ノロウイルス感染症のピーク時はどんな症状が出る?
ノロウイルスに感染してから症状が出るまで1~2日の潜伏期間があります。
その後症状が出始めた1日目と2日目が症状のピークです。この期間は、下痢や腹痛、嘔吐がひどく、最もつらい時期です。食欲も低下し食事がとれないこともあります。
多くの場合、突然の嘔吐から症状が始まり、数回から数十回吐くこともあります。
嘔吐がひどいと、焦って病院に行かなくてはと思う人もいますが、嘔吐はウイルスを体外に排出するために必要なことなので焦る必要はありません。
2~3日経つと、徐々に嘔吐や下痢も落ち着いてきて、食欲も出始めるでしょう。
ただし、食事が摂れない時は脱水に注意する必要があります。水分をとっても吐いてしまうこともありますが、それでも水分補給だけは意識して行いましょう。
中には発熱がみられる人もいますが、多くの場合高熱にはなることはありません。熱が高くて辛い時は、解熱剤を服用し安静にしましょう。
発熱も、他の症状と同様に2~3日で軽快します。
このように、症状は数日でおさまりますが、ノロウイルスそのものは1週間~1カ月程度ふん便中に排出されます。
そのため、他者への感染を防ぐためにも排泄後の手洗いや掃除、消毒などを徹底して行うようにしましょう。
ノロウイルス感染症の特徴
ノロウイルスは感染性胃腸炎や食中毒として発生します。最も感染者が多いのは11月~2月頃の冬の寒い時期です。
これは、ノロウイルスが低温や乾燥に強いという特徴があるからです。
そのため、特にこの時期に下痢や嘔吐などの症状があったときはノロウイルスの可能性を考えて処理をするように心がけましょう。
さらに非常に感染力が強いという特徴もあります。
特にノロウイルス感染者のふん便や嘔吐物からは大量のウイルスが排出されているため、汚物処理には十分な注意が必要です。
また、ノロウイルスに対しては予防接種や治療薬がありません。
感染した場合は、症状を緩和させるための薬や脱水予防を行いながら改善を待ちます。
子どもやお年寄りは特に注意
子どもや高齢者は、体力や免疫力が低いため、ひどい下痢によって脱水を起こすことがあります。そのため、子どもや高齢者の場合は特に注意が必要です。
さらに嘔吐物が誤って気管に入ってしまい窒息や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。
ひどい下痢や嘔吐などの辛い症状に注目しがちですが、むしろこれはウイルスを排出するために必要なことです。
しかし脱水は、水分とともにナトリウムやカリウムといった電解質が失われてしまうことで、心臓などの様々な臓器の働きに影響を与えます。
子どもやお年寄りは特に水分補給を積極的に取るようにしましょう。
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症状に応じて医師が往診またはオンライン診療で診察をいたします。
どんな対策をしたらいいの?
ピーク時の症状は分かったけど、具体的にどう対策をすれば良いの?と思いますよね。
前述したように、ノロウイルス感染症はウイルスそのものに有効な薬はなく、症状を緩和させる対症療法が行われます。
重症化している場合を除いて、基本的には自宅での療養が必要です。
そこで症状を悪化させずに少しでも早く回復できるための自宅でできる対策について詳しく解説します。
こまめな水分補給
ピーク時は下痢や嘔吐の症状が強く出るため、脱水症状を引き起こしやすくなります。
ご飯を食べることはできなくても、水分補給だけはこまめに行うようにしましょう。
下痢や嘔吐によって、水分だけでなく体内のミネラルも排出されてしまうので、水よりも経口補水液やスポーツドリンクがおすすめです。
子どもや高齢者、免疫力や体力がもともと低下している人などは、下痢や嘔吐で体力が奪われると水分補給もできないことがあります。
そのようなときは、点滴などによって水分や電解質の補給を行うことができるため、すぐに医療機関に受診しましょう。
食事は少量を複数回に分けて摂る
普段通りの食事内容や量だと、吐き気を催したり、胃腸に負担になってしまう可能性が高いです。そのため、消化に良いものを複数回に分けてゆっくりと食べるようにしましょう。
消化に良いおすすめの食べ物は、おかゆやパンがゆ、うどんなどです。白身魚や野菜などを柔らかく煮る料理などもおすすめです。
一度にたくさん食べるのではなく、食べられるときに少しずつ食べると良いです。
ただし、吐き気や下痢の症状がひどい時には無理に食べる必要はありません。
発症から2~3日経って症状が落ち着いてくると徐々に食欲もわいてきます。
ゼリーなど、食べやすいものから少しずつ食べはじめると良いでしょう。
ノロウイルスに感染している時は、無理に栄養を取らなくてはと思う必要はありません。
ウイルスを体外に排出し、脱水にならないように水分をしっかりとっていれば自然と良くなります。
下痢止めは極力使用しない
下痢止めは、腹痛を伴う下痢がある時に効果を発揮する薬です。
腸の動きや収縮が活発に動いているのを抑えて腹痛を改善します。
しかし、ノロウイルスなどの感染性下痢をむやみに止めてしまうと、ウイルスが腸管内に溜まってしまいかえって回復を遅らせることになります。
そのため、まずは整腸剤を服用して様子をみましょう。
整腸剤は、腸の中の善玉菌を増やし腸を健康な状態に戻す働きをします。
腹痛や下痢をすぐにとめるような効果はありませんが、結果的に回復の手助けになります。
基本的に、ノロウイルスの時に下痢止めが処方されることはありません。
しかし、下痢の量や回数が多く脱水症の可能性が高い場合はまれに処方されることがあります。
医療機関で、下痢止め(止痢剤)が処方された場合、必ず医師の指示にしたがって正しいタイミングで服用するようにしてください。
ノロウイルス感染はうつる?
ノロウイルスは感染力の強いウイルスです。そのため、症状がおさまった後も1週間〜1ヶ月ほど体の中に存在し、便とともに排出されます。
症状がおさまった後もしばらくは、周りの人への感染に気をつけるようにしましょう。
二次感染を防止するためには以下の3つのポイントに注意しましょう。
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すばやく適切に処理する
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乾燥させない
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消毒する
3つのポイントについて詳しく解説していきます。
適切な汚物処理を行う
感染者のふん便や嘔吐物の処理を行う際は以下のことに注意しましょう。
これは、家庭や職場などどのような環境でも同様です。
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使い捨ての手袋やエプロン、マスクを着用する
(処理後は袋に密閉して棄てる) -
処理をする人以外は汚物に近づかない
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処理に使用したペーパータオルやおしりふきなどは袋に密閉して棄てる
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効果的な消毒を行う
(次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸水、または加熱処理) -
処理中や処理後には十分な換気を行う
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広範囲の壁や床を清掃する
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処理後には手洗い、うがいを徹底する
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可能であればすぐに着替えを行い、着ていた衣服は洗濯する
汚物が衣類や寝具についてしまった場合の対処方法
洗濯機で汚物が付着した衣服や寝具をそのまま洗ってしまうと、洗濯槽内にウイルスが付着しウイルスが拡散してしまう危険性があります。
まずは下洗いをする必要がありますが、その際には水しぶきを吸い込まないように十分に注意して行いましょう。
下洗いを終えた衣服や寝具は、必ず消毒を行ってください。
消毒の方法は2通りあります。
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塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウムを含む)で消毒する方法
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熱湯消毒する方法
それぞれの方法について解説していきます。
塩素系漂白剤で消毒する場合
塩素系漂白剤は、ノロウイルスに有効な次亜塩素酸ナトリウムが含まれています。
塩素系漂白剤を使用する際は、使用上の注意をよく読んでから使用してください。
手順①:洗面樽やバケツ、大きめのビニール袋などに塩素系漂白剤と水を入れて消毒液を作る。
ノロウイルスには 塩素系漂白剤約0.1パーセント濃度の希釈液が有効です。
※原液濃度が5~6%の塩素系漂白剤を使用する場合、500mlのペットボトル1本の水に10ml(ペットボトルのキャップ2杯)の塩素系漂白剤を入れる。 |
手順②:下洗いしよくすすいだ衣服や布団を、手順①で作成した消毒液につけ置きする。
つけ置きはおおよそ30分程度で良いとされています。
手順③:つけ置き後は十分にすすぎ洗いをする。
すすぎ洗いの後に、高温の乾燥機などを使用すると更に殺菌効果が高まります。
熱湯で消毒する場合
ノロウイルスの消毒には、85℃以上かつ1分以上の熱水選択が効果的とされています。[2]
手順①:洗面樽やバケツに85℃以上のお湯を注ぐ。
手順②:下洗いしよくすすいだ衣服や布団を手順①の湯に1分以上つけ置きする。
手順③:つけ置き後、バケツの湯を一度捨て、よくすすいでから洗濯洗剤でもみ洗いをする。
まとめ
ノロウイルスは冬の感染症の代表的なものの一つです。
感染すると激しい下痢や嘔吐などの辛い症状が現れ、日常生活も困難になってしまいます。
感染後、症状が出始めてから1~2日目が最も症状がひどいピークとなります。脱水や誤嚥などに注意すれば、ピーク後は徐々に症状が緩和してくるので安心してください。
感染力が強いため、1人感染してしまうと家庭内や集団での感染もすぐに広がってしまいます。
正しい対策を行って、重症化や二次感染を防ぎましょう。
ただし、症状が回復しない場合や、水分摂取が困難な場合には速やかに医療機関に受診することをおすすめします。
ご自身やご家族が、嘔吐や下痢だけでなく他の症状にも苦しんでいるときは、ファストドクターの無料相談窓口を頼ってみませんか。
医師が診察を行い、それぞれの持病や年齢、症状などから判断して必要であれば薬を処方します。
参考文献
本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。
具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。