熱中症による吐き気の対処法と受診目安
熱中症の症状には、めまいや立ちくらみだけでなく、吐いてしまったり吐き気があったりする場合があります。この章では吐き気の対処法や、医療機関への受診目安について解説します。
吐き気があるときの対処法
熱中症により吐き気や嘔吐(おうと)がみられているときは、その場で応急処置を取ることが大切です。まずは涼しい場所に移動しましょう。屋外であれば日陰、屋内であれば風通しの良い場所や冷房が効いている室内がおすすめです。
熱中症で吐き気があったり、すでに吐いてしまったりしたときは、すでに胃腸の動きが鈍っている状態です。吐いた内容物により窒息するリスクもあるため、無理に水分摂取しないようにしましょう。[1][2]
吐き気があるときの受診目安
熱中症で吐き気や嘔吐があるときや現場の応急処置で症状が改善しないときは、早めに医療機関を受診しましょう。熱中症は急に進行して重症になるケースが多くあるためです。
自力での水分摂取が難しいときは車で医療機関に向かい、点滴治療を受ける必要があります。
熱中症で吐き気が起こる原因
中等度の熱中症で吐き気や嘔吐がみられるのは、消化器が十分に機能していないためです。
とくに夏は炎天下でのスポーツや屋外での長時間運動をすると、身体の体温を下げるために、大量の汗をかきます。
大量の発汗により身体の水分と塩分が不足すると、体温調節や血液の流れに問題が起こり「熱失神」という状態になります。
熱失神は熱中症により一時的な失神がみられる状態です。熱失神がさらに進行すると、脳や消化器への血流が低下し、臓器そのものの温度が上がることで「熱疲労」になります。
熱疲労になると胃などの消化器官が十分に動かず、吐き気や嘔吐がみられるようになります。吐き気がある場合は、すぐ医療機関を受診するようにしましょう。[1][2]
その他の症状と緊急性の判断ポイント
熱中症は重症度ごとにさまざまな症状がみられます。熱中症になったときは、重症度に合わせて適切な対処をしましょう。
熱中症の症状と重症度の分類
熱中症の症状ごとの分類と、重症度に合わせた対処法は以下のとおりです。[1][2]
熱中症の種類と重症度 |
症状 |
重症度と対処法 |
熱失神 |
めまい・立ちくらみ |
軽症の熱中症であるため、通常は現場で対応
|
熱けいれん |
こむら返り・筋肉の痛み | |
熱疲労 |
吐き気・嘔吐・頭痛・気分の不快・全身のだるさ・集中力の低下 |
中等症の熱中症であるため、医療機関に受診する必要 |
熱射病 |
40℃以上の体温・発汗していない・意識障害・普段と異なる言動・けいれん |
重症の熱中症であるため、医療機関での入院治療が必要 |
表にあるように、熱中症の症状によって重症度が分類されています。重症度によって対処法が異なるため、よく確認しておきましょう。
関連記事:熱中症の症状チェック|頭痛も熱中症のサイン?治し方も解説
関連記事:熱中症による頭痛を速攻で治す方法はある?対処法について解説
ぐったりしていると重度熱中症(熱射病)の疑いがあり、意識がない場合はすぐに救急車を要請する必要があります。
2024年8月現在、吐き気や頭痛などの中度熱中症(熱疲労)はファストドクターにご相談いただければ対処が可能です。
ファストドクターでは、対象地域でご自宅に伺っての診察・治療がおこなえます。
「吐き気がひどくて病院に行けない」「夜中だから病院があいてない」そんな時でも安心して受診できます。
まずは一度医師に症状をお聞かせください。
頭痛が治らないときの対処法|ロキソニンを飲んでもいい?
熱中症で頭痛がある場合は、ロキソニン(成分名:ロキソプロフェン)などの頭痛薬を飲もうか考えている人もいるでしょう。
熱中症による頭痛に対して痛み止めを飲んでも、根本である熱中症の対処をしなければ十分な効果を得られません。
またロキソニンに限らず、痛み止めの中には解熱作用のあるものも多いです。しかしどの熱冷ましも、熱中症による高体温を下げることはできません。
熱中症は発熱ではなく、外気温の影響による高体温症であるためです。
頭痛がみられる場合は、熱中症の中等症にあたります。頭痛薬を飲まずに医療機関を受診するようにしましょう。
関連記事:熱中症で頭痛が出るのはなぜ?治し方や頭痛薬を飲んでいいのかも解説
緊急性を判断するポイント
緊急性を判断する目安として、熱中症のどの分類に当てはまるか確認しましょう。熱中症は急激に症状が進行し、医療機関での治療が必要になることがあるためです。
熱失神や熱けいれんは軽症の熱中症であるため、その場の対応により症状が改善することもあります。ただ軽症の熱中症であっても、現場での対処で症状の改善がみられないときは、迷わず医療機関へ受診しましょう。
一方、吐き気や頭痛などの症状がみられるときは、中等度の熱中症の可能性があります。治療を受ける必要があるため、すみやかに医療機関へ向かいましょう。
また、意識障害やけいれんがみられるときは重症の熱中症の可能性があります。緊急に治療を受ける必要があるため、迷わず救急車を要請しましょう。[1][2]
熱中症予防のための対策
熱中症を防ぐには、日頃から予防のための対策を取ることが大切です。夏などに高温多湿の環境にいるときは、次のことを意識して対策しましょう。
水分補給
熱中症の発症リスクを下げるには、発汗量に見合った水分補給をすることが大切です。
水分は一度に大量に飲むと尿として排泄されてしまうため、こまめに摂取しましょう。夏であれば30分に1回、50~100mlを目安にします。[1][2]
水分補給は喉が渇く前のタイミングでおこないましょう。喉が渇いてから水分を取るのでは、遅いと言われています。喉が渇いた時点ですでに脱水が始まっているからです。
またアルコールやカフェイン入りの飲み物をとることは水分補給になりません。それらの飲料には水分をおしっことして排出するのを促す作用があるためです。
汗をかいたときは、水分と一緒に塩分の補給も忘れないようにしましょう。
熱中症を予防しようと一度に大量の水分をとると血液が薄まり、身体のミネラルバランスが崩れる原因にもなり、熱中症の原因となります。[1][2]
塩飴や梅干しを持ち歩けば、水分補給時に塩分を一緒にとることができます。スポーツドリンクには適度な塩分が含まれていますが、糖分やカロリーが気になる人は飲む量に気を付けましょう。
関連記事:熱中症を予防する方法を詳しく解説!カラダを守る4つの心得
適切な服装
気温も湿度も高い夏は、風通しの良い涼しい服装で過ごしましょう。
締めつけの強い服を着ていると熱がこもりやすくなるため、身体の体温が上がりやすくなります。襟もとをゆるめ、女性であればスカートなどゆったりした服装で過ごしましょう。
また衣類の素材は、吸汗性や速乾性の高い素材を選ぶのがよいでしょう。炎天下外出するときは、黒色など濃い色の服を着るのを避ける必要があります。
黒色など色の濃い衣類は、輻射熱(ふくしゃねつ)を吸収しやすい特徴があるためです。
衣類と合わせて帽子や日傘を適宜使用するのもおすすめです。外出の際には帽子をときどき外して、こもった熱を逃がしたり汗の蒸発を促したりしましょう。[1][2]
環境
熱中症を予防するには、高温や多湿の環境を避けることが大切です。屋内にいても、室温が上がれば熱中症のリスクがあります。
近年、節約志向の高まりもあり、電気代節約のために冷房の使用を控える人も多くいます。しかし支出を気にして健康を害するのは意味がありません。
健康のために、必要時にはクーラーを使用することが大切です。携帯扇風機を使用したり、保冷剤を使ったりするのも体温管理に役立ちます。
暑さ指数(WBGT)・熱中症警戒アラートの活用
熱中症になるリスクが高いかどうかを知るのに役立つのが「暑さ指数(WBGT)」と「熱中症警戒アラート」です。熱中症になりやすい日や時間帯を知るためにこれらの情報を活用しましょう。
暑さ指数は「熱中症指数」とも呼ばれており、ヒトが感じる熱をあらわしたものです。
正確には「湿球黒球温度(Wet Bulb Globe Temperature:WBGT)といい、気温・湿度・輻射熱・風を考慮した指標を用います。[1][2]
上記の数値が示すように、暑さ指数(WBGT)が28℃以上になると、熱中症のリスクが高まります。
熱中症警戒アラートは、熱中症になる危険性を呼びかけるもので、前日17時頃から当日朝5時頃までに、1日2回発表されます。
2024年からは、熱中症アラートよりもさらに危険度が高くなる「熱中症特別警戒アラート」の発表も開始しています。
各アラートの発表があるときは、外出や屋外の運動を避け、水分と塩分の摂取を意識しておこなうようにしましょう。[4]
熱中症に関するよくある質問
ここでは熱中症に関するよくある質問とその回答について解説します。
熱中症で吐き気がしたらどうすればいいですか?対処法は?
吐き気がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
吐き気がみられる熱中症は、体の中で血液の流れが滞っており、胃などの消化器器官にも影響が出ている状態です。
吐き気により嘔吐してしまうリスクもあり、口から水分や塩分を摂取することができません。補水液を点滴し、体に不足した水分と塩分を補う必要があります。[1][2]
熱中症になると吐くのはなぜ?
中等度の熱中症では、消化器器官に十分な血液が行き渡らなくなります。そのため胃などの消化器官は正常な機能を果たせず、吐き気や嘔吐などの症状があらわれます。
また塩分不足による血液中のミネラルバランスの変化も嘔吐の要因になります。
まとめ
熱中症は高温多湿の環境のもとで、身体の水分や塩分が不足し、血液の循環や体温調節が上手くいかなくなることで起こる症状です。
熱中症は重症度ごとにあらわれる症状があり、吐き気は中等度の熱中症でみられます。
熱中症は急激に症状が進行することがあるため、重症度に合わせた適切な処置を取ることが大切です。
とくに熱中症により吐き気がみられるときは、すみやかに医療機関を受診する必要があります。記事内で紹介した内容を参考に、熱中症の吐き気に対する処置や予防に努めましょう。
熱中症での吐き気の場合、嘔吐するとさらに脱水症状が進行して命にかかわる重度熱中症に悪化することがあります。
家族が熱中症になって吐き気が治まらない、脱水のせいかぐったりしはじめたなど、気になる症状があらわれたら自宅で熱中症診察・処置ができるファストドクターに早めにご相談ください。
自宅に医師がうかがうため、涼しい部屋で待ちながら移動ナシで診察を受けることができます。
まずは電話で現在の症状をお聞かせください。
参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。