ファストドクターのオンライン診療(心療内科・精神科)なら、処方薬の配送や診断書のオンライン発行に対応しています。診察は健康保険適用。お支払いはクレジットカードもしくはコンビニ後払いです。※診断書の内容は医師の判断によります。
不眠症は一生治らないものなのか
不眠症は一生治らないものではありませんが原因や症状によって治るまでに時間がかかったり、再発を繰り返したりする場合もあります。
しかし不眠症は生活習慣の改善やストレス管理、適切な治療で症状が軽くなり、完治することもある疾患です。
厚生労働省の令和5年国民健康・栄養調査結果によると、直近1か月で睡眠により休養がとれている人の割合は74.9%であり、国民の4人に1人が睡眠になんらかの問題を抱えていることが分かりました。
年代別では50代が最も多く、いずれの年代も年々増加傾向にあります。[1]
不眠症は単に眠れるようになれば治ったと思われがちですが、不眠が原因で起こる日中の倦怠感や集中力の低下、仕事のミスなどが改善されてはじめて完治したと言えます。
つまり不眠症治療の目的は日常生活の質を向上させることで、ただ睡眠薬を飲めばよいということではないのです。
また不眠の原因が生活習慣や別の疾患にある場合は、生活習慣を見直して原因となる疾患の治療をおこなう必要があります。
睡眠薬を飲むだけではかえって症状が悪化したり改善までに時間がかかってしまったりすることがあるためです。
睡眠薬を飲むことは対症療法に過ぎず、根本的な治療にはなりません。
不眠症を根本的に治すためには、原因をしっかりと見極めて専門医のもとで適切な治療や対処をすることが重要なのです。[2]
不眠症の種類と原因
不眠症には4つの種類があり、原因は大きく5つに分類されます。
症状が同じでも原因が違えば、治療法は異なります。自分がどれに該当するか把握しておきましょう。
【不眠症の種類】
種類 |
特徴 |
入眠障害 |
布団に入ってから眠るまでに時間がかかる。 不眠症で最も多いタイプ。 |
中途覚醒 |
睡眠中に何度も目が覚める。 高齢者に多くみられる。 |
早朝覚醒 |
予定していた起床時間よりも早く目が覚める。 高齢者やうつ病患者に多くみられる。 |
熟眠障害 |
眠りが浅く寝た気がしない。 睡眠時間は確保できているのが特徴。 |
高齢者に中途覚醒や早朝覚醒が多いのは、加齢により深い眠りのレム睡眠が減り、浅い眠りのレム睡眠が増えるためです。
つまり加齢で睡眠の質が落ちることは生理的現象なのです。
また高齢者の不眠は病気が原因の可能性も高く、認知症では高頻度で不眠をともなうことが知られています。
このような場合は不眠症の治療だけでなく原因となっている疾患の治療も必要になるため、不眠の原因を見極めることが大切です。
【不眠症の原因】
原因 |
特徴 |
生理的要因 |
生活習慣や睡眠環境、加齢など身体的な要因が不眠の原因となっているケース。 具体的には長い昼寝や夜勤、寝具が体に合っていないなど。 加齢により睡眠時間が短くなる、睡眠が分断されることも生理的要因のひとつ。 |
心理的要因 |
ストレスや不安が原因となり不眠を引き起こしているケース。 たとえば仕事やイベントの前夜に眠れなくなるなど。 |
薬理学的要因 |
カフェインの摂取や飲酒、薬剤の副作用により不眠になるケース。 代表的な原因薬剤にステロイドやインターフェロン、降圧剤のメチルドパ、抗パーキンソン薬のレボドパなどがある。 |
身体的要因 |
痛みやかゆみをともなう疾患が原因で不眠になっているケース。 関節痛や呼吸器疾患による咳込みなど。高齢者に多い夜間頻尿も身体的要因のひとつ。 |
精神学的要因 |
うつ病や統合失調症などの精神疾患にともなう不眠。精神学的要因による不眠の頻度は高く、専門医による治療が必須になる。 |
不眠症は男性より女性のほうが多く、重症度も女性のほうが高いという報告があります。[3]
女性に不眠が多い理由は、月経周期による睡眠障害や就労状況、生活環境が影響していると考えられています。
女性の不眠で最も多いタイプは「中途覚醒」です。
一方男性の不眠で最も多い理由は、20代では「就寝前の携帯電話やゲームに集中すること」で、30代、40代では「仕事」が挙げられます。
20代~40代では「そもそも必要な睡眠時間を確保できない」ために不眠を訴えているのに対し、50代になると最も多いのが睡眠の途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」です。[3][4][5]
不眠症の治療法は一般的に症状や原因から決めていくため、自分の症状や原因を知っておくことが大切です。[1]
不眠症が一生続くことによる影響
不眠症が続くと、精神的・身体的にさまざまな疾患を発症するリスクが高くなります。
睡眠中は副交感神経が優位になり、血圧や心拍を下げたり消化を促したりして体を回復させます。
副交感神経は自律神経のひとつで、リラックスしているときに働く神経です。
さらに睡眠中はストレスホルモンの分泌が減り、過度にストレスがかかることを避けて免疫力の低下を防ぎます。
このように睡眠は体や脳を回復させるだけでなく、ストレスから身を守る役割もあるのです。
日本人の睡眠時間は年々減少傾向にあり、20歳以上では4人に1人が睡眠に関する問題を抱えていると言われています。
さまざまな疾患のリスクを避けるためにも不眠症を治療することは重要であると言えます。[1]
不眠が続くことで起こる疾患
不眠が続くことで起こる疾患には以下のようなものがあります。
-
肥満
-
高血圧
-
糖尿病
-
心疾患
-
うつ病
睡眠不足が上記のような疾患を引き起こす原因のひとつが、食欲をコントロールするホルモンバランスの崩れです。
不眠が続くと食欲を抑えるレプチンの分泌が減少する一方で、食欲を増進させるグレリンの分泌は増えてしまうのです。
徹夜明けに食欲が爆発してしまったとういう経験がある人もいるのではないでしょうか。
一時的であれば問題はありませんが、睡眠不足が続くと慢性的に食欲をコントロールできなくなり、生活習慣病の高血圧や糖尿病、肥満の原因になります。
また高血圧や糖尿病のある人は、認知症を発症するリスクも高くなるため、注意が必要です。
ほかに不眠症が慢性化すると、交感神経の興奮によりストレスホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されます。
本来コルチゾールはストレスから体を守るために働きますが、過剰な分泌が続くと免疫力が低下するだけでなく脳へも影響して、うつ病を発症するリスクが高まってしまいます。
不眠症と寿命との関係
不眠症が寿命と直接関係あるという研究結果はありません。
しかし不眠症により高血圧や糖尿病などの生活習慣にかかると、結果的に寿命が短くなる可能性があります。
たとえば、たばこを吸っている糖尿病患者で肥満(BMIが30以上)かつ高血圧(160/100以上)をもつ65歳の人では、そうで無い人に比べて健康寿命が約10年短いという研究結果が報告されています。
短くなった期間は男性では9.7年、女性では10.1年で、男女差はほとんどありませんでした。
健康寿命とは、心身とも健康で自立して暮らせる期間のことです。[6]
また睡眠時間が4時間以下の場合と7時間の場合の死亡率を比較すると、4時間以下では心血管疾患をはじめとするあらゆる原因による死亡率が上昇するという研究結果があります。
これらより、睡眠時間は寿命に影響を与えると言えるでしょう。[7]
不眠症が一生治らないのを防ぐために日常生活でできる対処方法
不眠症は生活習慣を変えることで予防したり、悪化を防いだりできます。不眠症を治すために日常生活でできる対処法を把握しておきましょう。[8]
対処法 |
理由 |
起床後に日の光を浴びる |
起床後に日光を浴びると体内時計がリセットされ日中に活動的になるほか、睡眠リズムが整い睡眠の質が向上する。 |
適度な運動をする 日中の活動量を減らさない |
日中に体を動かすと睡眠の質を上げることができる。 日中の活動量が少ないと眠りが浅くなり不眠を悪化させるため注意が必要。 |
寝る前にリラックスする時間を設ける |
リラックスすると副交感神経が優位になり睡眠の質を上げることができる。 ただしパソコンやスマホの画面から発するブルーライトは睡眠の質を落とす可能性があるため避ける。 |
就寝時間と起床時間は一定にする |
寝不足を解消しようとして長い時間横になっていると睡眠の質が落ちる。就寝時間が遅れても起床時間は一定にするのがポイント。 |
昼寝をし過ぎない |
昼寝は昼食後から午後3時までの間に、30分以内が効果的。長い昼寝は夜の睡眠に悪影響であるため控える。 |
寝る前のカフェイン摂取・喫煙・飲酒をしない |
カフェインは覚醒作用があるため、夕方以降は控える。 またカフェイン、アルコールには利尿作用があり夜中にトイレに起きる原因となるため、寝る前の摂取は控える。 たばこに含まれるニコチンには、交感神経を興奮させ血圧や心拍を上げて睡眠の質を落とす作用があるため避ける。 |
いずれの対処方法も最初から完璧におこなう必要はなく、少し意識をすることから始めるとよいでしょう。まずはできそうなことから始めてみてください。
たとえば、朝起きたらカーテンを開けるだけで「起床後に日の光を浴びる」ことができます。
「寝る前にリラックスする時間を設ける」ことができたら、その時間はスマホに触らないよう引き出しの中や別の部屋に置いておきましょう。
徐々にできることを増やして、習慣づけていくことが大切です。
重度の不眠症を克服する方法はある?
重度の不眠症の対処方法も通常の不眠症と変わらず、日常生活でできる対処方法と合わせて医師のもとで適切な治療をおこなうことが基本です。
なかなか眠れないときは一度布団から出て過ごし、眠くなったら再び布団に入ると睡眠の質を落とさずに眠れます。
また入眠時間が遅くなっても決まった時間に起きて活動すると、睡眠欲求が高まって翌日の寝付きがよくなります。
8時間は眠らなければならないなど、睡眠時間に対するこだわりは睡眠の質を落とす原因のひとつです。必要な睡眠時間は個人差が大きいため、こだわり過ぎないようにしましょう。 [9][10]
不眠症の治療方法
不眠症の治療方法には非薬物療法(睡眠衛生指導・認知行動療法)・薬物療法の2つがあります。
非薬物療法における睡眠衛生指導では、睡眠に関する問題点を解消するために生活習慣や睡眠環境を整えて、薬を使わずに治療をします。
具体的には「適切な運動のおこない方」や「室内環境の整え方」「規則正しい食生活」などです。
睡眠衛生指導は薬物療法よりも先におこなうこともありますが、治療は医師の判断によるため一概には言えません。
認知行動療法は思考のクセや行動パターンを見直し、ストレスを減らしながら不眠症を改善する治療法です。
薬物療法をおこなう場合は認知行動療法を併用することが推奨されています。
薬物療法を終えたあとも再発予防のために睡眠衛生指導や認知行動療法を継続することがあります。
薬物療法では、症状に合わせて以下のような治療薬が用いられます。症状が改善すれば減量や休薬を検討します。
分類 |
症状のタイプ |
特徴 |
商品名(一般名) | |
オレキシン受容体拮抗薬 |
|
覚醒を維持する脳内のオレキシンの働きを弱める。 |
| |
メラトニン受容体作動薬 |
|
体内時計を整え、睡眠を促す。 |
| |
GABA-A受容体作動薬 |
|
脳内の興奮を抑える神経伝達物質GABAの働きを良くして睡眠を促す。 |
非ベンゾジアゼピン系 |
|
ベンゾジアゼピン系 |
|
不眠症は突然治ることはある?
不眠症が突然治ることは稀です。抱えていたストレスや不安がなくなると、突然治る場合もあるかもしれません。
また治療を進めていくなかで、徐々に改善してきたことが突然治ったと感じる人もいるでしょう。
不眠症は多くの場合少しずつ改善していくため早く治そうと焦らず、気長に治療を続けることが大切です。
治るきっかけはあるのか
不眠症は生活習慣や睡眠環境が整ったり、カウンセリングを受けたりしたことがきっかけで改善していく場合があります。
また、不眠症の原因になったストレスや心配ごとがなくなったり、不眠症を引き起こした疾患が改善したりすることも不眠症が治るきっかけのひとつです。
よくある質問
不眠症に関してよくある質問にお答えします。
不眠症は完治しないのか?
不眠症は適切な対処によって改善できる疾患です。生活習慣を改善したり、適切な治療をすることで完治する可能性が高まります。
ただし早く完治させようと焦ったり、とにかく睡眠薬を飲んで無理やり寝ようとすると、睡眠の質が落ちるなど症状を長引かせてしまうことになりかねません。
治療は気長に取り組むことが大切です。
不眠症が長引く・長期化するとどうなる?
不眠症が慢性化すると肥満や高血圧、糖尿病、心疾患などの生活習慣病やうつ病を発症するリスクが高くなります。
不眠はストレスホルモンを増加させるほか、食欲をコントロールするホルモンのバランスも崩してしまうためです。
ホルモンバランスの崩れが長期間に及ぶと不眠症が悪化し、生活習慣病の原因になります。
生活習慣病にかかると、その影響で寿命が短くなる可能性も指摘されています。
そのため不眠症は放置せず、すでに不眠で悩んでいる場合は悪化させないために医療機関で専門医の診察を受けることが重要なのです。
不眠症は治せますか?
不眠症は多くの場合で治せる疾患で、治療法は大きく分けて二つです。
「起きたら日光を浴びる」「夕方以降はカフェイン摂取を控える」など日常生活でできる対処法の実践や思考や行動のクセを見直す認知行動療法、専門医が必要と判断すれば睡眠薬を服用するなどです。
不眠症の原因になった疾患がある場合は、原因疾患の治療を優先しておこないます。不眠症は少しずつ改善するため、根気良く治療を続けることが大切です。
まとめ|不眠症は一生治らないわけではないため自分のペースで治療を進めよう
不眠症は正しい対処法や治療で改善が見込める疾患で、かかった人全員が一生治らないわけではありません。
ただ突然治ることはあまりなく、多くの場合は少しずつ改善していきます。
不眠症が長引くと高血圧や糖尿病、肥満、心臓疾患などの生活習慣病やうつ病を発症するリスクが高まります。
また不眠症が寿命に直接関係するわけではありませんが、不眠症から生活習慣病になったことがきっかけで寿命に影響を与える可能性は否定できません。
治療法は非薬物療法と薬物療法があります。薬を使う場合でも不眠症になった原因を把握して、生活習慣の改善やストレス管理をおこなう必要があります。
不眠症になると日中の倦怠感や集中力の低下から、仕事や家事が思うように進まなくなるでしょう。しかし適切な治療や対処法で少しずつ改善していきます。
焦らず自分のペースで治療を進めていきましょう。眠れない日が続いている場合は早めに内科や心療内科、精神科で医師の診察を受けることをおすすめします。
ファストドクターのオンライン診療(心療内科・精神科)なら、処方薬の配送や診断書のオンライン発行に対応しています。診察は健康保険適用。お支払いはクレジットカードもしくはコンビニ後払いです。※診断書の内容は医師の判断によります。
参考文献
[4]「日本の一般成人における不眠症状と性差の関連性について」
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。
症状に対する診断やお薬の処方、診断書や傷病手当金申請書の記載内容は医師の判断によります。