以外にもあり、対応方法もそれぞれ異なります。
とくに注意するべき原因は熱中症です。
体を冷やしたり水分・塩分の補給をしても改善しない場合は、すぐに救急車を呼んでください。
関連記事:熱中症の原因|一度なるとなりやすい理由やなりやすい人の特徴とは
意外とやってはいけないこと
発熱時に以下2点をおこなうと、免疫が正常にはたらかず回復までに時間がかかる可能性があります。
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歯磨きを何日間も怠ること
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お酒を飲むこと
「なぜやってはいけないのか」を知ると、意識を変えやすくなったり子どもに説明しやすくなったりするため、ぜひ参考にしてください。
歯磨きを何日間も怠ること
歯磨きを数日せずに、プラークや舌苔(ぜったい)といった悪い細菌の塊が増えると、口腔の免疫機能が正常にはたらきません。[22]
ウイルスや細菌は口から体内に入ることが多いため、口の中の免疫システムが弱ければ病原体に侵入されやすくなります。
体内で病原体を倒しても口から多くの病原体が入り込んでくるため、体の回復が遅れ熱を下げるのに時間がかかります。
口の中の防御システムを正常に保つには、歯ブラシや舌ブラシを使ってプラークや舌苔(ぜったい)を落とすことです。
どうしても起き上がることがつらい場合には、水やマウスウォッシュで口内をゆすぐだけでもしましょう。
唾液も口内の免疫システムを担っています。[23]
こまめに水分補給をして、口の中を乾いた状態にしないようにしましょう。
お酒を飲むこと
お酒を飲むと以下3つの理由から、さらに体調の悪化につながるおそれがあります。
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肝臓への負担
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利尿作用による脱水がすすむ
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薬の効果に悪い影響がある
飲酒による影響 |
理由 |
注意点など |
肝臓への負担 |
体力の回復に時間がかかるため、発熱時の飲酒は避ける | |
利尿作用による脱水がすすむ |
アルコールには利尿作用があるため[26] |
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薬の効果に悪い影響がある |
アルコールには、薬の成分の作用を増強したり中枢神経の機能を抑えたりする可能性があるため |
解熱鎮痛薬や風邪薬、鎮静剤などとアルコールの併用にはとくに注意が必要[27] |
発熱時の飲酒は脱水や副作用を引き起こし、ときには命にもかかわります。
アルコールは体調が戻ったときの楽しみにしましょう。
Q&A
熱を下げる方法について、よくある質問をまとめました。
本文で詳しく解説している内容について、重要なポイントを記載しています。
発熱時の参考にしてください。
熱を早く下げる方法はありますか?
次の5つのポイントをおさえて対処することで、効果的に熱を下げられます。
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体を冷やす
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服装や室温を調整する
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水分・栄養補給をする
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安静にして、睡眠をよくとる
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解熱剤を適切に使用する
とくに熱中症に関しては、早急に体を冷やして熱を下げることが重要です。
一方で感染症が原因である場合は無理に熱を下げる必要はありません。
水分・栄養・睡眠を十分にとって安静にすることが一番の方法です。
解熱剤なしで熱を下げる方法はありますか?
解熱剤なしで熱を下げる方法は以下のとおりです。
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体を冷やす
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服装や室温を調整する
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水分・栄養補給をする
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安静にして、睡眠をよくとる
ただし「高熱が続いて体がつらい」「水分・栄養・睡眠がとれない」などの状況が続いた場合は、解熱剤の使用や医療機関への受診を検討しましょう。
熱が出たらやってはいけないことはありますか?
以下2点はやらないようにしましょう。
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歯磨きを何日間も怠ること
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お酒を飲むこと
歯磨きをしない日が何日も続くと口の中にウイルスや細菌が増え、口腔内の免疫機能がはたらきにくくなり体の回復が遅れます。
また発熱時にお酒を飲むと、アルコールの利尿作用により脱水を起こしたり肝臓に負担をかけて体調の回復が遅れたりします。
熱が出たときはできるだけ口の中のケアをし、お酒も控えましょう。
まとめ:薬を使わずに熱を下げる方法も理解しておこう
今回は「熱を早く下げるための効果的な対処法」「解熱剤の正しい選び方や使い方」などについて解説しました。
早く熱を下げる主な方法は以下の5つです。
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体を冷やす
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服装や室温を調整する
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水分・栄養補給をする
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安静にして、睡眠をよくとる
-
解熱剤を適切に使用する
熱は体の防御反応のため、熱の出はじめから解熱剤を使って無理に下げてしまうのはおすすめできません。
ただしあまりにつらい場合は、使用も検討します。解熱剤は主に「NSAIDs」と「アセトアミノフェン」の2種類あり、持病や状態によって使えるものが異なります。医師や薬剤師、登録販売者に相談のうえ適切な解熱剤を使用しましょう。
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
夜間や休日でもすぐに医師に相談ができるように、ファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?
参考文献
[1]環境省 熱中症を防ぐためには 高齢者と子どもの注意事項 p.35、37
[7]平田純生 門脇大介 成田勇樹 NSAIDsによる腎障害 日本腎臓学会
[10]日本小児神経学会 熱性けいれんはどのような病気ですか?
[11]日本小児神経学会 第2部 各論 4.治療(1)発熱時のジアゼパム坐剤 p.51
[12]日本小児神経学会 熱性けいれんはどのような病気ですか?
[15]富山大学附属病院 発熱がなかなか引かない場合の診断・治療―発熱
[19]霧島市立医師会医療センター 薬剤部DIニュース 薬剤熱について
[20]中村和弘 片岡直也 同特定研究員らのグループ 心理ストレスを受けたときに体温を上昇させる脳神経回路を解明
[22]一般社団法人 日本協会歯科協会 口腔の粘膜免疫システム
[23]日本歯科医師会 歯みがきい・ろ・は 感染症対策のカギは「お口のケア」に!
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。