適応障害の症状や特徴を理解して予防に活かそう

公開日: 2025/05/19 更新日: 2025/05/19
「最近気分が落ち込みやすいけれど、適応障害なんだろうか?」 「メンタルの不調が続いている場合は、病院を受診したほうがいいのかな?」 新学期や新生活が始まる時期など、新しい環境に慣れず精神的につらいと感じる場面が増えることでしょう。 心身の不調を感じたら早めに周りに相談し休養をとり、症状を悪化させないことが重要です。 この記事では適応障害の症状や特徴を詳しく説明します。 適応障害にならないための予防策もあわせて紹介しますので、参考にしてください。
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適応障害の症状

適応障害になると気分が落ち込んだり、頭が痛くなるなど身体に影響を及ぼしたり、暴飲暴食など行動に変化があらわれます。

これらの症状は精神面、身体面、行動面の3つに大きく分けられます。

適応障害の症状は日常生活や仕事に支障をきたし、毎日の生活をつらく感じさせることもあるため適切な予防は重要です。

症状

症状の具体例[1][2]

精神面

  • 焦りや不安感

  • 気分の落ち込みや抑うつ感

  • イライラ感

  • 気分の浮き沈み

  • 過度の緊張感

  • 意欲や集中力の低下

身体面

  • 動悸

  • 汗をかく

  • めまい

  • 頭痛

  • 胸の痛みや圧迫感

  • 食欲不振または過食

  • 睡眠障害(不眠または過眠)

  • 疲れやすい、倦怠感

行動面

  • いきすぎた飲酒や暴食

  • 無断欠席

  • 対人関係のトラブル

  • けんかなどの攻撃的な行動

  • 無気力感による活動量の減少

適応障害は環境の変化や生活上のストレスが原因となって発症する心の不調の一種です。[2]

ストレスフルな出来事や状況に対して過剰に反応し、心身にさまざまな症状があらわれます。

ストレスを感じたときに必ずしも全員に発症するわけではなく、性格やストレスへの感受性、周りの環境が大きく影響します。

通常ストレスの原因から離れると適応障害の症状は軽減することが多いです。

しかし放置してしまうと症状が長引く可能性があるため、早期に対処していきましょう。

適応障害はどうしてなる?

適応障害は環境の変化や生活上のストレスが、個人の順応力の限界を超えたときに発症します。

人生におけるライフステージの変化や、これまでの環境や状況、人間関係が大きく変わる出来事はとくに心身に大きな影響を与えるケースがあります。

  • 入学、入社

  • 転勤・異動・転職

  • 結婚・出産

  • 病気や大切な人との別れ

  • 新しい土地への引っ越し

  • 人間関係のトラブル

環境の変化は適応障害を引き起こすストレスの原因のひとつです。

十分に適応できない場合は心身の不調をきたすため、変化に対して過度に負担を感じないように心がけるとよいでしょう。

適応障害になりやすい人の特徴は?

下記に当てはまる性格の人やストレス感受性が高い人は、他の人よりも適応障害を発症しやすい傾向があります。

  • 真面目で正義感が強い

  • 完璧主義

  • 心配性

  • 周りの目が気になる

  • 周囲に気を遣いすぎてしまう

  • 繊細で落ち込みやすい

  • 自己肯定感が低い

  • 人に頼るのが苦手、悩みを一人で抱え込んでしまう

小さなミスにも敏感に反応して完璧を求める人や、自分の感情・行動をうまくコントロールできない人、他人を優先しすぎて自分の感情を抑え込んでしまう人は、ストレスを溜め込みやすく適応障害になりやすいです。

ただし上記に当てはまらないからといって適応障害にならないわけではなく、誰にでも発症する可能性があります。

適応障害になるかどうかは、個人の順応力、ストレスに対する管理能力、周りの環境などが大きく関わっています。

関連記事:適応障害になりやすい人は性格が原因?仕事環境やサインをチェック

適応障害の診断

適応障害の診断は医師が患者の症状、生活背景、ストレス要因について問診し、総合的に医師が判断して診断が確定します。

診断基準には、「DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)」と「ICD-10(国際疾病分類第10版)」の2つの基準が使用されます。

  • DSM-5:米国精神医学会が発行する精神疾患の基本的な定義を記した診断基準

  • ICD-10:世界保健機関(WHO)が作成した疾病を分類するための基準

上記の概念を簡単にまとめると以下の基準を満たしているかどうかが適応障害の診断基準です。[3]

  • ストレスの原因が明確であること

  • ストレスに晒されて3か月以内に症状があらわれていること

  • ストレスの原因がなくなると、6か月以内に症状が回復すること

  • 症状の程度や強度はストレスに対して不釣り合いなほど苦痛をもたらしていること

もし医師の問診により適応障害と診断された場合、医師とともに適切な治療計画を立てることが重要です。

早期の診断と適切な治療が症状の改善につながります。

適応障害の治療

適応障害の治療は環境調整、順応力の向上を目的とした精神療法、薬物療法を組み合わせることが一般的です。[4]

症状や状況にあわせて以下の3つの治療方法からアプローチすることが重要とされています。

治療方法

具体的な方法

目的

環境調整

  • 生活環境を改善する

  • 仕事の部署変更や負担の軽減をおこなう

  • 2週間から1か月程度の休職をとる

  • 家庭内での役割変更をおこなう

  • ストレスを引き起こす人間関係の整理をおこなう

ストレスを軽減し、患者が順応しやすい環境を作る

精神療法

  • ストレスマネジメントをする

  • 思考パターンの改善をおこなう

  • 感情や行動を調整する力を養う

ものの考え方や受け止め方を修正することでストレスへの適応力を強化し、今後のストレス源にうまく対処できるようにする

薬物療法

  • 抗不安薬や睡眠薬を服用する

  • 症状が強い場合は抗うつ薬などを服用する

精神的な症状を緩和し、急性の不安や抑うつ症状をやわらげる

治療は自分自身の感情や思考をコントロールできるようになることを目指します。

周囲のサポートも重要であり、家族や職場の理解と協力が早期の回復につながる大きな力になります。

時間をかけて治療を進めていくため、患者本人のペースで焦らずに向き合うことも大切です。

適応障害にならないための予防策

適応障害にならないためには、日々の生活の中でストレスと上手に付き合う方法や柔軟な考え方を身につけることが重要です。

ストレスは日常で避けられない場面もありますが、完璧を求めて自分を追い込まないようにしたり、ストレスをやわらげる努力をしたりすることで心身に与える影響を最小限に抑えられます。

適応障害にならないための予防策

具体的な方法

ストレス管理の技術を身につける

  • リフレッシュする時間を確保する

  • 趣味をもつ

生活習慣の見直し

  • 十分な睡眠をとる

  • バランスの取れた食事をとる

  • 適度な運動をとる

柔軟な考え方をもつ

  • 完璧を求めすぎない

  • 失敗してもよいという考えをもつ

自分を過信しすぎない

  • つらいと感じた場合、その感情を素直に認める

  • 無理をしない

周りを頼る

  • ストレスを一人で抱え込まずに、感じているストレスや不安を他の人と共有する

  • 友人や家族、職場の同僚などに相談する

  • 医療機関を受診する

予防策を実践することで、ストレスがかかっても感情のコントロールができ適応障害を防げます。

自分を無理に追い詰めず、周囲のサポートを求めながら、心と体のバランスを大切にしていきましょう。

メンタルの不調が長く続いたり、生活面での支障が出てきていたりする場合には、休職などの環境調整や投薬による治療が必要なことがあります。

早めに心療内科や精神科を受診し、医師と相談するようにしてください。[1][5]

適応障害とうつ病の違いはある?

うつ病と適応障害はストレスから離れたときに抑うつ状態が継続するかどうかが大きな違いです。

症状が似ており混同されるケースもみられるため、自己判断せずに医師の診察をうけましょう。

 

適応障害

うつ病

原因

  • 特定のストレス

  • 特定のストレス

  • 遺伝的な要因

  • 脳内の伝達物質バランスの乱れ

ストレスからの開放

数か月のうちに改善。

ストレスの原因に近づく、考えると症状が出る

抑うつ状態が長期間続く

ストレスの原因にかかわらず1日中症状が出る

症状

  • 抑うつ感

  • 無気力感

  • 疲労感

  • 不安感

  • 食欲の低下

  • 睡眠障害

  • 集中力の低下

  • 抑うつ感

  • 無気力感

  • 疲労感

  • 不安感

  • 食欲の低下

  • 睡眠障害

  • 集中力の低下

適応障害は、特定のストレスが原因で引き起こされることが特徴です。

転職や引っ越し、大切な人との別れなどの出来事がきっかけで発症します。

症状はストレス源を取り除く、またはストレスを遠ざけた後、通常は数か月のうちに改善します。

適応障害はストレスが解消されると症状も軽減するのが一般的です。

一方うつ病は、ストレスが原因で発症するケースのほかに、遺伝的な要因や脳内での伝達物質のバランスの乱れも関与しています。

そのためストレスから解放された後も、抑うつ状態が6か月以上続くことがあります。

症状が慢性化しやすく、日常生活に支障をきたすほどの深刻な症状が続くため、専門的な治療が必要です。

関連記事:うつ状態とうつ病の違いとは?症状・治療・仕事への影響までわかりやすく解説

適応障害だと周りの人が気づけるサインは?

適応障害だと周りの人が気づくことができるサインには、以下のようなものがあります。

  • ぼんやりすることが多くなった

  • イライラすることが多くなった

  • 笑顔がなくなった

  • いつも焦っているようにみえる

  • 涙もろくなった

  • 体調が悪そうにみえる

  • 食欲がなさそう

  • お酒の量が増えた

  • 仕事の効率が落ちた

  • 無断欠勤や遅刻が増えた

とくに普段と比べて極端に変わった行動や、感情の変化がみられる場合は注意が必要です。

以前はハキハキしていた人が、ぼーっとしていることが多くなったり、穏やかだった人が急に怒りっぽくなるなど今までと真逆の変化がみられるケースは適応障害かもしれません。

周りの人が早期に異変に気づき声をかけられれば、早い段階で支援や助けを求めやすくなります。

適応障害の進行を防ぐには、周りの理解と協力も非常に重要です。

適応障害の人との関わり方

適応障害の人との関わり方は、相手の感情や状況を理解し共感する、相手を否定しないなど適切なサポートをすることが非常に大切です。

適応障害の人をサポートするときは、以下の点に気をつけて関わることがよいでしょう。

  • 干渉しすぎない

  • 否定せず共感の態度で関わる

  • 無理強いをしない

  • 肯定的な言葉をかける

  • 相手の思いを傾聴する

  • 無理に励まさない

適応障害の人と関わる際には、相手がどのようなストレスに直面しているか、どれほどつらい状況にいるかを理解し相手の感情に寄り添います。

無理に解決策を出すのではなく、話を聞いてあげることが早い回復につながります。

批判やプレッシャーを避け、相手のペースを尊重しながらサポートしていきましょう。

よくある質問

適応障害についてのよくある質問に回答します。適応障害について理解を深めるための参考にしてください。

適応障害をそのままにするとどうなりますか?

適応障害は適切な対処をせずに放置すると、症状が悪化しうつ病や不安障害など他の精神疾患を併発する可能性があります。

ストレスが続いている状態では心身が疲弊し、最初は軽かった不安感や抑うつ感が悪化し、無気力や絶望感が強くなっていきます。

うつ病は適応障害の延長線上で発症することがある病気です。

気になる症状があれば、回復が難しくなる前に医療機関を受診し医師の助けを借りることが重要です。

※うつ病だから重症、適応障害だから軽症というわけではありません。

適応障害の人の顔つきに特徴はありますか?

適応障害の症状が進行することで、精神的に不安定な状態であることによりあらわれる特徴的な表情の変化があります。

  • 無表情、ぼんやりとした顔になる

  • 不安が強く緊張し顔がこわばる

  • 目に力がなくなる

  • 身だしなみに気を遣わなくなる(無精髭のままであるなど)

心の状態が体に反映された結果としてあらわれるため、周りの人が気づくサインとしても重要です。

ただし表情の変化だけで適応障害かどうかを判断することはできないため、気になる場合は医療機関を受診し適切な診断を受けるようにしましょう。

適応障害になったらどれぐらいで前向きな気持ちになれますか?

適応障害を乗り越えるための回復期間には、個人差がありますが一般的には1〜3か月ほどの期間がかかるとされています。[6]

症状が軽い場合はストレスの原因を取り除ければ、比較的短期間で改善することもあります。

仕事や生活環境を変えるだけで、精神的に楽になり症状が軽減するケースもあるため、ストレスのから離れることは極めて重要です。

一方で、症状が重い場合は回復までに時間がかかることもあります。

長期間続くストレスや心の負担が深刻な場合は、治療やカウンセリングが必要になります。

回復に必要な期間やペースは人それぞれですが、最も大切なのは無理をせず、周りのサポートを受けながら焦らずに回復の道を進むことです。

適応障害の気分や体調に波はありますか?

適応障害の回復期には気分や体調の波が頻繁にあらわれます。

症状が改善していると思っても、些細な出来事で気分が落ち込んだり、体調が崩れたりすることはよくみられるケースです。

一方で、元気を取り戻して少し前向きな気持ちになることもあります。

適応障害は気分や体調の浮き沈みが頻繁に発生し、波となってあらわれることもある病気です。

体調には波があることを理解し、無理をせず自分のペースで回復を目指していきましょう。

まとめ|適応障害の症状を理解し、心身の不調を感じたら休養しよう

適応障害は、環境の変化や生活上のストレスに過剰に反応することで発症します。

とくに新しい生活や仕事がスタートしたときなどに、心身の不調があらわれることが多いです。

症状は大きく3つに分類され、精神的な症状(不安感や気分の落ち込み)、身体的な症状(動悸や疲労感)、行動的な変化(無気力や対人トラブル)で日常生活に支障をきたすこともあります。

適応障害の予防には、日々の生活でストレス管理を意識し、柔軟な考え方やリフレッシュ方法を取り入れることが重要です。

完璧を求めず、感情を抑え込まずに周りに相談することが、症状の悪化を防ぐためには大切です。

適応障害は放置すると症状が悪化し、うつ病など他の精神疾患を引き起こす可能性があります。

早期の休養や医療機関を受診することが必要です。

自分の状態を理解し、無理をせず周囲のサポートを受けながら回復に向かっていくことが、最も効果的な治療法です。

心身の不調を感じたときには、早めの相談と休養を心がけて症状が進行する前に適切な対処をおこないましょう。

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参考文献

[1]内科医が知っておくべき精神科疾患

[2]適応障害 / 統合失調症

[3]適応障害の診断と治療

[4]適応障害

[5]こころの健康サポートガイド

[6]職域のメンタルヘルス不調における最近の知見

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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    • 食事や水分をとることができない
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