休職中の過ごし方は急性期・回復期・復職準備期に分けられる
休職してメンタルヘルスの不調を治療していく期間を、急性期・回復期・復職準備期の3つに分けることができます。
時期によって過ごし方や生活上の注意点が異なるため、ぜひ参考にしてみてください。
急性期(休職開始直後)
急性期は、メンタルヘルスの不調によって休職を開始した直後の時期です。
休養期とも呼ばれるくらいに、睡眠や休息を第一にして過ごすことが大切な期間となります。
急性期は眠れない・考え事が止まらない・自分を責めてしまうなどのつらい症状が強く出やすいことが特徴です。
休みたいのに眠れなかったり、周りと同じように生活できずさぼっているように感じたりして、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
ですが、この時期は眠りたいときに眠り、何も考えずに休息をとることが一番大切です。
メンタルヘルスの不調は「こころが疲れた状態」と思われがちですが、実は「脳が疲れ切った状態」とも言えます。
そのため、まずは脳を休ませる過ごし方を大切にしましょう。
睡眠は何よりの休息です。
この時期には焦って職場や仕事のことも考える必要はありません。
また、無理にリフレッシュしようと外に出る必要もありません。
脳と体を休めるために、自分が心地いいと感じられることやほっとできることを生活にできるだけ取り入れて、のんびりと過ごしてみましょう。
また、早めに症状をやわらげたり、適切な睡眠がとれるように医師による診察や治療を受けることも大切です。
治療薬を使って休息しやすい状態をつくってあげましょう。
通院による外出が大変な場合には、精神科や心療内科のオンライン診療を利用しても良いでしょう。
急性期(休職開始直後)のポイント
- 焦らずこころとからだを休めましょう
- 無理をせずのんびり過ごしましょう
- 仕事のことをはじめ、考えごとは避けましょう
回復期
しっかりと休息がとれると、気分の落ち込みが減ってきて回復期へと移ります。
急性期で落ちてしまった体力を少しずつ回復させていきましょう。
ただ、焦りは禁物です。
リハビリとしてストレッチや散歩などの軽い運動から始めることをおすすめします。
「朝、窓を開けて陽の光を浴びながらストレッチする」「1日1回は近所のコンビニへ買い物に行くなど外出するようにする」といったことでも良いでしょう。
回復期はまだ疲れを感じやすい時期のため、無理のない範囲から徐々に活動を始めることがポイントです。
体力が戻ってきたら、少し集中力を必要とするような、頭を使う作業も再開していきましょう。
読書や趣味、パズル、料理など、自分が苦痛を感じずにできる作業がおすすめです。
「仕事のことを考える」といった考えごとはまだ必要ありません。
また、疲れを感じたら早めに休息をとるように心がけましょう。
回復期では寝過ぎや動かなすぎは体力・気力の回復が遅れてしまうため、少しずつで良いので身体やあたまを使っていくことが大切です。
できれば、生活リズムも徐々に戻していくことをおすすめします。
回復期のポイント
- からだ→あたまの順にリハビリを行っていきます
- まずは軽い運動を取り入れて体力を回復させましょう
- 体力が回復してきたら、頭を使う作業も徐々に行いましょう
- まだ仕事については考える必要はありません
復職準備期
回復期でのリハビリも順調に進み、仕事について少しずつ自信が回復してきた場合には、復職への準備を徐々に進めていきます。
主治医や職場の産業医と相談しながら、次のような過ごし方を始めてみましょう。
例
- 通勤時間に合わせた生活リズム
- 通勤と同じ交通手段を使ってみる
- 休職前の自分を振り返ってみる
- 職場の上司と復職に向けた準備をする
復職に向けた準備では、復帰後に配属になる職場環境も重要です。
短時間勤務やリモート勤務などの調整が必要かどうか、主治医の意見も取り入れると良いでしょう。
また、復職して周りの人と仕事をしていくとなると、どうしてもストレスは感じてしまうでしょう。
そのため、復職後にはある程度のストレスに自分で対処していくことが必要となってきます。
可能であればカウンセリングや試し出勤、リワークプログラムなどを活用すると、復職後の不安を取り除けるかもしれません。
復職準備期のポイント
- 復職に向けて生活リズムを整えましょう
- 復職後の不安がある場合は、カウンセリングや試し出勤、リワークプログラムを利用してみましょう
ファストドクターではオンラインカウンセリングを通じて復職・リワークのサポートも実施しています。
休職中の過ごし方5つのポイント
メンタルヘルス不調での休職期間中、全体を通して押さえておきたいポイントを5つにまとめて解説します。
1.復職を焦らない
仕事を休んでいると「同僚たちに申し訳ないな」「早く復職しなくちゃ」と罪悪感や焦りを覚える人もいるでしょう。
このように休職中に仕事のことばかり考えていると、心身ともに休まらず、不調が悪化し休職期間が思った以上に伸びてしまうことがあります。
症状によって休んだ方が良い期間は異なります。
「今は頑張った自分を休ませてあげる期間」と割り切って、焦らずゆっくりと休職期間を過ごすことが大切です。
2.医師の指示どおりに治療を進める
メンタルヘルスの治療は、休養・薬物治療・精神療法(カウンセリング)の3本柱が基本です。
症状の程度にもよりますが、薬物治療が必要な方も多いでしょう。
「副作用がこわいから」「症状が治ってきたから」という理由で治療薬を勝手に中断してしまうと、症状が再発しやすくなります。
気になることはその都度相談しつつ、医師の指示どおりに治療を進めていくように心がけましょう。
3.傷病手当金で生活の不安を減らす
休職期間中の給与や賞与の支払いがないことも多いです。
そんな中、治療費や生活費の支払いがあると不安ですよね。
職場の健康保険では、条件を満たせば休職期間中に傷病手当金という保障保証を受けられます。
休職期間中に給与の支払いがあっても、十分な額でない場合にも傷病手当金を受けられます。
手続きには申請書の記入や審査があるため、職場や健康保険組合に確認しながら進めていきましょう。
休職制度について詳しく知りたい方はこちら
傷病手当金について詳しく知りたい方はこちら
4.カウンセリングの活用も検討する
メンタルヘルス不調の改善には、カウンセリングによる精神療法も有効です。
たとえば、ファストドクターのメディカルカウンセリングでは、認知行動療法という方法で、自分の考え方のクセを理解し、メンタルヘルスの不調につながるクセを修正していけます。
認知行動療法はメンタルヘルス不調の再発予防にも役立つので、主治医と相談しながら取り入れていくと良いでしょう。
カウンセリングは医療機関でそのまま受けられることもありますが、医療機関とは別のカウンセリングサービスを利用するケースも多いです。
5.大きな決断は不調が完全に良くなってから
メンタルヘルスの不調は、脳が疲れ切っている状態のことを指します。
そのため、思考力や判断力が普段より鈍くなっていることがほとんどです。
このようなときは極端な判断をしてしまうこともあり、後になって後悔するなんてこともあり得ます。
引越し・結婚・離婚・家の売買などの大きな決断は、落ち着いて物事を考えられるようになってから行いましょう。
退職や転職についても休職中に自分一人で判断してしまうのではなく、不調がある程度良くなって周囲とよく相談してから考えることをおすすめします。
復職が近づいたら
復職への意欲が湧いてきたら、復職への準備を始める必要があります。
復職を検討する
体調が回復してきて復職への意欲がある場合は、まず職場に復職したい旨を伝えましょう。
職場から復職に必要な手続きや準備に関する連絡がきたら、医師や職場と相談しながら復職への準備を進めていきます。
多くの場合、まずは主治医に復職が可能かどうか判断してもらう必要があります。
復職可否の判断は、次のような基準で行うことになるでしょう。
判断基準の例
- 労働者が十分な意欲を示している
- 通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる
- 決まった勤務日、時間に就労が継続して可能である
- 業務に必要な作業ができる
- 作業による疲労が翌日までに十分回復する
- 適切な睡眠覚醒リズムが整っている、昼間に眠気がない
- 業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』から引用
復職ができると判断してもらえたら、次は復職するうえで短時間勤務や就業場所(出勤かリモートか)など就業上の配慮が必要ないかどうかも意見をもらうと安心です。
企業によっては、決められたフォーマットに主治医の記入が必要な場合もあります。
また、復職へ向けて会社側の産業医と面談が必要な場合もあります。
復職に向けたリワークプログラムを利用する
いきなり復職することに不安がある場合には、復職へのリハビリとしてリワークプログラムを利用してみましょう。
リワークプログラムには休職者個人に対する支援と休職者と職場両方に対する支援があります。
休職者個人に対する支援は、主に医療機関で受けられます。
医療機関では医師・看護師・カウンセラーなどから症状に合った医学的なリハビリ支援を受けられるでしょう。
費用は保険適用となります。
また、職場に「試し出勤」といった形をとり、復職ができる状態へ徐々に慣らしていくリワーク支援制度を導入している企業もあります。
休職者と職場両方に対する支援は地域障害者職業センターで可能です。
こちらは症状の再発予防が目的ではなく、休職者と職場の人たちがお互い無理なく一緒に働けるよう支援するものです。
費用は無料ですが、公務員の方は対象外です。
復職ではなく退職したいとき
実は、休職後に必ず復職しなくてはいけない訳ではありません。
復職が難しいと感じた場合には休職期間中に退職するという選択をすることもできます。
休職期間中に退職したい場合には、職場に退職したい旨を必ず伝えましょう。
そして、就業規則に従って退職の手続きを進めましょう。
退職すると健康保険や国民年金の切り替えが必要となるので、離職票や源泉徴収票などの必要書類も職場からもらうようにしましょう。
まとめ
メンタルヘルスの不調で休職したときの過ごし方について解説しました。
いきなり長期の休みをもらうと戸惑ってしまうかもしれませんが、重要なのは「焦らず、しっかりと休むこと」です。
まずは、よく寝て食べて、一度仕事のことは忘れましょう。
十分に休息をとり働きたい意欲が出てきたら復職への準備を進めていくと、スムーズに職場復帰できます。
復職したときに不調が再発することを防ぐためにも、休職期間中は治療に専念して、必要に応じてカウンセリングやリワークプログラムも利用してみましょう。
※メディカルカウンセリングではカウンセラーによるカウンセリングを受けられます。医師による診察や診断書の発行をご希望の場合は、ファストドクターメンタルクリニックをご利用ください。
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。