熱中症の症状に頭痛はある?暑さで頭痛が起きる原因
熱中症の症状のひとつに、頭痛があります。
暑さで頭痛が起こるおもな原因は、脳への血流が低下することです。
熱中症で脳への血流が低下する理由として以下があげられます。[1]
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からだの表面に血液がとどまり、血流量が減少する
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大量の発汗によって水分や塩分が不足する
人間のからだは熱を下げるために、からだの表面から熱を逃がそうとします(熱放散:ねつほうさん)。
そのため、からだの表面に多くの血液がとどまり、全身をめぐる血液量が減少します。
結果として、脳への血流も少なくなり、頭痛が引き起こされるのです。
また、暑いなかで仕事やスポーツなどをすると、からだの内部の体温を下げようと大量に汗をかきます。
これは、汗が皮膚から蒸発するときに熱をうばうことで、体温が下がるしくみです(気化熱:きかねつ)。
この過程でからだの水分や塩分が失われ、脳へ届く血液の量が普段より少なくなり、頭痛が起こります。
つまり、暑さによってからだの表面に血液がとどまることと大量の発汗が、脳の血流を低下させ頭痛を引き起こすのです。
熱中症の主な症状
熱中症のおもな症状を、重症度別にまとめました。[2]
熱中症による頭痛は、重症度でわけると中等症に該当します。
重症度 |
おもな症状 |
対処法 |
軽症(Ⅰ度) |
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中等症(Ⅱ度) |
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重症(Ⅲ度) |
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それぞれくわしく見ていきましょう。
関連記事:熱中症の症状チェック|頭痛も熱中症のサイン?治し方も解説
初期症状(めまいや失神、こむら返り)
熱中症の初期(軽度)おもな症状として以下があげられます。
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失神
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めまい
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立ちくらみ
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大量の汗
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筋肉痛
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こむら返り
熱中症の初期の段階では、軽い脱水症状がおもにあらわれます。
からだの水分や塩分が不足し、一時的に血圧が低くなってからだが酸素不足を起こしている状態です。
涼しい場所に移動し、水分や塩分を補給すれば、数十分で症状が改善するケースが多いです。
関連記事:熱中症の初期症状は?判断方法と間違えやすい他の病気も紹介
中度の症状(頭痛や吐き気)
医療機関の受診が必要な中等症の症状は、以下のとおりです。
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頭痛
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嘔吐
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だるさ
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集中力の低下
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判断力の低下
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やる気がおきない(虚脱感)
中等症の場合、軽症よりも脱水が進行しています。
この段階まで症状が進行すると、医療機関の受診が必要です。ただし、強いだるさや判断力がにぶくなっている場合、自力で医療機関にいけないがあります。
そのため、周囲の人に助けてもらいながら、医療機関を受診するようにしましょう。
関連記事:熱中症で頭痛が出るのはなぜ?治し方や頭痛薬を飲んでいいのかも解説
熱中症の頭痛は強い脱水により引き起こされるため、頭痛薬が効きません。
このとき早く脱水から回復することが重要で、点滴などの処置が必要になるケースも。
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重度の症状(意識がない、まっすぐ歩けない)
重度の症状(熱中症重症度Ⅲ度)は以下のとおりです。
熱中症によって以下の症状がでていたら、すぐに救急車をよびましょう。
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意識障害(呼びかけても反応がない、言動がおかしい)
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けいれん
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手足の運動障害
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高体温(40℃以上)
熱中症が重度になった場合、体温調整ができずにからだの中の温度が高くなりつづけ、脳の温度があがって、脳の働きが低下します。
脳の働きが低下することで、意識障害やけいれんなどのいわゆる「熱射病(ねっしゃびょう)」の状態に至ります。[1]
意識障害は、言動がなんとなくおかしかったり、自分の名前が言えなかったりする軽度のものもあり、程度はさまざまです。
そのため、周りの人がよく様子を観察して、いち早く変化に気づくことが大切です。
また、炎天下での仕事やスポーツでは、衣服や体調などの条件によっては短時間で発症することもあるため、よりいっそうの対策をとりましょう。[1]
熱中症の頭痛のよくある質問
熱中症の頭痛に関して、よくある質問にお答えします。
熱中症の頭痛を速攻で治す方法はある?
熱中症を早く治す方法は、以下の3つです。
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水分や電解質(塩分)を補給する
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涼しい場所でからだを冷やす
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足を高くしてあおむけに寝る
これらの対応をしても頭痛がおさまらない場合は、迷わず医療機関を受診してください。
くわしく解説します。
1.水分や電解質(塩分)を補給する
熱中症の頭痛を早く治したいときは、水分だけでなく塩分も一緒にとりましょう。
その理由は、水だけ飲むとからだの塩分濃度がうすまってしまい(低ナトリウム血症)、さらに症状を悪化させるリスクがあるためです。
低ナトリウム血症になると、吐き気や嘔吐、からだのだるさ、筋肉のこむら返りなどの症状があらわれます。
重症化すると入院が必要になることもあるため、水分と塩分をバランスよくとり、低ナトリウム血症を防がなければなりません。
具体的にいうと、経口補水液が水分と塩分をバランスよくふくんでいるため、頭痛を早く治す効果が期待できるでしょう。[2]
目安として100mlあたりナトリウム(塩分)が40〜80mgふくまれているものが、水分をからだにとどめてくれるため、効率的です。[2]
こうしたことから、水分と塩分を同時にとることが頭痛を早く治すことに有効です。
2.涼しい場所でからだを冷やす
からだにこもった熱をさげるために、涼しい場所でからだを冷やしましょう。
熱中症による頭痛は、からだの熱のこもりがひとつの原因です。
そのため、からだの中の熱を下げなければなりません。
まず、日陰やクーラーのきいた室内などの涼しい場所でからだを休めます。
そして氷水や保冷剤などを、太い血管のある部位にあててからだを冷やしましょう。
冷やす部位は、以下のとおりです。
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首の両側
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わきの下
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足の付け根の前面
これらをおこなうことで、皮膚をとおして冷やされた血液が全身をめぐるため、からだを効率的に冷やし、頭痛の軽快が期待できます。
3.足を高くしてあおむけに寝る
足を高くしてあおむけに寝ることが、熱中症を早く治すために有効です。
熱中症による頭痛は、からだの血液量が少なくなる脱水状態でおこります。
つまり、脳の血流が通常の状態に戻れば、頭痛の改善がのぞめます。
具体的にいうと、足を10cm程度高くすることが効果的です。[3]
足を高くすることで、心臓への血流がよくなって血圧が上がり、脳への血流を改善させる効果が期待できます。
そのため、水分補給やからだを冷やすことなどの対策をしたうえで、足を高くしてあおむけに寝ることが効果的です。
関連記事:熱中症による頭痛を速攻で治す方法はある?対処法について解説
熱中症の頭痛で解熱剤や頭痛薬は飲んでいい?
熱中症による頭痛では、個人の判断で解熱剤や頭痛薬は使用しないでください。
熱中症により頭痛が起きているとき、からだは強い脱水状態をおこしています。
この時に解熱剤や頭痛薬を飲むと腎臓に負担をかけるおそれがあるのです。
とくに、ロキソニンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用すると腎臓への血流がさらに悪くなり、最悪腎障害を引き起こすリスクがあります。[4]
解熱剤や頭痛薬が効果を発揮するのは、あくまでも炎症による痛みや発熱です。
万が一解熱剤や頭痛薬を飲んでしまった場合はすぐに服用を中止してください。
熱中症が疑われる場合は、自己判断で薬を服用せず、適切な熱中症対策をおこないましょう。
熱中症の頭痛に頭痛薬は効かず、かえって悪化することがあります。
もし現在熱中症のような頭痛がするならファストドクターにお電話ください。
ファストドクターは毎年熱中症の頭痛などに対応しており、夜間や休日でも自宅で診察・点滴治療が受けられます。
些細な症状でも判断をあおぎたい場合や、診察の受付をご希望の場合はアプリの「電話で相談・依頼する」ボタンからご相談ください。
熱中症かもしれないのにロキソニンを飲んでしまったらどうする?
頭痛の原因が熱中症の可能性があるにもかかわらずロキソニンを飲んでしまったら、体調変化に気を配りながら水分や塩分補給をしましょう。
前述したとおり、解熱剤や頭痛薬は脱水状態のときに飲むと、腎臓の血流を減らして腎臓に負担をかけるリスクがあります。
しかし、一度ロキソニンを飲んだ程度では腎障害の症状はあらわれないでしょう。
誤ってロキソニンを飲んでしまい、頭痛以外の症状があらわれたり、頭痛がなかなか治らなかったりする場合は医療機関を受診することが望ましいです。
熱中症の頭痛は何日で治る?
熱中症による頭痛の回復期間は個人差が大きく、明確なデータはありません。
しかし、水分や塩分の補給、からだを冷やすことなど、適切な対処がとれれば多くは24時間以内に改善するといわれています。
熱中症が重篤である場合、熱中症の「後遺症」として頭痛が数週間~半年、長くて数年つづくこともめずらしくありません。[5]
このように、熱中症の重症度や個人の状態によって頭痛の回復期間は大きく異なる可能性があります。
熱中症になった翌日以降もなかなか改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。
熱中症の頭痛が治らない場合どうする?
「涼しい場所で休息をしたり水分や塩分をとったりしているのに、頭痛が治らない」というときは、すぐに医療機関へいきましょう。
適切な対処法をとっても症状の改善をみとめない場合は、脱水症状が進行している可能性が高く、医療機関での治療が必要だからです。
治らない頭痛をそのまま放っておくと、さらに状態が悪化し、入院が長期になったり後遺症が残ったりするリスクが高まります。 [5]
そのため、熱中症の頭痛がなかなか治らないと感じたら、迷わずに医療機関を受診しましょう。
夜になってから頭痛が起こることはある?
暑かった日の日中は症状なく過ごせたにもかかわらず、夜になって頭痛が起こることがあります。
これは、気づかないうちにゆっくり熱中症が進行し、適切な熱中症対策がとられなかったために生じます。
また、日中に家にこもった熱がうまく外に逃げず、室温が下がらないまま夜に寝てしまうことで、熱中症を引き起こすことも少なくありません。[6]
これらは、とくに高齢者のかたに多い傾向です。[7]
高齢者のかたは暑さを感じにくいため、冷房や扇風機を使用したり、適度に水分・塩分をとったりなどの熱中症対策が遅れることがあるためです。
こうしたことから、暑い日中を乗り切っても、こまめな水分や塩分の補給、涼しい環境づくりが夜の熱中症の発症や悪化を防ぐために大切です。
風邪と熱中症の頭痛の見分けかたはある?
風邪と熱中症の頭痛を正確に見分ける方法はありません。
風邪と熱中症は症状が似ているため、見た目や症状だけでは医師でも判別が難しいです。
頭痛の原因が風邪か熱中症かは、血液検査をおこなって初めて正確な判断ができます。
血液検査をおこなうことで、脱水状態や臓器の機能が低下しているかがわかります。
こうしたことから、頭痛の症状だけで風邪か熱中症かの判断はできません。
少しでも熱中症による頭痛の可能性がある場合は、医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。
まとめ
熱中症による頭痛は、脱水による脳の血流低下がおもな原因です。
熱中症によって頭痛を感じたら、早く改善するために水分と塩分の補給や涼しい場所での休息をしましょう。
腎臓への負担が大きいため頭痛薬の使用はひかえ、症状が改善しない場合は迷わず医療機関を受診してください。
正しい知識と適切な対応で、熱中症の頭痛をやわらげ、重症化を防げます。
暑い季節を健康に過ごすために、熱中症対策を心がけましょう。
もしかして熱中症かも...?と思った場合、ファストドクターで受診が可能です。
「病院に行った方がいいの?」などの電話相談だけでも可能ですので、頭痛や吐き気などの中等症状が出ている場合は絶対に様子見をしないでください。
症状のことで相談したい場合は、電話に出た看護師にその旨をお伝えください。
参考文献
[3]めまい、立ちくらみ、失神…熱中症の初期症状に気を付けましょう!|熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
[5]熱中症にかかった翌日 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。