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不眠症が長引くことでうつを併発することはあるのか
眠れない状態が続くと、うつ病になる可能性が高まります。
自律神経の乱れや、ストレスに関わるホルモンである「コルチゾール」の増加により気分が沈みやすくなるためだと考えられています。
実際に、ある研究では不眠症とうつ病を併発している人のうち、約70%が不眠の症状を先に感じていたと報告されました。[1]
このように、不眠はうつ病の前兆としてあらわれやすい症状なのです。
なかでも寝つくのに時間がかかる「入眠障害」や、夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」はうつ病によくみられる不眠のタイプです。[2]
こうした不眠が続くだけでなく「気分が沈む」「やる気が出ない」といった症状がある場合は、うつ病を併発しているかもしれません。
不眠症と診断された人は、睡眠だけでなく心の変化にも目を向けておきましょう。
不眠症とうつ病を診断する方法
ひとつの検査で、不眠症とうつ病を同時に診断することはできません。
それぞれの診断基準にもとづき、医師が病気ごとに診断をするのが基本です。
「不眠症なのか、うつ病なのかよくわからない」と感じている人は、以下の表で診断基準と自分の症状を比べてみましょう。
診断基準 | |
不眠症[3] |
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うつ病[4] |
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眠れないだけでなく、気分が落ち込むなど心の不調も感じる場合は「うつ病」の可能性があります。
ただし不眠症とうつ病を自己判断で見分けることはできません。
「眠れないうえに気分も落ち込みやすい」と感じている場合は、精神科や心療内科で相談をすると安心でしょう。
重度のうつ病の診断方法
「DSM-5」という診断基準で簡易的にうつ病の重症度を判断し、必要に応じて「GRID-HAMD」で詳しく調べるのが一般的です。
「DSM-5」には以下9つの項目があり、うつ病に特徴的な症状のうち、いくつ当てはまるかを医師がチェックします。[4]
-
気分が落ち込んでいる
-
興味や喜びを感じなくなる
-
急激に体重が増加・減少する、または食欲が減退・増加する
-
寝つきにくくなる、または寝すぎる
-
イライラしたり、話し方が鈍くなったりする
-
疲れやすさ・だるさを感じやすくなる
-
必要のない人間だと感じてしまう
-
集中力が低下したり、優柔不断になったりする
-
死について考えることが増える
1か2のいずれかを含む5つ以上が2週間以上続き、日常生活に影響が出ている場合は「軽症うつ病」に該当します。[5]
ほとんどの項目に当てはまる場合は「重症うつ病」になります。
一方で「GRID-HAMD」は、うつ病の重さを数値であらわす方法です。
過去1週間の「症状の程度」や「症状がみられる頻度」を聞き取って数値化し、点数が高いほど重症と判断されます。[6]
うつ病の状態は見た目ではわかりにくいため、症状を数値化して重症度をはかるのです。
医師から症状について質問されたときは、適切に判断してもらえるよう感じたことをそのまま伝えるようにしましょう。
うつ病かどうかや重症度は医師が判断します。上記の基準が絶対ではないことを知っておきましょう。
ストレス不眠症の診断方法
明確な診断基準や検査方法はないため、医師が睡眠状況やストレスの強さ、生活への影響具合などを聞き取って診断します。
以下の条件に当てはまる場合は、ストレス不眠症と診断される可能性があります。
-
強いストレスを感じるような出来事があった
-
週3日以上、夜に十分な睡眠がとれない
-
集中力が低下したり、イライラしたりするなど生活に影響が出ている
このような症状が3か月以上続いているときは、治療が必要な状態かもしれません。
「まだ頑張れるから大丈夫」と考える人もいるかもしれませんが、我慢しているとうつ病に移行することもあります。
ストレスが原因で不眠が続いているときは、一人で抱え込まず精神科や心療内科を受診しましょう。
不眠症とうつ病の違い
眠れないという症状は共通しやすい一方で、そのほかの症状や原因に違いがあります。
自分の状態が不眠症とうつ病のどちらに近いのか、以下の表でチェックしてみましょう。
不眠症 |
うつ病 | |
おもな原因 |
ストレス・生活習慣・身体の病気・薬の副作用・加齢[3] |
ストレス・責任感が強いなど性格の傾向・遺伝・がんなどの病気[7] ※原因が分からないこともあります |
よくみられる症状 |
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眠りに異常をきたすのが「不眠症」、眠れないだけでなく心にも不調をきたすのが「うつ病」の特徴です。
うつ病では1日中気分が沈んだり、喜びを感じなくなったりします。
また胃腸の調子が悪くなるなど、身体的な症状がみられる場合もあります。
症状には個人差があるため、自己判断で不眠症かうつ病かを見分けることはできません。
眠れない日が続いて心の不調も感じている場合は、まずはかかりつけ医でもよいので相談してみましょう。
うつ病の人がとる行動は
症状が進行するにつれて、普段できていたことができなくなったり、生活が乱れたりすることがあります。
とくに次のような行動の変化がみられることが多いです。[9]
-
会話が少なくなる
-
着替えや入浴を避ける
-
タバコやお酒の量が増える
-
会社や学校を休みがちになる
-
部屋が散らかっても片付けられなくなる
-
何もせず長時間ぼーっとすることが増える
-
趣味など、今まで興味があったことに手をつけなくなる
このような様子がみられ、夕方になると気分が楽になる場合はうつ病の可能性があります。
そのままにしておくと症状が進行することもあるため、早めに心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
一方で周囲の人にうつ病に似た症状がある場合、無理に受診をすすめるとかえって反発されてしまうかもしれません。
普段と変わった様子に気づいても、まずは話をよく聞くことが大切です。
受診をすすめる際は「一緒にいってもいい?」などと声をかけ、寄り添う姿勢をみせることで受診に対してのハードルが下がるはずです。
不眠症とうつ病の対処・改善方法
医療機関では「非薬物療法」と「薬物療法」の2つを組み合わせて、不眠症やうつ病の治療がおこなわれます。
それぞれ方法や効果の感じかたに違いがあるため、以下の表で比較してみましょう。
非薬物療法[10] |
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薬物療法[10] |
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不眠症やうつ病の治療では、とくに「非薬物療法」が重要視されます。
薬物療法で一時的に改善しても、生活習慣や思考パターンがそのままだと症状がぶり返しやすいためです。
「薬があればそれでいい」と考える人もいるかもしれませんが、薬だけで不眠やうつ病の根本解決をするのは難しいことも多いのです。
医師から非薬物療法をすすめられた場合は、生活習慣や考え方を少しずつ変えていきましょう。
よく寝ることが大事?
睡眠は長くとればよいというわけではありません。以下のような要因で、自然に睡眠時間が減ることがあるためです。
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年齢を重ねるにつれて、ぐっすり眠れる時間は減っていく[11]
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季節によって睡眠時間は変わり、冬に比べると夏は10〜40分程度短い
長い時間眠れなくても、日常生活に影響が出ていないのであれば様子をみても構いません。
「以前より眠れなくなった」と感じても、寝不足による影響がない場合は過度に心配しないようにしましょう。
昼寝は時間とタイミングを決める
昼寝をしたい場合は、15時までに20分程度の短い睡眠に抑えましょう。
15時以降に30分以上の昼寝をすると、寝つきが悪くなったり夜中に目が覚めたりする原因になります。[11]
昼寝には寝不足を解消し、午後の集中力をアップさせる役割があるため、時間とタイミングを決めておくのがおすすめです。
夜の睡眠に影響を与えないように、長時間昼寝をするのは避けましょう。
よくある質問
よくある質問にお答えします。
不眠症はうつ病の症状ですか?
「不眠症」は、うつ病で最も多くみられる症状です。実際に、うつ病の人のうち86%がなんらかの不眠症を抱えていたという調査結果があります。[10]
なかでも「寝つきにくい」「夜中に目覚めてしまう」などの症状がうつ病に特徴的です。[2]
ただし不眠症だからといって、必ずしもうつ病というわけではありません。
加齢や生活習慣、ストレスが原因で眠れなくなっているケースもあります。[3]
自己判断で2つの病気を見分けるのは難しいため、うつ病かもしれないと感じたら精神科や心療内科を受診しましょう。
不眠でうつになる可能性はありますか?
眠れない日が続くと、うつ病になる確率が上がります。ある研究では、不眠がある人はうつ病になる確率が2倍も高くなると報告されました。[12]
はじめは眠れないだけでも、次第に気分が落ち込んだり、何をしても楽しくなくなったりするケースが少なくないのです。
「眠れないだけだから」と油断していると、知らず知らずのうちにうつ病の症状が重くなり回復に時間がかかることもあります。
不眠が長く続いている人は、憂うつになったり、イライラしたりなどうつ病の症状が起きていないかチェックしてみましょう。
ストレス性不眠症とは?
仕事や人間関係の悩みなど、強いストレスが原因で眠れなくなってしまう状態を「ストレス性不眠症」といいます。
これは正式な診断名ではなく、医療機関で使われることの多い俗称です。
ストレスにより心に負担がかかると、夜になっても頭がさえてしまい不眠が起こりやすくなります。
明確な診断基準はなく、おもに以下の症状を目安に診断されます。
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強いストレスを感じている
-
眠れない日が週に3日以上ある
-
集中力が低下したり疲れを感じたりなど、日中に影響が出ている
「身近な人の死」や「離婚」など、心に大きな負担がかかる出来事があったあとは眠れなくなることがよくあります。
しかし無理をし続けると、症状が悪化してさらに眠れなくなるかもしれません。
強いストレスを受けたあとに眠れず困っている場合は、まずは内科でもよいので相談してみましょう。
不眠症とうつ病は併発しやすいですか?
不眠症とうつ病は併発しやすい病気です。[2]
実際にうつ病の人のうち、約8割以上に不眠の症状があったという報告があります。[10]
一方で不眠が続いている人は、のちにうつ病を発症しやすいこともわかっています。[1]
不眠の症状がある人は、すでにうつ病になっていたり、これから発症したりする可能性が高いのです。
「気分が落ち込む」「何をしても楽しくない」などの症状がみられる場合はうつ病になっているかもしれません。
このような場合は専門家による治療が必要な可能性があるため、精神科や心療内科で相談してみましょう。
まとめ|不眠症とうつの明確な診断方法はないため主治医と相談を
2つの病気をまとめて診断できる基準はなく、不眠症とうつ病を同時に診断することはできません。
精神科や心療内科のような専門の医療機関では、症状から不眠症とうつ病を別々に診断します。
ただし不眠症であっても、眠れない状態が長く続くとうつ病へ移行する確率が上がります。
不眠症と診断されても油断せず、心の不調を感じた場合は主治医に相談するようにしましょう。
ファストドクターのオンライン診療(心療内科・精神科)なら、処方薬の配送や診断書のオンライン発行に対応しています。診察は健康保険適用。お支払いはクレジットカードもしくはコンビニ後払いです。※診断書の内容は医師の判断によります。
参考文献
[4]坂元薫.内科医が知っておくべき精神科疾患:うつ病,パニック障害,不眠症.日内会誌.2021;110(12):2540–2552.
[5]坪井貴嗣.うつについて改めて知ってみませんか?:うつ病の治療について.杏林医会誌.2018;49(1):87–89.
[6]GRID-HAMD構造化面接ガイド|日本臨床精神神経薬理学会
[8]荒井稔.うつ病の診断と治療.順天堂医学.2005;51(3):386–391.
[9]佐藤大輔,安保寛明.うつ病等で休職に至る警告サインの明確化.精神保健看護学会誌.2020;29(1):42–50.
[10]渡辺範雄.うつ病に対する不眠精神療法の臨床的有効性.精神医学.2012;114(2):158–166.
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。
症状に対する診断やお薬の処方、診断書や傷病手当金申請書の記載内容は医師の判断によります。