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GLP1とは?糖尿病やGLP1ダイエット、肥満症の治療について解説

GLP1(Gulcagon-Like peptide-1:グルカゴン様ペプチド)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

最近では、メディカルダイエット(医療ダイエット)という、医療機関で医師のサポートを受けながら行うダイエットの方法としてGLP1受容体作動薬が使用されているため、ダイエットの薬として聞きなじみのある人も多いかもしれません。

GLP1とはインスリン分泌を促すホルモンの一種であり、GLP1受容体作動薬は本来、糖尿病治療や肥満症治療の薬として国の認可を受けています。

糖尿病治療薬としては2010年から販売開始され、肥満症治療薬としては2023年4月に販売されたばかりの新しい薬です。

効果の現れる仕組みや、薬の種類、副作用について正しく理解することで、安心安全に治療を受けることができるでしょう。

当記事では、糖尿病や肥満症治療、ダイエット目的で使用されることのあるGLP1受容体作動薬について解説します。

「糖尿病で新しい薬といわれて処方されたけど、どんな薬?」「メディカルダイエットに興味あるけど、なんだか怖い」「肥満に効く薬はある?」といった疑問を持っている方はぜひ最後までお読みください。(1)

記事監修

名倉 義人 医師

○経歴
・平成21年
名古屋市立大学医学部卒業後、研修先の春日井市民病院で救急医療に従事
・平成23年
東京女子医科大学病院 救急救命センターにて4年間勤務し専門医を取得
・平成27年
東戸塚記念病院で整形外科として勤務
・令和元年
新宿ホームクリニック開院

○資格
救急科専門医

○所属
日本救急医学会
日本整形外科学会

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GLP1とは?

GLP1は、小腸に存在するL細胞から分泌されるインクレチンというホルモンの一種であり、代表的な作用は以下の5つです。

  1. インスリン分泌促進
  2. グルカゴン分泌抑制
  3. 胃内容排出の遅延
  4. 満腹感の促進と食事摂取量の抑制
  5. 動物モデルでのすい臓β細胞量の維持・増加

①インスリン分泌促進

インスリンとは、すい臓のβ細胞から分泌される血糖値を下げるホルモンです。

食後血糖値の上昇に反応して分泌され、細胞表面のインスリン受容体に結合し、細胞内へ糖の取り組みを促進します。この作用により、身体は糖をエネルギーとして利用することができます。

あまった糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成され蓄えられますが、その合成を促すのもインスリンの働きです。(2)

②グルカゴン分泌抑制

グルカゴンとは、すい臓のα細胞から分泌されるホルモンです。

インスリンとは逆に、血糖値を上げる作用があります。

血糖値が下がると、肝臓などで合成されたグリコーゲンをブドウ糖に分解させ、エネルギーとして利用できるようにし、血糖値を正常に戻します。

③胃内容排出の遅延

胃内容排出の遅延とは、胃から小腸への食べ物の移動時間が遅くなることです。

この作用により、食後の血糖上昇をゆるやかにすることができます。

④満腹感の促進と食事摂取量の抑制

脳の満腹中枢に働きかけ、満腹感を感じさせる働きがあります。

結果として食事摂取量が抑制され、体重増加減少作用が認められました。

⑤動物モデルでのすい臓β細胞量の維持・増加

動物モデルではありますが、β細胞の維持・増加作用が報告されています。

2型糖尿病では罹患率が長くなるとβ細胞量が減少し、インスリン分泌が減少するとされています。(1)

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GLP1受容体作動薬とは?

GLP1受容体に作用し、前述したGLP1と同様の働きをする薬です。

詳しい作用機序、効果、副作用、製品の特徴について解説します。

GLP1受容体作動薬の作用機序

GLP1受容体作動薬の詳しい作用機序は以下の通りです。(1)

  1. すい臓β細胞のGLP1受容体に結合し、cAMPを活性化。結果、細胞内のCaイオンが増加し、すい臓β細胞からのインスリン分泌が促進される。 
  2. すい臓α細胞に抑制的に働き、グルカゴン分泌を抑制する。
  3. 脳内の食欲中枢と胃に対し抑制的に働き、食欲抑制、胃内容排出を遅らせる。

1、2の機序により血糖値を下げ、3の機序により体重抑制効果を示します。

GLP1受容体作動薬の特徴

血糖依存的なインスリン分泌

GLP1受容体作動薬の最大の特徴が、血糖依存的なインスリン分泌です。

血糖に応じてインスリンを分泌するため、血糖が高いときはインスリン分泌を促し、血糖が低いときは促しません。

これまでの糖尿病治療薬では、重大な副作用として「低血糖」がありました。

しかし、この特徴により、GLP1受容体作動薬単独投与であれば、低血糖を引き起こす可能性が低くなります。

ただし、ほかの糖尿病治療薬(SU薬など)と併用する場合は低血糖に注意が必要です。

インスリン注射の代替とはならない

前述のように、GLP1受容体作動薬は血糖依存的にインスリン分泌を行うため、インスリン注射の代替とはなりません

GLP1受容体作動薬発売当初、インスリン注射からGLP1受容体作動薬へ切り替えられた患者で、高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスが問題となりました。(3)

インスリン治療中の患者では、患者がインスリン依存状態にあるか、非依存状態にあるか評価を行ったうえで投与する必要があります。

GLP1受容体作動薬の血糖改善効果(4)

GLP1受容体作動薬では、プラセボと比較しHbA1cの有意な改善効果が認められています。

トルリシティ(週1回投与)とビクトーザ(毎日投与)の比較では、血糖改善効果や副作用の発現頻度に差はありませんでした。

しかし、毎日投与に比べ、週1回投与の方が患者の利便性・融通性・継続性が高く、注射の遵守率が高いことが示されています。

GLP1受容体作動薬の体重増加抑制作用

GLP1受容体作動薬では、プラセボと比べて有意な体重増加抑制作用が認められました。

これは、GLP1の食欲抑制作用によるものと考えられています。

週1回投与と毎日投与の製剤間で、体重減少に関する差はありませんでした。

GLP1受容体作動薬の心血管イベント抑制効果

GLP1受容体作動薬が、プラセボに比較して心筋梗塞や、脳卒中などの心血管イベントを有意に低下させたと報告されています。

GLP1受容体作動薬の副作用

副作用として代表的なものは便秘、吐き気、下痢などの消化器症状です。

消化器症状の副作用を防ぐため、ほとんどの製剤で少量から投与を開始し、様子をみながら増量していくように用量設定されています。

GLP1受容体作動薬一覧

現在、国内で糖尿病治療薬として承認されているGLP1受容体作動薬についてまとめました。

GLP1受容体作動薬|内服と注射の違い

GLP1受容体作動薬には内服製剤(飲み薬)と注射製剤があります。

内服製剤はリベルサス錠1種類のみです。

GLP1受容体作動薬はペプチドという、アミノ酸がいくつもあつまった構造をしています。ペプチドは酵素により分解されること、分子量が大きく吸収されにくいことから、本来経口投与に適していません。

リベルサス錠はSNACといわれる吸収促進剤を配合することで、胃からの吸収を可能にした世界初で唯一のGLP1受容体作動薬の経口製剤です。(5)

リベルサス錠は食事や水の量によって吸収に影響が現れるため、摂取時には注意が必要です。

  1. 1日のうち最初の食事または飲水の前に空腹時で服用すること
  2. コップ半分の水(約120ml)と一緒に服用すること
  3. 服用後30分は飲食を避けること

リベルサス錠を飲むときは、上記の指示に従いましょう。

また、リベルサス錠は同じGLP1受容体作動薬であるトルリシティ注と比較し、効果や副作用に差がないことが報告されています。

GLP1受容体作動薬【内服】リベルサス錠の効果や副作用は?

リベルサス錠の特徴を表にまとめました。

【リベルサス錠】

成分名セマグルチド
効能効果2型糖尿病
用法用量1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。
患者の状態に応じて適宜増減するが、1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる。
特徴・1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに服用すること。
・服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。

(リベルサス錠添付文書をもとに作成)

GLP1受容体作動薬【注射】効果や副作用、違いは?

GLP1受容体作動性の注射薬として、ビクトーザ、バイエッタ、リキスミアトルリシティ、オゼンピック、マンジャロが発売されています。

GLP1受容体作動薬|注射を毎日するタイプ

ビクトーザ、バイエッタ、リキスミアの3種類があります。

【ビクトーザ皮下注】

成分名リラグルチド
効能効果2型糖尿病
用法用量0.9mgを維持用量とし、1日1回朝又は夕に皮下注射する。
ただし、1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量する。
患者の状態に応じて適宜増減し、1日0.9mgで効果不十分な場合には、1週間以上の間隔で0.3mgずつ最高1.8mgまで増量できる。
特徴本邦初のGLP1受容体作動薬。

(ビクトーザ皮下注添付文書をもとに作成)

【バイエッタ皮下注】

成分名エキセナチド
効能効果2型糖尿病ただし、食事療法・運動療法に加えてスルホニルウレア剤(ビグアナイド系薬剤又はチアゾリジン系薬剤との併用を含む)を使用しても十分な効果が得られない場合に限る。
用法用量1回5µg1日2回朝夕食前皮下注射する。
投与開始から1ヵ月以上の経過観察後、患者の状態に応じて1回10µg、1日2回投与に増量できる。
特徴・1日2回投与。
・食前60分以内に投与し、食後投与は行わないこと。
・SU剤との併用が条件のため、低血糖に注意。

(バイエッタ皮下注添付文書をもとに作成)

【リキスミア皮下注】

成分名リキシセナチド
効能効果2型糖尿病本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
用法用量1回20μg1日1回朝食前皮下注射する。
ただし、1日1回10μgから開始し、1週間以上投与した後1日1回15μgに増量し、1週間以上投与した後1日1回20μgに増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、1日20μgを超えないこと。
特徴・1日2回投与・食前投与

(リキスミア皮下注添付文書をもとに作成)

GLP1受容体作動薬|注射を週1回するタイプ

トルリシティ、オゼンピックの2種類があります。

【トルリシティ皮下注】

成分名デュラグルチド
効能効果2型糖尿病本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
用法用量1回0.75mg週に1回皮下注射する。
特徴・週1回同じ曜日に投与する。・用量調節が不要。

(トルリシティ皮下注添付文書をもとに作成)

【オゼンピック皮下注】

成分名セマグルチド
効能効果2型糖尿病本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
用法用量週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。
ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。
特徴週1回同じ曜日に投与する。

(オゼンピック皮下注添付文書をもとに作成)

GLP1受容体作動薬|注射【新薬】マンジャロ

GIP/GLP1受容体作動薬の注射タイプの新薬として、マンジャロ注が2023年4月に販売開始されました。

GIPとはgastric inhibitory polypeptideの略で、小腸のK細胞から分泌されるインクレチンホルモンの一種です。GLP1と同様に血糖依存的にインスリン分泌を促進させます。

マンジャロ注は世界で初めてGIPとGLP1受容体両方を活性化する薬として販売されています。

【マンジャロ皮下注】

成分名チルゼパチド
効能効果2型糖尿病本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行ったうえで効果が不十分な場合に限り考慮すること。
用法用量週1回5mgを維持用量とし、皮下注射する。
ただし、週1回2.5㎎から開始し、4週間投与した後、週1回5㎎に増量する。
なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量できる。
ただし、最大用量は週1回15mgまでとする。
特徴・世界初のGIPとGLP1受容体両方に作用する作動薬。
・週1回同じ曜日に投与する。

(マンジャロ皮下注添付文書をもとに作成)

GLP1ダイエットとは?

近年、メディカルダイエットのひとつとして「GLP1ダイエット」が美容クリニックを中心に紹介されるようになりました。

GLP1受容体作動薬の食欲抑制作用を利用し、内服もしくは注射のGLP1受容体作動薬を使用するものです。

「辛い食事制限がない」「ラクして痩せられる」「リバウンドしにくい」などのメリットがうたわれていることや、芸能人が使用していることでも話題になりました。

 しかし、GLP1ダイエットで使用される薬は本来、糖尿病治療薬として承認を得ている製品を保険の適応外で使用しているものになります。

糖尿病治療以外の目的で使用された場合の安全性及び有効性については確認されておらず、思わぬ健康被害につながる可能性も否定できません。

2023年4月に糖尿病学会から「GLP-1 受容体作動薬および GIP/GLP-1 受容体作動薬の適応外使用に関する 日本糖尿病学会の見解」として注意喚起がされました。

この章では、GLP1ダイエットの効果や副作用について解説します。

GLP1受容体作動薬のダイエット効果

GLP1受容体作動薬は脳の食欲中枢に働きかけることで食欲を抑え、結果として体重増加を抑えます。

GLP1ダイエットの副作用は?危険性はない?

糖尿病治療で使用するのと同様に、主な副作用は便秘、吐き気、下痢などの消化器症状です。

また、肥満でない人には効果が現れにくいとされています。

もともと糖尿病治療をしている方は低血糖の副作用が現れる可能性が高く危険なため、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

GLP1ダイエットに使用される薬は?

クリニックにより異なりますが、内服のリベルサス錠、注射ではオゼンピック皮下注、ビクトーザ皮下注、サクセンダ皮下注(日本未承認薬)が多く処方されています。

GLP1ダイエットは保険適用される?

GLP1ダイエットに使用するGLP1受容体作動薬は、糖尿病治療のみに使用が認められている薬であるため、保険は適用されません

自由診療となり、治療費は自費です。そのため、費用は高額になりがちです。

GLP1受容体作動薬をダイエットに処方してもらうには?

ダイエット目的でGLP1受容体作動薬を処方することは保険適応外であるため、保険診療を行う医療機関では処方してもらえません

美容クリニックなどで処方してもらう必要があります。

持病や治療中の薬がある人は、副作用が現れることがあるので、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。

肥満症に適応がある薬

上記で紹介したGLP1ダイエットは保険適応されておらず、適応外使用を推奨しないようにと、糖尿病学会からも見解が出ています。 

では、肥満症の人はどうしたら良いのでしょうか?

日本肥満学会では、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態でBMI≧25のものを「肥満」と定義しています。

その中でも、肥満に起因/合併する健康被害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする状態を「肥満症」と定義し、治療の対象としています。(6)

肥満症の治療の基本は食事療法、運動療法、行動療法です。

これらを3~6ヵ月行い、1ヵ月あたり0.5~1kg程度の減量が得られるようであれば薬物療法は必要ありません。

これらで効果的な減量が得られない場合、あるいは合併症の重篤性から急速な減量を必要とする場合、非薬物療法に加え、薬物療法を併用します。

日本で肥満症に適応がある薬はサノレックスウゴービ皮下注の2種類です。(7)

サノレックスは高度肥満症に適応をもち、その作用機序は視床下部に作用し、食欲を抑制するとされています。

カテコラミン濃度を上げるため、禁忌が多く使用には注意が必要です。

また、覚せい剤と一部作用機序が似ているため、連続使用は3ヵ月が限度とされます。

ウゴービ皮下注は肥満症に適応をもつGLP1受容体作動薬です。

糖尿病治療薬のオゼンピック皮下注、リベルサス錠と同じ成分を有しています。

オゼンピック皮下注と同様に投与開始時は低用量から開始しますが、維持量がオゼンピック皮下注は0.5㎎(最高1.0㎎)であるのに対し、ウゴービ皮下注は2.4㎎と多くなっています。

【内服】サノレックス

成分名マジンドール
効能効果あらかじめ適用した食事療法及び運動療法の効果が不十分な高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35以上)における食事療法及び運動療法の補助
用法用量0.5mg(1錠)を1日1回昼食前に経口投与する。
1日最高投与量はマジンドールとして1.5mg(3錠)までとし、2~3回に分けて食前に経口投与するが、できる限り最小有効量を用いること。
投与期間はできる限り短期間とし、3ヵ月を限度とする。
なお、1ヵ月以内に効果のみられない場合は投与を中止すること。
特徴・視床下部に作用し、食欲抑制作用を現わす。
・覚せい剤と一部作用機序が似ているため、依存性・安全性に留意して使用する。連続使用は3ヵ月まで。
・第3種向精神薬に指定。投与期間は1回14日分が限度。
・肺高血圧症の副作用に注意。
・禁忌疾患が多いので注意。
・覚醒作用があるため、夕刻の投与は避けることが望ましい。

(サノレックス錠適正使用ガイドをもとに作成)

【注射】ウゴービ皮下注

成分名セマグルチド
効能効果肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
・BMIが35kg/m2以上
用法用量0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射する。
その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射する。
なお、患者の状態に応じて適宜減量する。
特徴・GLP1受容体作動薬・週1回皮下注する製剤

(ウゴービ皮下注添付文書をもとに作成)

Q&A

よくある質問をQ&Aにまとめました。気になる質問があれば確認してみてください。

GLP1とインスリンの違いは何ですか?

GLP1はインスリン分泌を促すインクレチンというホルモンの一種で、インスリンは血糖を下げるホルモンです。

GLP1は血糖値に応じてインスリン分泌を調節します。そのため、低血糖を起こしにくいことが分かっています。

もともとインスリン分泌が不足している患者さんへGLP1受容体作動薬を投与しても、効果がないことに注意が必要です。

GLP1受容体作動薬を投与するときは、必ずインスリン依存性/非依存性を確認するようにしましょう。

GLP1は痩せホルモンですか?

GLP1は食欲低下作用による体重増加抑制作用があるため、GLP1ダイエットを紹介する美容クリニックなどでは「痩せホルモン」として紹介されています。

GLP1とはどのような薬ですか?

GLP1とは薬ではなく、十二指腸や小腸などの消化管から分泌されるホルモンの一種です。

GLP1は血糖に応じてインスリン分泌を促したり、グルカゴン分泌を抑制したりする作用があり、血糖値を下げることができます。

ほかにも、脳の満腹中枢に働きかけ、食欲を抑える効果があります。

GLP1のこれらの作用を利用したGLP1受容体作動薬は、糖尿病や肥満症治療薬として認可を受けた薬です。

GLP1はインスリンですか?

GLP1とインスリンは別のものです。

インスリン自体に血糖を下げる効果がありますが、GLP1はインスリン分泌を促進することで血糖を下げます。

GLP1のインスリン分泌は血糖依存性であるため、血糖が高いときはインスリン分泌を促し、そうでないときは促しません。

そのため、GLP1受容体作動薬の単独投与ではインスリン注射投与に比較し、低血糖を起こすリスクが低いことがメリットです。

まとめ

GLP1とは、小腸のL細胞から分泌されるインクレチンというホルモンの一種です。

GLP1の主な作用は以下の5つです。

  1. インスリン分泌作用
  2. グルカゴン分泌抑制作用
  3. 胃内容物排泄遅延作用
  4. 満腹感の促進と食事摂取量抑制作用
  5. 動物モデルでのすい臓β細胞量の維持・増加作用

GLP1受容体作動薬は、1、2、3、5の作用により糖尿病治療薬として利用され、④の作用によりダイエット、肥満症の治療として利用されています。

GLP1受容体作動薬の特徴は以下の2つです。

  1. 血糖依存的なインスリン分泌促進
  2. インスリン注射の代替とはならない

血糖依存的にインスリン分泌を促進するため、血糖が低いときはインスリン分泌が行われず、低血糖を起こしにくいとされています。

そのため、インスリン注射の代替とはならないことに注意が必要です。インスリン依存状性/非依存性を確認してから投与するようにしましょう。

国内で2型糖尿病に適応のある薬を表にまとめました。


経口製剤
注射製剤
連日投与週1投与
製品名リベルサスビクトーザバイエッタリキスミアトルリシティオゼンピックマンジャロ
成分名セマグルチドリラグルチドエキセナチドリキシセナチドデュラグルチドセマグルチドチルゼパチド
特徴唯一の経口製剤1日1回投与1日2回投与1日1回投与開始用量なく維持量で投与可能GIP/GLP1受容体作動薬

GLP1受容体作動薬は、その食欲抑制作用から、美容クリニックなどで「GLP1ダイエット」として処方されています。

あくまで保険適応外の使用となることに注意しましょう。

持病や治療中の薬によっては重大な副作用が現れることがあるため、必ず医師の診察を受けるようにしてください。

GLP1受容体作動薬のウゴービ皮下注は、サノレックス錠とともに肥満症治療薬として保険適応がみとめられています。

肥満症治療薬を表にまとめました。

経口製剤注射製剤
製品名サノレックスウゴービ皮下注
成分名マジンドールセマグルチド
特徴・適応は高度肥満症
・視床下部に作用し、食欲を抑える。
・禁忌が多いため注意。
・覚醒作用あるため夕刻に投与しない。
・1回14日分の処方制限。
・連続処方は3ヵ月まで。
・適応は肥満症
・オゼンピックと同じ成分だが、維持量が多い。

GLP1の作用、GLP1受容体作動薬が使用される糖尿病治療、ダイエット、肥満症治療について紹介しました。

GLP1受容体作動薬はこれまでの糖尿病治療薬の重大な副作用である、低血糖の少ない薬です。

体重抑制作用もあることから肥満症にも適応をもち、生活習慣病が増加する現代において、画期的な薬といえるでしょう。

この記事を読んでGLP1受容体作動薬についての理解を深め、糖尿病や肥満症の治療に取り組んでいきましょう。