熱中症による頭痛を速攻で治す方法はある?対処法について解説

公開日: 2024/06/24 更新日: 2024/06/25
炎天下にいたあとに頭痛があらわれたら、熱中症が疑われます。ズキズキする痛みはつらいため、早く治したいですよね。 頭痛は、熱中症の重症度(軽症・中等症・重症)のうち中等症に入り、基本的には医療機関への搬送が推奨されるほどの症状です。放置すると命に関わることもあります。 この記事では、熱中症による頭痛を早く治す方法があるのかどうか、医療機関を受診する目安や、自分たちでできる対処法について説明します。 熱中症による頭痛のリスクを正しく理解し、適切に対応できるようにしましょう。
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熱中症による頭痛の治し方|速攻で効く方法はある?

熱中症による頭痛を早く治したいと思う方は多いでしょう。しかし、頭痛を速攻で治す方法は残念ながらありません。

頭痛を治すには、医療機関で適切な処置を受けたり、身体を冷やすなどの対処をしたりする必要があるためです。

熱中症による頭痛の対処方法を、重症度別に詳しく説明します。

意識障がいがある、応急処置での改善がない場合は病院へ

熱中症の重症度は、軽いものから順に1度から3度に分けられます。

頭痛は2度(中等症)の症状で、意識障がいや、応急処置をしても改善がない場合は早急に病院を受診しましょう。

以下は、熱中症の症状と重症度を分類した表です。[1]

 

症状

治療

臨床症状からの分類

対応

1度(軽症)

(応急処置と見守り)

めまい・立ちくらみ・生あくび・大量の発汗・筋肉痛・こむら返り


意識障害を認めない

通常は現場で対応可能

→冷所での安静・体表冷却・経口的に水分とNaの補給

熱けいれん

熱失神

軽症の症状が徐々に改善している場合のみ、現場の応急処置と見守りでOK







中等症の症状があらわれる、または軽症にすぐに改善がない場合、すぐ病院へ搬送(周囲の人が判断)

熱疲労

2度(中等症)

(医療機関へ)

頭痛・嘔吐(おうと)・倦怠感(けんたいかん)・虚脱感(きょだつかん)・集中力や判断力の低下

医療機関での診察が必要

→体温管理・安静・十分な水分とNaの補給(経口摂取が困難なときには点滴にて)

3度(重症)

(入院加療)

下記の3つのうちいずれかを含む


  • 中枢神経症状(意識障害・小脳症状・けいれん発作)

  • 肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)

入院加療(場合により集中治療)が必要

→体温管理(体表冷却に加え体内冷却・血管内冷却などを追加)

呼吸・循環管理・DIC治療

重症かどうかは救急隊員や病院到着後の診察・検査により診断される

熱射病

  • 血液凝固異常(急性期DIC診断基準(日本救急医学会)にてDICと診断)⇒3度の中でも重症型

とくに、頭痛が強くなっている、意識がおかしい、自力で水分や塩分の補給ができないといった症状がみられれば、医療機関への搬送が必要です。

状況によっては救急車を呼ぶことも視野に入れておきましょう。

意識がはっきりしている場合は熱中症の対策を

頭痛はあるけれども意識がはっきりとしている場合は、次のような熱中症対策をおこないます。[2][3]

  • クーラーの効いている屋内や、風通しのよい日陰などへ移動する

  • 衣服をゆるめて風通しをよくする

  • コンビニや自動販売機で冷たい水や氷を買い、太い血管のある部位(首・わき下・太もものつけ根)を中心に冷やす(皮膚を水で濡らしてうちわや扇風機であおぐのも有効)

  • スポーツドリンク・経口補水液・食塩水(1Lの水に1~2gの食塩)などを摂取する

熱中症の症状は短時間で変化します。

暑い中で過ごしたあとに「何か変だな」と感じたら、すぐに周りの人に伝えるようにしましょう。

周りの人は、熱中症を起こした方の様子に変化がないかを注意深く観察したり、水分補給するよう声をかけたりする必要があります。

繰り返しになりますが、このような対策をおこなっていても症状が改善しない場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

熱中症の頭痛にロキソニンを飲んでも大丈夫?

ロキソニンは使用しない方がよいでしょう。

なぜなら、熱中症で頭痛が起こる仕組み(高度脱水と循環不全によって生じる)とロキソニンが痛みを和らげる仕組み(炎症のもとになる物質を阻害する)は異なるため、根本的な解決にはならないからです。

また、ロキソニンの副作用として、腎臓に入る血液量を減らして、腎障害を起こすというものがあります。

熱中症の脱水状態でロキソニンを服用すると、腎障害のリスクを高めることにもなりかねません。

基本的に熱中症に対する対策(室温を涼しく、身体を冷やす、水分摂取する)をおこない、改善がなければ病院を受診しましょう。

そもそも熱中症とはどのような病気?

熱中症とは、暑さに身体が適応できないことで起こる、高体温やめまい、けいれんなどのさまざまな身体の状態の総称です。[4]

以下の3つの項目を満たすと、熱中症と診断されます。

  1. 暑熱(しょねつ)環境にいる、あるいはいたあとに起こる

  2. めまい・失神(立ちくらみ)・生あくび・大量の発汗・強い口渇感・筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)・頭痛・嘔吐(おうと)・倦怠感(けんたいかん)・虚脱感(きょだつかん)・意識障害・けいれん・せん妄・小脳失調・高体温などの諸症状がある

  3. 感染症・薬の副作用による高体温・甲状腺の疾患など、他に原因となる疾患がない

熱中症は、症状の軽いものから順に、1度・2度・3度に区分され、1度(めまい・こむら返りなど)の症状が発生した初期の段階で対処することが大切です。

なぜ熱中症になるの?

熱中症は、体温の調節ができなくなることで引き起こされます。[5]

通常、体内に熱がたまると、人の身体では体外に熱を逃がそうとする働きが起こります。

熱を逃がす方法は、熱放散(ねつほうさん)と気化(きか)の2種類です。

熱放散

  • 心拍数を高めたり血管を広げたりして体表面の血流を上げ、皮膚から熱を逃がす

  • 風によって体表面から熱を逃がす効率を上げる

気化

汗が蒸発するときに皮膚表面から熱を奪う

気温が高いと、熱放散が起こりにくくなります。

その場合は汗をかくことで熱を下げますが、汗を大量にかき続けると水分や塩分も体内から減少し脱水状態になります。

体温が上がるのは「脱水状態→血流が悪くなる→体外に熱を逃がせない」ことが原因です。

大事な臓器に血がめぐらなくなるため、頭痛や倦怠感などの熱中症症状があらわれます。

熱中症の人への対処法

熱中症と思われる人を見つけた、または一緒にいた人が熱中症になった場合には、以下の流れで対応しましょう。

1.意識を確認し、はっきりしないときは救急車を呼ぶ

めまい・筋肉痛・頭痛などを訴えていたら声かけし、意識があるかどうかを確認します。

反応がはっきりしない・呼びかけに応えないなどの症状があれば、すぐに救急車を呼びましょう。そのあと涼しい場所へ移動し、救急車が到着するまでの間、2以降の応急処置をします。

意識がはっきりしている場合も、涼しい場所へ移動し、2以降の対応をしてください。

2.衣服をゆるめる

涼しい屋内や風通しのよい日陰に移動したら服をゆるめます。

ネクタイ・ベルト・ボタンなどもはずし、身体の表面から熱を逃がせるようにしましょう。

女性の場合は下着をゆるめる必要があるため、誤解を招かないよう、女性の方に手伝ってもらえるとよいですね。

3.身体を冷やす

熱中症を重症化させないためには、できるだけ早く身体を冷やすことが大切です。

冷たいペットボトルや氷のうなどがあれば、首・脇の下・太もものつけ根など、太い血管の通っている場所を集中的に冷やしましょう。

水に濡らしたタオルを腕や足に巻きつけたり、うちわで風を送ったりすることでも、身体を冷やせます。

4.自分で飲み物を飲ませる

意識がはっきりしていて自力で水を飲める場合は、スポーツドリンクや市販の経口補水液など、塩分を含む飲み物を飲ませましょう。

食塩水(水1Lに塩1〜2g)や、手作りの経口補水液でもかまいません。

経口補水液は、以下の材料を混ぜるだけで完成します。[6]

  • 水1L

  • 砂糖大さじ4+1/2杯

  • 塩小さじ1/2杯

ただし、意識がはっきりしない、自力でペットボトルの蓋を開けられないなどの場合は、無理に水分をとらせないようにしましょう。

また、コーヒーやアルコールなどは、脱水を重症化させるので飲ませないようにします。

水分がとれ、症状がよくなってきたら帰宅しても大丈夫ですが、できれば誰かが付き添い、翌日まで様子をみる方が安心です。

水分と塩分をとらせても症状がよくならない場合、倒れたときのことをよく知る人が付き添って医療機関を受診し、発症時の状況を詳しく伝えましょう。

熱中症と頭痛の関係

暑い環境にいたことで頭痛やめまいなどの症状がでた場合は、熱中症を疑うようにしましょう。

熱中症の症状にはさまざまあり、症状の軽いものから順に「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」と病名がついています。[7]

頭痛は「熱疲労」の症状の一つです。

熱疲労は以下の流れで引き起こされます。

  1. 暑い環境下に長時間さらされたり炎天下で運動したりすることで、たくさん汗をかき水分と塩分を失う

  2. 水分と塩分を失うことで循環血液量が減少し(脱水)、脳や心臓など重要臓器への血流が不足する(循環不全)

熱疲労の主な症状は以下のとおりです。

  • 頭痛

  • めまい

  • 吐き気

  • 嘔吐(おうと)

  • 脱力感

どれも風邪や胃腸炎などを起こしたときによくみられる症状のため、熱中症とは気づかないこともあります。また、軽度の脱水状態が数日続き、ある日強い症状を発症する場合も。

熱中症が原因の頭痛や吐き気などは、基本的には医療機関への搬送が推奨されている症状です。軽く考えずに、身体を冷やす、水分をとるなどの対応をしましょう。

よくある質問

ここからは、熱中症による頭痛のよくある質問についてまとめました。

頭痛は、風邪・肩こり・片頭痛など、日常的によくみられる症状のため軽く考える方も多いです。

しかし、熱中症による頭痛は対応を間違えると命に関わることもあるため、以下を確認して適切に対処できるようにしましょう。

熱中症で頭痛がするときはどうすればいいですか?

すぐに涼しい場所へ移動し、水分・塩分をとる必要があります。自宅であれば、室温を涼しいと感じる温度に設定しましょう。

熱中症の頭痛は、熱中症の症状の中でも中等度(医療機関への受診を推奨)の症状です。

身体を冷やす、水分や塩分の補給をするなどの処置をしても症状が改善しない・悪化する場合は、医療機関への受診をおすすめします。

熱中症にロキソニンを飲んでもいいですか?

ロキソニンやバファリンなどの、市販の解熱鎮痛薬を飲んで症状をおさえることはおすすめできません。

熱中症で頭痛が起こる仕組み(高度脱水と循環不全によって生じる)と、ロキソニンが痛みを和らげる仕組み(炎症のもとになる物質を阻害する)は異なり、熱中症の根本的な解決にはならないからです。

また、場合によっては副作用として腎障害を起こす可能性もあります。

熱中症による頭痛には、熱中症に対する対策(室温を涼しく、身体を冷やす、水分摂取する)がもっとも重要です。

基本的には医療機関への受診が推奨される状態のため、改善がない場合にはすぐに医療機関で専門的な処置・治療を受けるようにしましょう。

暑い日に頭痛がするときは水分補給をするべきですか?

暑い日に頭痛が起こった場合、急いで水分と塩分の補給をするべきです。

水分と塩分が大量に失われて脱水が 起こり 、体中の血液量が減っていることが頭痛の原因 です。

水分補給には、水分と塩分の吸収されやすい経口補水液がとくにおすすめですが、スポーツドリンクでもかまいません。

熱中症になった夜に頭痛が起こることはありますか?

昼間暑い環境下にいたあと、日中には症状があらわれなかったのにもかかわらず、夜になってから頭痛が起こることがあります。

熱中症には、労作性熱中症と非労作性熱中症とがあり、徐々に発生するのはおもに非労作性熱中症です。 [8]

労作性熱中症と非労作性熱中症の違いをまとめました。

 

発症しやすい人

発症する場所

発症の仕方

労作性熱中症

若年~中年

屋外・炎天下

数時間で急激に発症

非労作性熱中症

高齢者

屋内

数時間かけて徐々に発症

高齢者の中には、クーラーをかけずに連日過ごし、寝ている間に熱中症になる方も少なくありません。

夜間に発症した熱中症による頭痛も、日中の場合と同じく、基本的には医療機関での受診が推奨されます。

「頭痛はあるけれど夜間診療を受けるべきか悩む」「頭痛がひどくて動けない」という方は、東京消防庁救急相談センター(♯7119)へ電話して、救急車を呼ぶべきかどうかもあわせて指示をあおいでください。 [9]

(※♯7119以外の番号で救急電話相談を受けている地域もあります [10]

熱中症の頭痛は何日で治りますか?

何日で治る、という根拠のあるデータはありません。

頭痛は熱中症の重症度でいくと2度にあたりますが、意識障害がなければ「冷やす」「水分をとる」といった適切な処置をおこなうことで、その日のうちに回復するでしょう。

頭痛や吐き気など 重症度 2の方が入院した場合は、2日間で退院することが多い というデータがあります。一方で 10日以上入院する方もい るため、年齢や併存疾患によって回復時期には差があるといえます 。 [11]

まとめ

今回は、熱中症による頭痛を 速攻で治す方法があるのかどうか、医療機関を受診する目安、応急処置の方法など について解説しました。

残念ながら、熱中症による頭痛を速攻で治す方法はありません。意識レベルに応じた対処をしましょう。意識がはっきりしない場合や応急処置で改善しない場合は、すぐに医療機関へ搬送しましょう。

意識がはっきりしている場合は、次の対策をとり改善を待ちます。

  • 涼しい場所へ移動する

  • 衣服をゆるめて風通しをよくする

  • 太い血管のある部位(首・わき下・太もものつけ根)を中心に冷やす

  • スポーツドリンク・経口補水液などを摂取する

熱中症の症状は短時間で変化します。

周りの方は熱中症を起こした方に付き添い、注意して様子をみましょう。

ロキソニンなどの解熱鎮痛薬は効果が期待できず、副作用を助長する可能性があるため飲まないことをおすすめします。

熱中症による頭痛は、放っておくと命に関わることがあるため「ただの頭痛」と放置せずに、正しい対処をしましょう。

看護師に現在の症状を相談してみませんか?

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もし、ご家族やご自身の体調でご不安な点がありましたら、ファストドクターを頼ってください。

参考文献

[1]環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」p.20

[2]環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」p.24-26

[3]環境省「夏季のイベントにおける熱中症対策ガイドライン2020」p.41-43

[4]日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」p.7

[5]環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」p.3

[6]厚生労働省「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」p.40

[7]松本孝朗 熱中症とは(中京大学スポーツ科学部スポーツ健康科学科)

[8]環境省 熱中症の発生機序および予防・対処法(平成26年度環境省熱中症に係る自治体等担当者向け講習会資)p.7

[9]東京消防庁 熱中症と合わせて「♯7119」を理解しよう

[10]総務省消防庁 救急車の適時・適切な利用(適正利用)

[11]三宅 康史ら 本邦における熱中症の実態

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