ヒトメタニューモウイルスの症状は大人が発症したらどうなる?感染経路や予防策についても解説

公開日: 2025/03/13
「ヒトメタニューモウイルスと診断されたけれど、症状はつらくなるかな?」 「子どもがヒトメタニューモウイルスにかかってしまった。うつらないようにするにはどうしたらいいんだろう」 大人がヒトメタニューモウイルスと診断された場合、どのような症状があらわれるのか不安になりますよね。 家族や周りの人が感染した場合では、ヒトメタニューモウイルスはうつる病気なのか、もしうつるのであれば予防法があるのかについても悩むでしょう。 ヒトメタニューモウイルスに大人が感染すると、風邪のような症状で比較的軽症であることが多いです。高齢者は免疫不全者は重症化リスクも高く、注意が必要なケースもあります。 この記事では、ヒトメタニューモウイルスに大人が感染した場合の症状を解説します。 また感染経路や予防策も紹介しているため、家族が診断された場合に家庭内で感染を拡大させないよう参考にしてください。

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大人のヒトメタニューモウイルスの症状は?

ヒトメタニューモウイルスは呼吸器感染症を引き起こすウイルスで、大人が感染した場合は風邪とよく似た症状があらわれます。

  • 一週間ほど続く咳

  • 喉の痛み

  • 発熱

  • 鼻水

  • 鼻づまり

咳は発症してから5〜7日目にピークとなることが多く、発熱は5日以上続くケースもあります。[1]

多くの場合は獲得した免疫により、ヒトメタニューモウイルスに感染しても軽症もしくは無症状です。そのため感染していることに気づかないまま治癒することがほとんどです。

ただし高齢者や免疫が低下している人、基礎疾患をもつ人が感染すると肺炎や呼吸困難など重症化するリスクが高いため、感染対策をしっかりとおこなうなどの注意が必要となります。[2]

大人のヒトメタニューモウイルスの検査方法は?

健康状態が良好な大人がヒトメタニューモウイルスに感染した場合、医療機関で検査されることはあまりありません。

ヒトメタニューモウイルスの検査方法はPCR検査、抗原検出検査、血清学的検査の3つの方法がありますが、これらの検査を大人が受けると保険適応外で医療費が10割負担になるためです。

保険適用で検査をおこなえるのはレントゲンなどで肺炎が疑われる6歳以下の小児のみと限定的です。

そのため検査による診断はついていないものの、ヒトメタニューモウイルスである患者は多数いると考えられます。[1]

家族や周りの人がヒトメタニューモウイルスと診断されている場合は、検査をせずにみなし陽性とされ治療となる場合もあります。

検査方法

内容

特徴

検査手順

PCR検査

体内にある微量のウイルスの遺伝子を検出する検査

  • 体内のウイルスが微量でも検出が可能

  • 感染してから発症する数日前でもウイルスを検出可能

  • 精度が高い

鼻や喉の奥の粘膜を綿棒でこすり、細胞をとる

抗原検出検査

体内のウイルスがもつ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査

  • 精度は高くないが、10分程度の短時間で結果がわかる

  • PCR検査装置がない医療機関でも簡易的に検査可能

鼻や喉の奥の粘膜を綿棒でこすり、細胞をとる

血清学的検査

ウイルスに感染したのちに体内で作られる抗体を調べる検査

  • 診断や治療目的ではなく研究や流行の調査で利用

採血をおこなう

一般的にヒトメタニューモウイルスの診断にはPCR検査または抗原検出検査が利用されることが多いです。

PCR検査はより精度の高い結果を得られますが、結果が出るのに1日程度かかってしまいます。

そのためヒトメタニューモウイルスにかかっているかどうかの判断には、10分程度で迅速に結果が出る抗原検出検査を用いるケースがほとんどです。

大人のヒトメタニューモウイルスは咳がひどくなる?

ヒトメタニューモウイルスに大人が感染すると、通常は軽い風邪症状でおさまることが多いですが、一部の人は咳がひどくなる場合があります。

とくに以下に当てはまる人は、ヒトメタニューモウイルスによって咳が悪化する場合があります。

  • 高齢者

  • 免疫力が低下している人

  • 糖尿病や心疾患などの基礎疾患をもつ人

  • 喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患をもつ人

ウイルス感染による咳の悪化がきっかけで肺炎になったり、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)が重症化したりする可能性があるため注意が必要です。[3]

長引く咳、呼吸困難や息苦しさを伴うケースは、早急に医療機関へ受診して医師に相談しましょう。

大人だからといって症状が悪化しづらいと自己判断せず、早期に適切な治療を受け症状の重症化を防いでください。

大人のヒトメタニューモウイルスの合併症は?

ヒトメタニューモウイルスの合併症は、おもに気管や気管支、肺などにウイルスが感染して引き起こる呼吸器感染症です。[4]

気管支炎、肺炎、喘息の急性増悪、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪などが挙げられます。

合併症

症状

気管支炎

  • 長く続く「コンコン」「ケンケン」という乾いた咳

  • 透明~黄色の痰

  • 鼻水

  • 喉の痛み

  • 息切れや息苦しさ

  • 微熱や軽い発熱

  • 体のだるさ

肺炎

  • 38℃以上の高熱

  • 激しい咳と痰

  • 体のだるさ

  • 体力の低下

  • 息切れや息苦しさ

  • 胸の痛みや圧迫感

  • 寒気

喘息の急性増悪(喘息の発作)

  • 止まらない咳

  • 明け方に咳で目が覚める

  • 息切れや息苦しさ[5]

  • 喘鳴(喉の奥でゼーゼー、ヒューヒューという音がする)

  • 呼吸数の増加

  • 息をするたびに肩が上がる

慢性閉塞性肺疾患の増悪

  • 安静時のひどい息切れ、息苦しさ

  • 咳の増加

  • 黄色や緑色の粘り気が強い痰の増加

  • 胸の圧迫感

  • 体のだるさや全身の痛み

  • 発熱

重症化した場合、入院を必要とする重篤な疾患を引き起こす可能性があるため、早期に医療機関を受診し治療を開始することが大切です。[3]

ヒトメタニューモウイルスの感染経路は?

ヒトメタニューモウイルスは飛沫感染と接触感染によって感染します。[6]

感染経路を理解しておくことで、どのように感染予防をすればよいかの参考にもなります。

感染経路

特徴

おもな細菌やウイルス[7]

飛沫感染

患者が咳やくしゃみをすると、ウイルスを含んだ飛沫が1m~2mの範囲で飛び散り、空気中のウイルスを他の人が吸い込むことで感染する

  • A群溶血性レンサ球菌

  • 百日咳菌

  • 肺炎球菌

  • 肺炎マイコプラズマ

  • ヒトメタニューモウイルス

  • インフルエンザウイルス

  • RSウイルス

  • アデノウイルス

  • 風しん、麻しんウイルス

  • ムンプスウイルス

  • 水痘・帯状疱しんウイルス

  • 新型コロナウイルス

接触感染

患者がふれた物の表面にウイルスがつき、ウイルスをさわった手で顔や鼻、口にふれることで感染する

  • 黄色ブドウ球菌

  • 肺炎球菌

  • 百日咳菌

  • 腸管出血性大腸菌

  • ヒトメタニューモウイルス

  • ノロウイルス

  • ロタウイルス

  • RSウイルス

  • エンテロウイルス

  • アデノウイルス

  • 風しん、麻しんウイルス

  • ムンプスウイルス

  • 水痘・帯状疱しんウイルス

  • インフルエンザウイルス

  • 新型コロナウイルス

ヒトメタニューモウイルスは感染力が強いため、保育園や幼稚園、高齢者福祉施設など集団生活をする場所において集団感染となる可能性があり注意が必要です。[1]

「くしゃみをする」と約4万個の飛沫が飛び散り、「5分間会話する」「咳をする」と3千個の飛沫が飛び散るといわれています。

ヒトメタニューモウイルスを広げないために、患者側もマスクをつける、こまめな手洗いやアルコール消毒などの基本的な感染対策をおこなうことが大切です。

大人のヒトメタニューモウイルスの治療

大人のヒトメタニューモウイルスの治療も、子どもがかかったときと変わらず去痰薬や咳止め、解熱剤などの対症療法が基本です。

ヒトメタニューモウイルスそのものに効果的な薬はなく、症状をやわらげる薬が中心に処方されます。

薬の種類

効果

去痰薬

  • 痰の粘りを抑えて痰の切れを良くする

  • 痰の量を減らす

  • 気道の機能を正常化させて痰が出しやすい環境を整える

咳止め

  • 咳を出すように指示している部分にはたらきかけ咳を抑える

  • 気道を広げて咳や息苦しさを抑える

  • 咳によるエネルギー消費を抑えて体力を回復しやすくする

解熱剤

  • 発熱や痛みを引き起こすプロスタグランジンという物質の産生を抑えて熱を下げる

  • 血管や汗腺を広げて体外へ熱を逃し、体温を下げる

  • 発熱に伴って起こるだるさなどの体の負担をやわらげる

症状がある時期にはそれぞれの症状に対して適切な薬を服用しつつ水分をとり、体をしっかり休め安静にすることも大切です。免疫力を高めると早い回復につながります。

ゼーゼーする咳が止まらない場合は、去痰薬や咳止め、解熱剤のほかに気管支拡張薬なども医師の判断で使用するケースもあります。

基本的には医療機関を受診して適切な治療をはじめた場合、自宅での療養で完治できる病気です。

しかし息苦しさや呼吸困難などの呼吸障害があると、入院での治療が必要になることもあるため、症状が長引く場合は医師に相談しましょう。

ヒトメタニューモウイルスにかからないための予防策

ヒトメタニューモウイルスに有効なワクチンはないため、感染拡大を防ぐには接触感染対策・飛沫感染対策の徹底が重要です。[8]

予防策を紹介するので家庭内での二次感染の予防に役立ててください。

予防策

内容

手洗いをする

  • 手についたウイルスを洗い流すために、外出後や食事前に石けんで手を洗う

  • 指先や爪の間にウイルスが付着しやすいため、重点的に30秒以上しっかりと洗う

うがいをする

  • 喉のバリア機能を高めるためにうがいをする

アルコール消毒をする

  • 外出先など手が洗えない場所では、アルコールの消毒液を使用して手を消毒する

  • 家庭内で患者がいる場合、患者がふれた物や場所をアルコールで消毒する

マスクを着用する

  • 咳やくしゃみによって飛んだウイルスを吸い込まないために、マスクを着用する

  • 患者と近距離で接触する際にはマスクを着用する

換気を良くする

  • 1時間に1回程度、室内の空気をこまめに入れかえて空気中のウイルスを減らす

タオルや食器をわける

  • 鼻水や唾液中のウイルスにふれて感染することを防ぐために、患者とタオルや食器の共有をしない

感染者との接触を避ける

  • 咳やくしゃみをしている人との距離を保つ

  • 感染している可能性のある人との接触をできる限り避ける

  • 寝室や居住空間をわける[9]

免疫力を高める生活を心がける

  • 十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がける

  • ストレスを溜めない

  • 規則正しい生活をする

手洗いやマスクの着用、換気などの基本的な予防策を日頃から実践することで、ヒトメタニューモウイルスにかかるリスクを大幅に減らせます。

消毒液はアルコールや0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液が有効です。

手指の消毒にはアルコールによる擦り込み消毒、おもちゃやドアノブ、食器などには0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒をおこないましょう。[6]

0.02%次亜塩素酸ナトリウム溶液は家庭用の塩素系漂白剤を水で薄めて作ります。使用する塩素系漂白剤によって次亜塩素酸ナトリウムの濃度が異なるため、濃度を確認してから作成しましょう。[10]

塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウム濃度

塩素系漂白剤の量

水の量

6%

10mL

3L

1%

60mL

3L

よくある質問

ヒトメタニューモウイルスについて以下のよくある質問に回答します。

感染した場合の疑問点など気になることがある場合は参考にしてくださいね。

ヒトメタニューモウイルスは家庭内感染をしますか?

ヒトメタニューモウイルスは、おもに飛沫感染や接触感染により家庭内でも感染が広がる可能性があります。

家庭内での感染を防ぐために日常的に手洗い、うがいを徹底しておくと感染拡大のリスクを減らせます。

大人は子どもよりも軽い症状となるケースが多いですが、家庭内に高齢者や基礎疾患をもつ人、免疫力が低下している人がいる場合は重症化する恐れがあり注意が必要です。

家庭内で感染を広げないように対策をするとともに、もし重症化リスクの高い人が感染してしまった場合は早めに医療機関を受診して治療を開始してください。

ヒトメタニューモウイルスになった場合、会社を休まなくてはいけませんか?

ひどい咳や息苦しさ、発熱などの症状がみられず全身状態が良好であれば、会社は休まなくてもよいです。[11]

インフルエンザなどと違い隔離期間が定められていないため、ヒトメタニューモウイルスに感染したからといって必ず休まなければならないというわけではありません。

ただし症状があり会社へ出社するのがつらい場合は、会社に相談をし休むことも検討しましょう。十分に休息をとることが早期の回復につながります。

さらに無理に出社することで他の同僚に感染を広げてしまうリスクが高くなるため、体調が回復するまで休養し感染拡大防止に努めることも大切です。

ヒトメタニューモウイルスの咳が止まらない原因は何ですか?

ヒトメタニューモウイルスの感染によって引き起こされる、気管支炎や肺炎などの合併症が原因で咳が止まらないケースがあります。

1~2週間咳が続いている場合は、ヒトメタニューモウイルス感染症のほかに病気が隠れていないかどうか、医療機関を受診し医師に相談しましょう。

まとめ

ヒトメタニューモウイルスは大人に感染した場合、免疫をすでに獲得していることが多いため、症状は軽症で済むことが多いです。

しかし高齢者や免疫が低下している人や基礎疾患をもつ人は重症化のリスクが高いため、とくに注意が必要です。

症状が悪化すると咳がひどくなり、気管支炎や肺炎などの合併症を引き起こす可能性があります。

咳が長引いたり、息苦しさなどを感じたりする場合は、早めに医療機関を受診し治療を開始することが重要です。

ヒトメタニューモウイルスの感染経路は、飛沫感染や接触感染がおもな原因です。日常的な手洗いやうがい、マスクの着用などの予防を徹底し感染拡大防止に努めましょう。

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参考文献

[1]わたしたちの健康2023年3月号 ヒトメタニューモウイルス

[2]成人におけるヒトメタニューモウイルス

[3]Human Metapneumovirus

[4]Characteristics of human metapneumovirus infection in adults hospitalized for community-acquired influenza-like illness in France, 2012–2018: a retrospective observational study

[5]喘息増悪(発作)

[6]RSウイルス/ヒトメタニューモウイルス感染症

[7]03-2感染経路対策、感受性対策

[8]島根県感染症情報 ヒトメタニューモウイルス(hMPV)の流行

[9]ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症/松江市ホームページ

[10]さいたま市/塩素系消毒液(次亜塩素酸ナトリウム液)の使い方

[11]「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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