パニック症とパニック障害の違いはあるの?わかりやすく解説します

公開日: 2025/07/16 更新日: 2025/07/16
「パニック症?パニック障害とは違うの?」と、呼び方の違いに混乱してしまった経験はありませんか? 医療サイトや医療機関でパニック症という言葉を目にして「これまで聞いていたパニック障害とは別の病気なの?」と不安を感じることもあるでしょう。 パニック症とパニック障害は同じ病気を指す言葉で、症状や治療法も変わりません。 病名の表現が時代とともに見直されてきた経緯が背景にあるためです。 本記事では、呼び名の違いが生じた理由や、具体的な症状から原因まで解説します。 不安を少しでも軽くできるよう参考にしてみてください。
パニック障害の治療をオンラインで

ファストドクターの​オンライン診療​(心療内科・精神科)なら、​処方薬の​配送や​診断書の​オンライン発行に​対応しています。​診察は​健康保険適用。​お支払いは​クレジットカードもしくは​コンビニ後払いです。

パニック症とパニック障害の違いは?

「パニック症」と「パニック障害」は同じ病気を指します。英語名はどちらも「Panic Disorder」と呼ばれており、診断基準や治療方法に違いはありません。

日本国内においては厚生労働省や学会、医療サイトでも呼び方のゆれがあるのが現状です。

「パニック障害」と呼ばれていた病気は、2014年に日本精神神経学会が出版した「DSM-5」日本語版で正式に「パニック症」と訳されるようになりました。

DSM-5とは精神疾患の診断と統計の手引書で、世界中の医師が使用している診断基準です。[1]

昔から「パニック障害」と呼ばれてきた病気の呼び方が「パニック症」という呼び方に変わってきたと理解してよいでしょう。

パニック障害からパニック症へ呼び方が変わったのはなぜ?

「障害」という呼び方がもつネガティブな印象を避けるためとされています。2014年に出版された精神疾患の診断基準である「DSM-5」の日本語版で、正式に「パニック症」へと変更されました。[1]

「障害」という言葉には「一生治らないのでは」や「自分は普通ではないかも」など、ネガティブなイメージや偏見がつきまといやすいです。また、患者本人や周囲の人にとっても受け入れづらいという問題がありました。

より中立的で、回復可能なイメージをもちやすい「症」という表現に改められたのです。

パニック症に限らず「社会不安障害」は「社会不安症」、「大うつ病性障害」は「うつ病」といったように他の病名でも同じように変更されています。

※「症」という表現が過剰診断や過剰治療につながる恐れもあるため、限られた病気でのみ採用されました。

新しい名前を使う場合は、旧病名をスラッシュで併記します。たとえば「パニック症/パニック障害」「社会不安障害/社会不安症」のように記載します。

ただし2025年時点では、全ての医療機関で呼び方や表記が統一されているわけではありません。

医師や医療機関によって「パニック障害」と説明されることもありますが、「呼び方が違うだけで治療法や症状の管理方法に変わりはない」と覚えておきましょう。

パニック症/パニック障害とは何か

パニック症/パニック障害は、理由がわからないままパニック発作がこり、突然強い不安や恐怖におそわれる病気です。[2]

心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったりして「このまま死んでしまうかも」と感じるような状態を「パニック発作」と呼びます。

発作そのものは通常数十分でおさまることがほとんどです。しかし「また、おかしくなったらどうしよう」という不安が続き、同じような状況を避けるようになることもあります。

その結果、通勤や外出が難しくなったり、人との関わりを避けてしまったりするなど、日常生活に支障があらわれます。

症状の改善を目指すには専門医による診断と指導が重要です。適切な治療を受けるためにも、医療機関への相談を検討しましょう。

パニック症/パニック障害の初期症状

突然強い不安や恐怖におそわれ、動悸や呼吸困難などの身体的な症状があらわれます。[3]

  • 心臓がドキドキする(動悸)

  • 呼吸が苦しくなる

  • 強い不安や恐怖におそわれる

  • めまい、ふらつき、気が遠くなる感覚

  • 胸の痛みや圧迫感

  • 異常な発汗、冷や汗

  • 吐き気や腹部の違和感

  • 「自分が自分でない」ような感覚

症状は通常数十分で治ることが多いです。初期段階では、一時的な発作のみであることが多く、発作が治れば普段どおりの生活に戻れるため、日常生活に大きな支障がでない場合もあります。

そのため、自分がパニック症/パニック障害であることに気づかないまま過ごしている人も少なくありません。発作が繰り返されるようになって、自覚するケースもあります。

パニック症/パニック障害の症状チェック

パニック症/パニック障害かもしれないと感じたときは以下のような症状があるかを確認してみましょう。[4]

  • 繰り返し、突然の強い不安や身体の異変があらわれる

  • 発作が出ていないときも「また起きるかも」と日常的に不安を感じる(予期不安)

  • 発作を避けるために外出や乗り物など、特定の場所や行動を避ける(回避行動)

  • 発作が起きた場所や状況を怖がって、1人で出かけられない(広場恐怖)

発作は日常生活のなかで、いつあらわれてもおかしくありません。症状にあてはまる場合はひとりで抱え込まずに医療機関や専門の医師に相談することが大切です。

「パニック発作」と「パニック症/パニック障害」の違いは?

パニック発作は一時的にあらわれる症状であり、パニック症/パニック障害はパニック発作が長期的に繰り返し起こる状態です。

パニック発作は、突然強い不安や恐怖が数分以内にピークに達し、動悸や息切れ、呼吸困難といった身体症状があらわれる一時的な症状です。特定の状況に限らず、予期せずに起こります。

一方、パニック症/パニック障害は予期しないパニック発作が繰り返し起こり、以下のような状態が続く場合に診断されます。[5]

  • 少なくとも1回の発作のあと、1か月以上症状が続く

  • 次の発作が起こるのではないかという持続的な不安(予期不安)

  • 発作を避けるための行動変化(回避行動)

  • 薬物やほかの病気によるパニック発作ではない

  • 強迫性障害や外傷後ストレス障害など、ほかの精神疾患ではうまく説明されない

症状が日常生活に支障をきたすようになると、パニック症/パニック障害と診断され、専門的な治療やサポートが必要です。

一時的な発作なのか、頻繁に発作が繰り返されるかどうかが大きな違いです。発作が続いたり、生活への影響があらわれたりする場合は早めに医療機関を受診しましょう。

パニック症/パニック障害の原因

パニック症/パニック障害は脳と心のさまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。[6]

原因として考えられているのは、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れです。

とくに、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経物質が過剰に働いたり、うまく調整できなかったりすることで、不安や恐怖が強くあらわれることがあります。

また、遺伝や過度なストレス、環境要因が複合的に絡み合って引き起こされてしまうともいわれています。

パニック症/パニック障害は気のもちようではなく、複雑な原因が関与して発症すると知っておきましょう。

パニック症/パニック障害になりやすい人の特徴

パニック症/パニック障害は男性では20代、女性では20〜30代に多くみられます。とくに女性は男性の2〜3倍ほど発症しやすいといわれています。[7]

以下の性格の傾向の人も発症しやすい傾向です。

  • 完璧主義

  • 責任感が強い

  • 内向的

  • ストレスをため込みやすい

  • 子どものころに強い不安や怖い体験をしたことがある

ただし、特徴があるからといって必ず発症するわけではありません。

ストレスの多い環境や生活習慣など、さまざまな原因が重なったときに、発症のきっかけになる可能性があると理解しておくことが大切です。

パニック症/パニック障害の人に言ってはいけない言葉とは

パニック症/パニック障害の人に対して、否定するような言葉や軽視しているような言葉は避けるべきです。

  • 気のせいだよ

  • 考えすぎ

  • もっと頑張ったら?

  • 甘えているだけじゃない?

  • 自分に負けているだけ

  • 大人ならしっかりして

上記のような言葉は、本人が抱えている不安やつらさを軽くみている印象をあたえ、否定されたように感じさせてしまうのです。

とくに「甘え」や「気のせい」といった言葉は、プレッシャーとなり追い詰めてしまう可能性があります。

パニック症/パニック障害は本人の努力だけではどうにもならない病気であり、理解されないことがストレスや孤独感につながります。

パニック症/パニック障害の治療において、周りの人の理解も大切です。「つらくなったらすぐに言ってね」や「今はこれでいいんだよ」と寄り添う言葉が、安心感をあたえるでしょう。

パニック症/パニック障害に似た病気

「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」や「うつ病」も、動悸や息苦しさ、不安感など似たような症状があらわれることがあります。

ほかの病気が原因で、パニック発作に似た症状がでることもあります。

  • 甲状腺機能亢進症:動悸や焦り、体重減少など

  • 貧血:めまいや息切れ、疲れやすさ

  • 不整脈などの心臓の病気:胸の違和感や強い動悸

パニック症/パニック障害とよく似た症状をもつため、誤って診断されてしまうケースもあるのです。

パニック症/パニック障害が疑われるときは、まず身体に異常がないかを調べる「除外診断」が大切です。誤った診断を防ぎ、正しい治療につなげるためにも、まずは医療機関を受診しましょう。

パニック症/パニック障害は治る?

パニック症/パニック障害は適切な治療を受ければ回復が期待できる病気です。とくに、考え方や行動を見直す治療「認知行動療法」や「薬物療法」で不安をやわらげる治療が有効とされています。

認知行動療法では「また発作が起きるかも」という考え方を少しずつ変えていきます。発作が起こっても命にかかわることはないと理解できるようになれば、不安軽減につながるでしょう。

薬物療法は抗うつ薬や抗不安薬を使って、不安や恐怖の感じ方をやわらげる治療です。抗うつ薬の場合、効果がでるまでには2〜4週間ほどかかります。

すぐに治る病気ではないものの、多くの人が数年以内に改善する傾向があります。医師の指示のもと、焦らず継続的に治療を続けましょう。

パニック症/パニック障害が治る確率は?

パニック症/パニック障害の治る確率(完全寛解率)は、研究によって数値が異なるため、はっきり何%とはいえません。しかしいくつかの研究では、以下のような結果が報告されています。

パニック障害の自然な長期経過を評価する研究では、パニック症/パニック障害の患者30人を11年間追跡しました。

そのうちの24名の患者に再面接が実施でき、その結果、以下のような傾向がみられました。[8]

回復の状態

割合

完全に治った(完全寛解)

約33%(約3人に1人)

この1年間発作なし

約66.7%(約3人に2人)

直近1か月で発作なし

約87.5%

仕事・家庭生活で発作なしまたは軽度

約90%

社会生活での発作なしまたは軽度

約67%

完全に発作がなくなる人、日常生活に支障がない程度まで回復する人など、回復の傾向はさまざまです。

また別の研究では、15年前に薬物治療を受けたパニック障害の患者55人を追跡した結果、次のような割合が報告されています。[8]

状態

割合

10年間発作なし・薬物療法も受けていない(完全寛解)

18%

発作なしだが薬は継続中

13%

発作がときどきぶり返す

51%

今も診断がつくレベル

18%

パニック症/パニック障害は寛解する人もいれば、時間をかけてゆっくりと回復し、日常生活を取り戻す人も多いです。

治療には「認知行動療法」や「薬物療法」がありますが、短期間で劇的に良くなるわけではありません。少しずつ発作の頻度や強さを減らしていき、普通に暮らせる状態を目指せます。

「一生治らないかも」と不安になるかもしれませんが、焦らず長期的に向き合うことが大切です。

まとめ|パニック症とパニック障害は同じ疾患です

パニック症とパニック障害は呼び方が違うだけで、どちらも同じ病気を指しています。診断基準や治療方法に違いはありません。

「障害」という言葉へのネガティブなイメージや誤解を減らすため「パニック症」という表現が使われるようになりました。

パニック症/パニック障害は、突然の強い不安や動悸、息苦しさなどのパニック発作に加え、予期不安や行動回避を伴うケースもあります。

脳の働きやストレス、性格傾向などが原因となり引き起こされ、誰にでも発症しうる病気です。

適切な治療を受けることで症状の改善を期待できます。心と体に異変を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

また、周りの人は無理に励ますことなく、そっと寄り添うことが大切です。ひとりで抱え込まずに、専門の医師に相談しましょう。

パニック障害の治療をオンラインで

ファストドクターの​オンライン診療​(心療内科・精神科)なら、​処方薬の​配送や​診断書の​オンライン発行に​対応しています。​診察は​健康保険適用。​お支払いは​クレジットカードもしくは​コンビニ後払いです。

参考文献

[1]DSM5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)

[2]パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)

[3]不安障害|こころの病気について知る

[4]パニック障害(パニック症) (患者さんのための資料)

[5]表2 パニック発作の診断基準|メンタルヘルス|厚生労働省

[6]パニック障害における脳構造の変化

[7]罹患率 - パニック障害の有病率は約1%で、日本では

[8]The long-term course of panic disorder--an 11 year follow-up - PubMed

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

近所に心療内科・精神科がない方、通院を周りに知られたくない方へ
受診するか悩んでいる方、薬にあまり頼りたくない方へ
ファストドクターメディカルカウンセリング
ご利用前にお読みください
以下の症状が見られる場合は、お近くの病院で対面での受診をおすすめします。
  • 自傷他害のおそれがある場合
    • 自分を傷つけたいと思う
    • 具体的に死ぬ方法について考えている
  • 身体疾患が強く疑われる場合
    • 高熱がある
    • 呼びかけてももうろうとしている
    • 意識がない
  • 緊急性が認められる場合
    • ここ数日の間で急激に状態が悪化している
    • 食事や水分をとることができない
TOP医療コラムパニック症とパニック障害の違いはあるの?わかりやすく解説します