熱中症の治し方|重症度別の応急処置
熱中症は症状の度合いによって緊急性や対処法が異なります。熱中症の重症度別の応急処置についてみていきましょう。
初期の症状と対処法
初期の熱中症は軽症に当たります。症状は以下のとおりです。[1]
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意識がはっきりしている
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顔が青白い
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めまい・立ちくらみがある
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筋肉痛やこむら返りがある
熱中症の軽症ではほとんどの場合、適切な応急処置により症状が改善します。現場の応急処置のポイントは大きく分けて以下の3つです。
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涼しい場所で安静にする
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衣類をゆるめ体を冷やす
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水分と塩分を補給する
軽症の場合は、最初に風通しのよい涼しい場所へ移動して安静に過ごします。
えり元をゆるめ、うちわや扇風機で風を送るのも体を冷やすために有効です。風を送るときに皮膚の表面をぬらしておくと、水分の蒸発とともに熱が奪われるため、体温が下がりやすくなります。[1][2]
体を効率的に冷やすためには、首の付け根・わきの下・太ももの付け根に保冷剤やアイスパックを当てましょう。
これらの部位は体の表面に動脈が通っているため、血液を冷やして効率的に体温を下げられます。
屋外で熱中症が起きたときなど、手元にアイスパックがないときは、自動販売機やコンビニで冷えた水のペットボトルや氷を購入できます。
体温が高いときに額に冷却シートを貼る人も多いですが、体温を下げる効果はそれほど大きくありません。[1]
意識がはっきりしていれば、水分と塩分の補給を促しましょう。
熱中症では、水分だけではなく塩分不足も体の中で起きています。
水分補給には、経口補水液やスポーツドリンクのような水分と塩分を同時にとれる飲み物がおすすめです。スポーツドリンクがないときは、食塩水(水1Lに対し、食塩1~2g)を飲ませることも有効です。[1]
ほとんどの場合、 軽症 の熱中症はその場の応急処置により症状が改善します。
しかし、症状が軽いと思っていても、急激に病状が悪化することもあります。初期の熱中症でも油断せずに見守り、病状の変化にすぐ対応できるようにしましょう。[2]
また応急処置で症状が改善しないときは、すぐに医療機関を受診することが大切です。[1]
関連記事:熱中症の初期症状は?判断方法と間違えやすい他の病気も紹介
中等症の症状と対処法
中等度の熱中症でみられる症状は以下のとおりです。[1]
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吐き気がする・吐く
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頭ががんがんと痛む
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体がだるい
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意識がはっきりしない
熱中症の中等症は、医療機関で治療を受ける必要があります。
中等症では、吐き気や吐いてしまうなどの症状があり、口から水分や塩分を補給できないことがあるためです。
医療機関の点滴治療により不足している水分と塩分を補う必要があります。吐き気や頭痛、意識がぼんやりしているなどの症状があるときは、速やかに医療機関を受診しましょう。[1]
関連記事:熱中症の症状チェック|頭痛も熱中症のサイン?治し方も解説
重症の症状と対処法
重症の熱中症でみられる症状は以下のとおりです。[1]
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意識がない
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呼びかけに対する返事がおかしい
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けいれんがある
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まっすぐ歩けない・走れない
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体が熱い
重症の熱中症の場合は臓器の障害が進んでおり、命を落とす危険があります。
早急に救急車を呼びましょう。意識障害があると、自力で水分や塩分を補給することができません。
救急車の到着を待っている間も、積極的に体を冷やしましょう。
体全体に水をかけるなどをして、できるかぎりの応急処置を行います。[1]
症状別の治し方と対処法
熱中症は、重症度によりさまざまな症状があらわれます。熱中症の症状別の治し方と対処法についてみていきましょう。
頭痛の対処法
頭痛がみられている熱中症は中等度であり、医療機関で治療を受ける必要があります。[1]
熱中症による頭痛に対して、ロキソニン®(成分名:ロキソプロフェン)などの頭痛薬を飲もうと考えている人もいるでしょう。
熱中症による頭痛は、極度な水分不足が原因であるため、頭痛薬を飲んでも大きな効果が得られません。
頭痛持ちの人で普段から痛み止めを飲んでいる人も、熱中症を発症した際は薬を服用しないようにしましょう。
熱中症を発症しているときに頭痛薬を飲むと、腎臓に負担をかける恐れがあります。
頭の痛みが熱中症によるものかどうかを判断するには、その他の症状がないかを確認します。
関連記事:熱中症による頭痛を速攻で治す方法はある?対処法について解説
吐き気の対処法
熱中症で吐き気があるときは中等度の熱中症であるため、医療機関を受診して点滴を受けましょう。
吐き気や嘔吐(おうと)がみられるのは、すでに胃腸の動きが鈍っており、自分で水分と塩分を補給するのが難しい状態です。[1]
自力で水分補給できても、吐いてしまえば塩分などのミネラルがさらに失われ、吐いた内容物により窒息のリスクがあります。
関連記事: 熱中症による吐き気の対処法は?なぜ吐いてしまうのか原因も解説
寒気の対処法
熱中症で寒気を感じるときは、中等症の熱中症の疑いがあるため医療機関で治療を受ける必要があります。[1]
体の水分不足が続くと、脳や心臓への血流を保つために血管が収縮し、皮膚表面が冷たくなります。[3]
寒気を感じても体温が下がっているわけではありません。乾いたタオルを体に当てて皮膚のマッサージをすると血管が広がり、熱を逃がすのを助ける効果も期待できます。[4]
重症度を判断するポイント
熱中症は病状の進み具合によって症状が異なるため、重症度を見分ける目安になります。熱中症の重症度を判定するポイントは以下のとおりです。[1]
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意識がはっきりしているかどうか
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自分で水を飲めるか、飲んだ水を吐いていないか
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応急処置で症状が改善したか
熱中症の重症度を判断するうえで、最も大切なのは意識がはっきりしているかどうかです。
意識がないのは重症かつ危険な状態であるため、早急に救急車を呼ばなければなりません。
意識があってもぼんやりしていたり応答が鈍かったりするときは、中等症以上の熱中症の可能性があるため、医療機関を受診しましょう。[1]
意識がはっきりしていても、自分で水分を飲めないのであれば点滴を受ける必要があります。軽い熱中症に対して応急処置をした後に症状が改善しない場合も、医療機関を受診しましょう。[1]
・暑いところにいて熱中症の疑いがあるが、様子を見たい
・心当たりはないのに熱中症のような症状がある
・風邪や体調不良との見分けがつかない
このような場合、医療機関を受診するかどうか迷ってしまう方が多くいます。
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熱中症にならないための予防策
日本の夏は高温多湿で熱中症のリスクが高い環境です。日頃から対策をして熱中症の発症を防ぎましょう。熱中症の予防策を詳しく紹介します。
こまめな水分補給
熱中症の予防には、こまめに水分を補給することが大切です。[1][5]
一度に大量の水分を取っても余分な水分は尿として体外に排泄されてしまうためです。水分は食品にも含まれており、体の代謝活動により体内でも作られます。[6]
これらを考慮した飲み物からの水分摂取量の目安は以下のとおりです。
夏など汗をかきやすい季節は、水分と一緒に塩分を補給することが大切です。汗をかくことで、水分と塩分が同時に失われるためです。
汗をかいたときに大量の水分を取ると、体の塩分バランスが崩れて熱中症を引き起こす要因にもなります。
汗をたくさんかいているときは、水分と一緒に塩あめを食べたり、スポーツ飲料など塩分濃度0.1~0.2%の飲料を飲んだりしましょう。[1]
また水分はのどが渇く前にとるようにします。のどの渇きは脱水が始まっているサインです。喉が渇いてからでは、水分補給のタイミングが遅いため注意しましょう。
外出前や運動前などの汗をかく前に、水分を補給するのもよいでしょう。
暑さを避けるための工夫
熱中症予防のためには、暑さを避ける必要があります。屋内にいるときは窓を開けたり扇風機を利用したりして、室内の風通しをよくしましょう。気温が高い日はエアコンで温度調節することも重要です。[1][5]
また昔ながらの涼み方も、暑さを和らげる効果があります。
緑のカーテンやすだれを利用すれば、窓から直射日光が入りにくくなり、室温の過剰な上昇を防ぐことができます。家の周りに打ち水をすれば、撒いた水が地面に保たれやすく、涼しさを持続できるでしょう。[1][5][8]
熱中症のリスクを知るための手段として「WBGT」の指数を参考にするのもおすすめです。
WBGTは「暑さ指数」のことで、数値が高いほど熱中症の発症リスクが高いことを意味します。
WBGTは環境省の熱中症予防サイトで確認できるので、屋外での仕事やスポーツの予定がある人は事前にチェックしておくとよいでしょう。[1][5]
外出の際は、気温が高い日や時間帯を避けることも大切です。
外出時は、なるべく日陰にいるようにしましょう。日向にいるときは日傘を利用したり帽子を着用したりします。屋外にいるときは無理をせず、適度に休憩をとりましょう。[1][5]
衣服の調整
熱中症のリスクが高い夏は、服装の選び方にも配慮しましょう。
ゆったりした服装を選んだりえり元をゆるめたりすると風通しがよくなり、体に熱がこもりにくくなります。また衣類を選ぶときに、吸湿性や速乾性に優れた素材のものにすると、快適に過ごせます。[1][5]
とくに衣類の色によっては、太陽の熱を吸収しやすいものもあります。黒色など濃い色の服は輻射熱(ふくしゃねつ)を吸収しやすい特徴があります。
夏はなるべく薄い色の服を選んで、熱中症を予防していきましょう。[1]
まとめ
熱中症は症状の度合いに応じて、治し方や対処法が異なります。
とくに重症の熱中症では、体の臓器に深刻なダメージを与えたり命を落としたりする危険もあり、救急車を呼ぶなど緊急度の高い対応が求められます。
記事内で紹介した内容を参考に、熱中症の重症度を判断して適切な対応を取るようにしましょう。
少しでも判断に迷う場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
また日頃から熱中症の予防策を取り、夏の健康管理に努めましょう。
水分や塩分を補給しているにもかかわらず、めまいや倦怠感、頭痛、吐き気が治らない場合は
脱水症状が進行していると考えられ、受診が必要です。
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熱中症の疑いがある場合はアプリから一度症状についてお聞かせください。
参考文献
[4]-旅行医学豆知識- 第5回 熱中症に注意!-日本旅行医学会
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。