救急車を呼んでも費用はかからない|有料の国と有料化の流れ

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/06/24
「救急車が有料になるかもしれない」という話題を耳にしたことはあるでしょうか?日本では現在、救急車の利用者は費用の負担がなく無料で利用できますが、一見すると緊急ではない症状で利用する方が多いなど、問題点が挙げられています。 救急車を有料化するという議論もおこなわれており、もしかしたら救急車の費用がかかるようになる日が来るかもしれません。 救急車を適正に利用することで、救急医療を地域の皆さんで一緒に支えて、誰もが安心して暮らせる社会を維持していきましょう。 ここでは、救急車の費用はどこから捻出されているか、また、救急車を呼ぶべきタイミングや、日頃から準備できることなどをご紹介します。

救急車にかかる費用について

無料で利用できる救急車、その費用はどこから捻出されているのでしょうか?

救急車の財源は税金

救急車は、国からの交付金や、地方自治体からの補助金などが財源です。

税金を使って救急車の購入やメンテナンス、ガソリン代、救急車に載せる医療機器や物品の購入などを賄っています。

1回の出動で約45,000円がかかると言われており、決して安くはない金額です。

総務省によると、令和4年度の救急出動件数は約720万件なので、単純計算で3000億円以上もかかっていることになります。

年々、出動件数が増えている救急車ですが、病院へ搬送された方のうち、なんと45%が軽症でした。

適正に利用するだけで、1000億円以上の節約ができることになります。

また、出動できる救急隊員と救急車の数には限りがあるため、必要ではない方が多く利用すると、本当に必要な方の元へ到着するのに時間がかかってしまいます。

実際、救急車を要請してから現場に到着するまでの時間も、年々長くなっています。

なかなか救急車がこないタイミングが、自分や大切なご家族の緊急事態になってしまうかもしれません。

救急車は、一人一人が適切なタイミングで利用することが大切です。

日本では無料の救急車 海外では有料の国も

海外では、救急車を利用するのに費用がかかる国もあります。

たとえば、アメリカのニューヨーク州を例にみてみましょう。

アメリカでは、消防局などが運営する公的な救急車のほかに、民間の救急車も活用されています。

公的な救急車の場合、8万円〜15万円の基本的な料金がかかり、さらに走行距離や、酸素の使用などによって追加料金が加算されていくシステムです。

民間の救急車の場合は3万円ほどで、消防局の救急車よりは安いですが、緊急走行ができないなどの違いがあります。

フランスのパリも、アメリカと同じように公的な救急車だけでなく、民間の救急車を活用しています。

公的な救急車の場合は5万円程度かかりますが、そのうちの一部は社会保険から支払われ、さらに入院が必要など重篤な状態だった場合には費用がかからないシステムです。

イギリスや台湾は基本的に無料ですが、軽症の場合や不適正な利用と判断された場合には、費用の負担があります。

救急車の適正利用とは?

救急車の適正利用というのは、「救急車を呼ぶべき状況の時だけ要請する」ということです。

では、実際に救急車を呼ぶべきタイミングとはどういったものでしょうか?

救急車を呼ぶべきタイミング

例えば交通事故にあった、大量出血がある、明らかに意識がないなどの場合は、救急車を呼ぼうと判断できるかと思います。

呂律が回らない、片手や片足が動きにくい・感覚が鈍いといった症状は脳卒中を、胸が締め付けられるように苦しいといった症状は心筋梗塞を想起させるため、救急車を呼ぶべきタイミングと考えられます。

判断に迷うような症状のうち、救急車を呼ぶべきな代表的なものをご紹介します。

<大人の場合>

顔や頭の症状手足お腹胸や背中
  • 顔半分の動きにくさや痺れ
  • 呂律が回らない
  • ものが二重に見える、
    視野が欠けた
  • 突然の激しい頭痛
  • 手足の痺れ
  • 突然力が入らなくなる
  • 便に血が混じる
    (真っ黒な便が出る)
  • 冷や汗をともなう強い吐き気、嘔吐
  • 突然の胸の痛み
  • 胸やお腹の痛みが移動する

<子どもの場合>

顔や頭の症状手足お腹胸や背中
  • 頭を強く打った
  • 痙攣している
  • 顔や唇の色が悪い
  • 手足が硬直している
  • ひどい下痢や嘔吐で水分も取れない
  • ぐったりしている
  • 胸がぜいぜいとして苦しそう
  • 全身にじんましんが出た

そのほか、保護者の方からみて「いつもと違う」「様子がおかしい」と思ったときには、迷わず救急車を呼んでください。

適正とは言いにくい利用例

逆に、適正とは言いにくい利用例についても、いくつか事例をご紹介します。

  • 膝を擦りむいた、1か月前からずっと腰が痛かった

緊急でない状態の場合や、ずっと以前からの症状であれば、なるべく日中に医療機関へかかりましょう。

  • 病院が混んでいたので、優先的にみてもらうために自宅へ帰り救急車を呼んだ

救急車は、優先的に見てもらうための手段ではありません。症状に緊急性があるかどうかで判断しましょう。

救急車を呼ぶべきか迷ったときに

迷ったときには、「#7119」へ電話をかけてください。

医師や看護師、トレーニングを受けた相談員へ症状の緊急性などを相談できる「救急安心センター事業」の番号です。

緊急性が高いと判断された場合は救急出動につないでもらうことができます。

緊急性が高くないと判断された場合は、受診可能な医療機関の案内や、どんな症状が出たら受診する・救急要請するなどのタイミングについてのアドバイスをもらうことができます。

令和5年4月の段階では、21の地域で「#7119」が普及しており、順次拡大の予定です。

お住まいの地域で利用できるかどうか、こちらのサイトで確認してみてください。

https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html

「#7119」が普及していない地域にお住まいの場合は、「地域名 救急外来」「地域名 休日当番病院」などと検索し、受診の相談をしてみるのが1つの方法でしょう。

歩行できず、急病だとご自分や家族が考える場合に、現時点では119番へ救急要請するという選択肢になると思われます。

関連記事:#7119って何?救急車を呼ぶべきか教えてくれる安心電話相談窓口

かかりつけ医と事前の相談も

持病に関連して、急に具合が悪くなることもあります。

たとえば糖尿病の方は、体調不良に伴って極端な低血糖や高血糖を起こし、意識が朦朧とするといった症状を起こすことが考えられます。

免疫抑制剤や抗がん剤を使用している方は、発熱や咳などの風邪症状に人一倍注意が必要です。

そういった場合にどうしたらよいかは、事前にかかりつけ医の医師と相談しておくのも1つの方法といえます。

救急車Q&A

救急車を頻繁に利用している方は多くないと思います。

実際、救急車に関してよくわからないことがあり、本当に必要なときに救急要請をためらうということもあるようです。

ここでは、よくある疑問にお答えします。

Q. 救急車を呼んだあと、病院への搬送を断ると罰金などがありますか?

現状では、罰金を取る制度はありません。

ただ救急隊員が困ってしまう場合がありますので、病院への搬送を断る場合には、搬送が必要ではない理由を明確に救急隊員に伝えて相談しましょう。

また、急病ではない、症状がない場合には救急車を呼ばないようにしましょう。

搬送を断った場合にも出動した救急隊員は現場に出ており、次の救急車を必要とする人への時間が長くなる可能性があります。

Q. 呼ぶときは、何を伝えたらよいのですか?

119番通報をしたときは、「聞かれたことに、落ち着いて答える」ということだけ知っていれば大丈夫です。

まず、電話をかけると「火事ですか、救急ですか」と聞かれますので、「救急です」と答えましょう。

すると、「場所はどこですか」「どうしましたか」と順番に質問が続きますので、「〇〇駅の近くの××ビルの前です」「父が胸をおさえて倒れました」「交通事故で、〇人ケガしています」といった具合に答えてください。

わからない場合は「わかりません」と答えて問題ありませんので、伝えることをあらかじめ準備しておかなくても大丈夫です。

まとめ

私たちが急な病気や怪我で助けを必要としたとき、救急車を呼ぶことはとても大切な選択です。この記事では、そんな救急車の費用について解説しました。

大切なことは、緊急時にはまず救急車を呼ぶことです。

救急車の適正利用や有料化などの議論もありますが、私たちが安全で健康的な生活を送れるよう、現時点では救急車は無料となっています。

万が一の際には、あなたや家族の命を守るために迷わず救急車を呼びましょう。

また、この制度を持続できるようにするためにも、一度救急車の利用するべきタイミングについて考えてみてください。

持病をお持ちの方は、症状が悪化した際にどのような対応を取るかあらかじめかかりつけ医と相談しておくことも大切です。

症状がこれ以上悪化しないか不安ではないですか?

症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。

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参考

総務省. 「令和4年版 救急・救助の現況」の公表

消防庁. 救急車を上手に使いましょう

消防庁. 平成27年度 救急業務のあり方に関する検討会

総務省消防庁. 救急車の適時・適切な利用(適正利用)

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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