ヘルパンギーナってどんな病気?
ヘルパンギーナは、発熱やのどの痛みを主な症状とする夏風邪の代表的なウイルス性感染症です。
ヘルパンギーナは5月頃から発生し始め、7月頃にかけてピークを形成します。
発症するのは5歳以下の乳幼児が中心といわれています。[1]
関連記事: 「夏風邪の症状って?コロナとの見分け方や予防法について解説」
ヘルパンギーナの主な症状
ヘルパンギーナは急性のウイルス性疾患で、2~4日の潜伏期間を経て症状があらわれます。
主な症状は以下のとおりです。
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発熱(2~4日程度で解熱)
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咽頭痛(水疱が破れて潰瘍になると痛む)
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口腔粘膜にあらわれる水疱性の発疹(解熱するとやや遅れて消失する)
発疹は、のどの奥に1~5mm程度の小さなものから、約5mmの大きなものまで発生します。
その他にも、ヘルパンギーナに感染すると以下の症状がみられることがあります。[1]
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全身倦怠感(だるさ)
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食欲不振
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のどの痛み
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嘔吐
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四肢(手足)の痛み
乳幼児が感染すると、発熱時に熱性けいれんを伴ったり、口の中の痛みから不機嫌になったりします。
熱は2〜4日で下がり、少し遅れて口の中の水疱もおさまることがほとんどです。[2]
哺乳障害や食事を拒むこともあるため、水分が不足しやすく脱水症になることもありますが、予後は良好であると言われています。
ヘルパンギーナに感染すると、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎などの合併症を引き起こすことがあります。
無菌性髄膜炎では、発熱以外に頭痛や嘔吐などの症状に注意が必要です。
髄膜炎になると、首を前に曲げられなくなる症状「項部硬直(こうぶこうちょく)」が特徴的ですが、ヘルパンギーナでは現れないことも多いです。[1]
また、ヘルパンギーナへの感染で急性心筋炎を発症する可能性もあります。
急性心筋炎とは心臓の筋肉が炎症を起こし、活動時のだるさや呼吸が苦しいなどの心不全兆候には注意が必要です。[3]
ヘルパンギーナの原因
ヘルパンギーナの原因はウイルス感染です。主に、エンテロウイルスやコクサッキーA群ウイルスの感染により発症します。[1]
ヘルパンギーナにかかった人のくしゃみや咳など、飛沫を吸い込むことで感染します。
また、便中に排出されたウイルスが、眼や口の粘膜を通して体内に侵入するとヘルパンギーナに感染するのです。
ここでは、ヘルパンギーナの感染経路や、大人にもうつりやすい病気なのかについて詳しく解説します。
感染経路
ヘルパンギーナの感染経路には「糞口感染」「接触感染」「飛沫感染」の3つがあげられます。
糞口感染とは、ウイルスを含む糞便や吐物が、手すりや便器など身の回りの物を介して口へ入ることで感染することです。
ヘルパンギーナに感染すると、症状の回復後も2~4週間にわたり便からウイルスが検出されることがあります。[4]
接触感染とは、ヘルパンギーナにより喉に生じた水疱の内容物や便から排出されるウイルスが手などを介し、眼や口などの粘膜に入り感染することです。
ウイルスを持っている人とのだっこや握手、キスなど直接触れることで感染します。
また、ドアノブや手すりなどウイルスが付着している部分を触ると間接的に感染することがあります。
飛沫感染とは、ヘルパンギーナに感染している人の咳やくしゃみ、つばなどの飛沫を、近くにいる人が吸い込み感染することです。
飛沫は咳やくしゃみ、会話などで生じ、1~2メートルの範囲で飛散します。[5]
ヘルパンギーナにはさまざまな感染経路があります。周囲への感染を防ぐには、どのようにうつるのか把握し、感染経路別に対策をすることが必要です。
大人にもうつりやすい病気なのか
ヘルパンギーナは小児の感染症と言われていますが、大人でもうつる可能性は十分にあります。
症状としては、小児と同じような発熱やのどの痛み、口の中の発疹などです。
大人がヘルパンギーナに感染した場合は、頭痛や関節痛、筋肉痛など、子どもよりも症状が強く出ることがあります。
大人の場合、多くはのどの違和感から受診してヘルパンギーナへの感染が発覚する場合が多いです。
子どもがヘルパンギーナに感染したら、看病する大人もウイルスにさらされ感染する可能性が高くなるため、家庭内での感染対策が重要です。
大人のヘルパンギーナについては別記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ヘルパンギーナの治療方法
ヘルパンギーナには特別な治療がなく、抗ウイルス薬は存在しません。
対症療法が基本となり、発熱やのどの水疱による痛みなどに対しては、解熱鎮痛剤を使用するのが基本です。
また、感染すると脱水になりやすく、治療が必要になることもあります。
特に小児の場合、水を飲むだけでものどが痛むため、水分や食事を拒否することがあります。
発熱で体温も上がり、脱水になりやすい状態となるため、ヘルパンギーナに感染したら水分摂取による脱水予防がとても重要です。
機嫌が悪く活気がなくなってきたら、すぐに医療機関を受診しましょう。[1]
食事は刺激のないものを
ヘルパンギーナに感染すると、口の中が痛くなっている可能性があります。
脱水予防のため水分をしっかり摂取し、
ヘルパンギーナに感染すると、口の中が痛くなっている可能性があります。
脱水予防のため水分をしっかり摂取し、柔らかく薄味の食事を摂るよう心がけましょう。[4]
学校や保育園には行っていいの?
ヘルパンギーナは出席停止の扱いになる感染症ではないため、登園や登校は本人の状態で判断しましょう。
ヘルパンギーナは感染症法において、5類感染症と定められています。
また学校保健法において、ヘルパンギーナは予防すべき感染症として明確に書かれていません。[6]
ヘルパンギーナに感染しても、感染症や学校保健法における制限はないため、本人が元気であれば登園や登校可能です。[1]
兄弟でヘルパンギーナになった時の対応方法については別記事でも解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:ヘルパンギーナは兄弟間ではうつりやすい?家庭での対応方法を紹介
感染経路を理解してしっかり予防を
ヘルパンギーナは上述のとおり、感染経路が「糞口感染」「接触感染」「飛沫感染」の3つです。
では、感染しないために出来る予防方法とは何でしょうか。
ヘルパンギーナの感染を広げないために、感染経路をふまえた対策について詳しく解説します。
せっけんでの手洗い
接触感染を防ぐためには、せっけんでのこまめな手洗いが重要です。
ヘルパンギーナの原因ウイルスはアルコールに抵抗があるため、アルコール消毒はあまり意味がありません。
トイレや子どものオムツ交換、食事のあとには、せっけんで手指に付着したウイルスをしっかり落としましょう。
また、集団生活においてはタオルの共有を避けるのも有効です。
こまめな拭き掃除
ヘルパンギーナ感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染を防ぐため、こまめな拭き掃除も重要な感染対策の一つです。
咳やくしゃみにより床に落ちた飛沫を小さな子が触ると感染の原因になります。
子どもたちが毎日触れるおもちゃや手すりは、塩素系の消毒剤で消毒し感染対策に努めましょう。
また、咳が出る場合はマスクをするなど、咳エチケットを意識して周囲への感染を予防しましょう。
子どものおむつ替えの時は要注意
ヘルパンギーナ感染者の便には、症状がおさまった後も2~4週間はウイルスが存在しています。
感染した子どものおむつ替えの時は、便中にウイルスが排出されるため感染しやすい状況になります。
オムツ交換など排せつ物を処理するときには手袋を着用しましょう。
また、トイレやおむつ交換のあと、食事の前での手洗いを心がけることも大切です。[1]
まとめ:自分が感染源にならないように配慮しましょう
ヘルパンギーナは、発熱やのどの痛みなどを主な症状とする、夏風邪の代表的なウイルス性感染症です。
糞口感染、接触感染、飛沫感染と3つの感染経路があるため、感染を広げないよう注意が必要です。
ヘルパンギーナは主に小児の感染症ですが、大人でもうつることがあります。
「のどの痛みだけなら」と放っておくと自分が感染源になり、周りにうつしてしまう可能性があるため、注意しましょう。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
[2] 福岡県感染症情報|こどもの夏かぜシーズンにはいりました。
[3] 2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。