復職までの流れ
復職までの簡単な流れをまず見ていきましょう。
復職について自信をもてるようになる(リワーク、生活リズム表)
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復職したい旨を主治医と職場(産業医・上司・人事)へ相談する
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主治医に復職可の診断書を記入してもらう
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復職の準備(産業医面談・職場環境の調整)
しっかりと休養できて症状がある程度落ち着いてきたら、体力や生活リズムを休職前の状態に近づけていきます。
仕事に復帰する自信がついてきたタイミングで、職場や主治医に相談してみましょう。
メンタルヘルス不調で休職した場合、急性期・回復期・復職準備期を経て復職を検討していきます。
それぞれの期間に合った過ごし方を心がけることが大切です。
復職を検討するタイミング
メンタルヘルスの不調がやわらいでいき体力も回復してきたら、復職を検討するタイミングです。
復職を前向きに考えられるようになったタイミングで主治医と職場に相談して、復職の予定を立てていきましょう。
一般的に、次のような基準を満たしていると復職可能だと判断されます。[1]
判断基準の例
- 労働者が十分な意欲を示している
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
- 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
- 業務に必要な作業ができる
- 作業による疲労が翌日までに十分回復する
- 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
- 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』から引用
自分では「もう復職できる!」と思っていても、主治医からは「もうしばらく休職した方が良い」と判断される場合もあります。
そのような場合は焦らず、さらに休職を延長する診断書をもらいつつ、復職に向けたプランをよく主治医と相談しましょう。
復職の際に診断書などの提出を求められる場合がある
復職する際には、職場から「復職診断書(就労可否診断書)」や医師の意見書の提出を求められる場合もあります。
提出する書類の内容や名称はさまざまです。
必要書類のフォーマットを職場からもらって、主治医に記入を依頼しましょう。
書類には「メンタルヘルスの症状が改善されてきたこと」「復職の予定日」などの記載が求められることが多いです。
職場に復帰する日程を職場から伝達されている場合には、あらかじめ主治医に伝えておきましょう。
また、時短勤務や出張を減らすなどの条件付きであれば復職が可能である、と医師が判断する場合もあります。
この場合には、医師が具体的な指示を診断書に記入するので、そのまま職場に提出しましょう。
職場はこれらの情報をもとに復職可能かどうかの判断をします。
職場から復職の許可が出たら、復職することが決定です。
復職へ向けた準備
復職の日程が決まったら、その日へ向けた準備をしていきましょう。
また、復職できるか未定だけれど徐々に準備をしていきたい方も、ここで紹介する内容を少しずつ取り入れてみてください。
生活リズムを整える
まずは、生活リズムを休職前の状態に整えていきましょう。
休職中は睡眠のリズムが乱れ、昼夜逆転していた方もいるでしょう。
また、あまり外出できなかった方もいるかもしれません。このような環境から急にフルタイムで復職するとなると、再び体調を崩してしまう可能性があります。
少しずつ「決まった時間に起きる」「決まった時間に食事をとる」「オンとオフのメリハリをつける」などを試してみましょう。
職場によっては、規則正しい生活を送れているか判断するために「生活リズム表」の提出を求められます。生活リズム表は職場からもらえる場合もありますが、メモにご自身で記録することも可能です。
ご自身で生活リズムの記録をする際には、次の点を中心に記録しましょう。
- 起床時間
- 就寝時間
- 食事時間
- 外出時間
- 運動時間
- 散歩、ストレッチなど
- 活動時間
- 読書やパソコン作業など集中して取り組んだ活動
- 内服時間
- 処方された薬がある場合には、何時に飲んだか記録しておきましょう
生活リズム表はご自身の生活を振り返ることにも役立つので、ぜひ記録してみてください。
リワークプログラムを活用する
ご自身だけで復職の準備をすることが難しいと感じるときは、リワークプログラムを活用してみましょう。
リワーク(return to workの略語)は、メンタルヘルス不調で休職していた方が職場復帰するためのプログラムで「復職支援プログラム」「職場復帰支援プログラム」とも呼ばれます。[2]
リワークプログラムは、主に3種類あります。
①医療機関でのリワークプログラム
復職後にメンタルヘルス不調が再発しないことを目的としたリワークプログラムです。
医師や看護師、精神保健福祉士、作業療法士、心理職などの医療スタッフとリハビリテーションを行います。
料金は健康保険や自立支援制度が適用されます。
②職場でのリワークプログラム
企業によっては独自のリワークプログラムを設けています。
復職後と同じ時間に通勤し座席などで過ごす(仕事はしない)「試し出勤」や、職場付近で一定時間過ごして帰宅する「通勤訓練」を行います。
③地域障害者職業センターでのリワークプログラム
職場の人も含めたリワークプログラムで「職リハリワーク」とも呼びます。
独立行政法人高齢・障害・求職支援機構が各県に1カ所以上設置した地域障害者職業センターの職業カウンセラーによって実施されます。
復職後に職場に適応しやすくなるように、休職者本人と職場の人を支援するプログラムです。
無料で受けられますが公務員は対象外です。
①②は必ずしも全ての医療機関や企業で行っているわけではないため、気になる方は通院中の医療機関や職場に確認しましょう。
休職前を振り返る
復職後にメンタルヘルス不調を再発させないためには、休職前の自分を振り返ることも必要です。
「なぜメンタルヘルス不調になってしまったのか」「また同じ状況になったとき、どんな対策を取れば良いのか」ということを知っておくことで、復職した後の不安も軽減されるでしょう。
ですが、休職前を振り返る作業を1人で行うと苦痛に感じてしまうかもしれません。
カウンセリングサービスを利用して、プロのカウンセラーと一緒に休職の原因を振り返ってみることもおすすめです。
特に、心理療法の一つである「認知行動療法」を行うと、ご自身の考え方のクセを見つけることができます。
日々の出来事を柔軟な考えで客観的に捉えていくと、以前まで非常に苦痛だと感じていたことにもご自身で対処できるようになっていくでしょう。
認知行動療法は自分の考え方を柔軟にしていく心理療法のため、1人ではなくカウンセリングを利用するとより効果的です。
ファストドクターのメディカルカウンセリングでは、復職に対する不安や現在の困りごとを公認心理士のカウンセラーがじっくり伺います。
そして、ご自身に合った認知行動療法のスキルを深めていくことができます。
復職した後の過ごし方
最後に、復職できた後の過ごし方について見ていきましょう。
復職した後は焦りや不安を感じたり、はりきりすぎて無理をしてしまう方も少なくありません。
仕事を頑張ることは素敵なことですが、再び体調を崩さないよう、治療やカウンセリングなどを継続しながら働くことも大切でしょう。
メンタルヘルス不調の再発を防ぐために、復職後は次の点に気をつけながら過ごしてくことをおすすめします。
- 無理して全力で働かない
- 自己判断で治療を中断しない
- 復職前に整えた生活リズムを継続する
復職できる状態までメンタルヘルスの不調が改善しても、治療を継続する方も多いと思います。
特に、治療薬の服用をしている場合、治療薬の効果で状態が安定していることがほとんどです。
そのため、復職後も治療は継続し、定期的に受診するようにしましょう。
治療薬を急に中断してしまうと体調が悪化することも多いため、服用を終わらせたい場合も主治医に相談しながら量を減らしていきましょう。
会社に通いながら通院する時間を確保するのが難しいといった場合には、心療内科や精神科のオンライン診療を利用してみるのもよいでしょう。
また、休職中の遅れを取り戻そうと無理をしてしまうと、メンタルヘルスの不調が再発しやすくなります。
休職前の7〜8割程度のパフォーマンスで仕事を行うと良いでしょう。
「なんだか調子が良くないな」と感じたら、早めに休息を取るように心がけてください。
まとめ
メンタルヘルスの不調で休職している方は、責任感が強く「周りに迷惑がかかるから早く復帰したい」と思っている方も多いでしょう。
しかし、復職を急いだり復職後に頑張りすぎたりすると、メンタルヘルス不調が再発しやすくなります。
この記事で解説した「生活リズムを整える」「リワークプログラムを活用する」「休職前を振り返る」などの職場復帰への準備を少しずつ行っていくと、復職後もスムーズに働けるでしょう。
※メディカルカウンセリングではカウンセラーによるカウンセリングを受けられます。医師による診察や診断書の発行をご希望の場合は、ファストドクターメンタルクリニックをご利用ください。
参考文献
[1]厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』
[2]一般社団法人日本うつリワーク協会『リワークプログラムとは』
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。