インフルエンザワクチン株(2024-2025)の種類や接種時期について解説

公開日: 2023/12/27 更新日: 2024/11/13
インフルエンザの流行に備えてワクチンの接種を考えている方のなかには 「今年はどういうワクチンなんだろう?」 「接種するならいつがベストなのか?」 と疑問をもつ方もいらっしゃるのではないでしょうか。 マスク着用率、ワクチン接種率の低下などの影響で今年2024年も流行することが予想されています。 この記事では、今シーズン(2024-2025)のインフルエンザワクチン株の内容やどうやって決められているのか、おすすめの接種時期や費用、予算について解説しています。 インフルエンザワクチンの接種を検討している方はぜひ参考にしてください。
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目次

インフルエンザワクチン株(2024-2025)は?

今シーズン(2024‐2025)のインフルエンザワクチン株は表のとおりです。

A型

H1N1

ビクトリア/4897/2022(IVR-238)

H3N2

カリフォルニア/122/2022(SAN-022)

B型

ビクトリア系統

プーケット/3073/2013

山形系統

オーストリア/1359417/2021(BVR-26)

インフルエンザウイルスのワクチンは大きく2つに分かれます

  • A型株(H1N1株とH3N2株)の2種類

  • B型株(山形系統株とビクトリア系統株)の2種類

計4種類のワクチン製造株を培養して製造しているため「4価ワクチン」とよばれています。[1]

インフルエンザワクチン株はどうやって決まっているのか

インフルエンザワクチン株が決まるまでには4段階のステップがあります。

  1. WHO(世界保健機関)より推奨株が発表される

  2. 国内メーカーで増殖性などの製造効率を確認する

  3. 国立感染症研究所で製造効率を含めたワクチン株を検討する

  4. 厚生科学審議会で製造株を検討する

まず毎年2月くらいに、WHO(世界保健機関)からインフルエンザA型、B型で流行しそうな株が複数発表されます。

WHOが発表する株は、日本でインフルエンザワクチンを製造するのに適した株とは限りません。

そこで国内の製薬メーカーが、培養・臨床実績をもとに製造効率のよい株を選びます。この工程には1〜2か月の期間を要すのです。

その後、感染症に関わる研究や情報の収集・解析などをおこなっている国立感染症研究所が、製造効率を含めてワクチンに適した株を順位付けします。[2]

つぎに順位付けの結果をもとに、型ごとひとつの株を決める検討会「厚生科学審議会」がおこなわれます。

厚生科学審議会のメンバーは、国立感染症研究所所長や大学教授などインフルエンザワクチンの専門家です。

ワクチン株の選定では、世界で分離されたウイルス株とワクチン候補株の反応性や、ワクチンの製造効率などを踏まえた総合的な見地から選定されます。[3]

2024-2025年のインフルエンザワクチン供給はどうなっている?

9月5週時点で、2024/25シーズン(令和6年度)の供給量の半数を上回る約1820万本が出荷される見込みです。

2024/25シーズンは2023/24シーズンと比べて供給量は少ないですが、近年の使用量などからワクチンを適切に使用すれば不足は生じない状況と考えられています。

インフルエンザの2024-2025年シーズンはいつからいつまで?

インフルエンザ2024-2025年シーズンは、2024年9月2日から2025年8月31日までです。

毎年流行に合わせて第36週(8月末~9月初旬)から翌年の第35週までの1年間をインフルエンザシーズンとして、情報提供がおこなわれています。[4]

インフルエンザワクチン(2024-2025)はいつから打てる?

インフルエンザワクチンは、9月末〜10月頭くらいからスタートする医療機関が多い傾向にあります。その理由は、ワクチンの供給量の半数を上回るのが9月末くらいであるためです。

ただしシーズンの初めは、インフルエンザワクチンの供給が追い付かない可能性が高いため、予約制にしている医療機関が多くなっています。

ワクチンを早めに打ちたいという方はあらかじめ医療機関に確認するとよいでしょう。[5]

インフルエンザワクチンの有効性について

インフルエンザワクチンは、打ったからといってインフルエンザにまったくかからないようにするわけではありません。

しかし、ある程度発症を予防する効果や、脳炎や肺炎などの合併症や重症化を防ぐ効果があることが報告されています。

 

インフルエンザワクチンは接種したほうがよい?

インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発病や重症化を防ぐ効果があるため接種したほうがよいです。

もしかすると、ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかり「ワクチンは意味がないんじゃないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

たしかにインフルエンザワクチンの発病予防効果は、麻疹・風疹ワクチンのように高くなく、ワクチンを打ったからといって絶対にかからないとはいえません。

しかしある程度インフルエンザの発病を予防する効果があると分かっています。

厚生労働省の報告によれば、6歳未満の小児を対象とした研究で、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%とされています。

ワクチンを接種せず発病した人のうち60%は、ワクチンを接種していれば発病を防げたということです。[6]

またインフルエンザワクチンの最大の効果は重症化を防ぐことです。日本のインフルエンザによる死亡数は214(2001年)〜1818(2005年)人と報告されています。

死亡率はそれほど高くありませんが、入院が必要になるほど重症化したり、死亡したりしてしまう方もいるのです。

ワクチンは発熱やのどの痛みなどインフルエンザの症状を抑えるだけでなく、肺炎や脳症などの合併症・重症化を防ぐ効果があると分かっています。

そのためワクチンは打つほうがよいといえるでしょう。

関連記事:インフルエンザ予防接種は受けるべき?ワクチンの効果や副反応の対処法についても解説

 

とくに接種を推奨する人は?

インフルエンザワクチンの接種が推奨されるのは、小さい子どもや高齢者、妊婦、基礎疾患のある人です。

健康な成人に比べて、肺炎や脳炎などの合併症や重症化するリスクが高いと報告されています。

またインフルエンザワクチンは、周囲への感染を抑える効果もあります。家族に妊婦や高齢者、小さい子どもなど重症化しやすい人がいる場合は、ワクチンを接種することが望ましいでしょう。[7]

インフルエンザワクチンを接種するベストな時期

ベストな時期は「いつです」と明確に示すことはできません。

日本においてインフルエンザは例年12月〜4月頃に流行し、1月末〜3月上旬に流行のピークをむかえるため、10月末〜12月中旬にワクチン接種するのがよいでしょう。

インフルエンザワクチンを接種するタイミングについて、さらに詳しく解説していきます。

いつまでに接種しておくとよいのか

インフルエンザワクチンは、12月中旬までには接種しておくことをおすすめします。

インフルエンザが流行し始めてから接種しようとすると、ワクチン供給が十分でなかったり予約が埋まっていたりして接種できない場合もあるためです。

1月〜3月上旬に年末にかけて流行のピークをむかえることから、遅くとも12月中旬までには接種しておいたほうがよいでしょう。

早すぎる時期に接種したらどうなる?

早すぎる時期にインフルエンザワクチンを打つと、流行がピークのときには抗体がなくなっている可能性があります。

インフルエンザワクチンの予防効果が期待できるのは、接種した2週後(13歳未満の子どもの場合は2回接種した後)から5か月程度と考えられています。

また1か月後をピークに徐々に効果が下がるという報告もあるため、早すぎる時期に接種すると十分な効果を得られない可能性が高くなるのです。

インフルエンザが流行する2週間前に打つのがベストといえます。[7][8]

インフルエンザワクチンに関するQ&A

インフルエンザワクチンについて、多くの方が感じる疑問についてお答えします。

インフルエンザワクチン接種後にお風呂はNGですか?

インフルエンザワクチンを接種したあとにお風呂に入るのはNGではありません。ただし長時間の入浴や高温のお風呂に入ると、体力を消耗してしまいます。

インフルエンザワクチンの副反応の多くは接種してから24時間以内に起こるため、接種当日は体調をみながら入浴時間を短めにするなどの対応をしましょう。

インフルエンザワクチンの予算はどれくらい?

インフルエンザワクチンの予算は、3500円前後です。金額は医療機関によって異なるため、接種を希望する医療機関に直接問い合わせるようにしましょう。

ただしお住まいの市区町村や職場によっては、例のように独自の助成事業をおこなっている場合があります。[5]

【一部公費負担になる市区町村の例】

以下に該当する場合は1,500円の助成金が支給されます。

  • 65歳以上の方

  • 60歳以上65歳未満の方で、心臓、じん臓、呼吸器の機能、又はヒト免疫不全ウイルスにより免疫機能に1級相当の障害のある方

助成の対象や内容については、お住まいの保健所や職場などに問い合わせてください。

インフルエンザワクチンは予約しないとできないの?

インフルエンザワクチンは、予約しないと接種できないわけではありません。

しかしなかには予約が必要、もしくはワクチン供給が安定しないシーズン初めのみ予約が必要になっているところもあるため、医療機関に問い合わせるようにしましょう。

インフルエンザワクチンで副反応は出ますか?

薬に「副作用」があるのと同じように、インフルエンザワクチンでも「副反応」がみられます。

【インフルエンザワクチンでみられる副反応】

ワクチン接種を受けた人の

うち症状があらわれる割合

症状

10〜20%

接種した場所の赤み、はれ、痛み

5~10%

発熱や頭痛、寒気、倦怠感などの全身性の症状

 

これらの症状は2~3日で消失するケースが多いと分かっています。まれではありますがアナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、赤み、掻痒感、呼吸困難など)やショックがみられます。

 

副反応はワクチンを受けたあとすぐに起こることが多いため、接種後30分間は注意して経過観察するようにしましょう。

接種後に異常が認められた場合は、速やかに接種した医療機関に連絡してください。

まとめ|すでにインフルエンザになった人も接種しておくのがベスト

2024年に流行しているインフルエンザだけにいえることではありませんが、1度のシーズンで1回以上感染する人もいます。

インフルエンザの2024-2025シーズンは始まっており、すでにインフルエンザに感染した人も少なくありません。

「もう1回感染したから、今シーズンは平気だろう」と油断すると、再度感染してワクチン接種をしなかったことを後悔するかもしれません。

そのため一度インフルエンザにかかった人でも、ワクチン未接種であれば打っておきましょう。

参考文献

[1]インフルエンザワクチン株

[2]インフルエンザウイルス抗原性解析・系統樹解析

[3]2024/25シーズン向け インフルエンザHAワクチンの製造株について

[4]インフルエンザの流行状況(東京都 2024-2025年シーズン)

[5]【令和6年度】山形市高齢者インフルエンザ予防接種費用の一部助成について

[6]インフルエンザQ&A|厚生労働省

[7]新型インフルエンザワクチン接種事業(平成22年度)に関するQ&A|厚生労働省

[8]Intraseason waning of influenza vaccine protection: Evidence from the US Influenza Vaccine Effectiveness Network, 2011-12 through 2014-15 - PubMed

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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