睡眠障害の中途覚醒の原因と対策は?治療法についても紹介

公開日: 2025/05/26 更新日: 2025/05/26
「夜中に何度も目覚めてしまう」 「一度起きるとなかなか眠れない」 ぐっすり眠れないと、心も身体も疲れてしまいますよね。 日本でおこなわれた調査によると、40代の約2割、70代の約3割が「寝ているときに目が覚める」と答えています。 年齢とともに睡眠は浅くなりやすいものですが、放っておくとうつ病などのメンタル疾患を起こすかもしれません。 この記事では、中途覚醒の原因や治療法を解説します。 睡眠の質を改善するための工夫についてもお伝えしますので、自分に合った方法を試してみましょう。
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目次

睡眠障害の中途覚醒が起こる原因

夜中に目覚めやすくなる「中途覚醒」の原因は、おもに以下の4つです。

  • ストレスや不安

  • 加齢(更年期)

  • 身体的な要因

  • 寝室の環境

中途覚醒は睡眠障害のひとつで、ほかには「入眠障害」「早朝覚醒」「熟眠障害」があります。

厳密に決まっているわけではありませんが、一般的に中途覚醒は「夜中に2〜3回以上目が覚めて再び眠るのが難しい状態」とされることが多いです。

また毎日同じ時間帯に目覚める場合も中途覚醒の可能性があります。

「なぜ目が覚めてしまうか」は人によってさまざまで、いくつかの原因が重なっていることも珍しくありません。

中途覚醒を改善するために、自分がどの原因により中途覚醒を起こしているのかチェックしてみましょう。

ストレスや不安

日中に感じたストレスや悩みごとが原因で眠りが浅くなり、中途覚醒を起こすことがあります。[1]

気持ちが落ち着かないまま眠ると深い眠りに入りにくくなり、夜中に何度も目覚めやすくなるためです。

たとえば仕事や学校でのプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安があると睡眠が浅くなる原因になります。

中途覚醒が続くと「また眠れないかも」という不安が重なり、さらに眠れなくなることもあります。

ストレスや不安がある人は、中途覚醒を起こしやすい状態だとあらかじめ認識しておきましょう。

加齢(更年期)

40代から50代にかけての「更年期」には、ホルモンバランスが変化することで眠りが浅くなったり、夜中に目覚めたりする人が増えます。[2]

エストロゲンという女性ホルモンの減少により、体温調節が難しくなるためです。[2]

寝汗をかきやすくなったり、急に暑く感じたりして目覚めやすくなります。

また加齢により深い睡眠が減少し、浅い睡眠が増加すると中途覚醒を起こしやすくなります。[3]

「夜中に目覚めるのは病気のせい?」と不安に思う人もいるかもしれませんが、年齢による自然な変化であることも多いです。

「日中の眠気が強くてつらい」など日常生活に支障をきたしていない場合は、過度に心配しすぎないようにしましょう。

身体的な要因

中途覚醒には眠りを妨げるような病気が関係していることがあります。たとえば、以下の病気の人は中途覚醒を起こしやすいです。

睡眠時無呼吸症候群

  • 眠っているあいだに何度も呼吸が止まり、苦しくて目が覚めやすくなる病気です。[4]

  • 深いいびき、睡眠中に呼吸が止まるといった症状が特徴的です。[4]

  • 肥満の人に多く、女性より男性に多い傾向があります。[5]

むずむず脚症候群[6]

  • 足がむずむずしたり落ち着かなくなったりすることで、眠りが妨げられ目覚めやすくなる病気です。

  • 夕方から夜にかけて起こりやすいのが特徴です。

  • 鉄欠乏性貧血・人工透析をしている人・妊娠中の人・抗うつ薬を服用している人に起こることがあります。

「寝ているときに息が止まっていると言われた」「足がむずむずして寝られない」などの症状がある人は治療が必要な状態かもしれません。

睡眠外来など専門的な治療を受けられる医療機関を受診しましょう。

寝室の環境

眠っているときの環境が眠りを妨げ、中途覚醒を起こすことがあります。

たとえば以下のような環境では眠りが浅くなりやすく、実は寝ている間は不快に感じている可能性が高いです。[7]

  • 寝室が暑すぎる、または寒すぎる

  • 寝室の湿度が高すぎる、または低すぎる

  • 窓の外から車の音などが聞こえる

  • 外からの光が寝室に入りやすくなっている

  • 寝心地の悪い寝具を使用している

快適な部屋で寝ているつもりでも、気づかないうちに音や光が眠りを妨げていることがあります。

「夜中に何度も目覚める」という人は、寝室の環境をチェックしてみましょう。

うつ病による不眠は中途覚醒が多いの?

中途覚醒はうつ病の症状のひとつではありますが、頻度はそれほど多くありません。[1]

うつ病の人に多いのは以下のタイプの不眠です。

入眠障害

寝つきが悪く寝るのに時間がかかる

早朝覚醒

朝早く目が覚めてその後眠れない

このほか休んだ感じがしない「休息感欠如」や、起きるのがつらくなる「離床困難」といった症状もよくみられます。

同じうつ病の人でも症状は人それぞれ異なるため、不眠のタイプだけでうつ病かどうか見分けることはできません。

「気分がすっきりしない」などの症状がみられるときは、うつ病になっている可能性があるため医療機関を受診しましょう。

睡眠障害による中途覚醒の対策方法

中途覚醒を改善するには、まず日々の生活習慣を見直すことが大切です。

具体的な対策は以下の5つです。

  • 15時以降に30分以上の昼寝をしない

  • 身体疾患の改善

  • 寝る前のパソコンやスマートフォンの使用を避ける

  • 寝室の温度や湿度などの環境を整える

  • 毎日寝る時間と起きる時間を同じにする

ちょっとした工夫により、体への負担を軽くさせ、夜中に目覚める回数を減らせる可能性があります。

全てを改善しようとすると心に負担をかける可能性があるため、無理なくとり入れられる方法から試してみましょう。

15時以降に30分以上の昼寝をしない

中途覚醒の原因になるため、15時をすぎてから30分以上昼寝をしないようにしましょう。[8]

昼寝により自然な眠りをうながす「睡眠圧」が低下し、夜の眠りが浅くなる可能性があるためです。

一方で昼寝には「頭がすっきりする」「疲れがとれる」といったメリットもあります。

そのため、タイミングや長さに気をつけながら昼寝をするのがおすすめです。

「日中に眠くなって耐えられない」という人は、15時までに20分程度の短い昼寝をとり入れましょう。

身体疾患の改善

中途覚醒の原因がなんらかの病気によるものだった場合は、病気の治療をすることで改善が期待できます。[8]

病気が関係していると、生活習慣の改善だけでは中途覚醒を治すことが難しいためです。

たとえば関節炎のように痛みが出る病気では、痛みを和らげる治療によりしっかり眠れるようになるかもしれません。

痛み・かゆみ・息苦しさなどの症状で目が覚めてしまう人は、一人で解決しようとせず医療機関で相談してみましょう。

寝る前のパソコンやスマートフォンの使用を避ける

パソコンやスマートフォンを寝る前に使わないようにすると、ブルーライトの影響を受けにくくなり夜中に目覚める回数を減らせる可能性があります。

これは睡眠をうながすホルモンである「メラトニン」の分泌を減らさないようにするためです。

研究では、ブルーライトを浴びないようにするとメラトニンの分泌が増えることがわかっています。[9]

スマートフォンやパソコンは寝室に持ち込まないようにしましょう。

また夜間に目覚めた際、トイレや水分補給などで寝室を出たくなることもあるかもしれません。

そのような場合に備えて、転倒しないよう足元が見える程度の間接照明を活用するのがおすすめです。[7]

夜間に強い光を見ずに過ごせるような工夫をしてみましょう。

寝室の温度や湿度などの環境を整える

寝るときの環境を整えるとぐっすり眠りやすくなり、中途覚醒の回数を減らせる可能性があります。

ある研究では、寝室の温度が大きく変化すると夜中に目覚める人の割合が増えることが報告されました。[10]

また湿度も睡眠と関係があり40%以下ではのどが乾きやすく、逆に高すぎるとムシムシして寝苦しさを感じやすいです。

快適な寝室の温度と湿度をまとめると、以下のようになります。

室温

夏:26℃以下

冬:16℃以上

(個人差があります)

湿度

40〜60%くらい

心地よい寝室を整えるには、エアコン・加湿器・除湿機などをうまく活用することが大切です。

温度計や湿度計で数値をチェックしながら、快適に寝られる環境を探してみましょう。

毎日寝る時間と起きる時間を同じにする

中途覚醒の改善には、深い睡眠がとれるように起床時間と就寝時間を一定にすることも大切です。

睡眠時間がバラバラになると体内時計が乱れてしまい、夜中に目覚める原因になることがあります。[7]

とくに朝しっかり起きられるようにすると、規則正しい生活リズムで過ごしやすいです。

光には体内時計をリセットする作用があるため、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びるようにしましょう。[7]

睡眠障害で中途覚醒してしまった人が再入眠する方法

中途覚醒で夜中に目覚めてしまったときは、一旦布団から出て心と身体をリラックスさせることが大切です。[11]

そのまま布団で長く過ごしていると『布団=眠れない場所』と脳が認識してしまい、かえって眠りにくくなることがあるためです。[12]

どうしても眠れない場合は、暗めの部屋で以下の対策を試してみましょう。[7]

  • アロマの香りをかぐ

  • 静かな音楽を聴く

  • 簡単なヨガをする

スマートフォンやテレビを見ると、完全に目が覚めてしまい眠りづらくなる可能性があります。

夜中に目覚めてしまったときは静かに過ごすことを心がけ、電子機器を使用するのは避けましょう。

睡眠障害による中途覚醒の治療法

中途覚醒の治療では、生活習慣を見直すのが基本です。[13]

睡眠の質を低下させるような習慣を改善すれば、夜中に目覚める回数を減らせる可能性があります。

ただし生活習慣の見直しだけで改善しない場合、以下のような治療が必要になることもあります。[13]

認知行動療法

「眠れないかもしれない」といった不安な考え方を変える方法。

薬物療法

睡眠導入剤・抗うつ薬・抗不安薬を服用することで眠りやすくする方法。

薬物療法は効果を実感しやすい治療法ですが、中途覚醒の根本的な解決にはならないこともあります。

このため「認知行動療法」のように、中途覚醒を起こしやすい考えかたを変える治療も大切です。

治療方法は人それぞれ異なるため「どんな治療をするのかな」と不安なときは医師に相談してみましょう。

よくある質問

よくある質問にお答えします。

中途覚醒を改善する薬で射精障害は起こりますか?

一部の睡眠薬や抗うつ薬の副作用として「射精障害」があらわれることがあります。

とくに以下のタイプの抗うつ薬では、射精障害などの性機能障害が起こりやすいです。[14]

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)

ただし全ての人に起こるわけではなく、副作用が起きたとしても薬の変更や調整により改善する可能性があります。

「薬の副作用かも」と感じた場合は自己判断で飲むのをやめずに、医師や薬剤師に相談しましょう。

睡眠中途覚醒の治し方は?

中途覚醒の治療は「非薬物療法」と「薬物療法」の2つに分けられます。[15]

非薬物療法は薬を使用しない治療法で、中途覚醒では最初にこの治療をおこなうのが基本です。

たとえば以下のように、夕方から就寝前にかけての過ごし方を見直します。[15]

  • 寝る前に水分をとりすぎない

  • 夕方以降はカフェインの入った飲み物の摂取を控える

  • 眠るためにお酒を飲まない

こうした習慣の見直しをおこなっても中途覚醒が起きる場合は、睡眠導入剤などによる薬物療法が検討されます。

薬を服用することに不安を感じる人もいるかもしれませんが、中途覚醒を一時的に和らげるために効果的な治療法です。

症状が改善すれば中止したり減量したりする可能性もあるため、過度に心配しないようにしましょう。

中途覚醒が何回以上だったら睡眠障害ですか?

「何回以上目が覚めたら睡眠障害」といった明確な回数は、医学的には決まっていません。

睡眠障害は「眠りに異常がある」状態で「日常生活に支障をきたしている」場合に診断される病気です。[8]

中途覚醒の回数だけではなく、日中にどのような影響が出ているかなども確認しながら診断されます。

ただし実際には「1晩で2〜3回以上目が覚める」場合を中途覚醒とするケースが多いです。

「夜中に目が覚めやすい」「眠ったはずなのに疲れがとれない」などの症状に心当たりがある場合は医療機関で相談してみましょう。

中途覚醒であってもあまり気にしない方が良いの?

たまに目が覚めるだけで、すぐにまた眠れる場合はあまり心配しすぎないようにしましょう。

夜中に目が覚めることは誰にでもあり、一時的であれば大きな問題はないためです。

ただし以下のような場合は、放置していると「うつ病」など心の不調をきたす可能性があるため医療機関を受診しましょう。

  • 毎晩何度も起きてしまう

  • 日中の生活に影響が出ている

  • 気分が落ち込みやすい

これらの症状に心当たりがある人は、睡眠を妨げる病気により夜中に目覚めやすくなっているかもしれません。

精神科や睡眠外来など、専門の医療機関で相談してみましょう。

まとめ|睡眠障害の中途覚醒は原因をひとつずつなくしていこう

中途覚醒で悩んでいる場合、まずは夜中に目が覚める理由を探してみましょう。

考え事をしながら眠ったり、寝室の環境が快適でなかったりすることにより眠りが浅くなっているかもしれません。

また痛みやかゆみなどの症状により、目覚めやすくなっている可能性もあります。

自分の生活や身体の状態を振り返り、できることから少しずつ改善していきましょう。

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参考文献

[1]内山真.不眠症と過眠症.日大医誌.2010;69(1):11–16.

[2]寺内 公一. 更年期女性の不眠―その特性と対処法について. 女性心身医. 2018;22(3):210–214.

[3]志村 哲祥, 高江洲 義和. 高齢者不眠の病態と対応. 日老医誌. 2017;54(3):323–328.

[4]睡眠時無呼吸症候群 / SAS|厚生労働省

[5]Romero-Corral A, et al.Interactions Between Obesity and Obstructive Sleep Apnea: Implications for Treatment.CHEST.2010;137(3);711–719.

[6]睡眠障害のスクリーニングガイドライン|日本睡眠学会

[7]健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省

[8]鈴木 正泰. 不眠の鑑別診断とその進め方. 日大医誌. 2020;79(6):337–340.

[9]綾木 雅彦, 森田 健, 坪田 一男. 住宅照明中のブルーライトが体内時計と睡眠覚醒に与える影響―すこやかな概日リズムを保つための住宅環境照明の提案―. 住総研研究論文集. 2016;42:85–95.

[10]田川 萌子, 三宅 絵美香, 櫻井 柚夏, 池田 直樹, 廣瀬 文郁, 松前 和則, 松葉佐 智子, 田辺 新一. 夏季における寝室の温熱環境が睡眠に及ぼす影響. 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集. 2015;2015.6:249–252.

[11]知っているようで知らない睡眠のこと|厚生労働省

[12]宗澤 岳史, 三島 和夫. 不眠症に対する認知行動療法. 精神保健研究. 2009;55:71–78.

[13]本多 真. 睡眠障害の治療. 日薬理誌.

(6):422–426.

[14]坂本 将俊. 抗うつ剤の種類・特徴とその限界. ファルマシア. 2017;53(7):663–667.

[15]鈴木 圭輔, 宮本 雅之, 平田 幸一. 高齢者睡眠障害の特徴とその対策. 日内会誌. 2014;103(8):1885–1895.

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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