パニック障害の初期症状があらわれるきっかけはあるのか?今できる対処法について解説

公開日: 2025/06/28 更新日: 2025/06/28
「パニック障害かもしれないけど、初期症状ってどんな感じ?」 「初期症状の段階でできるパニック障害の対策ってあるのかな?」 予期せぬタイミングでパニック発作が起こるパニック障害に初期症状があるのなら、できる限り対策したいですよね。 パニック障害の初期症状があらわれるきっかけやタイミングを知ることができれば、対処方法が見つかるかもしれません。 本記事では、パニック障害の初期症状があらわれるきっかけがあるのかどうか、また対処方法や主な治療法について解説します。 初期症状が起こるきっかけを知り、今自分ができる方法で悪化を防ぎましょう。
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パニック障害の初期症状とは

突然理由もなく、強い不安感に襲われるような発作が1回起こったあと、以下のような気持ちが継続したらパニック障害の初期症状を疑いましょう。[1]

  • もっと発作が起こるのではないかという心配が続く

  • 発作により死んでしまう、気を失ってしまうなどの症状が起こらないか心配する

  • 発作を避けようと行動に大きな変化が生じる

初めて症状を経験した際には、多くの人が戸惑ってしまうでしょう。

さらに上記3つの症状が1か月以上続くと、パニック障害だと診断される可能性があります。

早い段階で気づき対処することで、症状が慢性化するのを防ぎやすくなります。

しかしパニック障害の症状があらわれるのは突然であるため、症状が進行してから気づいたというケースも少なくありません。

自分のなかで「おかしいな」と感じたタイミングを見逃さないことが、早期発見への第一歩になります。

今まで感じたことのなかった不安感や恐怖感を抱き、継続するようであれば一度医療機関へ相談してみるとよいでしょう。

パニック障害について詳しい症状を解説

パニック障害では、典型的な身体症状と精神症状があらわれます。[1]

症状の分類

主な症状

身体症状

  • 動悸

  • 胸の痛み

  • 息切れや息苦しさ

  • 吐き気

  • ふるえ

  • 発汗

  • 悪寒または熱感(のぼせ)

精神症状

  • 死んでしまわないかという恐怖

  • 自分がどうにかなってしまうのではないかという恐怖

  • 不安感

  • 離人感(自分の感情や体が他人のもののように感じられる)

  • 現実感消失(周囲の世界が現実ではなく、夢の中にいるように感じる)

身体的にも精神的にも症状がいきなりあらわれると、普段通りの生活ができずに部屋にふさぎ込んでしまうなど生活に大きな制限を感じることがあります。

「また同じような症状が起こったらどうしよう」といった予期不安により、再発への恐れを感じ、人混みや電車などの特定の場所を避けるようになる「広場恐怖」を併発することもあります。

症状が出るタイミングや程度は人それぞれ異なりますが、初期段階でも生活に支障をきたすケースは少なくありません。

症状が起こるきっかけはあるのか

パニック障害は「過去に強い不安を感じた場所や状況」で症状が起きやすくなる傾向があります。

明確な引き金がないまま突然起こることもありますが、実際には予期不安という「発作がまた同じように起きたらどうしよう」と恐怖を感じて症状が引き起こされるケースもあります。

苦手意識のある状況や場所などへ行くことで発作に対する不安感を抱き、症状が起こるきっかけとなってしまうのです。

さらに広場恐怖があると症状が起こるきっかけとなってしまいます。逃げられない、助けを求めにくいといった場所に対して強い不安感を抱きます。

典型的な例として挙げられるのは、電車やエレベーター、橋の上、渋滞中の車内といった閉塞された場所です。

状況だけでなく環境要因がきっかけになることもあり、回避行動の頻度が増え、結果的に日常生活に影響を及ぼすようになります。

パニック障害になりやすい人はどんな人?

パニック障害になりやすいといわれている人に明確な特徴はありませんが、以下の性格の人はパニック障害になりやすい傾向があります。

  • 几帳面で責任感が強い人

  • 感受性が豊かな人

  • 完璧主義でまじめな人

  • パニック障害やうつを治療している家族がいる人

責任感が強いと過度なストレスやプレッシャーを抱え込みやすく、心と身体のオーバーワークにつながってしまいます。

感受性が豊かな人は周りの環境に影響されやすく、雰囲気の悪い空気などを察知し、マイナスな感情に同調してしまう恐れがあります。

完璧主義で自分を追い込みがちな性格もリスク要因です。

家族にパニック障害やうつ病などの精神疾患のある人や、幼少期に心的ストレスを経験している人も発症リスクが高まるといわれています。

また脳の構造は男女でも差があり、症状にも違いが出やすいといわれています。[3]

パニック障害では扁桃体や前頭葉の内側にある島回、上側頭回などの灰白質容積(脳の部分の大きさ)が減る傾向があります。

男性は扁桃体と島回の減少が大きい一方、上側頭回の減少は女性の方が目立つことが報告されました。また視床や小脳、前頭前野は女性特有の減少がみられています。

パニック障害に軽度や中度など症状の強さはあるの?

パニック障害にも症状の程度があり、パニック障害重症度評価尺度で症状の強さを調べることができます。[3]

パニック障害重症度評価尺度はすでにパニック障害だと診断された人が7つの質問に答え、重症度を評価するために開発されたものです。

発作がどれくらい起こるか、どれくらいつらいかを面接で聞き取り、広場恐怖や回避行動、日常生活への影響などを判断します。

軽度では日常生活に大きな支障はなくても、定期的に予期不安や軽い発作を感じることも少なくありません。

中等度になると、発作の頻度が増え、外出や人との接触を避ける傾向が強くなりがちです。

重度になると外出が困難になり、社会生活がほぼ維持できなくなる場合もあります。

早期のうちに症状を見極め、軽度の段階で適切なケアを始めることが、重症化を防ぐポイントです。

「軽いから大丈夫」と放置せず、自分の状態を冷静に観察することが大切です。

パニック障害の初期症状があらわれる原因

パニック障害の初期症状があらわれる背景には、心理的ストレスや生活の変化、体調不良などがきっかけとなることが多いです。

脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、パニック発作を引き起こしてしまうのです。

また脳神経にも大きく影響を及ぼしていると言われています。

大きなストレスがかかると、脳のなかで恐怖を感じる部位である扁桃体が暴走し、逆に恐怖を抑えるための前頭前皮質がうまく働かなくなってしまいます。[4]

その結果、恐怖がどんどん強くなり、不安感や怖いといった感情をコントロールできなくなってしまうのです。

パニック障害の初期症状では、脳にまず変化があらわれるといわれていますが、目に見えるものではないため早期の発見は簡単ではありません。

日常生活のなかで少しでも体や心に違和感を感じたら、早めに医師に相談しましょう。

パニック障害に似た病気(疾患)はあるのか

パニック障害に似た症状を示す病気はいくつも存在し、以下の疾患が挙げられます。

  • PTSD、うつ病、不安障害

  • 心筋梗塞、狭心症、不整脈

  • 甲状腺機能亢進症

  • 過換気症候群

  • 機能性低血糖

  • 更年期障害

精神面だけでなく身体面でも似た症状がみられる病気があります。いずれも動悸や息苦しさ、めまいなど共通する症状を伴うため、自己判断は難しいです。

またパニック障害を発症している人のなかには、もともとうつ病の治療をおこなっている方も多く、うつ病との併発は珍しいことではありません。

医療機関での正確な診断があるまでは確定できないため、できるだけ早めに適切な検査を受け、自分が本当にパニック障害なのか把握しておきましょう。

パニック障害でなく別の疾患であれば、本当に必要な治療へとつなげることができます。

パニック障害の初期でも適用される診断基準

パニック障害の診断には、DSM-5と呼ばれる国際的な診断基準が用いられます。[5]

DSM-5では、広場恐怖を伴うパニック障害と伴わないパニック障害に分かれます。初期症状の段階でも、一定の要件を満たしていれば診断がつくことがあるのです。

【パニック障害の診断】

A)1と2の両方を満たす

  1. 予期しないパニック発作が繰り返される

  2. 1回の発作のあと、1か月以上にわたり「再発への強い不安」「発作による結果の変化(死んでしまうのではないか)」などの心配をしている

B)

広場恐怖が存在する(または存在しない)

C)

パニック発作が薬などの物質や身体疾患による直接的な生理学的作用によるものではない

D)パニック発作が他の疾患では説明できない

  • 社会恐怖

  • 特定の恐怖症

  • 強迫性障害

  • 外傷後ストレス障害

  • 分離不安障害(家や家族から離れることによる不安)

上記の診断のAからDの全てを満たしたときに、パニック障害だと診断されます。

医師は、動機や発汗、窒息感、めまいなどのパニック発作が起こっている方に上記の聞き取りをおこない、パニック障害なのかどうかを判断します。

診断を受け、自分が感じている症状が「気のせい」ではないと気づくことが、適切な支援を受ける第一歩です。

パニック障害の対処方法や治療法

パニック障害の治療には主に「認知行動療法」と「薬物療法」の2つです。認知行動療法では薬物療法とは異なり、すぐに効果があらわれるわけではありません。[6]

しかし発作の頻度を少しずつ減らしていくためにも重要な治療方法だといえるでしょう。

治療法

詳細

認知行動療法

  • 心理教育、症状観察、不安対策技術、認知再構成、暴露療法の5つで構成される

  • 不安を引き起こす考え方のくせを見直し、行動パターンを改善する

薬物療法

  • 抗うつ薬と抗不安薬を使用し、発作の頻度を減らす

  • 副作用には吐き気やイライラがあるが、大部分の症状は消える

  • 抗不安薬は即効性があるが、抗うつ薬との併用は短期間が推奨される

2つの治療方法は併用されることも多く、生活スタイルや本人の希望に応じて治療内容が調整されます。初期症状のうちに適切な治療を始めることで、長期的な安定につながります。

関連記事:パニック障害にはどのような治し方がある?

パニック障害の人に言ってはいけない言葉は?

「気のせいだよ」「頑張れば治るよ」「甘えだよ」といった言葉は、相手を励ますつもりでも逆効果になることがあります。

パニック障害は脳神経の機能が異常をきたして発作を起こす疾患で、本人の意思や努力だけではどうにもならない状態です。

パニック障害で悩んでいる人に対し、努力を促そうとする言葉はかえって孤立感や無力感を強めてしまいます。

「また発作が来るかも」と不安を抱えている人も多くいるため、まずは共感し、寄り添うことが大切です。

症状を否定せずに受け止め、安心できる環境を作ることから始めましょう。

よくある質問

パニック障害の初期症状について、よくある質問をまとめました。

パニック障害の前兆や前触れは?

パニック障害の前兆としては、普段と違う不安感や落ち着かなさから始まります。

その後、浅い呼吸や手の震え、軽いめまいなどがあらわれるでしょう。

一見すると体調不良のようにも感じられ、他の疾患と勘違いされることもあり、見逃されがちな症状です。

気になる症状が何度か続いたときには、そのタイミングや状況を記録しておくとよいでしょう。

自分が不安感を抱くときのパターンを把握することで予防や早めの対処につながります。

パニック障害のなり始めは?

パニック障害になり始めの頃は、寒気や吐き気などから始まることもあるため「風邪かな?」「疲れかな?」と思うことも少なくありません。

症状が進行すると動悸や息苦しさ、胸の痛みといった身体症状が突然あらわれることもあり「このまま倒れるのでは」といった強い不安に襲われるのが典型的な症状といえます。

風邪でもないのに体調に違和感を抱いた際には、なんらかの疾患を疑い、早めに医療機関で相談すれば適切な治療につなげられるでしょう。

軽いパニックの症状は?

軽いパニック症状として挙げられる代表的な症状は以下の3つです。

  • 少し息がしにくい

  • 心臓がドキドキする

  • 気分が落ち着かない

症状は短時間で治まることもありますが、発現頻度が増えてきたり日常生活に支障を感じたりするようになった場合は、早めに専門家へ相談するのがおすすめです。

実際に受診して気のせいであれば安心ですが、他の疾患が発見される可能性も低くはありません。

どの疾患であっても、軽症のうちに対処すれば重症化を防ぐことができます。

まとめ|パニック障害の初期症状を知り早い段階で対策しよう

パニック障害の初期症状に早く気づくことは、悪化を防ぐ大きな一歩です。

動悸や不安感といったサインを「気のせい」で済ませず、自分の体と心の変化に耳を傾けてみましょう。

初期の段階であれば、認知行動療法や生活習慣の見直しだけで改善が見込める場合もあります。

「もしかして」と思ったときは、まず落ち着いて、無理のない範囲でできることから始めてみてください。

そして、必要があれば医療機関のサポートを受けることをためらわないようにしましょう。

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参考文献

[1]パニック障害(パニック症) (患者さんのための資料)

[2]パニック障害における脳構造の変化

[3]パニック障害重症度評価尺度 PANIC DISORDER SEVERITY SCALE (PDSS)

[4]パニック症の神経解剖学的モデルについて

[5]不安障害の診断と治療 パニック障害,社会不安障害,強迫性障害

[6]パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル (治療者用)

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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  • 自傷他害のおそれがある場合
    • 自分を傷つけたいと思う
    • 具体的に死ぬ方法について考えている
  • 身体疾患が強く疑われる場合
    • 高熱がある
    • 呼びかけてももうろうとしている
    • 意識がない
  • 緊急性が認められる場合
    • ここ数日の間で急激に状態が悪化している
    • 食事や水分をとることができない
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