#8000とは?
#8000とは小児科専門の電話医療相談サービスで、夜間や休日でも相談料無料で利用できます。
例えば、夜に子どもが急に熱を出したり、遊んでいる最中に頭をぶつけてしまった場合など、今すぐ受診が必要か迷ったときに役立ちます。
#8000に電話をすると小児科での豊富な勤務経験を持つ看護師が、小児科専門医と連携し、受診相談だけではなく、ご家庭でもできる初期対応方法も含めて最適なアドバイスを提供します。
子どもが急に病気になったら?親のすべき対応
急に発熱や嘔吐の症状が出てきたり、いつもより活気がなく心配でも夜間に病院に電話が繋がらなくて受診してよいかわからない、救急車を呼んでよいのかわからない、という迷いや不安があれば、悩まずに#8000へ電話相談しましょう。
一部の症状は、迅速な対応が必要な場合もありますので、不安がある場合には#8000に電話することで、専門のスタッフにいつでも安心してご相談いただけます。
#8000の使い方と緊急時の対処法
目を離した隙に大人用の薬を飲んでしまった、昼間に病院に行って薬をもらったけれど夜になって症状が悪化してきた、なんとなくいつもと様子が違うなどの場面で、病院へ行くべきか、初期対応はどうするべきか悩むと思います。
#8000に電話をかけると、救急車を呼んでください、夜間救急を受診してください、明日の朝まで様子を見ましょうなど、具体的なアドバイスをもらうことができますので、そのアドバイスに従って次の行動に移っていきます。
緊急時に親が取るべき行動
愛する我が子が苦しんでいる姿を目の当たりにすると、親としては心が痛み、冷静さを保つのが難しいものです。
そのような時こそ、一呼吸おいて今の状況を整理してください。
電話で相談を受けた際、医師や看護師は親御さんからのお話から状況を想像して、適切な対応を考えます。
相談するときのポイントとして、お子さんの性別と年齢は必ず伝えるようにしてください。性別や年齢からおおよそ想定できる病気が変わってくることがあります。
また、皮疹が出ている、けいれんしている、変な呼吸をしているなどの症状がある時には、受診時には症状が消えてしまうことがあるので、写真や動画に記録していると、診断の大きな手がかりになることがあります。
専門家からのアドバイス
医学的な側面では子どもは「小さな大人」ではなく、「小児」という全く違う概念です。
大人と同じような対応をしたとき、それは子どもにとっては害になってしまうことがあります。
小児医療は非常に専門的で高度な知識や技術が必要です。お子さんに異常を感じた時には、極力小児を専門としている病院やクリニックを受診することをおすすめします。
しかし、急なできごとですと、すぐに受診できる小児科がどこか分からないこともあると思います。
そのような時に#8000を使って、一番近くの小児医療を提供している施設にアクセスしてください。
#8000に繋がらない時に使える窓口・サイト
日本小児科医会のホームページには#8000を含めて4つの小児救急医療情報ツールが紹介されています。
(1) こどもの救急(ONLINE-QQ)
6歳以下の小児が対象で、今受診すべきか知りたい時や、家庭での対処方法を知りたい時に役立ちます。
子どもが事故にあった時の救急蘇生法や家庭内での予防方法なども紹介されています。
いざという時のためにブックマークに追加しておくことをおすすめします。
(2) こども救急ガイドブック
今受診すべきか知りたい時や、家庭での対処方法を知りたい時に加えて、救急医療機関を知りたい時に使用することができます。
こどもの救急とも似ていますが、より地域に密着した情報が多く載っていて、夜間休日の診療所や小児救急外来の一覧を都道府県毎に作成しています。
(3) 救急医療情報システム
こちらは、小児に限らず各都道府県の救急医療情報を提供しています。
小児救急に特化しているものではないので、受診前に小児科の専門医がいるか電話で確認しておいた方が安全です。
(4) #7119
#7119は全年齢が対象で、救急車を呼んだほうがいいのか、今すぐ病院に行ったほうがいいのかなど迷った際の相談窓口として電話で専門家からアドバイスを受けることができます。
#7119は緊急受診の必要性をメインに判断し、必要な場合はそのまま緊急要請を行います。
対応していない地域もあるため確認が必要です。
関連記事:#7119(救急相談電話)に繋がらない時に利用したい緊急相談窓口
症状がつらくなったときに病院が休みだったらどこを頼ればよいのか困ってしまいますよね。
夜間や休日でもすぐに医師に相談ができるように、ファストドクターのアプリをダウンロードしておきませんか?
緊急時の対応と判断のポイント
緊急時にチェックする重要なポイントはいくつかあります。
生命維持のサイクルのABCDEと呼ばれるもので、A(Airway 気道)→B(Breathing 呼吸)→C(Circulation 循環)→D(意識 Dysfunction of CNS)→E(体温管理 Environmental Control)を意識して行いましょう。
まず、気道です。飴玉が詰まってしまったり、おもちゃを飲み込んでしまった。これはAの気道のトラブルで、背中を叩いたり、みぞおちのあたりを圧迫して誤飲したものを取り除きます。
嘔吐物で窒息することもあるので、嘔吐物は速やかに取り除きましょう。
次に、呼吸です。お風呂やプールで溺れて呼吸していない。そのような時は超緊急ですので、胸骨圧迫(心臓マッサージ)をしながら救急車を呼んでください。
喘息があるお子さんでは、喘息発作で呼吸がゼイゼイヒューヒューいっている、というような時も、すぐに病院へ行ってください。
次は循環です。首には太い頸動脈という血管が走っています。その血管がドクドクしているか確認して、万が一動いていない時は有効な血液が心臓から送られていないのですぐに119番してください。
また、子どもはすぐに脱水になります。胃腸炎などで嘔吐や下痢をしている際には脱水になりやすいです。脱水状態では口の中が乾燥します。
いつもより摂食量が少なかったり、お水が飲めない、嘔吐下痢を繰り返している時は、黄色信号ですので、病院受診をおすすめします。
次は意識状態です。小さなお子さんの場合は、意識障害を判断するのが難しいことがあります。そのような時に、いつもそばにいる親御さんの言葉がとても参考になります。
「いつもより口数が少ない」「いつもと何か違う」という親御さんからの訴えの裏に、実は意識障害が隠れていることもあります。
夜病院に行って何もなかったら迷惑だと思われるかな、と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、何もないことは迷惑ではなく、むしろ医療者にとっても嬉しいことです。
たとえ結果的に問題がなくても、何もなかったらどうしよう、という思いで受診を控えるのではなく、何もないことを確認してもらおうという気持ちで病院を受診してください。
最後は、体温管理です。子どもは体に備わっている体温コントロール機構が未発達で、熱中症にもなりやすいです。
発熱時や熱中症が疑われる時には、首や脇、脚の付け根などの太い血管が走っているところをクーリングしてください。
反対に、低体温も危険ですので、冬場に池に落ちてしまったり、寒い地域で雪に埋もれてしまった時には毛布で体を温めながら病院を受診してください。
以上の5つのポイントは救急医療現場でも非常に重要で意識的に行っていることですので、ご家庭でも万が一の際には、参考になれば幸いです。
日常での健康管理
今までは、病気になった時や怪我をした時の有事の対応方法をお話しました。
しかし、まずは病気にならないように普段から健康づくりや病気の予防対策を行っていくことも大切です。
日常で行える健康管理や予防策
- 手洗いうがい
子どもが病院を受診する理由で最も多いのが、感染症です。インフルエンザやコロナウイルスをはじめとして、ノロウイルスやRSウイルスなども小児に非常に多い感染症です。
感染症対策に重要なのが、手指消毒です。子どもは外でいろんなものを触るので、手に見えない汚れがついていることが多いです。
帰宅したら、石鹸を使って指の間や手の甲までしっかり手洗いをし、喉の奥までうがいをしましょう。
- 予防接種
ワクチンは病気にかかるのを予防したり、病気にかかっても重篤化するのを防ぐ役割があります。
赤ちゃんの頃は、お母さんから胎盤を通してもらった抗体(病原体を排除するタンパク質)がありますが、生後6ヶ月頃からはお母さんの抗体がなくなっていくので、自分で抗体を作っていく必要があります。
日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(2023年4月改訂版)を参考にし、お子さんを感染症から守りましょう。[1]
- 生活指導
事故の予防も大切です。子どもの事故で最も多いのが交通事故で次が溺水です。
外出の際には、横断歩道で飛び出さない、車の影に気を付ける、道路に転がっていくボールを追いかけないなどの指導を日頃から行いましょう。
また、お風呂やプール、夏休みで水場へ出かける時、お子さんから目を離さないこと、ライフガードを正しくつけることなどの予防が大切です。
- 整理収納
誤飲も小児の救急外来でよくみられる事故です。子どもの手の届くところに大人用の薬を置かない、タバコの吸い殻を置きっぱなしにしない、おもちゃは使ったら片付けるなどの誤飲予防も行っていきましょう。
親の役目とは
私たち医師にとって、親御さんからの視点は診療する上で非常に重要です。
初めて診察するお子さんの場合、一見医療者から見ると異常が無いように見えることも多いです。
例えば、あまり話したがらない子の場合、人見知りな子なのかなと思うこともあります。
しかし、親御さんからの「いつもと何か違うんです。」の一言で、私たちは診療中目の色を変えます。
上手く症状が伝えきれないお子さんの診療において、一番重要なのが、いつも側でお世話をしている親御さんたちからの「いつもより活気がない」「いつもより食事量が少ない」「活気がない」という情報です。
そういった情報から私たちはお子さんからのSOSを見逃さずに診療をすることができます。
「こんなこと話しても仕方がないかな」と思うようなことでも、診断や治療する上で重要な場合があるので、迷わず医師にお伝えください。
不安やストレスに立ち向かうために
子どもが健やかに育ってくれるか不安になったり、ストレスに感じることもあると思います。
今まで読んできたことが、万が一必要になった時にちゃんと対応できるか不安に駆られると思います。
しかし、覚えていていただきたいのは、1人で不安にならずに周りに頼っていいということです。
#8000をはじめ、行政や民間でも子育てを応援する制度は医療に限らずたくさんあります。
専門家もついているので、困ったことがあれば相談し、1人で悩まず、病院や行政などを頼ってください。地域で一体となって子育てを応援しています。
安心した育児への道
育児不安は子育てで孤立した時に起こりやすくなります。不安を感じたときには、人に迷惑をかけるかもしれないと思わず、気軽に周囲に助けを求めることが重要です。
保健所では育児相談や母親学級、家庭訪問などの制度があったり、病院ではソーシャルワーカーという専門の職員が、妊娠・出産、病気などをきっかけに生活全般をサポートするスタッフがいたりと、子育てをする環境をバックアップする体制が整っています。
#8000を利用して安心できる育児を
#8000は夜間休日、自治体によっては24時間、相談料無料で電話相談することができます。
#8000について知っておくことで、非常時に頼れる方法があるという安心感を持っていただくことができると思います。
緊急時に対応と健康管理のバランスの重要性
子どもが病気や怪我で苦しんでいる時は、親御さんはつきっきりで看病をしたり、長い病院の待ち時間に耐えたりと、精神的にも体力的にも負担がかかりやすいです。
そのような時だからこそ、親御さんが倒れてしまわないように、必要な際には少し入院して看護師さんに看護してもらったり、行政の健康相談室を利用したり、周りにたくさん頼るようにしてください。
親御さんとお子さんが共に健やかであることを私たち医療者は祈っています。
参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。