インフルエンザで頭痛が起きる原因
インフルエンザの頭痛は、ウイルスに体が対抗しようとする免疫反応によって引き起こされます。
ウイルスが体内に侵入すると、免疫系が活発になり「プロスタグランジンE2」という物質が作られます。プロスタグランジンE2は炎症や痛み物質「ブラジキニン」を発生させるため、結果として頭痛を引き起こしてしまうのです。
そのほか、インフルエンザにかかると鼻腔や副鼻腔の炎症によっても頭痛を引き起こしやすいです。副鼻腔に溜まった膿(うみ)が脳神経を圧迫して、目のまわりや頭に痛みを感じる人もいます。またもともと片頭痛になりやすい人は、インフルエンザをきっかけに片頭痛を起こす場合もあるでしょう。
ただしインフルエンザだからといって、必ずしも頭痛が起こるというわけではありません。ウイルスによる感染症にかかった場合、このようなメカニズムで頭痛が起こることがあると知っておきましょう。
インフルエンザによる頭痛の特徴
インフルエンザになると、30〜60%の人が頭痛を経験していると報告されています。[1]
インフルエンザの頭痛は風邪と比較して強く、全身のだるさや筋肉痛を伴うことが多いのが特徴です。
ただインフルエンザにかかった人のなかには軽い頭痛で済む人もいます。そのため頭痛の強さだけで自分がインフルエンザだと判断するのは難しいです。
頭痛はインフルエンザにかかるとよくあらわれる症状ですが、あくまで一症状にすぎません。正確な診断には、医療機関での診察や検査キットでの診断が重要です。
風邪のときより痛みがひどい場合がある
インフルエンザにかかると風邪のときよりも強い頭痛が起こる場合があります。
風邪はおもにくしゃみや鼻水などの上気道の症状が中心ですが、インフルエンザは全身に強い症状を及ぼします。とくに38℃以上の高熱やひどい頭痛があらわれ、風邪と比べると症状が重いです。多くの場合、つらい症状が突然あらわれ、1週間程度続きます。[2]
風邪とインフルエンザでの症状の違いを下表でチェックしましょう。
インフルエンザ |
一般的な風邪 | |
特徴 |
全身的症状(発熱、頭痛、関節痛など)が強い 急激に症状が進行 |
全身症状はあまりなく、鼻水や咳などがメイン |
症状 |
38℃以上の高熱 頭痛 関節痛・筋肉痛 喉の痛み 乾いた咳 |
38℃程度の発熱 喉の痛みと腫れ 鼻水 痰が絡んだ咳 |
関連記事:インフルエンザの主な症状と症状別対処法を紹介!子供の場合の注意点も解説
頭痛だけでもインフルエンザの可能性がある
インフルエンザにかかると38℃以上の高熱がでることが多いですが、まれに発熱がなく頭痛だけあらわれる場合もあります。
まわりでインフルエンザが流行しているときは、風邪のような軽い症状だとしても医療機関で検査を受けましょう。
インフルエンザウイルスは発症してから12時間ほどで検査に必要な量まで増え、48時間以降は徐々に減っていくとされています。そのため症状があらわれてから12〜48時間以内に医療機関を受診してみましょう。
また、感染を広げないためにも手洗い・うがいや咳エチケットを徹底しましょう。
合併症を起こしている可能性がある
インフルエンザが原因で頭痛を伴う合併症が起こることがあります。
たとえば頭痛や鼻水などの症状がなかなかよくならず、再受診したところ副鼻腔炎(ふくびくうえん)と診断されるケースがあります。
ほかにも、インフルエンザが悪化すると中耳炎や髄膜炎(ずいまくえん)などを引き起こす可能性もあるため、症状が長引く場合は再度医療機関へ相談しましょう。
インフルエンザによる頭痛は受診が基本
インフルエンザによる頭痛があるときは、市販薬は使わずに医療機関を受診することが大切です。市販の解熱鎮痛薬のなかには、インフルエンザの際に使用を避けた方がよい成分が含まれていることがあります。
たとえば、アスピリンは子どもの使用でライ症候群という病気にかかる恐れがあるため使用できません。またロキソプロフェンやイブプロフェンなどの一部のNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)はインフルエンザ脳症のリスクを高める可能性が指摘されているため、慎重に使用する必要があります。[2]そのため自己判断で市販薬を服用することは避けましょう。
一方、医療機関を受診すると必要に応じて抗インフルエンザ薬が処方されます。抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、ウイルスの増殖を効果的に抑え、発熱期間を1〜2日程度短縮できます。さらにのど・鼻からのウイルス排出量が減るため、まわりに感染を広げるリスクも軽減できるでしょう。[3]
頭痛がつらい場合は、医師に相談して解熱鎮痛薬を処方してもらうとよいでしょう。一時的ではありますが、頭痛の改善が期待できます。
インフルエンザの疑いがある場合の受診のタイミングは?
「インフルエンザかも」と疑うような症状があらわれたら、12〜48時間以内に受診し、検査と抗インフルエンザ薬の服用を開始するとよいでしょう。
抗インフルエンザ薬の十分な効果を引き出すためには、48時間以内の服用が必要です。[4]
服用する際は、医師に指示された量とタイミングを守りましょう。
また検査のタイミングが早すぎると、インフルエンザなのに陰性と判断されるケースもあります。
症状があらわれて12時間以上経ってから検査を受けるとよいでしょう。発熱や頭痛があらわれた翌日が受診の目安です。
ひどい頭痛はインフルエンザ?受診の目安を解説
インフルエンザが疑われる場合には医療機関を受診しますが、頭痛の程度やほかの症状によっては早めの対応が必要です。救急外来や往診を検討する必要性もあるでしょう。
「15歳以上の大人」と「15歳未満の子ども」では受診の目安や注意点が異なる場合もあります。それぞれ確認してみましょう。
大人(15歳以上)の場合
インフルエンザでひどい頭痛が続き、普段の風邪とは違う重い症状がある場合、医療機関を受診しましょう。
とくに、次の症状があらわれた場合は早めに受診してください。[3]
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38℃以上の高熱が続く
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呼吸が苦しい
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意識がもうろうとしている
また高齢者や持病がある人は重症化しやすいです。上記症状以外でも「いつもと違う」「おかしい」と感じたら早めに受診しましょう。症状により移動が難しい人は、往診サービスの利用も一つの方法です。
インフルエンザが重症化しやすい人は以下のとおりです。[2]
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65歳以上の高齢者
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妊娠中の女性
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7歳未満の乳幼児
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心疾患や肺疾患のある人
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糖尿病や慢性腎臓病を持つ人
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免疫力が低下している人
子ども(15歳未満)の場合
子どもで頭痛がする場合には、基本的に受診しましょう。子どもは大人と違って頭痛の程度やいつから痛いかなどを正確に伝えられないものです。
次の場合は診療時間内の受診でも問題ありません。[5]
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発熱もしている
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ひどく痛がるが頭痛のみ
頭痛や発熱に加えてけいれん(熱性けいれん)を起こした場合は、すぐに意識が戻ったとしても早めの受診が必要です。とくに、初めてのけいれんの場合には夜間や休日でも受診しましょう。5分以上けいれんが続く場合には救急車を呼んでください。
けいれんがあらわれたときは、続いた時間や全身状態、意識はあるかなど周りの大人が観察してください。動画を残しておくと受診時に役立ちます。
頭痛や発熱があっても、元気であれば薬を使わずに様子をみても問題ありません。ただし過去に同じ症状があり、医師から処方された薬がある場合のみ、指示されている薬を使用してもよいでしょう。
こんなときは救急車を呼ぼう
年齢を問わず、明らかにいつもと違う様子がみられたら、すみやかに119番通報で救急車を呼んでください。[6]
大人の場合、以下のような状況で緊急性が高いと判断したら、迷わず救急車を要請しましょう。
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突然の激しい頭痛
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立っていられないふらつき
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意識がない
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けいれんが止まらない
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強い吐き気
子どもの場合は、以下の様子がみられたら、ためらうことなく救急車を要請しましょう。
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けいれんが5分以上続く
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熱がないのにけいれんを起こす
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意識がない
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呼吸が苦しそう、または弱い
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ぐったりしている、様子がいつもと違う
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嘔吐が止まらない
緊急時には、落ち着いて状況を救急隊に伝えましょう。保険証やお金、普段飲んでいる薬を準備しておくと便利です。また、子どもの場合は母子手帳も一緒に用意しておきましょう。
インフルエンザで頭痛があるときの家での過ごし方
インフルエンザ発症後3〜7日間は、鼻やのどからウイルスが排出されます。そのため周囲への感染を防ぐためにも外出は控えましょう。
インフルエンザのつらい症状から、早く回復するためには家での過ごし方も大切です。
以下で紹介する過ごし方を参考にしてみましょう。
睡眠をとり安静にする
インフルエンザにかかると気づかぬうちに体力が消耗されるため、十分な睡眠をとり安静に過ごすことが大切です。
とくに子どもの場合、発熱や頭痛などの症状が完全に治るまで安静に過ごしましょう。学校の出席停止期間は、学校保健安全法で「発症したのち5日を経過し、かつ、解熱したのち2日(幼児の場合は3日)を経過するまで」とされています。[3]
一方、大人に関しては法律的に出勤停止期間がありません。基本的には就業規則に従うことになります。決まりはないものの、症状が治るまでは安静にして体を休めましょう。
こまめに水分補給をする
インフルエンザで発熱や頭痛があるときは、こまめな水分補給が大切です。
発熱で汗をかくといつもよりも多く水分が体の外にでてしまい、脱水を引き起こすリスクが高まります。乳幼児や高齢者は脱水を引き起こしやすいため、こまめに水分補給をしましょう。脱水状態になると、頭痛が悪化するケースもあります。
水分補給は必ずしも水やイオン飲料でなくても構いません。お茶やスープなど飲みやすいものを口にしましょう。[7]しっかりと体内の水分を補うことで、回復を助け、脱水による頭痛予防につながります。
インフルエンザの頭痛が長引く場合の対処法
インフルエンザによる頭痛が長引く場合は再度受診しましょう。
長引く頭痛は、副鼻腔炎など他の病気が関係している可能性があります。その場合、原因となる病気の治療が必要です。また、インフルエンザのB型はA型に比べて症状が長引くともいわれています。検査時にかかったインフルエンザの型が何型なのかを確認しておくとよいでしょう。
とくに子どもや高齢者など重症化しやすい人は早めの受診が大切です。
大人ですぐに受診が難しい場合、一時的に市販薬を使用してもよいですが、服用する薬には注意が必要です。
インフルエンザの場合、合併症の観点から以下の薬剤を控えましょう。 [8]
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サリチル酸系(アスピリンなど)
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NSAIDs(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)
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メフェナム酸
使用を避けるべき薬については、自己判断は難しいものです。医師や薬剤師に確認し、用法用量を守って服用してください。
関連記事:インフルエンザで市販薬を飲んではダメ?インフルエンザで避けるべき薬剤を解説
関連記事:インフルエンザによる倦怠感はいつまで続く?対処法も解説
まとめ:インフルエンザで頭痛がひどくなることも。市販薬を使う前に受診しよう
ひどい頭痛はインフルエンザの症状としてあらわれることがあります。多くの場合、インフルエンザの症状は一般的な風邪よりも全身症状が強く、高熱や全身のだるさを伴います。まず医療機関を受診し検査を受けることが重要です。
インフルエンザのような頭痛があらわれたら、症状が出てから12〜48時間以内を受診の目安としましょう。抗インフルエンザ薬の十分な効果を引き出すためには、症状があらわれてから48時間以内の服用が必要ですが、発症直後に検査するとインフルエンザなのに陰性と判断されるケースもあります。
いつもと様子が違い「おかしいな」と感じたら、すみやかに受診してください。
またインフルエンザの頭痛が長引く場合、副鼻腔炎などの合併症を疑い、再度受診した方が良いケースもあります。とくに子どもや高齢者、持病を持つ人は重症化して合併症を起こしやすいため、早めに医師に相談してください。
インフルエンザによる頭痛や発熱に対しては、こまめな水分補給や安静に過ごすことが回復の助けになります。適切なタイミングでの受診と正しいケアで、インフルエンザのつらい症状を乗り越えましょう。
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参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。