インフルエンザで市販薬を飲んではダメ?インフルエンザで避けるべき薬剤を解説

公開日: 2024/02/05 更新日: 2024/09/29
早期流行が懸念されている今シーズンのインフルエンザ。 すでに流行入りを発表した県も出ているほど猛威を振るっています。 インフルエンザは発症初期の段階で38℃以上の高熱や全身倦怠感などの強い全身症状が現れるのが特徴です。 「インフルエンザにかかったかもしれない、だけどすぐに行けない事情がある」という方もいらっしゃるでしょう。 そんなときにドラッグストアや薬局ですぐに手に入る「市販薬」が使えると助かりますよね。 しかし、インフルエンザの罹患が疑われる場合、使える薬剤が限られているのをご存知ですか? その背景には重篤な合併症との関連があると言われています。 今回はインフルエンザ疑いのときに使用を避けるべき薬剤をインフルエンザの合併症と合わせて解説していきます。 市販薬の使用はどうしても医療機関を受診できない場合の手段です。 インフルエンザが疑われる場合は必ず医療機関を受診し、適切な診断を受けるようにしてください。 このことを念頭に読み進めていきましょう。
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目次

そもそもインフルエンザとは?

インフルエンザはインフルエンザウイルスを原因として、さまざまな症状を引き起こす呼吸器(気道)感染症です。

インフルエンザはA型、B型、C型に分類され、日本で主に流行するのはA型とB型です。

型の違いはあれど、症状や経過には変わりありませんが、比較的A型の方が症状が強く出やすいと言われています。

日本では例年、11〜12月に流行し始め、1月下旬〜2月上旬でピークを迎えます。

インフルエンザが疑われるとき通常の風邪同様、市販薬は飲んでもいいのか

結論から言うと、きちんと選択すれば飲むことはできます。

インフルエンザが疑われる場合、飲むのを避けるべき薬剤が存在します。その成分が入っていないかを確認してから、購入、使用するようにしましょう。

市販薬の使用はあくまでも応急処置です。

38℃以上の高熱が出てインフルエンザが疑われる場合は医療機関を受診してください。

インフルエンザは市販薬で治るのか

インフルエンザはインフルエンザウイルスを根本原因とするため、ウイルスに対抗できる市販薬は存在しません。

インフルエンザウイルスに有効なのは、医療機関から処方されるタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬のみです。

市販薬の使用はインフルエンザに伴う症状を緩和させる「対症療法」になります。

インフルエンザ疑いの場合に避けるべき市販薬はなにがある?

高熱や全身倦怠感が強く出てインフルエンザの疑いがあるがどうしても病院に行けない場合、市販の解熱鎮痛薬に頼りたくなりますよね。

しかしインフルエンザであった場合、合併症の観点から使える市販薬は限られています。

厚生労働省よりインフルエンザ罹患時に使用を控えるべき薬剤として以下が発表されています。[1]

市販薬を購入・使用する際は、以下の成分が含まれていないか必ず確認しましょう。

  • サリチル酸系薬剤

  • ジクロフェナクナトリウム

  • メフェナム酸

インフルエンザで飲んではいけない薬剤①サリチル酸系薬剤(アスピリンなど)

アスピリンを代表とするサリチル酸系薬剤は、解熱鎮痛作用、抗炎症作用などを持ち合わせており、市販薬の総合感冒薬(風邪薬)にも配合されていることがあります。

このサリチル酸系薬剤はインフルエンザ罹患患者に使用すると、けいれんや意識障害を起こすインフルエンザ脳症や脳や肝機能に障害を来すライ症候群のリスクを高める可能性があるとされています。

平成10年にインフルエンザ患者に原則的に投与しないという注意喚起、平成13年にインフルエンザ流行期におけるサリチル酸系薬剤を含む総合感冒薬の慎重な使用について、厚生労働省からそれぞれ呼びかけられました。

インフルエンザで飲んではいけない薬剤②ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)

強い鎮痛消炎効果をもつジクロフェナクナトリウムは、ボルタレンを代表薬として関節リウマチや腰痛症、歯痛などさまざまな場面で使用されています。

当初はなぜインフルエンザ脳症が発症するか解明できていませんでしたが、1999年、2000年にインフルエンザ脳炎・脳症研究班によって、インフルエンザ脳症を発症した患者がジクロフェナクナトリウムを含んだ薬剤を飲んでいたと報告されました。

このことからジクロフェナクナトリウムがインフルエンザ脳症に関連していると考えられ、使用しないことが推奨され始めています。

インフルエンザで飲んではいけない薬剤③メフェナム酸(ポンタールなど)

ポンタールという薬の主成分であるメフェナム酸は、消炎・鎮痛・解熱効果をもっています。

メフェナム酸もジクロフェナクナトリウムと同時期にインフルエンザ脳症に関連があると発表され、インフルエンザ患者への使用を控えるよう推奨されました。

インフルエンザに気づかず市販薬(パブロン、バファリン、ルルなど)を飲んでしまった!

先述した3つの成分はすべて「NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)」に含まれます。

このことからインフルエンザ患者にNSAIDsすべてが悪影響を及ぼす可能性があるとし、使用を控えるように言われています。[2]

インフルエンザとは気づかなかった、もしくはインフルエンザだったかもしれないのに上記が含まれる市販薬を飲んでしまった場合、直ちに医療機関を受診しましょう。

受診するまでの間もインフルエンザと思われる症状以外に体調の変化がないかを確認します。特にインフルエンザ脳症の症状がないかはしっかり確認するようにしてください。

小児の場合、異常行動が見られやすいので注意が必要です。

インフルエンザ脳症の疑いがある症状は以下の通りです。[3]

  • けいれん

  • 意識障害

  • 異常な発言

  • 声を荒げて泣き叫ぶ、癇癪を起こす

  • おびえる様子がある

インフルエンザの疑いがあったら避けるべき市販薬一覧

インフルエンザの可能性が少しでも考えられる場合は、以下の市販薬(解熱鎮痛薬)はNSAIDsを含みますので、使用しないようにしましょう。[4]

【アスピリン配合】

  • バファリンA

  • エキセドリンA錠

【イブプロフェン配合】

  • リングルアイビーα200

  • イブシリーズ[5]

  • バファリンルナi

  • バファリンプレミアム

  • ナロンエースプレミアム

  • ノーシンピュア

【ロキソプロフェン配合】

  • ロキソニンS

  • ロキソニンSプレミアム

【エテンザミド配合】

  • 新セデス錠

  • ナロンエースPREMIUM

インフルエンザ疑いがあるなら市販薬(解熱鎮痛剤)はアセトアミノフェン一択

インフルエンザの疑いがある場合、使用を避けるべきものとして3つの薬剤を取り上げ、いずれもNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)に含まれると説明しました。

NSAIDsの使用を控えるように推奨される一方で、アセトアミノフェンはインフルエンザ罹患時も安全性が高いと言われ、インフルエンザが疑われる場合の解熱鎮痛薬として使用可能とされています。

アセトアミノフェンの効果は比較的緩やかですが、乳幼児を含む小児や高齢者など幅広く使用される薬剤です。

処方薬ではカロナールやアルピニー坐剤などが広く知られていますが、市販薬でもアセトアミノフェンのみを配合したものがあります。

以下にインフルエンザでも使用できる市販薬をご紹介します。[6]

インフルエンザ罹患時に使用できる市販薬(解熱鎮痛剤)一覧【大人の場合】

紹介する薬剤はNSAIDsが配合されていない解熱鎮痛剤です。

いずれの薬も5〜6回内服しても改善が見られない場合は医療機関の受診を検討しましょう。

インフルエンザで使える市販薬①タイレノールA(第2類医薬品)[7]

タイレノールAは主に脳(中枢神経)に作用し効果を発揮する解熱鎮痛薬で、有効成分としてアセトアミノフェンのみが配合された市販薬です。

タイレノールAに含まれるアセトアミノフェンは、1錠に300㎎配合されており発熱や咽頭痛(のどの痛み)などのさまざまな痛みに対して効果を現します。

インフルエンザで使える市販薬②ラックル(第2類医薬品)[8]

タイレノールAと同様に有効成分はアセトアミノフェンのみ含まれています。

アセトアミノフェンの含有量も300㎎と同量です。

外装には腰痛、神経痛と記載されていますが、咽頭痛や発熱にも効果を示します。

ラックルは「速溶錠」で水に触れるとすぐに溶けることが特長です。

インフルエンザ罹患時に使用できる市販薬(解熱鎮痛剤)一覧【こどもの場合】

お子さんの急な発熱などでも比較的安全に使用できる市販薬を以下にご紹介します。

小児の場合は年齢によって用量が変わりますので注意しましょう。

大人と同じく5〜6回服用して改善しなかった場合は医療機関を受診するようにしてください。

インフルエンザで子どもに使える市販薬①小児用バファリンチュアブル(第2類医薬品)[9]

錠剤が飲みづらいお子さんでも飲みやすいチュアブルタイプの小児用解熱鎮痛薬です。

有効成分としてアセトアミノフェン50㎎のみが配合されています。

対象年齢は3歳〜15歳です。

インフルエンザで子どもに使える市販薬②ムヒのこども解熱鎮痛顆粒(第2類医薬品)[10]

有効成分としてアセトアミノフェンのほか、ビタミンCを補給してくれるアスコルビン酸、胃への負担を和らげてくれるグリシンが配合されています。

1歳から使用でき、錠剤が苦手なお子さんでも飲みやすい顆粒タイプの薬です。

年齢によって用量が違い、低年齢では1/2包と保護者の方自身で調整しなければならないため、間違いのないよう注意が必要です。

インフルエンザで子どもに使える市販薬③バファリンルナJ(第2類医薬品)[11]

有効成分としてアセトアミノフェンが100㎎配合されており、7歳以上のお子さんに使用できます。

チュアブルタイプなので水がなくても飲むことができ、眠くなる成分も配合されていないため学校での授業にも影響は少ないとされています。

NSAIDsとアセトアミノフェンの違い

同じ解熱鎮痛薬ですがどんな違いがあるかご存じですか?

NSAIDsとアセトアミノフェンには大きく分けて以下に記載する3つの違いがあります。

  • 作用機序

  • 副作用

  • 妊婦や子どもの服用

どのような違いがあるのか詳しく説明します。

NSAIDsとアセトアミノフェンの違い①作用機序

同じような効果をもたらすNSAIDsとアセトアミノフェンの大きな違いは、効果を発現するメカニズムです。

まずNSAIDsは、痛みや炎症を引き起こす物質(プロスタグランジン)の生成を抑制することで、炎症にともなう痛みや腫れをやわらげます。

一方アセトアミノフェンは、脳の中枢神経や体温を調節する中枢に作用し、解熱・鎮痛の効果を発揮します。

NSAIDsは抗炎症作用をもっているため、外傷性の炎症による痛みにも効果を発揮しますが、アセトアミノフェンにはこの作用がほとんどありません。

また、アセトアミノフェンは解熱鎮痛効果もNSAIDsと比較して緩やかです。

NSAIDsとアセトアミノフェンの違い②副作用

作用が違えば当然副作用も変わってきます。

それぞれの副作用を以下にまとめました。

NSAIDsの副作用

NSAIDsは、痛みや炎症を引き起こすプロスタグランジンが作られるのを抑えることで痛みをやわらげることを説明しました。

このプロスタグランジンは胃の粘膜を保護してくれる作用をもっていますが、NSAIDsを使用することでその産生が抑制されてしまうため胃腸障害が起きやすくなります。

それに加えてNSAIDs自体が直接胃に攻撃をするとも言われており、さらに胃腸に悪影響をもたらします。

アセトアミノフェンの副作用

アセトアミノフェンはNSAIDsと比較して副作用が少ないと言われ、胃腸障害はほとんどありません。

ただし、風邪による悪寒・発熱時にはなるべく空腹時を避けて服用してください。[12]

アセトアミノフェンの主な副作用は吐き気や食欲不振です。

NSAIDsとアセトアミノフェンの違い③妊婦や子どもの服用

妊婦や子どもは、使用できる薬剤が年齢や妊娠の時期によって変化します。

  • 15歳未満の子どもはカロナール一択

  • 妊娠後期にロキソニンは禁忌 カロナールは慎重投与

  • 授乳中のロキソニン使用は慎重投与

15歳未満の子どもはカロナール一択

15歳未満の子どもはNSAIDsを服用することはできません。

NSAIDsのひとつであるロキソニンの添付文書には「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」と記載されています。[13]

一方カロナールは、副作用の出現も少なく、子どもに安全に使用できます。

基本的に、子どもの解熱・鎮痛にはカロナール一択と覚えておきましょう。

妊娠後期にロキソニンは禁忌 カロナールは慎重投与

ロキソニンの添付文書には「(中略)投与しないこと。動物実験(ラット)で分娩遅延及び胎 児の動脈管収縮が報告されている。」[13]と記載されています。

赤ちゃんの動脈管収縮が起こると、赤ちゃんの心不全や死亡のリスクが高まります。

後期以外の妊娠期においても「有効性が危険性を上回る場合」で「必要最小限にとどめる」とされているため、妊娠中のNSAIDsの服用は避けましょう。

カロナールの使用は妊娠期において禁忌ではありません。

注意したいのは「有益性が危険性を上回る場合にしようすること」とされていることです。

妊娠中に体調不良になった場合は、妊娠期に関わらず必ずかかりつけ医に確認しましょう。

授乳中のロキソニン使用は慎重投与

授乳中の服用についてロキソニンの添付文書には「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の 継続又は中止を検討すること。動物実験(ラット)で乳汁 中への移行が報告されている。」と記載されています。[13]

母乳育児の場合、母乳を介した赤ちゃんへの薬物移行が懸念されます。

かかりつけ医に相談の上、正しく服用するようにしてください。

一方、カロナールは母乳への薬剤の移行性は低く、授乳期も安全に使用できる薬とされています。

インフルエンザで注意すべき合併症を詳しく紹介

NSAIDsがインフルエンザ患者に与える影響として、インフルエンザ脳症とライ症候群をあげました。

では、この合併症はどのような疾患なのでしょうか。

詳しく解説していきます。

インフルエンザ脳症

インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかったことで意識障害やけいれんなどの症状を引き起こす脳症のひとつです。

インフルエンザにより脳に異常な炎症が起こることで発症すると考えられています。

脳に炎症が起きて脳浮腫の状態になり、頭蓋内圧が亢進することで脳にさらにダメージを与えると言われています。

3〜13歳のお子さんに多く発症しますが、大人がならないというわけではありません。

インフルエンザ脳症の主な症状は以下の通りです。[14]

  • 意識障害(ぼーっとする)

  • けいれん(体の一部もしくは全体がぴくぴくする)

  • 異常な行動・言動(幻覚が見える、話が通じない)

インフルエンザ脳症は入院による管理が基本です。

適応であれば、インフルエンザウイルスに対する抗インフルエンザ薬を使用します。

脳浮腫に対しステロイドパルス療法を行ったり、重症度によっては集中治療室での全身管理が必要です。

ライ症候群

ライ症候群は、ウイルス感染症に続発する肝臓の脂肪沈着を伴う重篤な急性脳症のことです。

大人の発症は非常に稀で、ライ症候群になったとしても2週間ほどで完全回復します。

インフルエンザウイルスの他に水痘帯状疱疹ウイルスに感染した後にも見られやすく、患者のほとんどがアスピリンを内服した小児です。

感染症による症状出現から1週間以内に脳浮腫や頭蓋内圧の上昇によって以下の症状が起きます。

  • 激しい吐き気、嘔吐

  • けいれん

  • 意識障害

ここから1日もかからずに精神症状が出始めます。こちらも頭蓋内圧の上昇によって引き起こされます。[15]

  • 健忘(過去の出来事を部分的またはすべて思い出せない)

  • 嗜眠(刺激を与え続けないと眠った状態になる)

  • 見当識障害(月日や場所がわからない)

  • 錯乱(感情が入り乱れる)

  • 興奮(感情が高まり抑制できない)

こうした症状が続き、重症化してしまうと昏睡やけいれん発作、呼吸停止などで死に至ってしまうことも稀ではありません。

ライ症候群は特別な治療はなく、症状緩和や再発予防を目的として薬物療法を中心とした治療を行います。

インフルエンザはどういう感染症?風邪との違い

インフルエンザと風邪は初期症状が似ているため区別がつきづらいことがあります。

実は、症状の出方や程度に大きな違いがあるのをご存じでしょうか。

誤って市販薬を使用することがないよう、インフルエンザと風邪の違いを理解しましょう。

インフルエンザの感染経路

インフルエンザの感染経路は主に、「飛沫感染」と「接触感染」に分けられます。

いずれもインフルエンザウイルスが粘膜に付着することで感染します。

飛沫感染

インフルエンザに感染している方の咳やくしゃみなどから出る飛沫が、手や口、目などの粘膜に付着して感染する経路です。

2m以内は飛沫が届くと言われているので、会話する際は2m以上の間隔をあけることが推奨されています。

接触感染

感染者と直接的に、またはインフルエンザウイルスが付着したドアノブや医療器具を介して間接的に接触することで感染します。

手洗いや消毒が不十分であったり、医療器具の滅菌・消毒がなされていない場合に感染が引き起こされます。

電車内の手すりやつり革、トイレのドアノブや鍵などの使用が感染拡大しやすいので、使用後はより入念に手洗いや手指衛生をしましょう。

インフルエンザの潜伏期間

インフルエンザの潜伏期間は1〜2日です。

インフルエンザウイルスは潜伏期間から徐々に増殖し、発症24〜48時間がウイルス量のピークです。

そのため、インフルエンザは潜伏期間であっても感染する可能性は高いです。[16]

さらに、インフルエンザウイルスは発症前日から3〜7日間は排出されると言われており、この期間は外出を控えるようにと厚生労働省から通達されています。[17]

お子さんがインフルエンザにかかった場合、学校保健安全法で出席停止期間が定められており、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」とされています。

スムーズに行けば、発症後5日で登園、登校が可能になりますが、ウイルスの排出は続くので、集団感染を防ぐためにマスクを着用して登園、登校するようにしましょう。

また、インフルエンザは容易に家庭内感染を起こします。

家庭内感染を防ぐために、可能であれば罹患者の部屋を別にしたり、マスクの着用をしたり、こまめに手を洗ったりなど、対策をとりましょう。

インフルエンザの症状

インフルエンザの症状は大きくわけて2つあり、「全身症状」と「呼吸器症状」があります。

発症1〜3日目で38℃を超える発熱や全身倦怠感などの全身症状が出現し、数日後に咳や鼻汁などの呼吸器症状が続いて出現します。[18]

【全身症状】

  • 38℃以上の高熱

  • 全身倦怠感

  • 関節痛、筋肉痛

  • 食欲不振

【呼吸器症状】

  • 鼻汁(鼻水)

  • 咽頭痛(のどの痛み)

呼吸器症状は長引くこともあります。

1週間以上続く場合は、肺炎や気管支炎を起こしている可能性もありますので、医療機関の再受診を検討しましょう。

インフルエンザと風邪の違い

インフルエンザと風邪は出現する症状にほとんど変わりないですが、その現れ方や強さ、流行時期などに明らかな違いがあります。

原因ウイルス

インフルエンザの原因がインフルエンザウイルスのみであるのに対し、風邪の原因となるウイルスは約200種類あると言われています。

また、風邪はウイルスだけでなく細菌や、マイコプラズマやクラミジアなどのウイルス以外のものからも発症します。

風邪を引き起こす主なウイルスは以下の通りです。[19]

  • ライノウイルス|秋や春に多く、風邪の約30〜40%を占め、鼻風邪を引き起こす

  • コロナウイルス|ライノウイルスの次に多く、鼻やのどの症状を起こす(新型コロナウイルスとは異なります)

  • RSウイルス|年間通じて流行するが冬に最も多く、乳幼児に感染すると気管支炎や肺炎を起こす場合がある

  • パラインフルエンザウイルス |秋に流行する型と春〜夏に流行する型があり、子供に感染すると大人より重症になりやすい

  • アデノウイルス|プール熱の原因ウイルスで、気管支炎や咽頭炎、結膜炎などを起こす

  • エンテロウイルス|夏に流行するウイルスで風邪症状のほかに下痢を起こすこともある

症状の現れ方、強さ

インフルエンザと風邪の症状はほとんど変わりはありません。

違いは症状の現れ方とその強さにあります。

風邪の場合、鼻汁や咽頭痛(のどの痛み)などの呼吸器症状が初期段階で認められることが多いですが、インフルエンザでは初期の呼吸器症状はほとんどみられません。

インフルエンザにおける呼吸器症状は全身症状から数日遅れて出現するのが通常の流れです。

また、インフルエンザでは38℃以上の高熱や全身倦怠感などの全身症状が現れますが、風邪ではほとんどのケースで認められません。

症状の強さでは、インフルエンザが圧倒的です。風邪の症状は比較的緩やかに出現し、発熱があっても高熱となることは少ない傾向にあります。

流行時期

インフルエンザは季節性があり、例年11〜12月頃に流行し始め、1〜2月にピークを迎えます。

一方風邪は年中流行しており、時期による流行の偏りはありません。

インフルエンザの治療法

インフルエンザの治療法は薬物療法が中心で、インフルエンザウイルスそのものに対する抗インフルエンザ薬と症状緩和を目的とした対症療法に分かれます。

【抗インフルエンザ薬】

主な抗インフルエンザ薬は以下があげられます。

  • タミフル(内服薬)

  • ゾフルーザ(内服薬)

  • リレンザ(吸入薬)

  • イナビル(吸入薬)

  • ラピアクタ(点滴薬)

抗インフルエンザ薬は、発症(発熱)後48時間以内に投与しないと効果が乏しくなると言われていますが、効果が示されれば発熱期間を24時間ほど短縮してくれます。

しかし発熱してすぐに医療機関を受診しても、ウイルス量が十分でないために検査で陰性となってしまう場合があります。

そのため、発熱後24時間程度が受診タイミングとしては最適です。

なかには症状が強く、非常につらい思いをされる方もいますので、そういった場合は無理をせずに医療機関を受診しましょう。

【対症療法】

発熱や全身倦怠感、咳、痰などのそれぞれの症状に合った処方が出されます。

発熱に対して解熱鎮痛薬が処方されますが、先述した通りインフルエンザの場合は特別な理由がない限り、アセトアミノフェンです。

アセトアミノフェンにはカロナール、アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤などがあります。

インフルエンザの予防方法

インフルエンザは潜伏期間から強い感染力を持ち、容易に集団感染します。

普段から予防行動をとることが、インフルエンザにかからないために重要です。

インフルエンザに罹患して市販薬に頼る前に、日常生活に感染予防行動を取り入れていきましょう。

以下が主な予防方法です。

  • ワクチン接種

  • 手洗い、消毒、うがい

  • マスクの着用

  • 適度な湿度の保持

  • こまめな換気

ワクチン接種

インフルエンザ予防の有効な手段のひとつがインフルエンザワクチンの接種です。

ワクチン接種による発症予防効果は50%と言われています。[20]

もしインフルエンザにかかったとしても重症化を防ぐ効果がありますので、肺炎や脳症などのリスクを下げます。

成人は1回、12歳以下の小児はシーズン中に2回の接種が必要です。

接種して抗体が出来始めるのが2週間後、抗体値のピークに達するのが接種後1か月前後で、3〜6か月持続します。[20]

そのため、流行のピークである1〜2月に間に合わせるには最低でも11月中に接種を終えなければなりません。

2023年は早期流行が懸念されており、すでに流行入りとなった県もありますので、早めにワクチン接種を済ませましょう。

手洗い、消毒、うがい

手洗いや消毒による手指衛生は接触感染を断つために最も有効な予防法です。

なかでも石鹸を使用した手洗いが効果的なので、こまめに手を洗うように心がけましょう。

また、インフルエンザウイルスに対してアルコールも有効なので、積極的に使用してください。

気道の乾燥でインフルエンザにかかりやすくなります。外出後を中心に、乾燥予防もかねてうがいもしっかり行いましょう。

マスクの着用

現在、新型コロナウイルス感染症予防としてのマスク装着の努力義務は撤廃されましたが、やはり飛沫感染予防にはマスクの着用が最も効果的です。

特に人混みに行ったり、会話をしたりする場合は、飛沫予防としてマスクの装着をした方が安心です。

厚生労働省はウイルスが通り抜けにくい不織布マスクを推奨しています。[21]

インフルエンザ対策を徹底したい方やインフルエンザが重症化しやすい方は、布マスクではなく不織布マスクを常備、装着しましょう。

適度な湿度の保持

低湿度は気道粘膜の抵抗力の低下を招きます。

インフルエンザウイルスは粘膜に付着して増殖するため、乾燥によりインフルエンザにかかりやすくなります。

乾燥しやすい室内は50〜60%の湿度を維持するようにしましょう。[17]

こまめな換気

インフルエンザが流行する寒い冬は、換気扇の使用が寒さ対策になります。

空気の入れ替えのための換気ももちろん効果的です。

こまめな換気は室内のインフルエンザウイルスの濃度を低減させます。状況に応じてうまく換気しましょう。

インフルエンザが疑われたら早めに医療機関の受診を

インフルエンザは症状が急速に強く出ることが特徴です。

しかしなかにはすぐに医療機関に行けない事情がある方もいらっしゃるでしょう。

市販薬をやむを得ず使用する場合は、インフルエンザによる重篤な合併症を起こさないためにも、購入先の薬剤師や登録販売者に必ず相談をするようにしてください。

そして受診可能となったら直ちに医療機関を受診しましょう。

早めの受診が何よりも重症化や合併症のリスクを下げ、適切な治療を受けられます。

Q&A

インフルエンザに効く市販薬はありますか?

インフルエンザウイルスそのものに効く市販薬はありません。

ただし高熱や関節痛、頭痛などの症状に対しての対症療法として、アセトアミノフェン配合の市販薬は安全性も高く使用が可能です。

ライ症候群やインフルエンザ脳症の合併を回避するため、NSAIDsが含まれる薬剤は使用しないようにしましょう。

インフルエンザに効く普通の薬はあるの?

インフルエンザはインフルエンザウイルスを原因として発症する感染症です。

インフルエンザを根本的に治すにはインフルエンザウイルスを不活性化しなければならず、市販薬でその効果をもつものはありません。

インフルエンザに効く薬は何ですか?

インフルエンザには抗インフルエンザ薬が有効です。

ただし、発症から48時間以内に使用しなければ効果が得られづらくなります。

また、市販薬ではこの効果を持つものは存在しないため、医療機関の受診が必須です。

以下が抗インフルエンザ薬の代表薬です。

  • タミフル(内服薬)

  • ゾフルーザ(内服薬)

  • リレンザ(吸入薬)

  • イナビル(吸入薬)

  • ラピアクタ(点滴薬)

インフルエンザにロキソニンはダメですか?

ロキソニンはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)に含まれ、インフルエンザ患者への使用は避けるよう注意喚起がなされています。

ロキソニンのほか、アスピリン、ボルタレン、ポンタールなども避けるべき薬剤とされているため、注意しましょう。

インフルエンザ疑いのときの自己判断は危険!できる限り医療機関受診を

近頃急に秋めいており、昼夜の寒暖差などで体調を崩す方も増えています。

「熱が出てきたけど疲れが出てきたかな?薬を飲めば良くなるかな」と安易に考えるのは非常に危険です。

風邪、インフルエンザ、そして新型コロナウイルス感染症の症状は似ていることも多く、鑑別が困難なケースもあります。

特にインフルエンザと新型コロナウイルス感染症は非常に似ています。

インフルエンザで最も避けるべきは合併症を引き起こさないこと、重症化しないことです。

今すぐ行けない場合でも、できるだけ早めに医療機関を受診し、正しい診断、正しい治療を受けるようにしましょう。

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

参考文献

[1]医療用医薬品の家庭における使用について|厚生労働省

[2]インフルエンザの時服用すると危険な解熱剤とは?医師が解説します。|CLINIC FOR

[3]インフルエンザの潜伏期間は?症状と流行時期、予防接種の効果・副反応を解説|ヨクミテ

[4]NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が配合された市販薬を紹介|アセトアミノフェンとの違いなど|minacolor

[5]解熱鎮痛薬|エスエス製薬

[6]インフルエンザの症状に効く市販薬(解熱鎮痛剤)|熱・喉の痛み・頭痛|minacolor

[7]タイレノール製品情報|Tylenol Japan

[8]ラックル|日本臓器製薬

[9]子ども用バファリン|ライオン株式会社

[10]ムヒのこども解熱鎮痛顆粒|池田模範堂

[11]バファリンルナJ|ライオン株式会社

[12]医学界新聞[第2回]アセトアミノフェン経口製剤(カロナールⓇ)は 空腹時に服薬することが可能か?|医学書院

[13]医療用医薬品ロキソニン60㎎、ロキソニン細粒10%添付文書

[14]インフルエンザ脳症|Medical Note

[15]]ライ症候群|Medical Note

[16]【医師監修】インフルエンザは潜伏期間でも感染する?流行時期にとるべき対策|健英製薬

[17]インフルエンザQ&A|厚生労働省

[18]インフルエンザについて|インフル・ニュース

[19]風邪(かぜ)の原因|くすりと健康の情報局 by第一三共ヘルスケア

[20]インフルエンザワクチンについて|にしだ内科・外科クリニック

[21]マスク着用の考え方の見直し等について|厚生労働省

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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