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2型糖尿病治療方法とは?ガイドラインをもとに解説!

「糖尿病」は生活習慣病の1つとして、一度は耳にしたことがあるでしょう。

この記事を読んでいるあなたは、糖尿病である(もしくは疑いがある)、親しい人が糖尿病と診断された等の理由で、糖尿病の治療方法について興味を持ったのではないでしょうか。

本記事では、「2型糖尿病」の治療方法についてガイドラインをもとに解説します。

糖尿病の原因や、糖尿病の悪化により発症する危険な合併症についてもあわせて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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2型糖尿病の治療方法は3つ!ガイドラインから解説!

2型糖尿病治療は、大きく3つに分かれます。

治療の基本は、食事療法と運動療法です。

食事や運動の習慣を改善して2〜3か月経っても血糖コントロールができないときは、薬物療法を行います。

2型糖尿病治療における目標は合併症を防ぎ、糖尿病ではない人と変わらない生活を送ることです。

2型糖尿病の治療①食事療法

食事療法は、2型糖尿病治療において最も重要です。

食事管理によって適切に体重をコントロールすると、インスリンの効きが良くなり、インスリンの分泌も正常に近づくためです。

インスリンとは膵臓から分泌される物質で、血糖値を下げる役割があります。

食事療法では、1日の活動量や目標体重、年齢等から、1日の摂取カロリーを設定します。

設定した摂取カロリーの中で、バランスの良い食事をとることが大切です。

バランスの良い食事の目安は、日本人の食事摂取基準2020年版において以下のように定義されています。

また、1日20g以上の食物繊維の摂取は、糖尿病を改善します。

具体的な食事内容は患者の状態によって異なるため、早いうちから管理栄養士に相談するのがおすすめです。

食事内容だけではなく、食べる順番や食事のとり方によって、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できます。

例えば、以下の順番で食べるとよいです。

  1. 野菜やきのこなどの食物繊維
  2. 肉や魚などのタンパク質
  3. お米やパンなどの糖質

加えて、食事のときはよく噛み、ゆっくり食べることを心がけましょう。

早食いは血糖値が急に上昇する原因となります。

また、食べる時間を可能な限り固定することも大切です。

朝ご飯を抜くと、糖尿病のリスクが上がることがわかっています。

さらに寝る直前の食事は、血糖コントロールが乱れる原因となります。

食後少なくとも2時間は、寝るのを避けましょう。

2型糖尿病の治療②運動療法

運動療法は、血糖を改善する効果が期待できます。

運動をすると血液中の糖が使われ、血糖が下がるためです。

また、運動により筋肉が付くと糖を消費しやすい体になり、インスリンの効きを改善する効果もあります。

運動療法では1週間に150分間、中程度の有酸素運動を行うのが効果的です。

その際、運動をしない日が2日間続かないようにしましょう。

中程度とは「やや楽である」~「ややきつい」程度の運動です。

しかし最初からきつい運動を取り入れると、長続きしなかったりケガをしたりする原因となります。

始めのうちは「楽である」運動を取り入れ、だんだんと強度を上げましょう。

また、デスクワーク等で座りっぱなしの状態は、2型糖尿病のリスクである肥満の原因となります。

30分おきに軽いストレッチや運動を取り入れるのも効果的です。

2型糖尿病の治療③薬物療法

食事や運動を変えてから2〜3か月経過しても血糖値に改善が見られなければ、薬物療法を始めます。

はじめは1種類の薬剤から服用し、血糖値の状態を見ながら、量を増やしたり薬剤を追加したりします。

糖尿病の悪化を防ぐため、薬物療法を始めてからも食事療法と運動療法は継続することが大切です。

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2型糖尿病の経口治療薬一覧

2型糖尿病治療の経口血糖降下薬として、以下の薬が用いられます。

患者の状態によって、使われる薬が異なりますが、通常は1種類の薬から始めます。

分類特徴注意する副作用と対策
インスリンの分泌を促進しないビグアナイド薬・肝臓からのブドウ糖放出抑制作用と、インスリンが効きやすくなる作用・ヨード造影検査を行う際は休薬が必要・乳酸アシドーシス:過呼吸、倦怠感、筋肉痛等を生じたら受診→脱水状態のときは特に注意・胃腸障害:多くは服用中に徐々に消失
チアゾリジン薬・肝臓からのブドウ糖を放出抑制する作用、インスリンが効きやすくなる作用・心不全およびその既往がある場合は服用不可・浮腫:女性に生じやすい
αグルコシダーゼ阻害薬・小腸での糖の分解抑制、食後高血糖を防ぐ作用・食直前に服用・低血糖:砂糖ではなく、ブドウ糖摂取・おなかの張り、放屁、下痢:薬の減量で改善
SGLT2阻害薬・尿中への糖排出促進による、血糖低下作用・脱水:こまめな水分摂取で予防可能・糖尿病ケトアシドーシス:過度な糖質制限をしないよう注意→異常な喉の渇き、吐き気、食欲減退、過呼吸等の症状が現れたら速やかに受診
インスリンの分泌を促進するスルホニル尿素(SU)薬・膵臓β細胞からのインスリンの分泌を促す作用・食事や運動療法がおろそかになると、体重増加しやすいため注意・低血糖
速効型インスリン分泌促進(グリニド)薬・膵臓β細胞からのインスリンの分泌を促す作用・SU薬よりも作用時間が短い・食直前に服用・低血糖
DPP-4阻害薬・血糖値に連動してインスリンの分泌を促す作用・低血糖を起こしにくい・急性膵炎:嘔吐を伴う激しい腹痛に注意
GLP-1受容体作動薬・血糖値に連動してインスリンの分泌を促す作用・食欲を低下させる作用による体重減少効果・胃腸障害:徐々に量を増やすことで予防可能
イメグリミン・血糖値に連動してインスリンの分泌を促す作用および肝臓から糖を放出するのを抑制する作用、インスリンの効きがよくなる作用、筋肉中に糖を取り込む作用・低血糖・胃腸障害

(参考:糖尿病診療ガイドライン2019、堀正二ら(2023)「治療薬ハンドブック2023薬剤選択と処方のポイント」p.646~699 じほう)

2型糖尿病におけるインスリン注射について

2型糖尿病治療において、食事療法や運動療法、インスリン注射以外の薬物療法を行っても血糖がコントロールできない場合は、インスリン注射による治療を行います。

ただし、以下の場合は直ちにインスリン注射を開始します。

インスリン注射の際は低血糖に注意しましょう。

インスリン注射を行うたびに、自己血糖測定器を用いて血糖値を測定することが大切です。

また、毎回同じところに注射しないよう気を付けてください。

同じところに注射し続けると、しこりができてインスリンの効きが悪くなります。

インスリンの注射方法で分からないことがあれば、遠慮せずに医師や看護師、薬剤師に質問しましょう。

インスリン注射を始めたら一生やめられないのではないか、とショックに思うかもしれません。

しかし食事や運動で血糖が安定すれば、徐々にインスリンの量を減らし、インスリン注射をやめられる可能性もあります。

患者の状態により治療方法が異なるため、今後の治療方針については積極的に医師と相談してみましょう。

2型糖尿病とは?原因や初期症状・1型糖尿病との違いを解説

そもそも糖尿病とは、慢性的に血液中のブドウ糖の値(血糖値)が高くなる疾患です。

なぜ糖尿病になるのか、血糖値が高いとどのような症状が現れるのか、本章では2型糖尿病の原因と初期症状について説明します。

また、基礎知識として知っておきたい1型糖尿病との違いも解説します。

2型糖尿病の原因 | 遺伝するってほんと?

2型糖尿病は、以下2つの原因が重なると発症する可能性が高くなります。

2型糖尿病は遺伝する傾向があり、両親ともに糖尿病の場合、40〜50%で遺伝するといわれています。

しかし、両親が糖尿病だからといって必ず遺伝するわけではありません。

環境因子である生活習慣に普段から気を付ければ、糖尿病を発症しづらくできます。

2型糖尿病の初期症状 | 女性は40歳以降から要注意!

2型糖尿病の初期は、ほとんど症状がありません。

糖尿病が進行すると、以下の症状が現れます。

2型糖尿病の症状は、性別による差はありません。

しかし、40歳以降の女性はエストロゲン量が減り、インスリンが効きづらくなります。

40歳以前よりも糖尿病にかかりやすい体質になるため、早めに食事や運動習慣を見直すと良いでしょう。

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

2型糖尿病といわれるように、1型糖尿病もあります。

糖尿病人口のうち、95%以上が2型糖尿病といわれており、残りの約5%が1型糖尿病です。

一般的に糖尿病というと、2型糖尿病をさします。

1型糖尿病は、インスリンを出す膵臓の細胞が破壊され、全くもしくはほとんどインスリンを分泌することができません。

そのため、治療には必ずインスリン注射を用います。

一方2型糖尿病は、主に生活習慣が原因でインスリンの分泌能が落ちていたり、インスリンの効きが悪くなったりしている状態です。

食事や運動習慣を改善すると、インスリンの効きがよくなり、インスリンの分泌能が戻るため、薬を使わないで治療できる場合もあります。

患者の状態に応じて、経口血糖降下薬やインスリン注射が用いられます。

2型糖尿病の薬物治療で気を付けるべき副作用

2型糖尿病の薬物治療では、低血糖に注意してください。

低血糖の初期症状は以下の通りです。

このような症状を感じたら、すぐに糖分の入ったジュースや飴等の甘いものをとり、安静にしてください。

αグルコシダーゼ阻害薬を服用中の場合は、砂糖ではなくブドウ糖の摂取が必要なため注意が必要です。

低血糖になりづらい薬もありますが、どの薬剤を使用していても低血糖を生じる可能性があります。

低血糖に備えて、普段から飴やブドウ糖等を持ち歩くようにしましょう。

2型糖尿病は危険な合併症に注意!

2型糖尿病治療を行う中で、気を付けたいのが合併症です。

代表的な合併症は、以下の3つです。

合併症が発症すると、生活の質が著しく低下します。

2型糖尿病を早期に発見し、良好な血糖コントロールを行えば、合併症の発症を予防できます。

糖尿病はすぐにわかりやすい症状が出ないため、治療にマンネリを感じることもあるかもしれません。

しかし、合併症予防のためにも必要な治療であると頭に入れ、日々の治療に取り組んでいきましょう。

網膜症

糖尿病網膜症とは、血糖コントロールが悪い状態が続くと、網膜の毛細血管がもろくなったり閉塞したりする疾患です。

網膜は目の底にある膜のことで、光を受け取ってものを見る役目を担っています。

網膜症が悪化すると、視力の低下や失明を招く可能性があるため注意が必要です。

糖尿病網膜症は、失明原因の第3位といわれています。

(参考:岡山大学プレスリリース

血糖コントロールが良好であれば網膜症のリスクは大幅に下がるため、日々の治療が大切です。

加えて、最低でも1年に1回は眼科で検査を受けましょう。

腎症

糖尿病性腎症とは、血糖コントロール不良により腎臓に障害が生じ、徐々に腎機能が低下する疾患です。

腎機能は一度低下すると元に戻すのが難しいため、血糖コントロールおよび早期発見が重要となります。

腎症予防のため、血糖コントロールに加えて、血圧のコントロールも重要です。

普段から、食事における塩分摂取量にも注意しましょう。

神経障害

糖尿病性神経障害は、糖尿病の合併症の中で最も多い合併症です。

感覚・運動神経や自律神経が障害され、以下のような症状が現れます。

糖尿病性神経障害も網膜症や腎症と同様、血糖コントロール不良や糖尿病の長期化により現れやすくなるため、日々の治療が大切です。

Q&A

2型糖尿病治療の気になる質問について答えます。

2型糖尿病の治療方法は?

2型糖尿病の治療は、食事療法、運動療法、薬物療法です。

食事療法と運動療法に2〜3か月取り組んでも効果が出なければ、薬物療法を行います。

食事療法では、年齢や体重、1日の活動量等から摂取カロリーを計算し、その中でバランスよく食べることが重要です。

運動療法では、1週間に150分間、中程度の有酸素運動を行うのが効果的です。

その際、運動をしない日が2日間続かないようにしましょう。

薬物療法では、さまざまな作用の薬剤があり、患者の状態に応じた薬が処方されます。

はじめは1種類の薬から服用し、血糖コントロール状況に応じて薬剤を追加するのが一般的です。

膵臓が疲弊している状態や、全身状態が悪いときはインスリン注射を行います。

2型糖尿病治療の目標は、合併症を防ぎ、糖尿病ではない人と変わらない生活を送ることです。

2型糖尿病の初期治療は?

2型糖尿病の初期は、食事療法と運動療法を行います。

食事療法では、年齢や体重、1日の活動量などから摂取カロリーを計算し、その中でバランスよく食べることが重要です。

朝ごはんを抜いたり、寝る直前に食事をとったりするのは血糖コントロール不良の原因となります。

食事内容だけでなく、食事習慣も見直しましょう。

運動療法では、1週間に150分間、中程度の有酸素運動を行うのが効果的です。

その際、運動をしない日が2日間続かないようにしましょう。

中程度とは「やや楽である」~「ややきつい」程度の運動です。

しかし最初からきつい運動を取り入れると、長続きしなかったりケガをしたりする原因となります。

始めのうちは「楽である」運動を取り入れ、だんだんと強度を上げましょう。

2型糖尿病の食事療法は?

食事療法では、1日の活動量や目標体重、年齢などから、1日の摂取カロリーを設定します。

設定した摂取カロリーの中で、バランスの良い食事をとることが大切です。

バランスの良い食事の目安は、日本人の食事摂取基準2020年版において、炭水化物50〜65%エネルギー、タンパク質13〜20%エネルギー、脂質20〜30%エネルギーとされています。

また、食物繊維を1日20g以上摂ると糖尿病を改善します。

具体的な食事内容は患者によって異なるため、早いうちから管理栄養士に相談するのがおすすめです。

食事内容だけではなく、食べる順番や食事のとり方によっても、血糖値の急上昇を防ぐ効果が期待できます。

食事をする際は、野菜やきのこ類を最初に食べ、タンパク質、糖質という順で食べるように気を付けましょう。

さらに、朝ご飯を食べないと糖尿病のリスクが上がるため、3食きちんと食べることも大切です。

2型糖尿病になる理由は何ですか?

2型糖尿病は、以下2つの原因が重なると発症する可能性が高くなります。

遺伝的な要因もありますが、糖尿病にならないために食事や運動といった生活習慣を整えることが大切です。

2型糖尿病は治るの?

2型糖尿病を完全に治すのは難しいといえます。

しかし、食事療法や運動療法により、薬を使わなくても血糖をコントロールすることは可能です。

まとめ

本記事では2型糖尿病の治療方法について、ガイドラインをもとに詳しく解説しました。

2型糖尿病と診断されたら、まず食事療法と運動療法に取り組みます。

適切なカロリーの中でバランスよく食べましょう。

食事や運動の習慣を2〜3か月改善しても血糖値のコントロールができない場合、薬物療法を開始します。

2型糖尿病は遺伝に加え、生活習慣の乱れによる肥満が原因で発症します。

したがって、2型糖尿病になる前もなってからも、日々の生活習慣を整えることが大切です。

また2型糖尿病の治療方針は個々の患者によって異なります。

治療は生涯にわたって続くため、気になることは医師に気軽に相談しましょう。