インフルエンザのとき下痢は起こる?
インフルエンザにかかったときに、下痢になることがあります。
代表的なインフルエンザの症状は発熱や体のだるさ以外にもさまざまで、消化器症状がみられることもあります。
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発熱
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のどの痛み
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咳や鼻水が出る
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頭痛
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関節や筋肉の痛み
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体のだるさ
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下痢
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腹痛
ただしインフルエンザと同時にほかの感染症にかかっている可能性もあるため、必ずしもインフルエンザが下痢の原因であるとは限りません。自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
インフルエンザで下痢が起こる原因
インフルエンザで下痢が起こるおもな原因は「インフルエンザウイルス自体が体へ及ぼす影響」と、「インフルエンザ治療薬の副作用の影響」です。
具体的には以下のような原因で下痢が起こります。
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インフルエンザウイルスを胃腸内から排泄するはたらき
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インフルエンザウイルスへの免疫反応
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抗インフルエンザウイルス薬や解熱剤による副作用
どのような原因によって下痢が起こるのかを知ることで、適切な対処がおこなえます。
インフルエンザウイルスを胃腸内から排泄するはたらき
インフルエンザウイルスが胃腸内で急激に増殖している場合、ウイルスを体から排出しようとして下痢を引き起こします。
下痢は体内の毒素を排出しようとする自然な反応です。
下痢止めを服用すると、体の外へ出そうとしているウイルスの毒素が体内に溜まってしまい、症状が長引いたり重症化したりする恐れがあります。
自己判断で服用するのは控えましょう。
インフルエンザウイルスへの免疫反応
インフルエンザウイルスへの免疫反応で、腸の動きが乱れて下痢が発生します。
体内の免疫細胞はインフルエンザウイルスを認識すると、免疫反応としてサイトカインという炎症性物質を放出します。サイトカインはウイルスを排除するために必要な物質です。しかしサイトカインが過剰に産生されると腸管へ影響を及ぼし、腸の動きの乱れや腸内細菌のバランスの乱れを引き起こします。
腸の動きの乱れとは、具体的に以下のとおりです。
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便を肛門へ運ぶはたらきである蠕動(ぜんどう)運動の増加
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便の水分量を調節する機能に障害が起こる
便が肛門へ早く移動すると腸内で便中の水分を十分に吸収できず、水分が残った下痢状の便として排出されます。
便中の水分を吸収する調節機能に障害が起こると、便をほどよい硬さに保てずに下痢となるのです。
いずれも腸の動きの乱れによって体内へ吸収されるはずであった水分が、便として外へ出てしまうため脱水症状になりやすいです。こまめな水分補給を心がけましょう。
抗インフルエンザウイルス薬や解熱剤による副作用
インフルエンザで処方される抗インフルエンザウイルス薬や解熱剤の副作用で、下痢や腹痛などの消化器症状があらわれる可能性もあります。
抗インフルエンザウイルス薬と解熱剤の副作用を確認し、ご自身が服用している薬と当てはめながら参考にしてください。
薬の名前 |
消化器官への副作用 | |
抗インフルエンザウイルス薬 |
タミフル |
下痢、腹痛、気持ち悪さ、吐き気[1] |
イナビル |
下痢[2] | |
リレンザ |
下痢、気持ち悪さ、吐き気[3] | |
ゾフルーザ |
下痢、気持ち悪さ[4] | |
解熱剤 |
ロキソニン |
下痢、吐き気、嘔吐(おうと)[5] |
抗インフルエンザ薬や解熱剤だけでなく、咳止め薬や痰を切る薬などの多くにも下痢の副作用を認める場合があります。
薬の副作用による下痢は、服用し始めて1~2週間以内に起こることが多いです。
薬の副作用で下痢が起こる可能性があると理解しておけば、症状が改善しない場合に早めに医療機関を受診しやすくなるでしょう。
関連記事:タミフルの効果と副作用について知ろう|服用方法や副作用対策について解説
関連記事:インフルエンザ薬「ゾフルーザ」効果が出るまでどのくらいかかるの?
インフルエンザの型によって下痢の起こりやすさは違う?
インフルエンザB型の方が下痢などの消化器症状が起こりやすいといわれています。[6]
A型、B型ともに同じような症状が起こりますが、やや違いがみられるのは発生頻度です。発熱、咳、体のだるさはA型、B型ともに同じような割合で起こる症状ですが、B型は嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状が目立ちます。一方A型の特徴は39℃以上の激しい発熱や呼吸困難などの割合が多い傾向です。
高熱や寒気、頭痛などの症状のイメージが強いA型でも、下痢症状が少ないというわけではありません。2009年に流行したインフルエンザA型(N1H1)は、ほかの季節性インフルエンザに比べて下痢症状を訴える人が多数いました。インフルエンザA型はB型と比較してウイルスの変異が起こりやすく、変異のタイプによって出現する症状に差がみられます。そのためインフルエンザA型の中でも下痢が起こりやすい場合と起こりにくい場合があります。
下痢の症状のみでインフルエンザA型なのかB型なのかの判断はできないため、医療機関で正しい診断を受けるようにしましょう。
インフルエンザのときの下痢はうつる?
インフルエンザウイルスやインフルエンザ治療薬の副作用が原因での下痢は、基本的にはうつりません。インフルエンザウイルスは胃液などの消化液で分解され、腸内へ移動しにくいためです。ただし分解されなかったインフルエンザウイルスが下痢便に含まれていることもあります。トイレの後や食事前の手洗いの徹底と、室内にウイルスを留まらせないためにこまめな換気を心がけましょう。
一方で感染性胃腸炎などが併発している場合、下痢便に胃腸炎を引き起こすウイルスが含まれておりうつる可能性はあるため注意が必要です。
感染性胃腸炎では下痢便に含まれる細菌やウイルスが、口の中へ入ることで感染します。
手洗いの徹底とこまめな換気に加えて、の下痢便を処理するときには使い捨ての手袋やマスクをして処理をしましょう。
消毒用のアルコールではウイルスを除去できないため、床を汚してしまった場合は処理後にハイターやブリーチなどの塩素系の消毒剤で床を消毒してください。
インフルエンザと感染性胃腸炎との違い
下痢の症状を伴うインフルエンザと感染性胃腸炎の違いは、全身症状があるかどうかや下痢症状の持続期間、発熱のタイミングなどです。
インフルエンザA型とB型、感染性胃腸炎の症状の違いを確認し、ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
病名 |
症状 |
インフルエンザA型 |
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インフルエンザB型 |
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感染性胃腸炎 |
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以下のような場合はインフルエンザを疑います。
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消化器症状、発熱のほかに咳などの呼吸器症状がみられる場合
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下痢が長く続く場合
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下痢症状の前に発熱がある場合
ただし正確な診断は医療機関でしかできないため、早めの受診が必要です。
医療機関ではのどの奥の粘膜を綿棒でこすってインフルエンザかどうかを検査、もしくは便を綿棒で採取し、便中にウイルスや細菌がいないかどうかの感染性胃腸炎の検査をおこないます。感染性胃腸炎が疑われる場合には検査をおこなわず、医師の診察によって判断されることもあります。
インフルエンザと感染性胃腸炎の治療方法は異なるため、適切な診断が重要です。
インフルエンザの下痢のとき、下痢止め薬は飲んでもいいか
下痢止め薬は使用せず、症状をやわらげる方法をとりながら自然におさまるのを待つのがよいでしょう。
急な下痢症状でつらいときは、下痢止め薬を服用したくなりますよね。
しかし下痢止めを使用するとウイルスが排泄されず、かえって回復に時間がかかるおそれがあります。
下痢が自然におさまるまでは、胃腸への負担をかけないようにしつつ体を休めます。
下痢止めではない市販の整腸剤は、用法・容量を守れば飲んでも構いません。どれを選んだらよいか迷う場合は、薬剤師や登録販売者に相談することをおすすめします。
ほかの胃腸症状を伴う感染症を併発している可能性が低い場合や下痢の症状がひどい場合には、医師の判断で下痢止めを検討されることもあります。
あまりにもつらいときには自己判断せずに、医師や薬剤師に相談してください。
インフルエンザのときの下痢への対処法
インフルエンザのときの下痢をやわらげる方法には次の2種類があります。
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消化のよいものをとる
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十分な休息と睡眠をとる
腸への刺激をおさえて腸内を休めたり、十分な睡眠で自律神経の調子を整えたりすることで下痢の治りが早まります。ご自宅で手軽にできますので参考にしてください。
食べてもいいもの
下痢の症状がある場合には消化のよいものをとりましょう。胃腸への負担を少なくしつつ、無理のない範囲で栄養をとることが症状の改善につながります。
消化のよいものとは具体的に以下のとおりです。[7]
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脂の少ない食べ物
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体を冷やさない温かい食べ物
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食物繊維の少ない食べ物
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整腸作用をもつ食べ物
どのような食材を取り入れた食事がよいかを紹介します。自炊が難しい場合でも、コンビニやスーパーで手に入るものもあるため参考にしてみてください。[8]
食材の種類 |
食材名 |
料理名 |
魚介・肉類 |
白身魚(たら、たい、かれい、しらす、はんぺんなど) 鶏ささみ |
焼き魚、煮魚、魚介鍋、鶏ささみ蒸し |
卵類 |
卵 |
茶碗蒸し、卵豆腐、卵とじうどん、温泉卵 |
大豆製品 |
豆腐、納豆 |
湯豆腐、卵豆腐 |
乳製品 |
ヨーグルト、乳酸菌飲料 |
プリン、飲むヨーグルト |
野菜類 |
繊維の少ない野菜(大根、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、かぶ、ほうれん草、白菜など)、りんご |
野菜スープ、味噌汁、コンソメスープ、ポタージュスープ、すりおろしりんご、おでん |
穀類 |
おかゆ、うどん |
卵のおかゆ、煮込みうどん、卵とじうどん |
食欲が出ないときでも水分はこまめに補給するようにしてください。
脱水症状になるのを防げます。
下痢の症状があると水分とともに塩分も体の外へ出ていってしまうため、可能であれば経口補水液やスポーツドリンクをとるようにしましょう。
冷えた飲み物は腸を刺激するため、冷蔵庫から出し常温に戻してから飲むことをおすすめします。飲み過ぎると塩分と糖分をとり過ぎてしまうため摂取量には注意してください。1日の摂取量の目安は年齢によって異なり、大人の場合は500~1000mLが適正です。
食欲が湧いてきたときには急に多くの量を食べるのではなく、1回の食事の量は少なめにしましょう。下痢症状の悪化がなければ徐々に食事の量を増やします。腸に急激な負担をかけないことが重要です。
関連記事:インフルエンザを早く治すために食べた方が良いものは?
十分な休息と睡眠
十分な休息や睡眠をとることで体の調節機能である自律神経を整えられます。
不安や緊張などストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れて消化器官のはたらきが悪くなり下痢を繰り返すことがあります。
6〜8時間程度の睡眠時間を確保できるように心がけましょう。ただし適切な睡眠時間は個人差や年齢や季節によっても変化するため、あくまで目安として考えてください。[9]
適切な睡眠時間の確保に加え、睡眠の質を向上させることも早期の回復につながります。
睡眠の質を向上させるために自宅でできることはこちらです。
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食事は寝る3時間前までに済ませる
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入浴は寝る1時間前までに済ませる
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寝る直前のスマートフォンの使用を控える
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就寝時にリラックス効果のあるアロマオイル(カモミールやラベンダー、イランイランなど)を垂らす
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朝起きたら太陽の光を浴びる
普段から食事を1日3食、規則正しく食べ、適度な運動を心がけることで質のよい睡眠が習慣化されます。睡眠の質の向上は体の免疫力を高めるため、普段から上記の内容を心がけておくと病気にかかりにくくなります。
子どもがインフルエンザで下痢のときの対応
子どもがインフルエンザで下痢の症状がある場合も基本的には大人と同様の対応をとります。
ただし子どもは「おなかが痛い」という症状を的確に伝えられない場合が多いです。急激に体調が変化することもあるため、症状によっては早めに医療機関を受診した方がよい場合もあります。ホームケアをしながら症状の変化がないか、しっかりと様子をみて異常がある場合にはすぐに受診できるようにしましょう。
子どもの下痢症状への対応で大切なポイントは次の4種類です。
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食べ物、飲み物に気をつける
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おしりのケア
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体を休ませる
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異常があるときはすぐ医療機関へ行く
具体的にどのような対応をすべきかをご紹介していきます。
食べ物、飲み物
下痢の場合、症状が回復し食欲が戻るまでは無理して食べずに経口補水液などの水分のみを補給しましょう。
経口補水液の1日の摂取量目安は年齢によって異なります。
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1歳未満の子ども場合は体重1kg当たり30~50mL
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1歳から小学校就学前の子どもの場合は300〜600mL
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小学生からは500~1000mL
急に多くの量を飲ませずに、一回に飲む量は少量を心がけます。ペットボトルのまま子どもに与えず、ティースプーンやペットボトルのフタを利用して飲ませると飲み過ぎを防げます。
食欲が出てきて食べられるようになってきたら少しずつ消化のよいものをとりましょう。
消化の悪いものを避けることで腸への刺激を防止し、胃腸への負担が少なくなり回復を早めます。
消化のよいものと悪いものを以下にまとめたので参考にしてみてくださいね。[10]
消化のよいもの |
消化の悪いもの |
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固形物はできる限り小さくした方が消化によいです。野菜やうどんなども細かく刻むことで胃腸への負担を減らせます。
食欲があり食べられる場合でも、食べ過ぎは避けましょう。まだ腸内の調子が整っていない状態なので、普段の3分の2程度の量におさえるように心がけます。
また嘔吐(おうと)がある場合には無理に食べさせないでください。
食事を無理に食べない方がよい理由として以下が挙げられます。
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消化器官が弱っており食べ物が適切に消化・吸収されず、さらに消化器官に負担がかかるため
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インフルエンザの回復に使うエネルギーが消化にとられ、回復が遅れる可能性があるため
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吐き気が強くなり嘔吐のリスクが高まるため
嘔吐してすぐは食べ物、飲み物はなにも与えずに様子をみます。吐き気があるときに食べたり飲んだりすることは、余計に吐き気を増幅させる原因です。30分~1時間してから吐き気や嘔吐がなければティースプーン1杯のお茶や湯冷まし、経口補水液を与えていきます。嘔吐がなければ10~15分おきに少しずつ量を増やして与えていきましょう。冷えた飲み物は腸を刺激してしまうため、温かいものか常温のものを飲ませてください。嘔吐が落ち着いてきたら、消化のよいものをゆっくり時間をかけて食べていきます。
乳児が嘔吐した場合も同様で、嘔吐直後はなにも与えずに様子をみます。30~1時間後に麦茶や湯冷ましを与えて嘔吐がなければティースプーン1杯ずつミルクを与えていき、普段の1/3~1/2の量までを上限としましょう。離乳食は吐き気がおさまるまで待ち、食欲が回復してきたら消化のよいものから少しずつ与えます。
下痢や嘔吐がある場合は、無理せずに少しずつ水分や栄養をとらせましょう。
おしりのケア
何度も下痢をすることでおしりが荒れてしまうため予防が必要です。
下痢がおしりの皮膚につくことで肌を刺激して炎症が起きやすくなります。高頻度の下痢でおしりを拭く機会が多くなることも摩擦によっておしりが荒れてしまう原因です。
おしりが荒れるのを防ぐために具体的に次のような方法があります。
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おむつの場合はうんちをしたらできるだけ早く取り替える
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おしりふきは水分をたっぷりと含んだ柔らかいものを使用する
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おしりが荒れている場合は、おしりふきで何度もこすらずにぬるま湯で流す
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おしりを拭くときに力を入れないようにする
長時間うんちがおしりについていると炎症し肌が荒れるため、早めに新しいおむつへ取り替えるようにしましょう。
おしりを洗った後は蒸れるのを防ぐためにきれいなタオルでこすらずおさえるようにして、しっかりと水分をとり乾燥させます。
水分をとった後に保湿剤やベビーオイルを全体にたっぷりと塗ることで、便がおしりの皮膚につかないようにカバーできます。
子どもの肌は薄くデリケートなので、おむつ替えやおしり拭きはやさしくおこなうようにしましょう。
体を休ませる
下痢の症状は思ったよりも体力を消耗するため、できるだけ安静にさせましょう。
睡眠をしっかりとることが大切ですが、体を横にするだけでも体を休められます。
子どもは自分の体調を把握できないことが多いため、保護者がしっかりと休ませてあげるようにします。
下痢の症状をやわらげるために、おなかを締め付けないゆったりとした服装に着替えて、前かがみの姿勢で横になるのも効果的です。
と。
異常がある場合はすぐ医療機関へ
下痢の症状が回復せずに悪化している場合や1週間以上下痢が続く場合は、医療機関を受診しましょう。
症状の激しい下痢や長引く下痢は、腸管にダメージを与えている可能性もあります。
放置せずに早めに対処することで、さらなる悪化を防げます。
子どもの症状は変わりやすいため、以下の症状がみられる場合はすぐに受診するようにしてください。
症状 |
疑われる病気 |
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脱水の可能性あり |
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ノロウイルスやロタウイルスなど、ウイルスによる胃腸炎の可能性あり |
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サルモネラ菌、カンピロバクター菌、大腸菌など、細菌による胃腸炎の可能性あり |
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腸重積(ちょうじゅうせき)の可能性あり 感染性胃腸炎の可能性あり |
医療機関の先生には次のような情報を伝えるとスムーズに診察が進みます。
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1日に何回下痢があるのか
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いつから症状があるのか
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どのような便なのか(色、硬さなど)
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飲んでいる薬
どのような便なのか口頭で伝えるのが難しい場合は写真を撮影し、先生に見せるのも効果的です。インフルエンザの診断をしてもらった医療機関や、かかりつけのクリニックなら経過がわかるためおすすめです。
インフルエンザの下痢のときの受診について
4週間以上続く下痢や以下の症状がみられる場合は医療機関を受診しましょう。
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血が混じった便や黒っぽい便が出ている
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4週間以上の長引く下痢症状
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激しい腹痛がある
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高熱が出る
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体重の減少や尿量の低下
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1日10回以上の高頻度の下痢
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食欲の低下がある
これらの症状があらわれている場合は、インフルエンザウイルス以外に下痢の原因が隠れていたり、脱水症状になっていたりする可能性があります。
さらに以下のものは緊急性の高い症状です。救急車を呼び、直ちに医療機関を受診してください。
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おなかが強く痛む
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意識を失った
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ふらつきやめまいがある
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今までにないくらい大量に下血した
救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合は、無料で専門家に受診の相談を受けられる電話相談窓口#7119にかけてみましょう。[11]
電話口の医師、看護師、相談員に症状を伝えることで「救急車を呼んだ方がいいか」「急いで医療機関を受診した方がいいか」を案内してもらえます。
関連記事:救急車を呼ぶタイミングや基準は?迷ったときに使える無料診断窓口と♯7119
関連記事:#7119(救急相談電話)に繋がらない時に利用したい緊急相談窓口
インフルエンザの下痢で血便は出るか
インフルエンザウイルスが原因で起こる下痢では、基本的に血便は出ません。
そのため血便が出た場合は、別の原因を考える必要があります。
血便は消化管のどこかで出血が起きているサインで、以下の病気が考えられます。便に血が混じったときには早めに医療機関を受診しましょう。
便の色や状態 |
出血の場所 |
考えられる病気 |
鮮やかな赤色の便 |
肛門に近い場所から出血 |
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黒く濁った赤色の便 |
比較的大腸に近い小腸や大腸からの出血 |
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真っ黒な便 |
胃などの消化器上部での出血 |
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粘液と血液が混じった便 |
大腸粘膜のどこかからの出血 |
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抗インフルエンザウイルス薬であるゾフルーザの副作用で血便が出る場合もあります。
医療機関を受診するときにおくすり手帳を持っていくか、飲んでいる薬の名前を控えておくとよいでしょう。
診察では次のような問診や触診、検査をおこないます。
<問診>
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いつから血便が出るようになったか
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便の状態(水っぽいのか、ベタッとしているのか、ゼリー状なのか)
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便の色(明るい赤、黒みがかかった赤など)
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便の量
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痛みを伴うのか
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そのほかの症状の有無
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過去に同じような症状が出たことはあるか
<触診>
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おなかをさわって痛みや腫れがないか
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肛門に異常がないか
<検査>
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血液検査(貧血や炎症の有無、肝機能を調べる)
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便検査(便中の血液の有無や感染症の有無を調べる)
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CT検査、エコー検査(炎症の程度を調べる)
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内視鏡検査(出血している場所や腫瘍の有無を直接調べる)
CT検査やエコー検査、内視鏡検査などの設備が整っている医療機関は限られています。そのため診断の結果によっては、より専門的な検査ができる医療機関へ案内されることがあるかもしれません。その場合は案内に従い指定された医療機関を受診しましょう。
よくある質問
インフルエンザの下痢についてよくある質問をまとめました。インフルエンザと下痢の関係で気になることがある場合は参考にしてくださいね。
インフルエンザで下痢はしますか?
インフルエンザのときに次の3つの原因によって下痢になる場合があります。
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インフルエンザウイルスを胃腸内から排泄するはたらき
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インフルエンザウイルスへの免疫反応
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抗インフルエンザウイルス薬や解熱剤による副作用
上記の原因以外にも、ほかのウイルスや細菌に感染することで胃腸炎を併発し下痢の症状が起こる場合もあります。必ずしもインフルエンザウイルスが原因とも限らないため、異常がみられる場合は医療機関を受診しましょう。
インフルエンザA型でおなかがゆるくなるのはなぜですか?
インフルエンザA型でおなかがゆるくなるのは、前の見出し「インフルエンザで下痢はしますか?」で説明したように3つの原因が影響しています。
インフルエンザA型の症状は特徴的な高熱や寒気、頭痛などに加えて下痢症状がみられます。とくに2009年に流行したインフルエンザA型(N1H1)は、ほかの季節性インフルエンザに比べて下痢症状を訴える人が多数いました。ただし、下痢症状はインフルエンザA型だけにみられる症状ではありません。B型にもあらわれやすい症状のため自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
インフルエンザで熱が下がってから下痢になるのはなぜ?
熱が下がっても体内にウイルスがとどまっていることが原因で下痢になります。
インフルエンザの発熱が発症から4日~7日間続くのに対して、ウイルスが体内にとどまる期間は7~10日です。そのため熱が下がった頃に体内に残ったウイルスが下痢の症状を引き起こします。
インフルエンザが治りかけているのがわかる症状は?
インフルエンザが治りかけのときには、次のような症状になります。
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熱が下がり始める
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体のだるさや全身の痛みがやわらぐ
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咳や鼻水が改善する
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食欲が戻る
症状が続く期間には個人差がありますが、通常発症から4~5日前後で症状が改善していきます。
インフルエンザの下痢で、ゾフルーザなどの薬の副作用は関係しますか?
抗インフルエンザウイルス薬や解熱剤など、薬は副作用として下痢を引き起こす可能性があります。
ゾフルーザの副作用は以下のとおりです。[4]
1%以上 |
1%未満 |
頻度不明 |
下痢、吐き気 |
発疹、蕁麻疹、頭痛、嘔吐 |
皮膚のかゆみ、まぶたや唇のむくみ |
ゾフルーザの特徴的な副作用は、発生頻度の多い下痢や吐き気など消化器系の副作用です。服用している期間中、下痢の症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。
まとめ:インフルエンザで下痢のときは早めの対応を心がけましょう
インフルエンザの下痢の原因には次の3種類があります。
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インフルエンザウイルスが影響している場合
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インフルエンザの治療薬の副作用が影響している場合
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ほかのウイルスや細菌が感染して胃腸炎を併発している場合
下痢の原因によって治療方法が異なるため、医療機関で正確な診断をしてもらいましょう。とくに下痢が悪化している場合や1週間以上続く場合、血便など普段と異なる便が出る場合は、早めに受診してください。放置せずに早めに対処することで、さらなる悪化を防げます。
インフルエンザで下痢のときに自宅でできる対処法は以下の3つです。
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腸に負担のかからない消化のよいものを食べ、消化の悪いものは食べない
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十分な休息と睡眠をとる
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子どもがインフルエンザのときはおしりのかぶれを予防する
ひどい下痢や長く続く下痢の場合は、脱水症状になりやすいです。食欲がなく食べられなくても、こまめに水分補給をおこないましょう。真水ではなく塩分と糖分の入った経口補水液やスポーツドリンクを飲むようにしてください。食欲が戻ってきたら少しずつ消化のよいものをとり、体の調子を整えていきます。
十分な休息と睡眠は体の免疫力を高めます。子どもは自分で体力を調節することが難しいため、保護者が声掛けをおこない、しっかりと休ませることが重要です。
1日に何度も下痢をすると、おしりを拭くときの摩擦やおむつの中でうんちが肌につき炎症することでおしりがかぶれてしまいます。かぶれを予防するために、こまめにおむつの交換と肌を刺激せずおしりを拭く工夫をするとよいでしょう。
ファストドクターでは無料の医療相談を行なっています。
アプリから往診の待ち時間を見れるだけではなく、チャットや電話での無料の医療相談が可能です。
もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。
参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。