ヒトメタニューモウイルスの原因や診断方法を知り感染を予防しよう

公開日: 2025/03/13
ヒトメタニューモウイルスの原因が気になっていませんか? 聞き慣れないウイルスのため「どうやって感染するの?」「普通の風邪と何が違うんだろう」と疑問に思う人も多いでしょう。 ヒトメタニューモウイルスは日本でも毎年感染者が確認されており、誰でも感染する可能性があります。 冬から春にかけて流行しやすく、症状だけではインフルエンザや風邪と見分けがつきません。 場合によっては重症化することもあり、油断できないウイルスのひとつです。 この記事では、ヒトメタニューモウイルスの原因や予防のポイントを解説します。 自分や家族を感染症から守れるように、ヒトメタニューモウイルスについて知りましょう。

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目次

ヒトメタニューモウイルスの原因は

ヒトメタニューモウイルスは、以下に分類されるウイルスです。[1]

  • ニューモウイルス科

  • メタニューモウイルス属

ヒトメタニューモウイルスは、2001年にオランダで初めて発見されたウイルスです。[2]

ただし1958年にはすでに感染が拡大していたことが研究によりわかっています。[3]

「新しく発生したウイルスなのでは?」と思われがちですが、比較的最近発見されたというだけで特別なウイルスではありません。

風邪やインフルエンザと同様に、基本的な感染対策をおこなうことで予防可能です。日頃からこまめな手洗いやアルコール消毒を心がけ、感染リスクを減らしましょう。

大人にも感染する病気?

ヒトメタニューモウイルスは小さな子どもに感染しやすいウイルスですが、大人にも感染することがわかっています。[2]

大人が感染した場合、症状には以下の特徴がみられます。[1]

  • おもに咳・鼻づまり・呼吸困難がみられる

  • 若い成人では声がかれることが多い

  • 高齢者で呼吸困難の頻度が高い

  • インフルエンザと比べると発熱しにくい

  • 無症状の人から肺炎を起こす人まで重症度に差がある

基本的には軽い症状だけで自然に回復しますが、高齢者や免疫力が低下している人は肺炎や気管支炎を起こして重症化することがあります。

感染予防のため、人混みを避けたりマスクを着用したりするなどの対策をおこないましょう。[4]

致死率は高いのか?

免疫力が弱っている人がヒトメタニューモウイルスに感染すると、重い肺炎を起こして命に関わることがあります。

研究によると、免疫不全の人がヒトメタニューモウイルスによる肺炎を発症した場合、致死率が10〜80%だったと報告されています。[5]

このため白血病やがんなど免疫力が低下しやすい病気の人は、肺炎の症状がないかこまめにチェックすることが大切です。

発熱や咳、息苦しさなどがあるときは肺炎のおそれがあるため医療機関を受診しましょう。[6]

また免疫力が低下している人に加えて、以下に該当する人もヒトメタニューモウイルスによる重症化リスクが高いとされています。[4]

  • 乳児

  • 高齢者

  • 慢性閉塞性肺疾患 (COPD)の人

  • 喘息の人

この条件に当てはまる場合は、重症化を防ぐため日頃からこまめな手洗いを徹底しましょう。

とくに流行シーズンである3〜6月はヒトメタニューモウイルスの感染者が増えるため、人が密集する場所へ行くのを避けることも大切です。[3]

ヒトメタニューモウイルスが原因でどのような症状があらわれる?

ヒトメタニューモウイルスに感染すると、気道に炎症が起こり風邪に似た症状があらわれます。[1]

炎症を起こした気道の部位により、それぞれ症状に以下のような違いがみられます。

上気道感染による症状

  • 鼻水・鼻づまり・のどの痛み[1]

  • 年長児や健康な成人でみられやすい[7]

下気道感染による症状

  • 発熱・咳・息苦しさ・ゼェゼェとした呼吸(喘鳴:ぜんめい)[1]

  • 乳幼児や高齢者にみられやすい[7]

気道の炎症は上気道から下気道へ進むのが一般的で、下気道感染のほうが重い症状を引き起こしやすいです。

感染を繰り返すたびに症状が軽くなる傾向があるため、2回目以降は上気道感染のみで済むことも珍しくありません。

このほか下痢・吐き気・おう吐といった胃腸の症状や、中耳炎があらわれる場合もあります。[1]

ただし症状には個人差があり、解熱剤が切れると高熱がぶり返したり、ひどい咳でおう吐したりするなど重い症状がみられることもあります。

基本的には風邪の症状でおさまるケースが多いですが、症状が長引くときや悪化しているときは医療機関を受診しましょう。

初期症状はあるのか

ヒトメタニューモウイルスの初期症状は風邪によく似ており、おもに以下の症状がみられます。[8]

  • 鼻水・鼻づまり

  • 軽い咳

  • 発熱

このほか子どもが初めて感染した場合は、約半数に咳と喘鳴が起こります。

とくに生後6か月未満の赤ちゃんでは一時的に呼吸が止まる「無呼吸」が起こることがあるため、こまめな経過観察が必要です。

呼吸が早くなったり呼吸のたびに胸がへこんだりするなど、苦しそうな様子がないか確認しましょう。

重症化するとどうなるのか

ヒトメタニューモウイルスによる症状が重症化すると、以下の症状を引き起こす可能性があります。[3]

細気管支炎

鼻水・発熱・咳・喘鳴・息苦しさ

喘息様気管支炎

激しい咳・喘鳴

肺炎[6]

発熱・咳・息苦しさ

乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人は重症化しやすく、入院が必要になることもあります。[3]

とくに生後6か月未満の場合、生後6か月から5歳までの子どもに比べて入院するリスクが3倍になるという報告もあります。[1]

咳が長引いたり、ゼェゼェとした呼吸がみられたりした場合は早めに医療機関を受診しましょう。

ヒトメタニューモウイルスの原因を特定する診断方法

ヒトメタニューモウイルスに感染しているかどうかは、以下の検査で判断できます。

  • PCR検査

  • 迅速診断キット

どちらの方法も、鼻やのどからとった検体を使用して検査が実施されます。

PCR検査のほうが精度が高く確実にウイルスを特定できますが、一般的な医療機関では設備がなく検査できないことも珍しくありません。

そのため、5〜15分程度で診断できる迅速診断キットを使用するのが一般的です。[8]

ただしヒトメタニューモウイルスの検査は、レントゲンで肺炎が疑われる場合など限られた人にしか実施されません。基本的には対症療法だけで治るため、ウイルスを特定しなくても治療可能です。

検査をしないと不安になるかもしれませんが、過度に心配しないようにしましょう。

ヒトメタニューモウイルスの原因を取り除く治療方法

ヒトメタニューモウイルスに直接効果がある薬はありません。[4]

症状を和らげる対症療法が治療の中心となります。

対症療法で使用できる薬として、以下が挙げられます。[9]

対症療法薬

特徴

解熱鎮痛薬

アセトアミノフェン、イブプロフェンなど[9]

  • 熱を下げて痛みを和らげる薬です。
    のどの痛みや頭痛、からだの痛みなどに効果があります。

  • 小児には安全性の高いアセトアミノフェンが推奨されています。[10]

鎮咳薬

デキストロメトルファン、チペピジン、リン酸コデイン、ジヒドロコデインなど[9]

  • 咳を和らげる薬です。

  • 12歳未満の小児にはコデイン類を含む鎮咳薬が使用できません。
    呼吸抑制の副作用を起こす可能性があるためです。 [11]
    小児向けの市販薬を購入したい場合は薬剤師に確認しましょう。

去痰薬

カルボシステイン、アンブロキソール、グアイフェネシンなど

  • 痰(たん)の排出を促す薬です。

  • 痰を出そうとして咳が出る場合など、痰と咳が両方続いている人にも効果的です。

抗ヒスタミン薬

クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンなど[9]

  • 鼻水やくしゃみを和らげる薬です。

  • 抗ヒスタミン薬の副作用として、熱性けいれんの持続時間を長くするリスクがあります。[12]
    過去に熱性けいれんを起こしたことがある場合は、市販薬を使用せず医療機関を受診しましょう。

ヒトメタニューモウイルスは自然に治ることが多いですが、症状が長引いてつらいときは無理をせず薬を活用しましょう。

ただし発熱が長引いたり息苦しさが続いたりする場合は、肺炎を起こして重症化している可能性があります。

なかなか良くならない場合は、市販薬を使用せず早めに医療機関を受診しましょう。

何日で治すことが可能なのか

ヒトメタニューモウイルスに感染したあと、通常は1週間ほどで自然に回復します。[3]

ただし症状がひどい場合は、回復までに時間がかかることがあります。

ヒトメタニューモウイルスに効く特効薬はないため、重症化させないよう休息をとりながら回復を促しましょう。

具体的には、以下の3つを心がけると症状改善に効果的です。[4]

  • しっかり睡眠をとる

  • こまめに水分をとる

  • 無理をせず安静にする

また症状が治ってからもウイルスの排出は7〜14日間持続するため、周囲へ感染させないよう配慮を続ける必要があります。[3]

マスクを着用したり、こまめに手洗いをしたりするなどの感染対策をおこないましょう。

ヒトメタニューモウイルスの感染経路からみる予防方法

ヒトメタニューモウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。[3]

それぞれの特徴は以下のとおりです。

感染経路

特徴・予防法

飛沫感染[13]

  • 感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスが空気中に飛散して水滴になり、目・鼻・口の粘膜に付着することで感染します。

  • マスクの着用により感染リスクを減らせます。

接触感染[13]

  • ウイルスが付着した手で目・鼻・口にふれることで感染します。

  • こまめな手洗いが感染予防につながります。[4]

よくふれる部位をアルコール消毒するのも効果的です。

ヒトメタニューモウイルスは、子どもの感染をきっかけに家庭内感染するケースが多いと報告されています。[2]

とくに子どもが2人以上いる家庭では、きょうだい間で感染するリスクが高いため感染対策が大切です。

おもちゃ・ドアノブ・リモコンなど、子どもがよくふれる部位を消毒し感染を広げないようにしましょう。

よくある質問

よくある質問にお答えします。

ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの違いは何ですか?

ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの違いは以下のとおりです。

 

ヒトメタニューモウイルス

RSウイルス

感染しやすい年齢[3]

1〜2歳

1歳以下

重症化しやすい年齢[14]

1〜3歳

(生後6か月までは軽症なケースが多い)

1歳以下

(とくに生後6か月までにかかると重症化しやすい)

流行シーズン

3〜6月[3]

11〜1月[15]

高熱が出る日数[14]

5日程度

3日程度

保護者への感染[14]

感染しやすい

感染しにくい

どちらも乳幼児に感染しやすいウイルスで症状も似ていますが、流行シーズンに違いがあります。

RSウイルスは秋から冬にかけて流行し、ヒトメタニューモウイルスは冬から春ごろにかけて流行します。

ただし、感染時期や症状だけでウイルスを見分けることはできません。

乳幼児はどちらのウイルスに感染しても重症化する可能性があるため、高熱が持続した場合は医療機関を受診しましょう。

ヒトメタニューモウイルスの症状のピークはいつですか?

ヒトメタニューモウイルスの感染後は徐々に症状が強くなり、発症5〜7日目に咳や喘鳴のピークを迎えます。発症後から1週間ほど経つと症状が落ち着くことが多いです。

ただし回復が遅い場合は、重症化して肺炎を起こしている可能性があります。発熱が長引いたり、息苦しさを感じたりするときは早めに医療機関を受診しましょう。

また回復後もヒトメタニューモウイルスの排出は7〜14日ほど続きます。[3]

学校や職場に復帰したあとも、周囲の人にうつさないようマスクを着用しましょう。

ヒトメタニューモウイルスで下痢症状は起こりますか?

ヒトメタニューモウイルスに感染すると、一部の感染者で下痢が起こることがあります。[1]

研究によると、ヒトメタニューモウイルス感染者のうち以下の割合で胃腸の症状がみられたと報告されています。

  • 下痢:7.0%[16]

  • おう吐:8.8%[16]

ヒトメタニューモウイルスは発熱や咳など風邪の症状だけでなく、胃腸炎のような症状が生じることもあります。

とくに子どもは下痢やおう吐により身体の水分が失われ、脱水になりやすいです。

一度に大量の水分を飲むと下痢やおう吐が悪化する場合もあるため、保護者が少しずつ水分を飲ませましょう。

ヒトメタニューモウイルスに抗生剤は効きますか?

ヒトメタニューモウイルスはウイルス感染症のため、抗生物質は効果がありません。抗生剤は細菌の増殖を抑える薬であり、ウイルスには作用しないためです。[17]

ただしヒトメタニューモウイルスに感染したあと、細菌による二次感染を起こした場合には抗生剤が使用されることがあります。二次感染として以下の感染症が挙げられます。[18]

 

おもな症状

細菌性肺炎[6]

発熱・咳・呼吸困難・身体のだるさ

中耳炎[19]

耳の痛み・耳だれ・耳が詰まった感じ

副鼻腔炎[20]

鼻づまり・どろっとした鼻水・顔の痛み

これらの症状がみられる場合は、ウイルス感染だけではなく二次感染を起こしている可能性があります。

医師の判断によっては抗生剤が使用されることがあるため、医療機関を受診しましょう。

まとめ|ヒトメタニューモウイルスの原因を知り予防に努めましょう

ヒトメタニューモウイルスの感染を防ぐには、基本的な感染対策を徹底することが大切です。日頃からこまめな手洗いやマスクの着用を心がけ、飛沫感染や接触感染を防ぎましょう。

一方でヒトメタニューモウイルスに感染しても、基本的には軽い風邪の症状で落ち着くため過度に心配する必要はありません。

ただし乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人では重症化する可能性があります。自分が感染した場合は、感染を広げないように複数の人がふれる部位を消毒しておくことが大切です。

ヒトメタニューモウイルスの対策方法を知り、自分だけでなく家族の健康も守りましょう。

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参考文献

[1]ヒトメタニューモウイルス|NIH

[2]Haas,LEM.el al. Human metapneumovirus in adults. Viruses. 2013 Jan;5(1):87-110.

[3]菊田英明."3. ヒト・メタニューモウイルス".ウイルス,2006,第56巻第2号,p.173-182

[4]ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染|WHO

[5]Renaud C,el al.Mortality rates of human metapneumovirus and respiratory syncytial virus lower respiratory tract infections in hematopoietic cell transplantation recipients. Biol Blood Marrow Transplant. 2013 Aug;19(8):1220-1226.

[6]細菌性肺炎|日本感染症学会

[7]新型コロナウイルス感染症との鑑別が問題となったヒトメタニューモウイルスの成人間感染と考えられた事例|JSTAGE

[8]ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症|加古川医師会

[9]かぜ薬の成分と選び方・服用法について教えてください|愛知県薬剤師会

[10]市販の解熱鎮痛薬の選び方|厚生労働省

[11]コデインリン酸塩等の小児等への使用制限について|厚生労働省

[12]熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 7.注意すべき薬剤|日本小児神経学会

[13]感染経路別予防策|日本環境感染学会

[14]日本環境感染学会地域セミナー|日本環境感染学会

[15]RSウイルス感染症とは|国立感染症研究所

[16]Ebihara T, et al.Human metapneumovirus infection in Japanese children. J Clin Microbiol. 2004 Jan;42(1):126-132.

[17]小児のかぜ 小児科医への紹介のタイミング|JSTAGE

[18]抗微生物薬適正使用の手引き第三版|厚生労働省

[19]耳の病気|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

[20]鼻の病気|日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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