微熱でもインフルエンザの可能性がある
微熱でもインフルエンザの可能性はあります。職場や学校など身近にインフルエンザの人がいれば、なおさらです。微熱だからといって油断しないようにしましょう。
一般的にインフルエンザは、38度以上の高い熱が出るとされています。
そのため「少し熱があって体がだるい」「38度まで熱がないから、インフルエンザではない」と思ってしまいがちです。
微熱または平熱でインフルエンザにかかっている状態を「隠れインフルエンザ」といいます。
熱がなくだるさや喉の痛みだけの場合、一般的な風邪症状と見分けがつきにくいです。普通の風邪だろうと放っておくと、重症化する可能性もあります。
それだけでなく、他の人にインフルエンザをうつしてしまい、感染拡大を助長してしまうかもしれません。
とくに周りにインフルエンザにかかっている人がいる場合、熱がないから大丈夫と思わず「隠れインフルエンザ」の可能性もあると考えておきましょう。
そもそも微熱とは何度から?
微熱は「平熱よりわずかに高い熱」のことです。
日本の感染症法では以下のように定められています。[1][2]
高熱 |
38度以上 |
発熱 |
37.5度以上 |
微熱 |
37度以上 |
平熱 |
36〜37度 |
日本人(成人)の平均体温は、わきの下で体温を計測すると36〜37度程度です。 [3]
つまり、微熱は平熱と発熱の間の37〜37.5度くらいの体温を指します。
ただし、平熱は人によって異なります。平熱が35度台の人から37度台の人まで幅広いため、必ずしも上の表に当てはまるわけではありません。
普段から自分の平熱を知っておくと、ご自身の微熱の状態を把握しやすいでしょう。
子どもの場合も同様に、微熱は平熱と発熱の間の体温を指します。
ただし子どもは、大人と比べると体温が高い傾向にあり、必ずしも成人と同様に37〜37.5度の間が微熱とはいえません。37度以上でも平熱の場合もあります。
わきの下で体温を計測し、平熱より1度高いときは発熱として対応することもあります。
平熱より1度未満の体温の上昇を微熱の目安としましょう。微熱、発熱の判断のためにお子さんの平熱を普段から知っておくことが重要です。
関連記事: 微熱とは何度までのことを言うの?受診や仕事の出勤目安についても解説
インフルエンザで微熱しか出ない2つの理由
インフルエンザで微熱しか出ない場合、以下2つの理由が考えられます。
-
予防接種を受けているため
-
高齢者のため
インフルエンザに感染しても、予防接種を受けているかどうかや年齢によって微熱で済むケースがあります。
予防接種は発病を抑え、発病しても軽い症状にとどめる効果があります。
高齢者の場合、インフルエンザに感染しても免疫力の低下によって発熱がないケースも報告されました。
そのため、インフルエンザに感染しても高熱になることなく微熱で済んでいるのです。
「インフルエンザだから高熱が出る」
「微熱だから自分はインフルエンザではないはずだ」
インフルエンザの主な症状を知っておくことは悪いことではありません。しかし症状があらわれることが「絶対」ではないことも理解しましょう。
具体的に微熱しか出ない理由を解説していきます。
1.予防接種を受けている
インフルエンザの予防接種には、発病リスクを低下させ、重症化を防ぐ効果があります。
予防接種を受けると、インフルエンザに感染してもウイルスの増殖が抑えられます。
そのため、予防接種を受けている人は、 受けていない人に比べて60%発病を防ぐことができたと報告されました。[4]
インフルエンザの発病状態は、一般的に発熱や喉の痛みです。予防接種によってウイルスの増殖が抑えられ、高熱が出ず微熱にとどまっていると考えられます。
2.高齢者
高齢者ではインフルエンザにかかっても高熱が出ない場合があります。
ウイルスと戦うための体温を上げる力が弱くなっているためです。また、体内での熱を作る能力の低下や、基礎体温が低くなることも原因の1つです。
2010年〜2011年期の調査では、B型インフルエンザにかかった65歳以上の高齢者の5人に1人が37.5度以上の発熱がなかったと報告されました。
高齢者においては、発熱がなくてもインフルエンザにかかっているケースが多いことがわかります。[5]
高熱が出ていないからといって軽症で済んでいるわけではなく、体がウイルスに反応できていないと考えましょう。[6]
ご家族や施設職員の方は発熱だけを基準にせず「普段より活気がないな」「食欲がないみたいだ」などいつもの様子と比べて違うことがないか気付けるとよいですね。
周囲の感染状況も考慮しながら「感染症にかかっているのでは?」という意識を持っておきましょう。
インフルエンザで微熱から高熱になる可能性はある?
最初は微熱だったものの、インフルエンザにかかっていると時間をおいて高熱になる可能性はあります。
インフルエンザの熱は、一般的に感染して2〜3日のうちに38〜39度台まで上がることが多いです。
実際に、最初は微熱で風邪だと思っていたけれど、夜間のうちにみるみる熱が上がったケースもありました。
体内でウイルスが一気に増え、ウイルスと戦うために体温が上がったと考えられます。
また、人間の体は昼間より夕方~夜にかけて体温が上がりやすいという仕組みがあります。
微熱から高熱になった、夜の間に一気に高熱になったという場合は、上記のような理由が考えられるでしょう。
微熱だけでも受診や検査してOK
症状が微熱だけでも受診やインフルエンザの検査をして大丈夫です。
微熱だけだと医療機関へ行くのは抵抗があるかもしれません。
しかし、微熱であっても受診して検査を受けることは非常に大切です。もしインフルエンザだった場合、放っておくと重症化する恐れがあります。知らないうちに会社や学校で感染を広げてしまっているかもしれません。
インフルエンザの疑いがあるからといって、必ず検査をするわけではありません。
周りでインフルエンザが流行っていない場合や症状が軽い場合は、医師の判断で検査しないこともあります。会社や学校に検査結果を報告する必要があるのなら、受診時に医師に伝えましょう。
インフルエンザの検査をする場合、症状があらわれて12時間経ってからのほうが正確な結果が出やすいことを覚えておきましょう。
微熱が出たからといってすぐに検査すると、ウイルスが十分に増えておらず検査結果が陰性となることがあります。
インフルエンザであっても陰性と判断される「偽陰性」となってしまうのです。微熱や他の症状があらわれた時間を覚えておくと、適切なタイミングで検査ができるでしょう。[7]
微熱で他の症状がみられない場合は、必ずしも検査は必要でなく、自宅で安静に過ごしても構いません。
しかし会社や学校に行く必要がある人は、感染を広げてしまう可能性があります。感染の広がりを防ぐためにも早めの受診と適切なタイミングでの検査を考えてみましょう。
関連記事:インフルエンザ検査のギモンを解決|病院での検査方法やベストなタイミングも詳しく解説
インフルエンザの微熱でもタミフルは服用できるの?
症状が微熱であっても、医師の診断があればタミフルを服用できます。
たとえ微熱であっても、インフルエンザ検査で陽性反応が出れば体の中にウイルスがいるということです。タミフルは体の中でウイルスが増えるのを抑える薬であるため、効果が期待できます。
インフルエンザ検査で陰性(インフルエンザではない)であっても、家族に陽性者がいる場合など感染の疑いが強いときは、医師の判断で「みなし陽性」と診断されることもあります。
「みなし陽性」の場合、タミフルが処方されるケースもありますが、医師の指示に従って服用しましょう。
職場でインフルエンザが流行しているなどの理由で「予防」目的としてタミフルを服用することも可能です。
とくに医療・介護職の方では職員間で流行してしまうと現場のマンパワー不足に繋がってしまうため、そういったニーズは高いでしょう。
医師の処方により服用できますが、この場合は保険が適用されず自費での購入になることに注意しましょう。
インフルエンザで微熱だけのとき、学校や仕事はどうするべき?
インフルエンザにかかったとき、たとえ微熱でも学校を休む必要があります。
学校の場合は「学校保健安全法」という法律によって、休むことが決められています。[8]
学校ではインフルエンザにかかったら「発症してから5日が経過し、熱が下がってから2日間」は出席停止です。微熱で元気があっても、周りの人にうつさないようにしっかり休みましょう。
一方、会社では法律で休むことが決められているわけではありません。出勤可否の判断は会社によって異なるため、就業規則を確認しましょう。一般的には少なくとも、インフルエンザを発症して5日間は出勤できないことが多いです。
学校では少なくとも6日間休む必要があり、会社も同程度の期間を目安に休むのがよいでしょう。感染を広げないためにも、無理せず体調が良くなるまで休むことをおすすめします。
関連記事:インフルエンザでの待機期間は?学校や会社の出席停止期間も解説
インフルエンザで熱がなくても喉の痛みやだるさはある?
インフルエンザにかかったとき熱がなくても、喉の痛みやだるさ、鼻水、頭痛といった風邪症状が出ることもあります。
インフルエンザウイルスを排出するピークは発症してから24〜72時間後で、発症後5日まで続くとされています。[9]
熱があるかないかに関わらず、体調に違和感があるときは自分自身がインフルエンザに感染していることをきちんと理解し、周りの人に感染を広げないようにしましょう。マスクの着用やこまめな手洗いは、感染拡大させない有効な手段といえます。[10]
また、発症後は体がウイルスと戦っている状態です。無理をして仕事や外出をすると、免疫力が低下し回復に時間がかかるケースもあります。
インフルエンザと診断されたら、喉の痛みなどの症状が始まった日の翌日から1週間程度は、できるだけ外出せず安静に過ごしましょう。[11]
インフルエンザで微熱が続くのはなぜ?
インフルエンザにかかると微熱が続くことがあります。なぜなら、インフルエンザウイルスが体の中に残っているからです。症状が良くなったと感じていても、安静にしていないとなかなか熱が下がりません。
通常、インフルエンザの症状は1週間程度でよくなります。もし微熱が1週間以上続くようなら、他の病気にかかっている可能性も考えましょう。[12]
インフルエンザのあとに肺炎や中耳炎、気管支炎を引き起こしている可能性があります。早めに医療機関を受診しましょう。
微熱でもインフルエンザの可能性あり!早めに受診して感染を広げないようにしよう
微熱でもインフルエンザに感染している可能性があります。
予防接種を受けていると重症化しにくく、微熱にとどまることも珍しくありません。
また高齢者では、体温調節機能や基礎体温が低いために高熱が出にくいという特徴があります。このような理由でインフルエンザにかかっていても微熱しか出ないことがあると理解しておきましょう。
微熱でもあとから高熱になる可能性があります。喉の痛みやだるさなどの症状がある、周囲にインフルエンザ陽性者がいるなどの条件が揃っている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
「微熱しかないけど、検査してもいいのかな?」と遠慮する必要はありません。
症状や周囲の感染状況から検査が必要ない場合は、医師からその旨説明があります。あとから重症化したり、知らず知らずのうちに感染を広げてしまうリスクもあるため、心配な場合は 医療機関を受診し、インフルエンザの検査を受けましょう。
検査で陽性だった場合は、学校では少なくとも6日間休む必要があります。会社は法律上、出勤停止期間などは定められていませんが、体を休め、感染を広げないためにも1週間程度は安静にしたほうがよいでしょう。
インフルエンザは微熱でも感染力があることを意識して、マスク着用や、周りにうつさないように配慮することが大切です。
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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
[1]厚生労働省|「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等について」の一部改正について
[5]最近の動向と今後の課題― 4)インフルエンザウイルス感染症
[9]新型インフルエンザ対策に関するエビデンスのまとめ インフルエンザの伝播経路
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。