救急車を呼ぶか迷っている方へ。
救急車を呼ぶタイミングと基準、必要なものまとめ
「子供の体調が悪いけど、救急車呼んだ方が良いのかな…」
「急に調子が悪くなったんだけど、救急車を呼ぶレベルなのだろうか…?」
急に体調を崩してしまった場合や、怪我をしたときに救急車を呼ぶべきなのかどうか、迷ってしまった経験はありませんか?
緊急性が高い症状が出てしまった場合は、病院に自力で向かうのではなく、すぐに救急車の要請が必要です。
しかし、その一方で、救急車や救急隊員の数は限られていますので、症状の軽い場合は安易な救急要請をすることは望ましくありません。
この記事では、救急車を呼ぶべきかどうか迷っている方向けに、救急車を適切に利用するためのポイントを紹介します。

名倉 義人 医師
○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院
○資格
救急科専門医
○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会
救急車を呼ぶべき症状とは?

急にご家族やご自身に何らかの症状が出てしまった場合、救急車を呼ぶべきかどうかを迷ってしまう方もいらっしゃると思います。
しかし、「この程度の症状であれば、タクシーなどで救急外来などに向かった方がいいのでは…?」と自己判断をしてしまうのは要注意です。
救急車を呼ぶといった「緊急性」がある症状かどうかの判断は、医療従事者でないと大変難しくなりますので、自己判断によって受診を遅らせてしまうことで症状の悪化に繋がってしまう可能性もあるからです。
では、どのような症状であれば救急車を呼んだ方がいいのでしょうか?
ご紹介するのは、総務省消防庁が作成している「救急車利用リーフレット」から抜粋・引用している内容です。
成人、子供、高齢者といった3パターンに分けて、それぞれの身体の部位別に症状が列記されているのでそれに当てはまる場合は救急車を呼べばいい、という判断が簡単にできるようになっています。
急に症状が出た場合は、咄嗟の判断がしにくくなってしまう場合もありますので、特に高齢者の方やお子様がご家族にいる場合は事前に内容を把握して緊急時に備えておくことをおすすめします。
15歳以下の子供の「緊急性の高い症状」

頭部の症状
- 頭を痛がって、痙攣がある
- 頭を強くぶつけて、出血が止まらない、意識がない、痙攣がある
顔の症状
- 唇の色が紫色
- 顔色が明らかに悪い
胸の症状
- 激しい咳やゼーゼーして呼吸が苦しそう
- 呼吸が弱い
おなかの症状
- 激しい下痢や嘔吐で水分が取れず、食欲がなく意識がはっきりしない
- 激しいお腹の痛みで苦しがる
- 嘔吐が止まらない
- 便に血が混じった
手・足の症状
- 手足が硬直している。
意識障害
- 意識がない(返事がない)または朦朧としている。
けいれん
- けいれんが止まらない
- けいれんが止まっても、意識が戻らない
飲み込み
- 物を喉に詰まらせて呼吸が苦しい、意識がない
蕁麻疹
- 虫に刺されて、全身に蕁麻疹が出て顔色が悪くなった
やけど
- 痛みのひどい火傷
- 広範囲のやけど
事故
- 交通事故にあった(強い衝撃を受けた)
- 水に溺れている
- 高いところから落ちた
上記に当てはまらない場合でも、お母さんやお父さんから見ていつもの様子と違う場合はすぐに119番をして救急車を呼ぶようにしましょう。
※特に、生まれて3ヶ月未満の乳児の場合は、普段の様子と違う場合は必ず救急車を呼ぶようにしましょう。
成人の「緊急性の高い症状」

頭部の症状
- 突然の激しい頭痛
- 突然の高熱
- 支えなしで立てないぐらい急にふらつく
顔の症状
- 顔半分が動きにくい、または痺れる
- にっこり笑うと口や顔の片方が歪む
- 呂律が回りにくく、うまく話せない
- 見える範囲が狭くなる
- 突然周りが二重に見える
- 顔色が明らかに悪い
胸や背中の症状
- 突然の激痛
- 急な息切れ、呼吸困難
- 胸の中央が締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが2~3分続く
- 痛む場所が移動する
おなかの症状
- 突然の激しい腹痛
- 激しい腹痛が持続する
- 血を吐く
- 弁に血が混ざる、または真っ黒い便が出る
手・足の症状
- 突然の痺れ
- 突然、片足の腕や足に力が入らなくなる
意識障害
- 意識がない(返事がない)または朦朧としている。
- ぐったりしている
けいれん
- けいれんが止まらない
- けいれんが止まっても、意識が戻らない
飲み込み
- 物を喉に詰まらせて呼吸が苦しい、意識がない
吐き気
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
怪我・やけど
- 大量の出血を伴う怪我
- 広範囲のやけど
事故
- 交通事故にあった(強い衝撃を受けた)
- 水に溺れている
- 高いところから落ちた
上記に当てはまらない場合でも、いつもと違う症状が現れてしまった場合は、すぐに119番をして救急車を呼ぶようにしましょう。
また、ご妊娠中の方の場合も同様に119番をすることをお勧めします。
高齢者の「緊急性の高い症状」

頭部の症状
- 突然の激しい頭痛
- 突然の高熱
- 支えなしで立てないぐらい急にふらつく
顔の症状
- 顔半分が動きにくい、または痺れる
- にっこり笑うと口や顔の片方が歪む
- 呂律が回りにくく、うまく話せない
- 見える範囲が狭くなる
- 突然周りが二重に見える
- 顔色が明らかに悪い
胸や背中の症状
- 突然の激痛
- 急な息切れ、呼吸困難
- 旅行などの後に痛み出した
- 痛む場所が移動する
おなかの症状
- 突然の激しい腹痛
- 血を吐く
手・足の症状
- 突然の痺れ
- 突然、片足の腕や足に力が入らなくなる
意識障害
- 意識がない(返事がない)または朦朧としている。
- ぐったりしている
けいれん
- けいれんが止まらない
- けいれんが止まっても、意識が戻らない
飲み込み
- 物を喉に詰まらせた
吐き気
- 冷や汗を伴うような強い吐き気
怪我・やけど
- 大量の出血を伴う怪我
- 広範囲のやけど
事故
- 交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた
上記に当てはまらない場合でも、いつもと違う症状が現れてしまった場合は、すぐに119番をして救急車を呼ぶようにしましょう。
救急車を呼ぶか迷ったら「救急安心センター事業(♯7119)へ」

上記の症状に当てはまらないが様子がおかしい、もしくは軽度の症状が出ていて救急車を呼ぶべきか判断に迷ってしまった場合は、専門家からアドバイスを受けることができる電話相談窓口が救急安心センター事業(♯7119)を利用することをお勧めします。
♯7119に寄せられた相談は、まずオペレーターや自動音声により応答があり、希望に応じて電話相談もしくは医療機関案内の選択が可能です。
救急電話相談を選択した場合は、医師、看護師、トレーニングを受けた相談員等が電話口で傷病者の状況を聞き取り、「緊急性のある症状なのか」や「すぐに病院を受診する必要性があるか」等を判断してくれます。
相談内容から緊急性が高いと判断された場合は、迅速な救急出動につなぎ、緊急性がそこまで高くない(救急車を呼ぶ基準を満たしていない)と判断された場合は受診可能な医療機関や受診のタイミングについてアドバイスをしてくれます。
救急車を呼ぶべきかどうか迷っている場合以外にも、「体調が悪いけど、どこ科を受診したら良いのだろう?」などといった質問や「夜間で空いている病院を教えてほしい」といった相談に対しても医療機関案内で受診可能な医療機関を紹介してくれます。
♯7119は、実施エリアに要注意!
緊急の症状が出た場合、大変便利な#7119ですが、♯7119を行っている地域は限られており、お住まいの地域によっては利用時間に制限もあります。
また、上記以外にも各自治体で♯7119以外の番号で救急電話相談を行なっている地域がありますので、お住まいの地域が対象外のエリアだった場合は一度検索をしてみることをお勧めします。
また、厚生労働省の「医療情報ネット」では、お住まいの地域の病院の一覧が表示されるようになっています。
ご自身で病院を探したい場合は、こちらを利用するようにシアm省。
引用:総務省消防庁
お子様は、小児救急電話相談事業「#8000」へ
お子様の場合は、夜間に突然発熱をしてしまったり、熱性けいれんを起こしたりすること珍しくありません。
そのようなお子様の緊急の症状が出た場合は、#7119以外にも小児救急電話相談事業「#8000」というものがあります。
この電話相談事業は、小児科受診対象となる15歳未満の子供をもつ保護者が対象となっており、休日や夜間に子供の病気へどのように対処すべきか、早急な受診の必要度や救急車を呼ぶなど緊急性が高い疾患の可能性があるかなど判断に迷ったとき、小児科医や看護師へ電話相談ができるというものです。
全国共通の短縮電話番号「#8000」をプッシュすると、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送してくれます。
担当する小児科医や看護師が子供の状況を聞き取り、ホームケアの方法や病院受診をすすめるなど適切なアドバイスをしてくれます。
子ども医療電話相談事業の実施時間に関しては、基本的には平日休日ともに19:00~翌日8:00までと夜間のみの対応となっております。
夜間以外の利用の場合は、#7119を利用するようにしましょう。
小さなお子様がいるご家庭では、万が一の場合に備えて事前にメモ帳や電話番号にこちらの番号を控えておくと安心です。
引用:厚生労働省「小児救急電話相談事業(#8000)について」
救急車を呼ぶときは「119番」

緊急の症状が出た場合は躊躇わずに、すぐに119番へ電話するようにしましょう。
その際、オペレーターに「火事ですか?救急ですか?」と聞かれるので、「救急」と答えて症状を伝えるようにしましょう。
119番通報したら聞かれること
119番に電話をすると、オペレーターに下記のことを聞かれます。できる限り落ち着いて回答をするようにしましょう。
- 住所
- 電話番号
- 目的になる建物(近くの公共施設やお店の名前)
また、それ以外にも下記のように症状の詳細を聞かれます。
いつから、どのようにどんな症状が出ているのか、事前に把握できる場合はオペレーターに正確に伝えることができるように、メモをしておくことをお勧めします。
- 誰が、どうしたのか(病気、けが、交通事故など)
- (具合が悪い方の)年齢、性別
- 一緒にいるか?(頼まれて通報しているか?)
- 呼吸は楽にしているか?(普段どおりの呼吸か?)
- 冷や汗をかいていないか?
- 顔色は悪くないか?
- 普通に話ができるか?
- 症状を詳しく
など
また、持病、かかりつけの病院やクリニック、アレルギーや服薬の有無などは、日頃からメモにまとめて鞄に入れておくことやご家族と詳細を共有しておくと緊急の場合にとても便利になります。
引用:松戸市消防局
救急車が来るまでにできることは?
ご家族の方の様子が急変してしまったり、初めて救急車を呼ぶ場合など、気が動揺してパニックになってしまう人は少なくありません。
しかしそのような時こそ心を落ち着かせて、冷静に応急処置などの対応をしつつ救急車の到着を待つようにしましょう。
119番をした場合は、オペレーターもしくは救急隊員が救急車が到着するまでに適切な応急処置方法を指示してくれる場合もありますが、 ここでは、一般的な救急車が来るまでにできる応急処置方法を紹介します。
体調不良に陥った方の様子が急変した場合は、まず最初に意識状態を確認します。名前など、声をかけながら肩を軽く叩きます。無反応の場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。
意識がある場合
意識はあるが朦朧としている場合は呼吸状態をチェックしましょう。体調の悪い方の胸が上下に動いているか、口や鼻に耳を近づけて呼吸をしているか確認します。
息が苦しそうな場合は、ベルトやシャツの胸元を緩ませて上げるようにしましょう。
お子様の場合は、オムツのテープ部分を緩ませてあげるようにしましょう。
嘔吐などの症状が出ている場合は、無理に仰向けにしてしまうと嘔吐物で気道を詰まらせてしまう場合もありますので、横向きなど患者さん本人が楽なにし体勢にして、その状態で救急車を待つようにしましょう。
もし嘔吐物や血液などが口の中にある場合は、清潔な布などで拭き取ってあげることも忘れずに。
胸の動きがなかったり呼吸音が聞こえなかったりといった場合には、気道が塞がってしまい呼吸停止の状態に陥っている可能性があるため気道確保が必要となります。その際に、口の中を観察して異物が詰まっていないかもチェックをしましょう。
- 気道の確保: 患者の頭を下げて、顎を引きあげ、気道を確保します。
意識がない場合
気道確保しても呼吸ができないようなら人工呼吸を行いましょう。
親指と人差し指で負傷者の鼻をつまみ、大きく空気を吸い込んだ後でゆっくり息を吹き込みます。気道確保が正しければ胸が大きく上に膨らみますが、確保できていない場合は膨らみません。目視しながら人工呼吸を続けましょう。
人工呼吸をした後は、拍動の有無を確認します。頸動脈の脈拍が触れているかチェックしてください。頸動脈は、のど仏の横に位置しています。人差し指と中指を揃えた状態で軽く押しつけて、5〜10秒くらいの間で脈の触れを確認します。
万が一脈拍が触れない場合には、心臓マッサージを行います。
患者さんの胸郭に沿って指をあわせ、肋骨の下あたりに中指・人差し指を置きます。人差し指の上方に手の付け根を置き、反対の手を重ね両手で圧迫します。患者さんが大人の場合、1分間に80〜100回の速さが目安です。
出血がある場合
- 止血: 出血がある場合は、傷口を圧迫して、出血を止めます。
傷口に清潔なガーゼやタオルなど当てて、その上から圧迫して止血します。出血が多い場合は、別のガーゼを重ねますて圧迫を続けます。
- 傷口の消毒: 傷口がある場合は、清潔なガーゼやタオルなどで包み、消毒を行います。消毒には、アルコール消毒液やヨードチンキなどが身の回りにあれば使用するようにしましょう。
もし見当たらない場合は、無理に消毒をせず、止血に専念するようにしましょう。また、傷口に異物が刺さっている場合は自己判断をせず、必ず医療従事者の指示を仰ぎましょう。
引用:クララ整骨院
引用:北海道医師会 応急処置WEB
救急車が来るまでに用意しておくこと
救急車は平均して約8分程度で現場に到着すると言われています。
救急車を呼んだ後、到着するまでの間に用意しておきたいものは、以下の通りです。
- 保険証や診察券
- お金
- 患者さんの靴
- 普段飲んでいる薬 (おくすり手帳)
ただ、ご自身で救急車に連絡した場合は無理に用意などはせず安静にしているようにしましょう。
また、お金に関しては救急車で病院に行き適切な処理をしてもらった後は同行者、もしくは本人が電車やタクシーなど一般の交通機関を使って帰宅する必要があるため、少し余裕を持って用意をしておくようにしましょう。
上記の中でも特に「靴」は、室内から救急搬送される方がお忘れになる方が多いそうなので注意が必要です。
また、乳児の場合は上記に加えて、
- 母子健康手帳
- 紙おむつ
- ほ乳瓶
- タオル
などを用意しておくようにしましょう。
その他にも、自分自身の携帯電話や戸締まり、火の元など急いでいる時こそしっかり確認をしていつでも救急隊に同行できるようにしておくと安心です。
引用:川崎市
まとめ
急な体調不良の際は、救急車を呼ぶかどうか迷ってしまうことも多いかと思います。
自己判断で判断で受診を遅らせてしまうことは、緊急性の高い症状の場合、症状の悪化に繋がってしまう恐れもありますので注意しましょう。
今回ご紹介した緊急性の高い症状以外にも心配な症状があった場合は、#7119 お子様の場合は#8000に電話をして事前相談をしてみることをおすすめします。
また、ご家族の体調に不安がある時などは、いつ救急車を呼んでも良いように万が一に備えて、救急車を呼ぶ基準となる症状や、救急車の利用の流れをシミュレーションしておくことも重要です。