インフルエンザの治療薬とは?タミフルからゾフルーザまで紹介

更新日: 2025/01/29
「もしインフルエンザに感染したら、どんな薬を使えばいいの?」 「治療薬にはどんな種類があるの?」 インフルエンザが猛威をふるい、薬に関して疑問を抱えている方も少なくないはずです。 2024年12月時点で、インフルエンザに効くとされる薬はいくつか採用されており、どれが自分に合うかわかりづらいですよね。 この記事では、インフルエンザの治療方法と使用される薬について詳しく解説します。 タミフルからゾフルーザまで各薬の特徴や使用上の注意点を知ることで、万が一の感染時に適切に対応できるようになります。 ぜひ参考にしてください。
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目次

インフルエンザの治療方法について

インフルエンザの治療は、WHOのガイドラインにもとづき「原因療法」と「対症療法」にわけておこなわれます。

  • 原因療法:インフルエンザウイルスそのものへの対処

  • 対症療法:インフルエンザによって生じている症状への対処

インフルエンザは「インフルエンザウイルス」が原因の感染症です。

だるさをはじめとした全身症状、発熱や頭痛などの局所的な症状があらわれます。

インフルエンザは普通の風邪と異なり、ウイルスそのものへの治療が可能です。そのためインフルエンザウイルスに対抗する薬と症状緩和を目的とした治療が必要です。

原因療法

インフルエンザにおける原因療法は、インフルエンザウイルスの増殖そのものをおさえる「抗インフルエンザウイルス薬」を使用しておこなわれます。[1]

抗インフルエンザ薬の種類

代表例

作用機序

ノイラミニダーゼ阻害薬

  • タミフル(オセルタミビル)

  • リレンザ(ザナミビル)

  • イナビル(ラニナミビル)

  • ラピアクタ(ぺラミビル)

ウイルスの増殖を妨げる

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

  • ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)

ウイルスのRNA合成を阻害し増殖をおさえる

発症初期に使用できれば、より早く症状をおさえられ重症化を防ぐ効果も期待できます。

対症療法

対症療法は、インフルエンザによって起きている症状をやわらげる目的でおこなわれます。

インフルエンザを発症すると、発症初期の発熱や頭痛などの全身症状から発症数日後にあらわれる咳や痰までさまざまな症状があらわれ、医師の診断で薬が処方されます。

下記は処方される薬の例です。

症状

処方される薬の一例(商品名)

成分名

発熱・頭痛・関節痛

  • カロナール

  • アセトアミノフェン

  • アスベリン

  • チぺピジンヒベンズ酸塩

  • メジコン

  • デキストロメトルファン臭化水和物

  • ムコダイン

  • カルボシステイン

  • ムコソルバン、ムコサール

  • アンブロキソール塩酸塩

鼻づまり

  • ペリアクチン

  • シプロヘプタジン塩酸塩

  • ポララミン

  • d-クロルフェニラミンマレイン酸塩

対症療法として処方された薬は、医師の指示にしたがって服用しましょう。

一般的に、症状が治まったら減量・中止しても問題ありませんが、急な中止が不安な場合は医師や薬剤師への相談をおすすめします。

インフルエンザの治療薬の紹介と特徴を解説

インフルエンザの治療薬としておもに使用されている薬剤は、5つあります。

  • タミフル(オセルタミビル)

  • リレンザ(ザナミビル)

  • イナビル(ラニナミビル)

  • ゾフルーザ(バロキサビル)

  • ラピアクタ(ペラミビル)

発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬の服用を開始すると、発熱期間が1~2日間短くなり、鼻やのどからのウイルス排出量も減少すると言われています。[1]

ただし抗インフルエンザ薬はそれぞれ特徴や投与方法が異なります。自分に最適な治療薬を見つけるために正しい知識を得ましょう。

タミフル(オセルタミビル)

タミフル(オセルタミビル)は、多くの方が知るインフルエンザ治療薬のひとつです。

投与方法

1日2回、5日間の内服

投与可能対象

医薬品、ジェネリック品にかかわらず以下のとおり

  • カプセル:体重37. 5kg以上の小児および成人

  • ドライシロップ:生後2週間以上

特徴

  • インフルエンザの治療薬のなかでも使用実績が豊富

  • 重症化・死亡防止に効果的[2]

  • ドライシロップは苦みを感じやすい

リレンザ(ザナミビル)

リレンザは吸入タイプの治療薬で、ウイルスの増殖をおさえます。

投与方法

1日2回、5日間の吸入

投与可能対象

5歳以上

特徴

  • 吸入器の使用方法の習得が必須

  • ウイルスが増殖しやすい「気道」に対して局所的に作用[3]

吸入薬という特徴から気道に作用しやすく、効果を実感しやすいとされています。

吸入器の使用方法を習得しなければならないため、認知症がある方や小さな子どもには不向きです。また咳の症状が強い場合、吸入で咳が誘発されることもあり、うまく吸入できない可能性があります。

5日間吸入しつづけることが負担になる方もいるため、少しでも不安に感じたら医師に相談して薬の変更を依頼してみましょう。

イナビル(ラニナミビル)

イナビルは、1回の吸入で治療が完結するのが特徴です。

投与方法

1回限りの吸入

投与可能対象

吸入可能であれば年齢制限なし

(ただし低出生体重児、新生児、乳児は安全性が確率されていない)

  • 10歳以上:2キットの吸入

  • 10歳未満:1キットの吸入

特徴

服用回数が少ないため飲み忘れや吸入忘れが少ない

気管や肺などの呼吸器系に長時間貯留し、長く作用して効果を発揮します。

1回で治療が完了するとはいえ、咳の症状や気管支の炎症が強い場合は吸入そのものがつらいと感じるかもしれません。

確実な吸入ができないと少しでも感じたら医師に相談してみましょう。

ゾフルーザ(バロキサビル)

ゾフルーザもイナビルと同じく1回の使用で治療が完了します。

ゾフルーザはこれまでの「ノイラミニダーゼ阻害薬」と異なり「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」に分類され、違う作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を防ぎます。

投与方法

1回限りの内服

投与可能対象

  • 成人及び 12 歳以上の小児

  • 12歳未満は10㎏以上が対象(体重によって投与量は変動)

特徴

1回の服用で済むため飲み忘れが少ない

投与が1回で済むという簡便性から、国内で使用される主要な抗インフルエンザウイルス薬のひとつです。

一方で子どもや免疫が低下している患者などでは、ゾフルーザが効きにくいウイルス(耐性ウイルス)が出現する可能性が示されています。[4]

12歳未満の子どもやインフルエンザ重症例、免疫不全患者は使用できないことを覚えておきましょう。

ラピアクタ(ペラミビル)

ラピアクタは、内服困難な患者や重症例を対象に点滴で投与します。

投与方法

点滴

投与可能対象

内服困難な患者や重症例

特徴

  • 即効性が高い

  • 新型インフルエンザウイルスに対する効果が高い[3]

多くの場合、先述した4剤の使用が困難なケースで使用され、一般的に使用する薬ではありません。医療機関での管理のもと、確実な効果を得たい場合に使用されます。

インフルエンザの薬を服用するときの注意点

インフルエンザの薬を服用すると症状出現期間を短くできるメリットがありますが、使用には注意すべき点もあります。

  • 発症後48時間以内に服用する

  • 処方されたものは必ず飲みきる

注意点を守ってはじめて抗インフルエンザ薬の効果が発揮できます。しっかり覚えておきましょう。

発症後48時間以内に服用する

抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に服用しないと効果が十分に発揮されません。[1]

インフルエンザウイルスは感染初期に急速に増殖するため、症状発現後できるだけ早く(48時間以内)に治療を開始することが推奨されているためです。

ただし発熱をはじめとした症状があらわれてから12時間経過してからでないと、確定診断ができません。ウイルスの増殖スピードによっては12時間以内でも陽性反応が出ることがありますが、何度も医療機関を受診するのは負担となります。

インフルエンザの発症が疑われたら、確定診断の出る12時間後を目安に医療機関を受診しましょう。

処方されたものはかならず飲みきる

症状が軽減しても薬を途中でやめるとインフルエンザウイルスが完全に排除されず、再び症状が悪化する可能性があります。

とくに子どもの場合は「二峰性発熱(にほうせいはつねつ)」という、一度下がった熱がぶり返す症状があらわれることもめずらしくありません。ウイルスの再増殖が原因であるため、かならず最後まで飲み切ってウイルスの働きを完全におさえることが大切です。

ただし先述したように、対症療法で処方された薬は症状が軽快したら服用を中断して問題ありません。どの薬かわからない場合は、処方してもらった医療機関や薬局に相談してください。

インフルエンザ薬の副作用や異常行動について

抗インフルエンザ薬には、吐き気や下痢などの副作用が報告されています。意識障害をはじめとする重篤な副作用が出現した場合は、ただちに受診してください。[5]

<受診すべき重篤な副作用>

  • けいれん

  • 反応の鈍さ(意識障害)

  • 顔色の悪さ(青白い土気色)

  • 異常行動(落ち着きがない、あばれるなど)

  • 重度の発疹や呼吸困難(アナフィラキシーショックの可能性)

なかでも心配なのは「異常行動」ではないでしょうか。

おもにタミフルについてはこれまでも議論が重ねられてきましたが、薬と異常行動の関係性は不明であり、必ずしも薬が原因とは限りません。

とはいえインフルエンザそのものによる高熱や脳症などが異常行動の原因である可能性が指摘されているため、薬剤の服用の有無にかかわらず見守りが必要です。[6]

異常行動との区別が難しいものに「熱せん妄」があります。高熱によって引き起こされる混乱状態のことで、異常行動に似ていることから脳症の初期症状との区別は非常に難しいです。

「なんだかおかしい」と感じたら、#8000や#7119へ相談するのも手段のひとつです。

インフルエンザの治療薬を服用してもよくならないのはなぜ?

抗インフルエンザ薬を服用してもよくならない場合があります。

  • 服用のタイミングが早すぎるもしくは遅い

  • 耐性菌が出来ている影響で効きにくくなっている

抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に正しく服用することで効果が発揮されます。

服用しても症状に変化がない、悪化するなどの場合は早めに医療機関に相談しましょう。

服用のタイミングが早すぎるもしくは遅い

抗インフルエンザ薬は発症してから12〜48時間がもっとも効果を発揮します。内服タイミングが早すぎたり遅かったりする場合は、症状の軽減が実感できないことも珍しくありません。

またインフルエンザの確定診断は通常、発症後12〜24時間程度で可能になります。

12時間未満ではウイルス量が不十分で誤って陰性と出る「偽陰性」となる場合もあり適切な治療を受けられず、気づいたら48時間を経過していたということもあるため注意しましょう。

耐性ウイルスが出来ている影響で効きにくくなっている

一部の抗インフルエンザ薬に対する「耐性ウイルス」の出現が報告されており、耐性ウイルスの影響で薬が効きにくくなっている可能性が否定できません。[7]

耐性ウイルスとは特定の薬の効果があらわれにくいウイルスのことで、とくに免疫力の低下した患者や子ども、不適切な使用などの場合に耐性化のリスクが高まります。

服用しても症状の緩和がみとめられず耐性ウイルスの可能性がある場合は、ほかの治療薬への切り替えが必要です。

かならず医療機関を受診しましょう。

よくある質問

インフルエンザ治療薬について、よくある質問にお答えします。

薬を正しく使用するために知識を深めましょう。

インフルエンザは薬なしで何日で治りますか?

インフルエンザは治療薬を使用しなくても、7〜10日で治癒することが一般的です。

ただし抗インフルエンザ薬は発症48時間以内で内服すると、症状出現の期間が50時間ほど短縮できることが明らかになっています。

重症化のリスクも考慮し、医療機関で適切な処置を受けることをおすすめします。

ゾフルーザとタミフルのどちらがよいですか?

一概にどちらがいいとは言い切れません。

しかしゾフルーザは1回の内服で治療が完了するため、副作用の出現に差異がなければ簡便性の高さからゾフルーザが選択されることもあります。

ただし12歳未満の子どもがA型に感染した場合、ゾフルーザの使用は推奨されていません。年齢によってタミフルが使用されるケースがあることを覚えておきましょう。

処方された薬に不安がある場合は、診察時に相談してみてください。

インフルエンザを早く治すには?

インフルエンザを早く治すには、発症後48時間以内に抗インフルエンザ薬を内服することが重要です。

ただしインフルエンザの確定診断には、ウイルス量が十分に達する必要があります。発症12時間以降に医療機関または自身で検査しましょう。

まとめ

インフルエンザの治療薬はタミフルやリレンザ、ゾフルーザなどさまざまな種類があり、それぞれ作用機序や投与方法が異なります。

薬を使用しなくても一般的に7〜10日で改善しますが、発症後48時間以内の服用で症状発現期間が短縮されるのは明らかであり、重症化を防ぐ意味でも早期の内服が重要と言えます。

また副作用や異常行動のリスクについての適切な知識をもつことで、インフルエンザ感染時に冷静な判断が可能です。

インフルエンザに感染したときに落ち着いて対処できるよう準備しておきましょう。

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参考文献

[1]インフルエンザQ&A|厚生労働省

[2]インフルエンザの診断と治療 最新のWHOガイドラインから|菅谷憲夫

[3]抗インフルエンザ薬―新薬ファビピラビルを含めてー|北村正樹

[4]一般社団法人日本感染症学会提言 ~抗インフルエンザ薬の使用について~|一般社団法人日本感染症学会

[5]インフルエンザ対策のポイント | 東京都感染症情報センター

[6]インフルエンザ罹患時に異常行動を起こした患者ではオセルタミビルを内服している例は多くない|友野順章ら

[7]インフルエンザウイルスの薬剤耐性|齋藤玲子

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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