[ 精神科につながるまでの患者調査 2026 ②]オンライン初診精神療法の「専門職同席」、患者側の利用意向を調査
#オンライン診療
ひきこもり傾向の64.2%が、専門職の同席が条件なら受診できなかったと回答
ファストドクター株式会社は、「ファストドクター メンタルオンライン(精神科・心療内科・児童精神科のオンライン診療サービス)」の利用者を対象に、「初診からオンラインで精神療法を受ける際、保健師などの専門職が同席することを受け入れられるか」について調査しました。こころに問題を抱え、長期にわたり自宅から出ない状態を経験した173人のうち、64.2%が同席が条件であれば「受診をあきらめていたと思う」または「治療を一切受けなかったと思う」と回答しました。
本調査は、2026年6月から初診でオンラインによる精神療法を行った場合も診療報酬上の評価対象となったことを受け、その算定要件の一つである「専門職の同席」が、制度の対象として想定される当事者に受け入れられるものかについて患者側から検討したものです。
調査からは、患者によっては第三者の訪問・同席が受診の障壁となり、制度が対象とする“医療につながりにくい人”ほど、利用がされづらいという可能性が示されました。当社は、こうした人を継続的な治療につなげるという制度の目的を実現するため、安全性を確保しつつ、患者の状態や希望を踏まえた専門職の関わり方を検討する必要があると考えています。
「オンライン精神療法」とは
精神科の診療では、医師が治療計画に基づき、患者の症状や生活状況に応じて指示や助言などを行う「通院・在宅精神療法」が診療報酬で評価されています。これをオンライン診療で行うものが、「情報通信機器を用いた精神療法(=オンライン精神療法)」です。オンラインで診察を受けること全般を指す「オンライン診療」のうち、医師が行う精神療法について、個別に診療報酬上の評価が設けられているものです。
この「オンライン精神療法」を初診から診療報酬上の評価対象とするかについては、以下のような議論を経て、2026年6月から、一定の条件を満たす場合に初診も評価対象となりました※1。
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| 2024年6月 | 再診のオンライン精神療法を診療報酬で評価 | 令和6年度診療報酬改定で、過去1年以内に同一の症状で対面診療を受けている患者などを対象に、通院精神療法のオンライン実施が評価対象に(初診は対象外)。 |
| 2024年6月 | 規制改革実施計画で見直しを要請 | 患者団体などからの声や国内外の研究を背景に、初診・再診の双方について診療報酬上の評価を見直すことが示される。 |
| 2025年 | 厚生労働省の検討会で安全性と対象患者を議論 | 対面診療が難しい人へのアクセス改善が必要という意見と、初診については慎重に検討すべきとの意見が出され、行政による訪問支援、専門職の同席などが初診オンライン精神療法を認める前提条件として提示。 |
| 2026年6月 | オンライン初診精神療法の診療報酬上の評価を新設 | 令和8年度診療報酬改定で、指針の対象患者・実施条件を満たす場合に限り、オンライン精神療法に初診からの評価を新設。 |
調査背景
「オンライン初診精神療法」の複数の算定要件のうち、当社は次について実現性を検証すべき点と捉えています。
- 保健所や自治体などによる訪問指導等を受けている人を対象としていること
- そのうえで、診察時には保健師や精神保健福祉士などの専門職が患者の側に同席すること
専門職の同席は、オンライン診療そのものを受けるための条件ではなく、医療機関がオンライン初診精神療法の診療報酬を算定するための要件です。ただし、制度が対象として想定するひきこもり状態にある人などのなかには、他者と接することや、自宅への訪問を受け入れることに大きな負担を感じる人もいます。患者が専門職の同席を受け入れられなければ、医療機関はその診療についてこの評価を算定できません。こうしたケースが多ければ、医療機関による提供が広がりにくくなり、結果として、通院が難しい人の受診機会を広げるという制度の目的が十分に実現しない可能性があります。
ファストドクターでは2022年から提携医療機関による精神科のオンライン診療を支援し、2026年9月までの診療件数は累計28万件にのぼります。そこで本調査ではその利用者に協力を依頼し、専門職の同席という要件が制度の対象として想定される当事者にとって受け入れられるものかについて、患者側から検証しました。
分析対象の抽出方法
本調査では、「ファストドクター メンタルオンライン」を利用した667人の回答から、外出困難な状況にある、あるいは過去にその状況にあった173人に限定して分析しています。
- 現在、外出が少ない状態が6か月以上続いている、オンライン診療利用者:136人
- 過去、外出が少ない状態が6か月以上続いた経験を持つ、オンライン診療の利用者:37人
- 分析対象:計173人
分析対象の選定にあたっては、2010年に厚生労働科学研究の一環としてとりまとめられた「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を参考にしました。同ガイドラインではひきこもりについて、社会参加を避け、原則として6か月以上おおむね自宅で過ごしている状態としています※2。
なお、本調査の対象は、最終的に「ファストドクター メンタルオンライン」を通じて、提携医療機関のオンライン診療を受けた患者に限定されています。また実際に新制度を利用した経験ではなく、「その条件であれば受診できたと思うか」を過去の経験に照らして尋ねています。そのため、本調査は新制度の実際の利用率を示すものではなく、専門職の自宅訪問・同席を想定した場合の患者の受容意向を示すものです。
回答者の属性・症状
173名を対象とした回答者は20代から50代が80.9%を占め、性別では女性56.1%、男性41.6%でした。居住環境は、それ以外の市(政令指定都市・東京23区、県庁所在地を除く市)に住む人が54.9%で、最も多くを占めます。また、オンライン診療利用時の自覚症状・悩みでは、「うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み」と「対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い)」が、いずれも53.8%で最も多く挙げられました(複数回答。医師による診断名ではなく、回答者自身による申込時の申告)。
調査結果
1・専門職の同席に対する受診意向 64.2%が「受診をあきらめた、または治療を受けなかったと思う」と回答 |
長期間にわたり自宅から出ない状態にある、または過去にその状態を経験した173人を対象に、オンライン診療を受ける際に行政の専門職が自宅を訪問し、診察に同席することが条件だった場合、受診できたと思うかを尋ねました。「受診をあきらめていた」「治療を一切受けなかった」と回答した人は合わせて64.2%(111人)に上った一方、「問題なく受診できた」と回答した人は11.0%(19人)にとどまり、「強い抵抗はあるが我慢して受診できた」と回答した人は13.3%(23人)でした。
2・どのような形であれば受診できたか 専門職の同席が条件なら受診できないとした人の77.5%が、「医師と自分だけなら受診できた」と回答 |
次に、専門職の同席が条件であれば、受診をあきらめるか、治療を受けなかったと思うと回答した111人に、どのような形式であれば受診できたと思うかを尋ねました。「医師と自分だけ」であれば受診ができると回答した人は77.5%(86人)に上り、受診や治療そのものは必要とするものの、第三者が自宅に入り、診察に同席することが、受診を妨げる要因となる可能性が示されました。
患者さんから寄せられた声
自由回答でいただいた意見のなかから、専門職の同席に関する回答者の声を一部抜粋して紹介します。内容の趣旨を損なわない範囲で、一部を省略または整えています。
【同席でも受診が可能】
- その患者の客観的な症状・状態により、同席させた方がいいのか、させないほうがいいのかを変えるべき(20代男性 対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い)、不眠)
【同席なら受診を諦めていた】
- 私は人と会うのが苦痛でオンライン診療を選んでいるため、他者の同席必須となるとそれが課題と感じていたと思います(30代男性 うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み、不安・パニック・恐怖症、対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い)、不眠等)
- 医師やそれに準ずる人とはいえ、直接人に会うことに恐怖や拒否感がある。自分にとって唯一、安心出来る家の中に医師とはいえ侵入される事は嫌悪感しかない。絶対に来て欲しくない(50代男性 うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み、不安・パニック・恐怖症)
- オンライン診療を選んだ理由に「対面の診療の予約が1か月以上取れない」ということが大きくありますので、「保健士を同席させる」などの場合、また予約がとれずに診療を気軽にうけることができなくなる懸念があります。(30代女性 対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い))
- 本人が希望する場合のみ同席させ、希望しない人は一人で受診できる環境が良い(30代 うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)、不安・パニック・恐怖症、対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い)、不眠)
- 今後のサポートに繋がる人など症状を知っていた方がいい場合の同席はいいと思いますが、ただ他人が誰か側にいなければならないという理由ならば同席されるのは個人的に嫌だと思います。(10代女性 うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み、不安・パニック・恐怖症、対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い))
- まずどこかに連絡を取って予約し、物理的に人間と対面するというハードルが高いです。それを緩和するためにまずオンラインで受診していますので、そこからハードルが上がるとますます不安が増します。オンライン診療の医師以外の第三者(必要な保健士など)がオンラインで通話に同席する、くらいならいいのではないでしょうか。(30代女性 不安・パニック・恐怖症)
調査結果をふまえて
初診から行うオンライン精神療法が新たに診療報酬上で評価されたことは、通院が難しい人の受診機会を広げるうえで意義があると当社は考えています。また、患者の側に保健師等の専門職がいることには、医師による情報収集や情報共有を補い、診療の安全性を確保する役割があります。本調査は、こうした制度や専門職の同席の必要性を否定するものではありません。
一方で、当社が今回の調査を通じて問いかけたいのは、診療報酬上の算定要件が、対象となる患者の事情や意向と両立し、受診機会の拡大という制度の目的に実際につながるものとなっているかという点です。
精神科の受診を必要とする人の置かれた状況はさまざまです。外出が難しいだけでなく、他者と対面することに強い不安を感じる人もいれば、第三者が自宅に訪問することや診察時の同席を負担に感じる人もいます。本調査では、長期にわたり自宅から出ない状態を経験した173人のうち、64.2%が専門職の同席が条件だった場合は受診をあきらめた、または治療を受けなかったと思うと回答しました。そのうち77.5%は、医師と本人だけであれば受診できたと回答しています。こうした結果は、訪問・同席を伴う受診方法が、患者によっては受け入れにくく、制度の活用を妨げる要因になり得ることを示唆しています。
オンライン診療は、外出を伴わず、自宅など本人が比較的安心できる環境から医師の診察を受けられるという特性があります。そのため、外出や他者との対面に困難を抱える人が医療につながるための重要な選択肢になり得ます。診療の安全性を確保しながら、必要な人が受診できる仕組みとするためには、制度の利用状況と患者の受け止めの両方を把握し、専門職がどのように関わることが適切かを検証する必要があると当社は考えています。今回の制度化を重要な前進として受け止めるとともに、オンライン診療の特性を活かしながら医療を必要とする人が利用できる仕組みとなるよう、継続的な把握のもと検証や改善が進むことを期待します。
当社は今後も、精神科の医療アクセスに関する調査と情報発信を継続し、こころの不調を抱える人たちが、適切な医療につながりやすい環境づくりに役立つ情報を届けてまいります。
調査概要
発表名:精神科につながるまでの患者調査2026
調査実施:ファストドクター株式会社
調査対象:「ファストドクター メンタルオンライン」利用者
調査方法:オンラインアンケート
調査期間:2026年6月19日〜6月28日
集計対象:667件
注釈
※1 厚生労働省「情報通信機器を用いた精神療法の適切な実施に関する指針」 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001628572.pdf
※2 厚生労働省が2025年1月に策定した「ひきこもり支援ハンドブック(https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf)」では、ひきこもり支援の対象を、外出状況やその期間だけで限定せず、社会的な孤立や生きづらさを抱える人なども含めて幅広く捉えています。本調査では、オンライン初診時の外出状況に着目して分析するため、2010年に厚生労働科学研究で策定された「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」上の基準を用いています。
【本件に関するお問合せ】
ファストドクター株式会社 広報 田島めぐみ
E-mail:pr@fastdoctor.jp
Tel: 090-7843-9782