ナレッジ・レポート

[ 精神科につながるまでの患者調査 2026 ]精神科の初診待機問題、患者の困難は予約前から49.6%が、対面の受診先を予約申し込み前に確保できず

#オンライン診療

 ファストドクター株式会社は、「ファストドクター メンタルオンライン(精神科・心療内科のオンライン診療サービス)」の利用者667人を対象として、オンライン診療を利用する以前に、対面での精神科・心療内科を探した際の予約状況や初診までに提示された待機期間を調査しました。その結果、全回答者の49.6%が条件が合わず受診に至らなかった、または近隣に精神科・心療内科がなく、受診先を確保できていませんでした。また、受付につながった302人についても、50.7%は提示された最短の待機期間が「1か月以上」でした。

 精神科の初診待機問題については、医療機関を対象にした先行調査により、予約受付から初診までの待期日数が明らかにされてきました。一方、患者が受診先を探し、複数の医療機関へ問い合わせたり、予約を断念したりするまでの過程は、医療機関からの視点だけでは捉えにくい部分です。本調査では、予約申込み前の経験を含め、患者が精神科の初診につながるまでの困難を明らかにしました。

調査背景

 精神科・心療内科の初診では、内科などの一般診療科と異なり、診療を受けたいと思っても「近くに受診先がない」「初診の予約枠が空いていない」といった理由から、医療機関につながりにくいことがあります。こうした実態を把握するため、2025年5月12日に開催された厚生労働省の検討会では、厚生労働行政推進調査事業の研究班が、日本精神神経科診療所協会の協力を得て、同協会に所属する精神科診療所を対象に実施した調査結果を報告しています※1。

 一方で、初診待機の実態を捉えるためには、医療機関側だけでなく、患者側からも状況を把握する必要があります。ファストドクターでは2022年から提携医療機関による精神科のオンライン診療を支援し、2026年9月までの診療件数は累計28万件にのぼります。そこで本調査ではその利用者に協力を依頼し、対面の受診先を探した経験や、予約に至らなかった理由、提示された初診までの待機期間などを尋ねました。これにより、患者が受診先を探し始めてから医療につながるまでの経験を把握し、初診待機の実態をより多面的に捉えることを目的としています。

 なお、本調査の対象は、最終的に「ファストドクター メンタルオンライン」を通じて提携医療機関のオンライン診療を受けた患者です。そのため、対面診療に円滑につながった人や、受診先を見つけられないまま医療につながっていない人は対象に含まれていません。本調査の結果は、精神科の受診を希望する人全体の割合を示すものではなく、オンライン診療に至った患者が経験した医療アクセス上の困難として解釈する必要があります。

本調査で確認されたこと
■ 全回答者の49.6%が、条件が合わない、または近隣に医療機関がないことを理由に受診先を確保できなかった
■ 対面の受診先を探した403人の64.8%が1件以上の医療機関で予約できなかった、または断られた経験を持ち、うち28.8%は3件以上で経験していた
■ 受付につながることができなかった人を除く302人のうち、50.7%は提示された最短の待機期間が1か月以上だった。2ヶ月以上だった人も18.2%に上り、階級値を用いた平均待機日数は39.9日と推計された
■ 全回答者の56.8%が、オンライン診療がなければ「医療や専門家につながれないまま、症状がさらに悪化していたと思う」と回答

回答者の属性・症状

 本調査では、「ファストドクター メンタルオンライン」を利用した667人の回答を集計しました。回答者は20代から50代が84.4%を占め、性別は女性58.5%、男性39.3%です。居住地は全47都道府県にわたり、居住環境では政令指定都市・県庁所在地以外の市が56.8%と最も多い構成でした。また、オンライン診療を利用した際の自覚症状・悩みでは、「対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い)」が57.3%、「うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み」が54.1%と多く挙げられました(医師の診断名ではなく、患者ご自身による申込時の申告)。

調査結果

1・予約申込み前の状況
全回答者の49.6%が、予約申込み前の段階で対面の受診先を確保できず

 「ファストドクター メンタルオンライン」を利用する前に、対面での精神科・心療内科を受診を受診しようとしたかを尋ねました。全回答者667人のうち、「探したが、条件が合わず予約の申込みまで至らなかった」が42.4%(283人)、「そもそも近隣には精神科・心療内科がない」が7.2%(48人)でした。両者を合わせると49.6%(331人)で、全回答者の約半数にあたります。結果2では、対面の受診先を探した人に、予約できなかった医療機関の数と、予約に至らなかった理由やその際の状況を尋ねました。

2・問い合わせ・申込み時の状況
対面の受診先を探した人の64.8%が、少なくとも1件で予約できない、または断られた経験
主な理由は「長期の初診待機」「新規の受付停止」「受付不通」

 「実際に予約を申し込んだり、問い合わせたりした」人と、「探したが、条件が合わず予約申込みまで至らなかった」人の計403人に、予約できなかった、または受診を断られた医療機関の数を尋ねました。その結果、64.8%(261人)が少なくとも1件以上でこうした経験をしており、3件以上に及んだ人も28.8%(116人)いました。

 予約に至らなかった理由や、その際の状況を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは「初診は数ヶ月(または数週間待ち)と言われ、待てないと判断した」で、65.0%(262人)でした。このほか、「現在、初診の新規受付を停止していると言われた」が36.0%(145人)、「電話がまったくつながらなかった、またはWeb予約が常に埋まっていた」が29.5%(119人)でした。

 結果1で示したように、約半数が予約申込み前の段階で対面の受診先を確保できていません。その背景には、通える範囲に医療機関がないことに加え、初診までの待機期間が長いこと、新規患者の受付が停止されていること、電話やWebから予約に進めないことなど、受診先を探す過程で直面する複数の障壁があることがうかがえます。

3・初診までに提示された待機状況
最も早く受診できる医療機関でも、50.7%が「1か月超」。平均待機日数は参考推計で39.9日

 対面の精神科・心療内科から提示された中で、最も短い初診までの待機期間を尋ねました。「そもそも予約が取れない」と回答した61人(16.8%)をのぞき、待機期間の区分を回答した302人では、「1か月〜2か月」が32.5%(98人)で最多でした。中央値が含まれる区分も「1か月超~2か月以内」で、回答区分の代表日数から推計した平均待機日数は39.9日でした*3 。

 参考として、厚生労働行政推進調査事業の研究班が全国の精神科診療所を対象にして実施した調査*2 では、初診待機日数は平均20.9日、中央値は14日と報告されています。また、6割強の診療所が「約2週間以内に初診を受けられる」と回答していました。

 先行調査と本調査では、調査対象(医療機関か患者か)、質問方法、回答区分、集計方法などが異なるため、数値を単純に比較することはできません。そのうえで本調査の結果を見ると、中央値が1か月を超える区分に位置し、参考推計による平均待機日数も39.9日となるなど、患者側に示された待機期間は、医療機関調査よりも長期側に分布していました。ただし、本結果は先行調査が実態を過小評価していることを示すものではありません。

4・初診待機とオンライン診療の選択
54.8%が「初診まで症状が持ちそうにない」としてオンライン診療を選択

 対面の受診先を探した後にオンライン診療を受診した403人に、オンライン診療を選んだ最大の理由を尋ねました。最も多かったのは「予約待ちの期間が長すぎて、それまで症状が持ちそうにないと思ったから」で、54.8%(221人)でした。このほか、「自宅の近くに、自分の症状を診てくれる医療機関が物理的に存在しなかった」が10.9%(44人)、「何件も断られ、探す気力が尽きた」が9.4%(38人)でした。また、全回答者667人に「もし、現在のオンライン診療という選択肢がなかったとしたら、どうなっていたと思うか」と尋ねたところ、56.8%が「医療や専門家に繋がれないまま、症状がさらに悪化していたと思う」と回答しました。

 本調査の結果からは患者が受診方法を選択ことについて、単なる利便性ではなく、医療につながるまでの身体的・心理的な負担や、症状がさらに悪化することへの不安と結びついていることがうかがえます。

患者さんから寄せられた声

 自由回答では、337人の方から声が寄せられました。そのなかから、初診待機に関する回答者の声を一部抜粋して紹介します。内容の趣旨を損なわない範囲で、一部を省略しています。

  • がん治療中なのでかかりつけの病院から何軒か紹介していただいたが、すべて患者が多く、新患受付がしてもらえなかった。心療内科の少なさに対して、患者が多いと思います。(50代女性 対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い))
  • 近隣に通える範囲(気力があれば)で、3、4件見つけたが、どこも新規予約は数ヶ月待ちで、とてもじゃないけど、気持ちがもたなかった。(50代男性 うつ病・うつ状態(あるいはその疑い)・気分の落ち込み、不眠)
  • Googleマップや、インターネット検索で近隣の精神科を探しました。どちらの媒体も検索で上位に来るものは、新規予約を受け付けていないか、新規の予約は紹介状が必要か、新規の予約は半年先など、現実的ではありませんでした。前回も、今回も、医師の診断がなければ、仕事を休めず、生きていられたかも不安になる程、苦しかったです。(30代女性 不安・パニック・恐怖症、対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い))
  • 身体的にも精神的にも尋常ではないと妻に心配され、妻からその会社を即刻辞職するよう促された。会社を退職するにあたり、至急診察が必要な状況だった。しかし通院可能な範囲のクリニックに片っ端から問い合わせたが、いずれも1~3ヶ月先の初診受付だった。心療内科・精神科がこれほど需要があるとは思わなかった。(60代男性 対人関係の悩み・適応障害(あるいはその疑い))

また、ご自身だけでなく、子どもの精神科についても予約が難しい、初診までの待機期間が長いという声が寄せられています。

  • 子供がインフルエンザの後遺症でうつになり、学校に行けなくなってしまった。近隣に小児精神科もなく、どこのクリニックも初診でみてもらうのが困難。そこでオンラインに頼った。本当に助かった。今では、学校に行けるようになりました。田舎は本当に病院を探すのが大変。
  • そもそも、児童精神科は予約が1年以上取れなかったりするうえに、子の特性により、通院自体がとても困難です。オンライン児童精神科であれば受診してみようと思えたため、今後ともオンライン診療は是非継続していただきたいです。
  • 娘の不登校と癇癪、家庭内暴力で、ほぼ家庭崩壊寸前でした。都内の児童発達専門の病院はどこも数カ月待ちで、区の相談センターから紹介してもらった精神科3件全てに「うちは、小学生はやってない」と断られました。絶望していた中、オンライン診療を見て見たところ、数日後に予約が取れ、投薬を開始。その薬効で癇癪の症状が落ち着き、ADHD/ASDの診断も取得でき、その後、スムーズに通級につながることができました。

調査結果をふまえて

 精神科の初診待機について、全国的な実態を示す調査は限られており、患者を対象とした調査はさらに限られています。本調査では、全回答者の49.6%が予約申込み前の段階で対面の受診先を確保できず、さらに待機期間を示された人のうち50.7%は、初診までに1ヶ月を超える期間を示されていました。

 これらの結果から、患者にとっての「初診待機」とは予約日が決まってから診察を受けるまでの期間だけでなく、受診先を探し、問い合わせや申込みを重ね、予約を確保するまでの過程も含むものだと当社は考えています。精神科の医療アクセスの改善に向けて、今後、国や研究機関においても患者側の実態を継続的に把握し、施策の検討に生かされることを期待します。

 また、対面での受診先を探した403人の54.8%が、オンライン診療を選んだ最大の理由として「予約待ちの期間が長すぎて、それまで症状が持ちそうにない」を挙げました。オンライン診療が、対面での受診が難しい人にとって医療につながるための選択肢として利用されていることも確認されました。当社は今後も、精神科の医療アクセスに関する調査と情報発信を継続し、こころの不調を抱える人たちが、適切な医療につながりやすい環境づくりに役立つ情報を届けてまいります。

調査概要
発表名:精神科につながるまでの患者調査2026
調査実施:ファストドクター株式会社
調査対象:「ファストドクター メンタルオンライン」利用者
調査方法:オンラインアンケート
調査期間:2026年6月19日〜6月28日
集計対象:667件

注釈
※1 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai_442921_00009.html
※2 第6回 精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会「精神科診療所の機能に関する調査」https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001485986.pdf
※3 各回答区分に代表日数(階級値)を置いて算出した参考値です。「6か月以上」は区分の下限となる181日として計算しており、実際の待機日数を一人ずつ集計した平均値ではありません。

【本件に関するお問合せ】
ファストドクター株式会社 広報 田島めぐみ
E-mail:pr@fastdoctor.jp
Tel: 090-7843-9782

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