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2023.1.16

【医療者対談】東京都医師会理事 西田伸一 先生 × 代表医師 菊池 亮 夜間休日往診・オンコール代行… 時間外救急プラットフォームは地域医療をどのように変えるのか【医療者対談】東京都医師会理事 西田伸一 先生 × 代表医師 菊池 亮 

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【医療者対談】東京都医師会理事 西田伸一 先生 × 代表医師 菊池 亮 夜間休日往診・オンコール代行… 時間外救急プラットフォームは地域医療をどのように変えるのか【医療者対談】東京都医師会理事 西田伸一 先生 × 代表医師 菊池 亮 

西田 伸一 先生

医療法人社 団梟杜会 西田医院 院長

1985年 帝京大学医学部卒業 同大学医学部附属病院救命救急センター・新行徳病院外科・長浜赤十字病院外科・オークランド病院集中治療科・松村総合病院救急医療センターを経て、2000年に西田医院継承 東京都医師会理事、調布市医師会長 日本救急医学会認定専門医、日本外科学会認定登録医、日本在宅医学会認定専門医、認知症サポート医、認定産業医

菊池 亮

ファストドクター代表医師

2010年 帝京大学医学部卒業 帝京大学医学部附属病院・関連病院にて整形外科・救急科に従事後 、2016年にファストドクターを創業し代表取締役に就任 日本整形外科学会専門医・日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医・一般社団法人日本在宅救急医学会評議員・一般社団法人日本在宅ケアアライアンス 災害対策委員会で新型コロナウイルス感染症対策班プロトコール作成ワーキンググループメンバー

最小限の医療資源で最大限の成果をあげる――。少子高齢人口減少社会を迎え、医療提供体制の根本的な見直しが図られている。なかでも課題となるのが、在宅医療の推進。この状況を一変させる存在として最近注目を集めるのが、救急往診事業を軸に、医療機関向けに往診サポートやオンコール代行などを担うファストドクターだ。地域医療の拡充に向けて、開業医はどう連携体制を組むべきかを考える。

かかりつけ機能の構築には赤ひげよりもシステムが必要


―第8次医療計画でも検討されていますが、開業医による在宅医療の拡充が大きなテーマになっています。そこで本日は1人開業医が在宅医療を拡充させるために必要なことについて話し合っていきたいと思います。最初に簡単に自己紹介をお願いします。

西田 大学病院や中核病院での救命救急医療を経て、2000年に父親の後を継いで調布市で診療所を経営しています。 勤務医時代から治療を終えた患者さんが繰り返し搬送されてくることに疑問を持ち、地域医療の最前線で「何とかできないか」と考えていました。

  現在は常勤医師1人の昔ながらの1馬力の開業医ですが、かかりつけ医として外来と在宅の両方を提供しています。目指すのは、複数の慢性疾患や障害を抱えていても、住み慣れた地域で活き活きと暮らせるような地域社会づくりで、地域の医療機関や介護事業所と連携しながら、地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいます。

菊池 私は大学病院の整形外科、救急科で勤務していたのですが、軽症の高齢患者さんの搬送が非常に多く、頻回受診されていたことに課題を感じていました。この状況を何とか改善したいと2016年に起業し、夜間休日に特化した救急往診事業を専門に始めました。 

 現在は時間外救急のプラットフォームとして、患者からの相談に応じ、救急車の要請判断や救急病院の案内を行うほか、開業医の先生方をサポートするための時間外往診サポートやオンコール代行、行政支援の一環として新型コロナの自宅療養者向けにオンライン診療なども行っています。

―かかりつけ医は「外来から在宅、さらに看取りまで一気通貫で担うべし」という風潮があります。長年、かかりつけ医としての仕事をされてきた立場からどのように捉えていますか。

西田 確かにそうした議論はありますが、すべてのかかりつけ医にそれを求めるのは無理でしょう。もちろん、24時間365日、自分の患者さんはすべて責任を持って診る、という“赤ひげ”的な志向を持つ医師も一定数いますが、そういう医師を量産していくというのは無理があると思いますよ。

 私は三次救急病院での勤務が長かったのですが、日本では、医師が何日も病院に泊まりこんで患者さんを診ることが美徳であるといった風潮がいまだに残っています。当時は自分もそのように思っていましたが、米国オークランド病院の救急救命センターで1年間働いた時にその考え方は一変しました。

 そこでは、ICUにいる医師たちが皆元気なのです。なぜかと言えばきちんとタスクシェアされているからです。そのときに、必要なのは24時間休まずに戦える救急専門医の育成ではなく、救急医療をきちんと成り立たせるシステムであると痛感しました。

 かかりつけ医のあり方も同様です。1つの診療所、1人の医師が24時間の往診体制をつくるのではなく、地域全体で対応できるようなシステムをつくるのが得策だということです。

 もちろん、その核は、総合診療的なかかりつけ機能を担う医師が担うのでしょうが、その医師は日中働いていますので、夜間も対応するというのは不可能です。夜間休日の往診やオンコールは、そうした地域のかかりつけ機能を持つ医師同士が連携してカバーしあえばいいという議論もありますが、それぞれ日中、同じ時間帯に働いているため、実はカバーしあうというのは現実的ではありません。

 そのため、夜間休日の往診などを含めた24時間体制は、かかりつけ機能を担う診療所と、ファストドクターさんのような組織と連携して構築するのがベストだと考えています。

開業医の競合にならないファストドクターの強み


―最近は在宅医療専門の診療所を複数展開するグループも増えてきています。こうしたグループとファストドクターとの連携は違うのでしょうか。

西田 在宅時医学総合管理料を算定できるのは1つの医療機関だけですし、在宅医療専門診療所との連携という場合、どうしても患者さんを奪い合うという構図ができてしまいます。

 実際、在宅医療専門診療所のグループは地域のケアマネジャーさんに対して、患者紹介の営業活動を積極的に行っていますからね。その結果、かかりつけ医として長年診ていた患者さんが入院し、当然退院してきたら戻ってくるものだと思っていたところ、病院のMSWが在宅医療専門診療所につないでしまったというケースも増えています。そのため、在宅医療専門診療所と開業医の間では、あちこちで軋轢が生まれており、私も同様の経験をしたことがあります。

 一方、夜間休日の往診やオンコールだけを行うファストドクターのような組織の場合、日中は診ないので競合になりえず、関係を構築しやすい面があります。自分が診療に行けない時間帯という「点」だけを補ってもらえるからです。

 こうした明確に役割を分担しているスタイルの方が、医療者も患者さんもわかりやすく、そういう意味で、在宅医療専門診療所よりも、ファストドクターさんの方が開業医は組みやすいと思います。

 在宅医療専門診療所との連携については、肺炎を起こして重篤化しているけど、入院はしたくないという患者さんについて症状が落ち着くまで一時的に診てもらう、かかりつけ医から在宅専門診療への転院的なスタイルが有効だと考えます。あるいは在宅専門診療所は整形外科や皮膚科などの専門医を抱えていることが多いので、そうした専門分野の診療が必要な時に出前で来てもらうという連携がベストだと思います。

―ファストドクターに対しては、「得体のしれないもの」と懐疑的な見方をしている開業医も少なくありません(笑)。

西田 新しい事業モデルが登場してくると必ず懐疑的になるものです。それは仕方がありませんが、第5波のとき、ファストドクターさんには、自宅療養中の患者さんの往診を支えてきたという実績があります。実際、私の診ている患者さんのなかにも「自宅療養中にファストドクターの医師に、診てもらいました」という方が何人かいましたが、特に問題はありませんでした。

 ただ、1つ残念だったのは、主治医である私との連携がなかったことです。夜に来てもらって、診察して薬を処方してもらったという経緯をこちらは把握していないので、診療内容が食い違ったことも何件かありました。

 今後、この問題を払拭していくためには、必ず連絡を取り合うことが大事だと思います。ただ、連携できるパイプをつくって窓口を一元化して、必要なときに主治医がファストドクターさんにお願いするという仕組みをつくっていけば、これは解決できるでしょう。開業医とファストドクターが組むことで、地域の在宅医療事情は好転していくと思いますよ。 

菊池 コロナのピーク時には、保健所が日中は医師会の先生に連絡をして、夜間は私たちや在宅医療専門診療所などに連絡をしていました。保健所が間に入ることで、私たちと医師会の先生たちとで患者さんの情報が上手く共有できていなかったために、確かにやりにくいこともありました。情報を統合するシステムを構築して、お互いがそこにアクセスできるようになれば、スムーズに連携していけると思います。

西田 この問題は特に第5波のときに顕在化しましたね。診断した後は全て保健所の管理だったので、医療に求められるのは臨時の対応だけでした。6波、7波では診療医療機関による経過観察が始まり、診断した患者さんを療養期間中、主治医が診ていくというスタイルを取れました。ファストドクターさんの先生方と開業医が上手く連絡を取りながら診療できる仕組みを確立していければ、これは高齢者人口がピークに達する2040年問題への対応につながっていくと思います。

菊池 この情報共有に東京総合医療ネットワークは活用できないのでしょうか。

西田 東京総合医療ネットワークはどちらかというと病病連携がメーンで、あくまで大病院のデータを閲覧するというネットワークになっています。むしろ、私たちが地域で水平連携を実施するとしたら、MCS(メディカルケアステーション)やLINE WORKSのようなSNSを使ったほうが効率は良いと思います。もちろん、東京総合医療ネットワークも今後、進化していくでしょうが、まずは敷居の低い手段で始めるのが良いと思います。

外来一辺倒から脱すれば地域ニーズは見えてくる


―自分の患者さんの往診を任せるとなると、担当する医師の力量や対応などが気になります。ファストドクターには2,000人の医師が在籍されているとのことですが、質の担保はどのようにされていますか。

菊池 教育体制を強化し高いレベルで平準化できるようにしています。具体的にはサービスの質と医療の質の二軸から定量的な評価項目を設けて、5点満点で4.5点を切るとその医師には再教育を受けてもらっています。

 ここで言うサービスの質とは医師の接遇や往診までの所要時間、電話相談時・診察時間など総合的な患者満足度で、医療の質については、全件のトリアージや診療の正確性を後ろ向きに振り返って、個人の質を定量的に評価し、担当した医師には、成績表を作成してフィードバックしています。

 私自身もそうでしたが、自分の診療に対するフィードバックをもらうことはあまりなかったため、医師からは、「自分の診療を振り返るいい機会が得られた」と喜ばれています。

 また、登録している医師の大半は普段、病院勤務のため、地域医療に触れる機会があまりないこともあり、初期救急や在宅医療、総合診療、小児医療などを複合的に診ることができる貴重な場になっていると高いモチベーションを持ってくれています。そしてうれしいことに約9割の医師が「他の医師にも登録を勧めたい」といってくれています。

西田 確かに現在の医学部教育では、地域医療や総合診療についての教育が十分とは言えません。ファストドクターさんに登録している医師には、地域医療の現場ではどんなことが求められているのか、これからの社会情勢はどのようになっていくのかなどを実感しながら、学んでいってもらいたいですね。

菊池 西田先生がご指摘された通り、日本の医学教育はスペシャリストの育成に主眼が置かれていますが、若い医師がファストドクターでの勤務を通して地域医療の本質を知る機会にもしたいと考えています。

 これからの医療を考えると、がんや脳卒中、心筋梗塞は減っていく一方で、肺炎や老衰は増えていきます。地域医療の現状とニーズを肌で感じてもらうことで、若い医師を地域医療の世界に巻き込んでいければと思っています。

西田 今の開業医の大半は元専門医なので、ジェネラルに診るということを皆が得意としているわけではありません。おそらく菊池先生たちの世代の医師では、総合診療医が増えていくでしょう。総合診療医は最初から在宅を視野に入れていますので、複数医師で開業するようなケースも今後増えていくと思います。

 とはいえ、それは将来の話であり、問題は「今」をどうするかです。その解決策としては、やはりより多くの開業医が在宅医療に参加してもらう必要があります。ただ、これは発想を転換すれば、できることだと思います。

 当院は当初、午後の休憩時間を在宅医療に充てていたのですが、ニーズが大きくなってきたことを受けて、外来診療は午前だけに絞り、午後は在宅医療を行うというスタイルに転換しました。当時は外来患者さんからクレームがくるのではないかと思いましたが、実際にやってみると誰も困っていません(笑い)。むしろ、訪問診療のニーズに応えることができるようになって、患者さんからは喜ばれています。

 午後の外来をやめると、訪問診療以外にもさまざまな地域活動を行うことができるようになりました。午前も午後もがむしゃらに外来をやっていると、地域から孤立することになり、結局、地域の真のニーズが見えなくなってしまいます。外来診療は薄利多売ですし、経営的な観点からも外来一辺倒から脱し、地域に目を向ける必要があると思います。

 在宅医療を展開するうえで、最大のボトルネックとなる夜間休日の往診体制については、ファストドクターさんのようなところと組めばいい。コロナ対応で良い事例ができましたし、これをレガシーとして2040年に向けて、地域のさまざまな医療資源との連携を構築して、それをシステムとして運用できるようになれば良いと思っています。

菊池 診療所が24時間体制の在宅医療を行うには医師1人では非常に負担が大きいものですし、当直医の雇用は働き方改の施行後は困難になる可能性があります。連携が必要であり、都道府県が仕組みづくりをして、24時間体制がどの医療機関でもかなうことが理想です。

―本日は掘り下げたお話をうかがいました。ありがとうございました。

※ 本インタビューは、医院経営専門誌「クリニックばんぶぅ」2022年12月号 巻頭対談に掲載された記事を引用しています。

本記事の転載については、発行元である株式会社 日本医療企画様からのご許可をいただいております。厚く御礼申し上げます。

ファストドクターについて


全国に対応する日本最大級のプライマリ・ケア医療プラットフォーム「ファストドクター」を運営するヘルステック企業。3,500名以上の医師が参加するこのプラットフォームは患者のほか、医療・介護施設、自治体、公的研究機関、製薬や保険業界など、医療業界の多岐にわたるステークホルダーの皆さまにご利用いただくことで、地域医療を強化する新たな医療インフラの構築を実現します。

所在地:〒150-6032 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-3
設立:2016年8月
代表者:菊池 亮(医師)・水野 敬志
WEBサイト:https://www.fastdoctor.co.jp/corporate

本件に対するお問い合わせ

ファストドクター株式会社
広報 田島 めぐみ
E-mail:[email protected]
Tel:090-7843-9782

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