睡眠障害の種類はどれくらいある?症状や特徴を詳しく解説

公開日: 2025/05/27 更新日: 2025/05/27
なかなか眠れず、夜中に目が覚めてしまい、寝不足な日々を過ごしていませんか? 気持ちまで落ち込むと「年齢のせいで仕方ない?」「もしかして治療が必要?」と不安になりますよね。 しっかり眠っているはずなのに、日中に耐えがたい睡魔におそわれ悩んでいる人もいるかもしれません。 睡眠障害は不眠症だけではありません。いくつもの種類がありそれぞれ症状や原因、対処法も異なります。 本記事では、代表的な睡眠障害の特徴や原因について詳しく解説します。 受診の目安やセルフケアについてもご紹介しますので、ご自身の症状と照らし合わせながら、質のよい睡眠をとるためのヒントにしてください。
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目次

睡眠障害にはどんな種類がある?

睡眠障害はおよそ80種類に分類されます。[1]米国睡眠医学会による「睡眠障害国際分類」では、睡眠障害を症状の特徴や病態にもとづき、以下7つのグループに大別しています。[1]

  • 不眠症(ふみんしょう)

  • 睡眠関連呼吸障害(すいみんかんれんこきゅうしょうがい)

  • 過眠症(かみんしょう)

  • 概日(がいじつ)リズム睡眠・覚醒障害

  • 睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)

  • 睡眠関連運動障害(すいみんかんれんうんどうしょうがい)

  • その他の睡眠障害

睡眠障害と聞くと「不眠症」のイメージが強いかもしれません。
不眠症は「眠りたいのに眠れない」「途中で何度も目が覚めてしまう」といった症状が特徴です。不眠が慢性化すると集中力が低下し、気分も落ち込みやすく、生活の質は大きく下がります。[2]

睡眠関連呼吸障害の一つである、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」は、睡眠中に呼吸が浅くなったり止まったりする病気です。夜に深く眠れず、日中に強い眠気があらわれます。[2]

「過眠症」の一種であるナルコレプシーでは、予告なしに急に眠ってしまう突発的な眠気が繰り返されます。[2]

そのほか、体内時計のずれによる病気や夜間に異常行動を起こす病気など、睡眠障害にはさまざまなタイプがあります。

それぞれの睡眠障害によって治療法や対処法は異なります。睡眠障害の種類を知り、生活習慣の見直しや医療機関への受診など適切に対応しましょう。

睡眠障害の種類ごとにあらわれやすい症状

睡眠障害の種類によってあらわれる症状は異なります。睡眠不足や質の低下によって日中の眠気が続くと、日常生活に支障が出るだけでなく心身の健康にも影響を及ぼすことがあります。

以下ではおもな障害・病気について、症状や特徴、生活・健康への影響をまとめました。[1][2][6]

ご自身の症状がどの睡眠障害に当てはまるかを知りたい場合、まず「症状」の列に注目してください。

その後「分類」や「特徴・生活や健康への影響」を確認し、医療機関を受診するかどうかの判断材料や、セルフケアの手がかりにしましょう。

分類

おもな障害や病気の例

症状

特徴・生活や健康への影響

不眠症

入眠困難

寝つきが悪い

・日中に眠気が生じ、集中力が低下する

中途覚醒

夜中に目が覚める

早期覚醒

朝早く目が覚める

熟眠障害

熟睡感がない

睡眠関連呼吸障害

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

〈夜間〉
いびき、夜間頻尿、呼吸が止まる
〈日中〉

強い眠気、集中力低下

・肥満にともない発症することが多い

・生活習慣病の発症リスクになりうる

過眠症

ナルコレプシー

十分に寝ても日中強い眠気がある

・仕事や勉強に集中できない

・居眠り運転のリスクが生じる

特発性過眠症

概日(がいじつ)リズム睡眠・覚醒障害

睡眠相後退型

(すいみんそうこうたいがた)

夜遅くまで寝つけず朝起きられない

・遅刻や欠勤が増える

・慢性的な疲労感が生じる

睡眠相前進型

(すいみんそうぜんしんがた)

早い時間から眠くなり、夜中や早朝に目が覚める

交代勤務型

シフト勤務により体内時計が乱れる

睡眠時随伴症

夢遊病

(むゆうびょう)

睡眠中に意識なく動き回る、大声を出す

・本人や周囲がけがをする危険がある

・睡眠の質が低下する

レム睡眠行動障害

夢に合わせ体を動かす

睡眠関連運動障害

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

脚がむずむずする、ぴりぴりする、かゆみ、痛みなどの強い不快感があらわれる

・症状が影響して寝つきが悪くなる

周期性四肢運動障害

睡眠中に手足がピクピク動く

その他の睡眠障害

うつ病による不眠・過眠

眠れなかったり寝すぎたりしてしまう

・うつ病と相互に悪影響を及ぼす

・食欲、興味、意欲も低下することがある

睡眠障害は「眠れない」「眠すぎる」といった表面的な悩みだけでは判断が難しく、さまざまな原因やメカニズムが関わっています。

どのタイプなのかが明確になれば、適切な治療や対処法の選択につながります。 

たとえば、呼吸に問題がある場合は内科的な治療が必要であり、リズムの乱れが原因の場合は生活習慣の見直しが効果的です。

レストレスレッグス症候群やうつ病と相互に関係しているケースなどでは睡眠の問題だけでなく、原因となる疾患の治療も必要となります。

睡眠障害の7つの分類を知ると、自分の症状がどの分類に該当しどのように改善できるかを判断する材料になります。似たような症状でも分類が異なれば治療法や対処法も変わります。

自己判断のみで放置せず、必要に応じて医師の診断を受けることが重要です。

関連記事:睡眠障害の中途覚醒の原因と対策は?治療法についても紹介

高齢者に多い睡眠障害の種類

高齢者では睡眠リズムの変化や質の低下、薬や病気の影響などによって、以下のような睡眠障害が起こりやすくなります。[2][3][4]

  • 不眠症

  • 睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)

  • レム睡眠行動障害

  • レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

  • 睡眠・覚醒相前進障害(すいみんかくせいそうぜんしんしょうがい)

おもな睡眠障害

症状

おもな原因(一部)

不眠症

寝つけない、夜間に何度も起きる、朝早く目が覚め、日常生活に支障をきたす

・体内時計の機能低下

・睡眠ホルモンの減少

・運動不足、昼寝

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に気道が狭くなり、呼吸が止まったり浅くなったりして低酸素状態になる

・肥満の影響

・加齢にともなう気道の筋力の低下

レム睡眠行動障害

夢の内容に合わせて行動異常(叫ぶ、暴力を振るうなど)があらわれる

・抗精神病薬、抗うつ薬など薬の副作用

・パーキンソン病などの初期症状

レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

足のむずむず感や不快感で眠りがさまたげられる

・鉄不足

・腎臓の機能が低下

睡眠・覚醒相前進障害

夕方から夜の早い時間帯に眠気があらわれ、深夜から早朝に目が覚めてしまうことで、生活に支障をきたす

・体内時計の前倒し

・光による体内時計の調整機能の低下

とくに高齢者によくみられる睡眠障害は「不眠症」や「睡眠・覚醒相前進障害」です。おもに睡眠パターンの変化や体内時計の前倒しによって生じます。

年齢とともに総睡眠時間と深い眠りの時間が減り、浅い眠りの割合が増えるため、睡眠の質はさがりやすい傾向があります。[3]夕方に眠くなり早朝に目覚めるケースも多く「19時に寝床につき、夜中3時に目が覚める」といった訴えをする高齢者は珍しくありません。

十分に眠った実感が得られないと「もっと長く寝よう」と考え、より早い時間から布団に入ってしまいがちです。布団に入っている時間が長くても、実際にはあまり眠れていません。

かえって寝つきは悪くなり、夜中に目が覚めやすく睡眠効率が低下します。

こうした日々が続くと「もっと寝なければ…」と思い、さらに早い時間に寝ようとしてしまう悪循環が起こります。高齢者にみられる次のような睡眠の特徴は、健康リスクにつながる可能性があります。[2]

  • 長時間の睡眠

  • 昼寝

  • 長時間の床上時間(布団に入っている時間)

  • 睡眠休養感の不足

高齢者の睡眠障害による危険性[2]

長時間の睡眠

・8時間以上の睡眠は、死亡リスクを約1.33倍に高める

昼寝

・30分以上の昼寝は、死亡リスクを1.27倍に高める

・長い昼寝や頻回の昼寝は認知機能の低下を引き起こすリスクがある

長時間の床上時間

・8時間以上の床上時間は、死亡リスクを上げる

睡眠休養感の不足

・睡眠で休んだ気がしないと心臓病、糖尿病、高血圧、うつ病などの発症リスクが高まる

睡眠は健康の維持に欠かせませんが、長時間横になって過ごすとかえって体に悪影響を及ぼす可能性があります。

高齢者は睡眠時間の「長さ」にこだわる必要はありません。睡眠の「質」を重視し、床についている時間は長くとりすぎないことを心がけましょう。

睡眠の質を高めるために、以下の工夫をとりいれてみてください。[2]

  • 昼寝は30分以内、15時までにする

  • 床上時間は8時間を超えない

  • 眠気を感じてから布団に入る

  • 毎日決まった時間に起きる

  • 日中は適度に運動する

  • 寝る前のカフェイン、アルコールは控える

19〜22時は覚醒しやすい時間帯とされています。[5]眠ろうとしても寝つきにくいため、22時以降に布団に入るのもよいでしょう。

睡眠障害の原因として考えられるものは?

睡眠障害の原因には、おもに以下の5つが挙げられます。

  • 睡眠環境の乱れ

  • 生活習慣の乱れ

  • 嗜好品の影響

  • 心や体の状態

  • 病気の影響

睡眠は脳や体の健康を維持するために重要な役割を果たしますが、これらの要因によって睡眠のリズムが乱れ、睡眠障害が発生する可能性があります。

以下には睡眠障害を引き起こす要因や具体例、特徴をまとめました。[2][7]

それぞれの原因が睡眠にどう影響しているのか、理由とともに理解を深めましょう。

要因

具体例

理由・特徴

睡眠環境の乱れ

光の影響

・スマートフォンやパソコンのブルーライトが脳を覚醒させる

温度や湿度、音の影響

・部屋が暑い・寒い

・近所の騒音

寝具の影響

・布団やまくらが合っていない

生活習慣の乱れ

不規則な就寝・起床時間
(シフト勤務、交代制勤務)

・体内時計が乱れる

・社会的時差ボケ(休日の寝だめ)で睡眠リズムが乱れる

運動不足

・活動量が少ないと、体が疲れず深い睡眠が得られない

食生活の乱れ

(朝食を食べない、寝る直前に食事する)

・体内時計が乱れる

・日中過剰に摂取した塩分などが夜間に排出され、夜間頻尿が起こる

嗜好品の影響

カフェイン

(コーヒー、エナジードリンク、紅茶、玉露、チョコレートなど)

・覚醒作用により、寝つきの悪化や睡眠の質の低下を招く

・高齢者はカフェインの代謝が遅いため、より影響を受けやすい

アルコール

・一時的に入眠をうながすものの、睡眠の質を悪化させ中途覚醒を増やす

たばこ

・ニコチンの覚醒作用により、入眠困難や中途覚醒、睡眠効率の低下を引き起こす

・受動喫煙も睡眠に悪影響を及ぼす

心や体の状態

加齢

・必要な睡眠時間が短くなる

・体内時計が変化する

・睡眠が浅くなる

女性ホルモンの変化
(月経、妊娠、更年期)

・月経周期:黄体期は睡眠が浅くなる。鉄分不足によりレストレスレッグス症候群が生じやすい

・妊娠初期:つわりの影響

・妊娠後期:レストレスレッグス症候群が生じやすい

・更年期:ホットフラッシュによる影響

肥満

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群の発症リスクを高める

病気の影響

精神疾患

(うつ病や不安症など)

・精神疾患の初期症状や併発症状としてあらわれやすい

慢性疾患

(糖尿病、高血圧、がんなど)

・高血糖:ストレスホルモンが活発になり睡眠の質が低下する

・高血圧:体が緊張状態となり覚醒しやすくなる

・がん:痛みや不安、薬の影響より睡眠がさまたげられることがある

睡眠環境の乱れは身近な原因のひとつです。 

就寝前にスマートフォンやパソコンを使用しブルーライトを浴びると、体内時計を整えるホルモンである「メラトニン」の分泌がおさえられ、眠りにくくなります。[2]

起床・就寝・食事の時間が不規則になると、体内時計が乱れ睡眠リズムも崩れていきます。

入眠を助ける目的で飲酒する人もいるでしょう。アルコールは一時的に眠気を誘うものの、睡眠を浅くするため、かえって睡眠の質は低下します。

習慣的な飲酒は依存につながり「アルコールがないと眠れない」という状態に至ることもあります。

睡眠障害は適切な対策を講じることである程度の改善が可能です。規則正しい生活習慣やストレス管理、睡眠環境の調整を心がけ、質の良い睡眠を確保しましょう。

 


睡眠障害とストレスの関係は?

ストレスは睡眠障害を引き起こす大きな原因です。ストレスによって自律神経バランスが乱れ、以下のような状態が起こります。[8]

  • 夜になっても脳の興奮状態が続く

  • 深い眠りに入りにくくなる

  • 夜中に何度も目が覚める

  • 十分に休んだ感覚が得られない

睡眠中の脳は、必要な記憶を保存し不要なものを消去するなど、日中に得た情報を整理します。ストレスの影響で脳の働きが不十分になると、知識だけでなく気持ちの整理もうまくいきません。

不快な記憶が残りやすくなりストレスが強まる結果、眠りにくくなります。

強いストレスを感じ、一時的に不眠になった経験を持つ人は多いでしょう。なかには1か月以上にわたり不眠が続いている人もいるかもしれません。
不眠が週3日、3か月以上続くと「不眠症」として診断され、治療が必要となる場合があります。[9]

慢性的なストレスは、睡眠障害を引き起こすリスクを高めるだけでなく、心身の健康にも悪影響を及ぼします。

ストレスは自覚している以上に心身へ負担をかけていることがあります。意識的に休息をとり、心と体の回復を優先しましょう。

睡眠障害が引き起こすリスクと日常生活への影響


睡眠障害は放っておくと、生活習慣病や心筋梗塞など命にかかわる病気を引き起こす可能性があります。
たとえ数日から数週間の睡眠不足であっても、日常生活に支障をきたす場合もあります。

【睡眠障害が引き起こす健康リスク】[2]

生活習慣病

・肥満、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症を引き起こす

心血管疾患

・心筋梗塞や狭心症などを引き起こす

・死亡リスクが上がる

脳血管障害

・脳卒中のリスクを高める

認知症

・認知機能が低下し発症する

精神疾患(うつ病など)

・精神疾患の発症のきっかけになる

・精神疾患を再発・悪化させる

睡眠時間が5時間未満の人は、肥満になるリスクが1.13倍高まるとされています。[2]

肥満になると高血圧・2型糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病を引き起こしやすくなり、結果として心筋梗塞や狭心症につながる可能性もあります。

また睡眠時間が6時間未満の人は、7〜8時間眠る人と比べて心筋梗塞や狭心症の発症リスクが4.95倍に上がるとの報告もあります。[2]

6時間未満の睡眠では死亡率が上昇するという研究データもあり、睡眠不足は決して放置できない問題です。[10]睡眠障害は、うつ病などの精神疾患の初期症状としてあらわれることもあります。

【睡眠障害の日常生活への影響】[2]

日中の眠気や疲労感が続く

・遅刻や欠席が増える

・家事や仕事の作業効率が落ちる

・学業成績が低下する

注意力や判断力が低下する

・交通事故などのリスクが上昇する

体調や感情が不安定になる

・イライラしやすくなる

・頭痛がする

・生活満足度や幸福感が低下する

運転者の場合、居眠り運転で交通事故を引き起こす危険があります。眠気を覚まそうとしてカフェインやエナジードリンクを過剰に摂取し、かえって夜に眠れなくなっている人もいるかもしれません。

睡眠不足が続くと家事や仕事が思うように進まず、気分が落ち込みやすくなります。幸福感が低下し、精神疾患の発症のきっかけにもなります。

眠気が強く運転に危険を感じたり、心の不調をともなったりする場合は、早めに医療機関への受診を検討しましょう。

睡眠障害の診断方法

睡眠障害の診断では問診によって症状を詳しく聞きとったあと、必要に応じて検査がおこなわれます。

厚生労働省の「睡眠障害の鑑別診断フローチャート」は問診に広く活用されており、フローチャートを上から順にたどっていき、診断の参考とします。

 

【睡眠障害の鑑別診断フローチャート】[1]

症状

 

疑われる睡眠障害や疾患

食欲の低下や興味・意欲の減退がある

うつ病

睡眠中に呼吸が止まる

強いいびきと日中の眠気がある

睡眠関連呼吸障害

(睡眠時無呼吸症候群など)

夜間に異常な感覚・異常な運動症状がある

睡眠関連運動障害

(レストレスレッグス症候群など)

十分な睡眠を確保しているのに、日中に強い眠気がある

中枢性過眠症

(ナルコレプシーなど)

睡眠中に異常行動がある

(大声を出す、手足を動かす、歩き回るなど)

睡眠時随伴症

(レム睡眠行動障害など)

睡眠時間帯の異常がある

(昼夜逆転など)

概日リズム睡眠・覚醒障害

(睡眠・覚醒相後退障害など)

上記の疾患に合致しない

不眠症

夜間や日中の症状を照らし合わせ、どのタイプの睡眠障害が疑われるかを推測し、疾患に合った方法で治療していきます。

問診だけでは推測できない場合、原因を明確にするために検査によって睡眠の質やパターンを詳しく調べます。



睡眠障害のときにおこなわれる検査

睡眠障害の検査には、以下2つに分類されます。

  • スクリーニング検査(病気の選別の検査)

  • 精密検査(詳細な検査)

スクリーニング検査によって疑われる病気の有無を調べ、必要に応じて精密検査をおこない病気を特定します。

【スクリーニング検査(病気の選別の検査)】[11]

検査名

概要

対象疾患

わかること

簡易PSG
(在宅検査)

自宅で呼吸・酸素・いびきなどを記録する

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群

・いびきや呼吸停止の有無

アクチグラフ検査

腕時計型装置で睡眠と覚醒のパターンを記録する

・不眠症

・過眠症

・概日リズム睡眠障害

・就寝時間

・夜中の目覚め回数

血液検査

鉄分・甲状腺・女性ホルモンの数値を測定する

・レストレスレッグス症候群

・更年期に関連する不眠

・鉄分不足

・甲状腺異常

・ホルモンバランスの乱れ

 

【精密検査(詳細な検査)】[11][12]

検査名

概要

対象疾患

わかること

終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

医療機関に一泊し、睡眠中の脳波・筋電図・呼吸・酸素などを測定する

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群

・周期性四肢運動障害

・レム睡眠行動障害

・いびき、呼吸停止の有無

・手足の動き

・夢と連動した異常行動の有無

反復睡眠潜時検査(MSLT)

昼間に4~5回仮眠をとり、眠りやすさを調べる

・ナルコレプシー

・特発性過眠症

・入眠の速さ

・レム睡眠の出現

覚醒維持検査(MWT)

眠気を誘う状況で、どれだけ起きていられるかを調べる

・職業ドライバーの適性評価

・過眠症の治療効果の判定

・日中に起きていられる能力

 

医療機関では症状に応じて必要な検査が提案され、診断が受けられます。どのタイプの睡眠障害かがわかることで、適切な治療や対処につながります。

受診する際は、今感じている症状や困っていることを具体的に医師に伝えましょう。

 

睡眠障害で病院に行くべきタイミングは?

症状が長く続いている場合や生活に支障をきたしている場合は医療機関を受診しましょう。

受診の目安は以下のとおりです。[9][13]

  • 1か月以上不眠が続いている

  • 日中の眠気や集中力低下で生活に支障がある

  • 夜中にいびきや呼吸が止まる

  • 突然眠り込んでしまう

不眠が週3日以上、3か月以上続く場合は、治療が必要な「不眠症」の可能性があります。[9]また夜中に呼吸が止まる場合は「睡眠時無呼吸症候群」、突然眠り込んでしまう場合は「過眠症」など、治療が必要な病気の可能性があります。
命にかかわる危険や事故につながるおそれもあるため、速やかに受診してください。

受診の際には、以下の情報を医師に伝えるとスムーズな診察につながります。

  • 睡眠の状況(就寝・起床時間、途中で目が覚める回数など)

  • 日中の体調や気分の変化​

  • 生活習慣(運動頻度、喫煙・飲酒の有無など)

睡眠障害は体だけでなく心の病気を引き起こすこともあります。
心の不調も感じ生活がつらいと思う場合は、ためらわずに医療機関に相談しましょう。



睡眠障害の治しかた

睡眠障害を改善するには、原因を特定し症状に合った対処法と治療法の選択が必要です。生活習慣や睡眠環境を整えるだけで改善することもあるため、できることから実践しましょう。

専門的な治療が必要な場合は、原因や症状に応じた方法が選ばれます。

睡眠障害の種類別にみる治療法

睡眠障害の治療は、種類によって方法が異なります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群では専門の装置を使用し治療します。ナルコレプシーや症状の強いレストレスレッグス症候群では、飲み薬による治療が中心です。

装置や薬による治療が必要な場合でも、生活習慣の改善は欠かせません。

具体的な治療法は、以下のとおりです。[1][16]

睡眠障害の種類

治療法

うつ病による不眠・過眠

・抗うつ薬による治療

・睡眠薬の使用(初期段階で必要な場合)

睡眠関連呼吸障害

(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)

・経鼻持続陽圧呼吸装置(CPAP)や下顎前方固定装置(マウスピース)の使用

・重症の場合:口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(こうがいすいなんこうがいいんとうけいせいじゅつ)

・軽症の場合:アセタゾラミドや一部の抗うつ薬による治療

睡眠関連運動障害

(レストレスレッグス症候群・周期性四肢運動障害)

・ドパミン作動薬による治療

・鉄の補給

・カフェイン、ニコチン、アルコールを避ける

・入浴・運動する

・ストレッチやマッサージをする

中枢性過眠症(ナルコレプシー)

・中枢神経刺激薬による治療

・規則正しい生活と十分な睡眠をとる

・昼休みに短時間昼寝する

睡眠時随伴症

・小児:成長とともに消失するため様子見

・成人:原因となる薬の中止・基礎疾患の治療

概日リズム睡眠・覚醒障害

・高照度光療法

・メラトニンやビタミンB12の補給

・認知行動療法

不眠症

・睡眠習慣、寝室環境の改善(睡眠衛生指導)

・不眠に影響している病気の治療

・認知行動療法

・不眠に対する不安・緊張を緩和する教育

・睡眠薬の使用

睡眠障害の治療では、はじめから睡眠薬を使用することはありません。眠れない期間や日中の生活への影響をもとに、まずは治療の必要性が判断されます。[14]

治療が必要な場合でも「睡眠衛生指導」や「認知行動療法」を実施し、効果不十分なケースに薬による治療を組み合わせます。[16]

  • 睡眠衛生指導:睡眠習慣や寝室環境を改善する

  • 認知行動療法:考え方や行動に働きかける

睡眠衛生指導[15]

認知行動療法[1]

・規則正しい時間に食事をとる

・寝室環境を改善する

・毎朝同時刻に起床する

・布団に入る時間を遅くする

など

・眠くなったときだけ寝床につく

・眠れないときは寝室から出る

・寝室は睡眠のための空間とする

・就床時刻や入眠時間を記録する

など

睡眠薬を使って一時的に症状が改善しても、しばらくすると再び不眠が戻ってしまうケースは少なくありません。
1か月以上が続く慢性不眠症の人のうち、およそ7割は1年後も不眠の状態が続き、半数近くは3年から20年後も改善していないとの報告もあります。[16]

病気によっては睡眠薬が必要な場合もありますが、薬だけに頼るのではなく生活全体を整えていくことが大切です。

睡眠障害を改善するためのセルフケア

睡眠障害を改善するためには、日々の生活習慣を見直し睡眠の質を向上させるセルフケアを取り入れることが重要です。

4つのポイントのうち、できることから少しずつとり入れてみてください。[2][7][19][20]

ポイント

具体的な行動

睡眠環境を整える

・寝る1時間前までにスマートフォンやパソコンの使用を避ける

・自分に合うマットレスやまくらを使う

・遮光カーテンを使用し光を遮る

・湿度50%程度を心がける[17]

・室温は13~29℃、寝具内の環境が32℃前後にする(睡眠の質向上)[18]

・自分なりのリラックス方法を見つける(癒やしの音楽やアロマ、瞑想など)

・心配ごとを寝床に持っていかない

生活習慣を改善する

・成人では60分、高齢者では40分を目安に有酸素運動する(隙間時間を利用し、数回にわけてもよい)[21][22]

・寝る直前に激しい運動はしない

・朝日を浴びる

・朝食をしっかりととる

・夜食を控え、夕食は寝る3時間以上前にすます

・3食欠かさず食べる

・入浴は寝る90分前に40℃程度でおこなう

嗜好品を見直す

・夕方以降はカフェイン入りの飲み物(コーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンクなど)を飲まない

・アルコール(とくに寝酒)は控える

・たばこはやめる

睡眠へのこだわりを手放す

・眠くなってから布団に入る

・15分経っても眠れないときは一旦寝室から出る

・日中の眠気で困らなければよしとする

・夜中に時計は見ない

・起きる時間は一定にする

・眠れないときこそ遅寝早起きを意識する

・「寝だめ」はしない

・昼寝するなら15時まで、20~30分にとどめる[15]

体内時計を整えるために、入眠時間にかかわらず毎朝同じ時刻に起床しましょう。日中の活動量も質のよい睡眠につながります。

とくに寝る5〜6時間前に30分ほど有酸素運動を続けると、睡眠の質が向上するとされています。[20]

夜はカフェインやブルーライトなど覚醒作用のあるものを避け、リラックスして入眠できるような環境を整えてください。

朝昼夜、それぞれの過ごし方を見直すだけでも睡眠の質は改善していきます。できることから少しずつとり入れてみてください。



よくある質問

ここでは睡眠障害に関する、よくある質問にお答えします。

睡眠異常にはどんな種類がある?病名一覧が知りたい

睡眠異常は一般的に「睡眠障害」と呼ばれ、大きく7つに分類されます。睡眠障害に含まれる疾患は約80種類にのぼるとされています。

7つの分類とおもな疾患は以下のとおりです。

分類

疾患名

おもな症状

不眠症

・入眠困難

・中途覚醒

・早期覚醒

・熟眠障害

・眠れない

・夜中に目が覚める

・早朝に目が覚める

・熟睡感がない

睡眠関連呼吸障害

・閉塞性睡眠時無呼吸症候群

・睡眠中に呼吸が止まる

・浅くなる

過眠症

・ナルコレプシー

・特発性過眠症

・十分に寝ていても、日中に突発的な眠気が生じる

概日リズム睡眠・覚醒障害

・睡眠相後退型

・睡眠相前進型

・交代勤務型

・体内時計が乱れ、生活リズムが崩れる

睡眠時随伴症

・夢遊病

・レム睡眠行動障害

・夢の内容に合わせて動いたり叫んだりする

睡眠関連運動障害

・レストレスレッグス症候群

・周期性四肢運動障害

・足のむずむず感

・手足の無意識な動き

その他の睡眠障害

・うつ病による不眠・過眠

・うつ病の症状としてあらわれる

 

睡眠障害には、不眠や過眠だけでなく、入眠前や睡眠中に異常行動があらわれ、眠りがさまたげられるタイプなど、さまざまなものがあります。うつ病など心の病気が睡眠障害と影響し合うこともあります。

睡眠障害の種類によって治療法は異なりますが、どのタイプでも生活習慣の見直しは欠かせません。まずは規則正しい生活や睡眠環境の調整を心がけ、睡眠の質改善を目指しましょう。

不眠症は何種類ある?

不眠症はおもに4種類にわけられます。[23]

入眠障害

布団に入ってもなかなか寝つけない

中途覚醒

一度眠っても夜中に何度も目が覚めてしまう

早朝覚醒

朝早く目が覚め、その後眠れなくなる

熟眠障害

十分な睡眠時間をとっても、眠った感じがしない

これらの症状が1週間に3日以上、3か月以上続く場合は不眠症と診断されます。

睡眠障害は寝すぎが原因でもなる?

過度に寝すぎてしまうのも睡眠障害の原因のひとつです。長く眠ろうとすると、かえって寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなります。30分以上の昼寝も夜の睡眠をさまたげます。

「長く眠ること」よりも「質のよい睡眠」を意識することが大切です。
床上時間(布団に入っている時間)・睡眠時間・昼寝の時間は、以下を目安にしてください。[2]

  • 自分の平均睡眠時間に30分ほどプラスした時間を床上時間とする

  • 睡眠時間は8時間以内とする

  • 昼寝は15時まで、20〜30分以内にとどめる

一般的に睡眠時間は6〜8時間が目安とされますが、年齢や体質によって必要な時間は個人差があります。[2]まずは「布団に入っている時間」と「実際に眠っている時間」を1週間記録し、自分にとって必要な睡眠時間を把握することからはじめましょう。

まとめ|睡眠障害に当てはまるときは早めの対応を

睡眠障害には「不眠症」だけでなく「過眠症」「睡眠時無呼吸症候群」「概日リズム睡眠・覚醒障害」など多くの種類があります。

症状や原因はさまざまで、加齢や生活習慣、心や体の病気が関係していることもあります。自分の当てはまるタイプがあれば、早めに適切な対処をしましょう。

睡眠障害が続くと日常生活に支障が生じたり、ほかの病気を引き起こしたりする可能性もあります。

まずは睡眠環境を整える、生活習慣を見直すなどできることからはじめてみてください。
生活を見直しても十分な睡眠がとれない場合は、心療内科や睡眠専門外来への相談を検討しましょう。

しっかり寝ているにもかかわらず日中に強い眠気が続くときは、治療を必要とする睡眠障害の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。

睡眠は心と体の回復に欠かせない重要な時間です。心身の健康を守るためにもできることからはじめ、よい眠りを確保しましょう。

 

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参考文献

[1]睡眠障害ガイドライン わが国における睡眠問題の現状

[2]健康づくりのための睡眠ガイド2023

[3]高齢者における睡眠障害について

[4]高齢者睡眠障害の特徴とその対策

[5]内科医が知っておくべき精神科疾患

[6]睡眠時無呼吸症候群と生活習慣病:原因か結果か?

[7]不眠症|厚生労働省

[8]睡眠とストレスの関係

[9]不眠症(睡眠障害)|こころの情報サイト

[10]Short sleep duration and health outcomes: a systematic review, meta-analysis, and meta-regression-PubMed

[11]睡眠検査

[12]睡眠障害を診断するための検査

[13]睡眠障害を理解して早期受診!が重要

[14]良質な「睡眠」をとる(寝る)

[15]うつ病看護ガイドライン

[16]睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療療ガイドライン

[17]環境温湿度と睡眠

[18]健康づくりのための睡眠指針2014

[19]毎日をすこやかに過ごすための睡眠5原則

[20]睡眠資料 A ガイドライン191/睡眠障害とは

[21]健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023

[22]Interrelationship between Sleep and Exercise:A Systematic Review-PMC

[23]健康づくりのための睡眠指針検討会報告書

 

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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