うつ状態とうつ病の違いとは?症状・治療・仕事への影響までわかりやすく解説

公開日: 2025/05/19 更新日: 2025/05/19
「最近気分が落ち込みやすいけど、もしかしてうつ病?」 「うつ状態とうつ病ってどう違うんだろう」 このように、自分の体調について戸惑いを感じていませんか? うつ状態とうつ病ではどちらも気分の落ち込みといった共通の症状がみられますが、症状の重さや持続期間により区別され治療法も異なります。 この記事では、うつ状態とうつ病の違いを比較しながら解説します。 不安を少しでも軽くできるように、それぞれの違いを理解することからはじめましょう。
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うつ状態(抑うつ状態)とうつ病の違いとは?

「うつ病」とは、深刻なうつ症状が2週間以上続く病気の名前です。[1]

診断には「DSM-5」や「ICD-10」という診断基準が使用されます。

一方でうつ病の症状がみられるものの、診断基準を満たしていない状態を「うつ状態(抑うつ状態)」と呼びます。[2]

これは、一時的な気分の落ち込みや軽度のうつ症状をあらわすときに使用される言葉です。

それぞれ似ている言葉ですが、以下の3つの点で違いがあります。

  • 症状の違い

  • 治療法や対処法の違い

  • 仕事や生活への影響の違い

うつ状態とうつ病の違いを知り、自分に合った対処法を見つけたり不安を減らしたりできるようにしましょう。

症状の違い

それぞれの症状の特徴をまとめると以下のとおりになります。

自分の症状が「うつ状態(抑うつ状態)」と「うつ病」のどちらに近いか確認してみましょう。

 

うつ状態(抑うつ状態)

うつ病[1]

症状がみられる期間

一時的

2週間以上続く

日内変化

元気な時間もある

1日中元気がない

好きなことに対する興味関心

ある程度ある

ほとんど感じなくなる

日常生活への影響

軽度

重度

自殺願望の有無

ないことが多い

あることが多い

うつ状態(抑うつ状態)では、気分が沈んでやる気が出なくなったり集中できなかったりなど軽いうつ病の症状がみられます。[2]

日によって波があり、元気な時間もあるのが特徴です。

一方うつ病ではうつ状態(抑うつ状態)が1日中続き、元気のある時間がほとんどありません。

食欲がなくなったり眠れなくなったりする症状が続くため、日常生活への影響も大きく「死にたい」と感じるほどつらい場合もあります。[1]

「落ち込むことが多い」「以前は楽しめたことに興味がない」などの症状が2週間以上続く場合はうつ病になっているかもしれません。

うつ状態(抑うつ状態)やうつ病かもしれないと感じたら、精神科や心療内科、メンタルクリニックを受診しましょう。

治療法や対処法の違い

うつ状態(抑うつ状態)とうつ病はよく似た症状がみられます。

[3]

それぞれの治療法・対処法のポイントは以下のとおりです。

 

治療法・対処法

うつ状態(抑うつ状態)

  • しっかり休み、ストレスから離れることが基本です。

  • 考え方のくせを見直す「認知行動療法」がおこなわれることがあります。

  • 眠りづらいなどの症状に対して薬物治療が併用される場合があります。[4]

うつ病[5]

  • 休養をして脳を休ませるのが基本で、場合によっては休職や入院が必要になるかもしれません。

  • うつ病の改善効果や再発予防効果が研究で証明されている認知行動療法を併用する場合があります。[6]

  • 抗うつ薬・睡眠導入剤・抗不安薬などによる薬物治療がおこなわれることがあります。

治療といえば「薬を飲むこと」をイメージしがちですが、うつ状態(抑うつ状態)でもうつ病でも休むことが何より大切です。

「怠けているみたいだから休みたくない」と感じる人もいるかもしれませんが、治療のひとつなので罪悪感をもつ必要はありません。

症状を悪化させないように、心と身体を休める時間を意識的に確保しましょう。

仕事や生活への影響の違い

うつ状態(抑うつ状態)とうつ病では、仕事や日常生活に与える影響の程度にも違いがみられます。

うつ状態(抑うつ状態)

  • 仕事を続けながら回復を目指せる場合もあります。[4]

  • 「朝起きにくくなった」「なんとなくやる気が出ない」といった軽い不調が日常生活で続くことがあります。

うつ病の場合

  • 集中力や判断力が低下することで仕事へ影響をきたしやすく、休職が必要になるケースが多いです。

実際に、うつ病などのメンタル疾患では3か月以上休職する人が多いと報告されています。[7]

  • 「食欲がない」「眠れない」「身の回りのことができない」など、日常生活にも強い影響が出る可能性があります。[8]

外出するのがつらくなり、引きこもりがちになることも多いです。[8]

うつ状態(抑うつ状態)では、うつ病に比べると日常生活への影響が小さく本人でも異変に気づかないことがあります。

しかし、放っておくと重症化してうつ病へ移行するかもしれません。

心が疲れていると感じたら「まだ大丈夫」と頑張りすぎず、早めに医療機関を受診しましょう。

一方うつ病では仕事や生活への影響が強くあらわれやすく、日常生活を送ることが難しくなる場合もあります。

重症化すると治療に時間がかかるケースもあるため、うつ病の可能性があると感じたら専門家による治療を受けましょう。

うつ状態(抑うつ状態)と診断されたら休職したほうがいい?

うつ状態(抑うつ状態)と診断されても、すぐに休職が必要になるとは限りません。[4]

日常生活や仕事への影響が少ない人は、働きながら治療できるケースもあります。

ただし仕事によるストレスが強く「このまま働き続けるのがつらい」と感じているときは、無理をせず思い切って休むことも必要です。

休職するか悩んだときは、主治医や上司、人事担当者、産業医などに相談してみましょう。

また、休職により収入が減るのが心配な場合は「傷病手当金」を利用するのがおすすめです。[9]

うつ状態(抑うつ状態)やうつ病でも、条件を満たせば受給可能です。

経済的な負担を軽減できる制度をうまく使いながら、自分のペースで治していきましょう。

うつ状態(抑うつ状態)・うつ病で病院に行くべきタイミング

以下のような症状が続いている場合は、医療機関を受診しましょう。[3]

  1. 気分が落ち込んで憂うつになる

  2. 以前は楽しいと思えたことに興味がなくなった、喜びを感じない

  3. 食欲がない、または食べすぎてしまう

  4. 寝つきが悪い、または寝すぎて起きられない

  5. ちょっとしたことでイライラする

  6. 疲れやすく、仕事や家事が手につかない

  7. 自分はダメな人間だと感じてしまう

  8. 集中力がなく、優柔不断になった

  9. 死にたい・消えてしまいたいと思うことがある

1と2のどちらかを含む5つ以上の症状が、2週間以上続いている場合はうつ病の診断基準に当てはまり、うつ病の可能性が積極的に疑われます。[1]

またうつの症状は朝がもっともひどく、夕方に少し楽になるのも特徴的です。

当てはまる項目がある人は「まだ受診するほどではない」と油断せず、精神科など医師に相談してみましょう。

よくある質問

よくある質問にお答えします。

「抑うつ状態」は何と読む?

「よくうつじょうたい」と読み、気分が沈んで元気が出ない状態のことです。[11]

日常会話でよく使われる「うつ状態」とほぼ同じ意味で、両者にはっきりとした違いはありません。

医療機関での呼び方として「抑うつ状態」を、日常生活では「うつ状態」を使用するシーンが多いです。

うつ状態の別の言い方はある?

うつ状態は「抑うつ」「抑うつ状態」「抑うつ気分」などと言い換えられることがあります。

このうち医療機関では「抑うつ状態」という表現がよく使われますが、わかりやすくするために「気分の落ち込み」などと伝えることもあります。

呼び方がいくつもあると難しく感じるかもしれませんが、いずれも「軽いうつ病の症状」を指す言葉です。[2]

うつ状態(抑うつ状態)はうつ病ではない?

似たような言葉ですが、うつ状態(抑うつ状態)とうつ病は同じではありません。

うつ病は、医師が「DSM-5」などの診断基準をもとに診断する「病気」です。

一方で診断基準を満たさないものの、いくつかのうつ症状が続いている場合は「うつ状態(抑うつ状態)」と呼ばれます。[2]

ただし、うつ状態(抑うつ状態)は必ずしもうつ病の前兆としてあらわれるとは限りません。

不安障害や統合失調症などのメンタル疾患にともなって、うつ状態(抑うつ状態)と診断されることもあります。[11]

このほか甲状腺や脳の病気、更年期障害などの病気が原因になっているケースもあります。

心の不調を感じたときは「うつ病かどうか」にとらわれすぎず、ほかの病気の可能性も視野に入れて早めに専門家に相談しましょう。

精神科でいう「うつ状態(抑うつ状態)」とは?

うつ状態(抑うつ状態)とは「軽いうつ病の症状が続いている状態」をあらわすときに使用される言葉です。[2]うつ病の可能性があっても診断基準にまだ達していない段階では、うつ状態(抑うつ状態)と診断されることがあります。

たとえば初診時には「抑うつ状態」とされ、経過をみながら後日「うつ病」と正式に診断されるケースです。

途中で診断が変わると戸惑うかもしれませんが、うつ病と確定するまでに時間がかかることは決して珍しくありません。

診察中に気になることや不安なことがあれば、遠慮せず医師に相談してみましょう。

うつ病 と診断されなくても注意が必要な 状態は?

以下のような状態に当てはまる人は、体調変化をこまめにチェックする必要があります。

抑うつ状態の継続・悪化[2]

  • 気分の落ち込みや無気力な状態が続いたり悪化したりすることで、うつ病の診断基準を満たすようになる場合があります。

適応障害[12]

  • 引っ越しや転職などの環境変化にうまく対応できず、強いストレスがかかり気分が落ち込んだり不安になったりする状態です。

  • ストレスの原因から離れると症状が軽くなるのが特徴です。

燃え尽き症候群

  • 仕事や育児などを頑張りすぎた結果、急にやる気が出なくなる状態です。

  • 1つのことに集中していた人が、突然会社に行きたがらなくなったり朝起きられなくなったりします。

  • 燃え尽き症候群の人の多くがうつ病を発症していたという研究報告があります。[13]

このような状態を放っておくと徐々に心がすり減り、うつ病に移行することがあります。

「以前より落ち込むことが増えた」「なんだかしんどい」など、体調の異変を感じるようになったら早めに医療機関を受診しましょう。

まとめ:うつ状態とうつ病の違いを知って適切な対応につなげましょう

うつ状態(抑うつ状態)とうつ病はどちらも心の不調をあらわす言葉ですが、症状の持続期間・重症度・対処法に違いがあります。

うつ状態(抑うつ状態)では、十分な休息や環境の見直しで自然に回復する可能性もあります。

しかし放置していると症状が悪化し、うつ病になる可能性があるため油断はできません。

「なんとなく元気が出ない」と感じることが増えてきたら、自分を責めたり我慢したりせず医療機関を受診しましょう。

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参考文献

[1]片桐建志.うつ病とはどのような病気でしょうか 早くうつ病と気付くためにはどうすればよいのでしょうか.杏林医会誌.2018年3月;49巻1号:91-92.

[2]うつ病・抑うつ状態と、うつの違いってなあに?|日本医師会

[3]こころもメンテしよう|厚生労働省

[4]うつ状態の診断で休職中の社員の治療方針を知りたい|厚生労働省

[5]うつ病の治療と予後|厚生労働省

[6]Rupke SJ, Blecke D, Renfrow M. Cognitive therapy for depression. Am Fam Physician. 2006 Jan 1;73(1):83–86.

[7]主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|厚生労働省

[8]うつ病を防ぐ|厚生労働省

[9]生活を支えるための支援のご案内|厚生労働省

[10]新機構団信・新3大疾病付機構団信用ご加入にあたって|住宅金融支援機構

[11]抑うつ状態(うつ状態)|厚生労働省

[12]適応障害|厚生労働省

[13]Pranjic N, Males-Bilic L. Work Ability Index, absenteeism and depression among patients with burnout syndrome. Mater Sociomed. 2014 Aug 26;26(4):249–252.

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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