熱中症の子どもの症状とは?受診目安や対処法について解説

公開日: 2024/09/02 更新日: 2024/09/18
「熱中症のとき、子どもはどんな症状が出るの?」 「子どもが熱中症かもしれないけど、どうしたらいい?」 子どもが熱中症のときは、発熱、発汗、頭痛、嘔吐、寒気などの症状があらわれます。頭痛がひどく嘔吐している場合は早急に救急車を呼びましょう。
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熱中症は、気付いた時にはかなり脱水症状が進行していたり、判断が遅れて重症化するケースがあります。

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目次

子どもの熱中症とはどんな症状なの?

子どもの熱中症の症状のキーワードは、「気持ち悪い」「お腹が痛い」「疲れた」「眠い」の4つです。

熱中症は段階によって軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類されます。[1]

 

症状

Ⅰ度

軽症

(熱けいれん・熱失神)

<意識はある>

  • 生あくび

  • 大量の発汗

  • 元気がない

  • 機嫌が悪い

  • 頬が赤い

  • 体が熱い(熱がない場合もある)

  • 水分をいつもより欲しがる

  • おしっこが少ない(おむつがぬれていない)

  • ふくらはぎ等の筋肉がふるえる

Ⅱ度

中等症

(熱疲労)

<意識がはっきりしない>

  • 頭痛

  • 嘔吐

  • 寒がる

  • ぐったりしている

  • 身体に力が入らない

Ⅲ度

重症

(熱射病)

<意識がない>

  • 声をかけても反応しない

  • 応答がおかしい

  • けいれん

  • 発熱して冷やしても下がらない

  • 汗が出なくなり手足が冷たい

子どもは覚えている言葉の種類が少なく、体のどの部分がどのように具合が悪いのかを説明することは難しいです。

症状の説明の際に、

「気持ち悪い」「お腹が痛い」「疲れた」「眠い」の4つの言葉で訴えることがあります。

特に熱中症が疑われる季節については、注意深く子どもが訴えるサインに耳を傾けましょう。[2]

保護者が「顔色が悪い」「いつもより元気がない」と感じたときにも、子どもに異常が起きています。

熱中症の代表的な症状である、「発熱」「嘔吐」「寒気」については、細かい症状の特徴まで理解しておくことが必要です。

関連記事:熱中症の症状|頭痛も熱中症のサイン?治し方も解説

発熱する

熱中症がすすむと40℃を超える高熱になることもあります。[3]

汗を普段よりも多くかき、皮膚が赤く乾いているなどの症状もみられます。

発熱は熱中症においてよくみられる症状の一つですが、軽症の場合には熱が出ないこともあります

熱中症の発熱は、暑い環境下で大量の汗が出て体内の水分が失われ、汗をかけなくなって体温が上がることで起こります。

気温が体温より高くなった場合、汗を出すことで体温を正常に保ちますが、これは気化熱という現象です。汗が皮膚の表面で蒸発すると、皮膚の近くの熱は奪われるため、体温を適切に下げることができます。

熱中症の初期段階ではきちんと汗をかけるため、体温は正常に保たれています。

しかし、熱中症が進行して体内の水分が失われると汗をかきにくくなり、うまく体温調節できません。生命の危機的ラインとされる「42℃を超える高熱」につながる可能性があり、非常に危険です。

熱中症の進行を防ぐために、早めの対処を心がけましょう。

嘔吐する

熱中症が中等症(熱疲労)まですすむと、吐き気や嘔吐などの症状があらわれることがあります。

嘔吐がおこる原因は、体温調節機能の乱れによって消化器系へ影響がでることです。

暑さで体温が上昇すると、汗をかいたり皮膚の血管を広げて体の表面から熱を逃がしたりと、体にこもった熱を外に逃がそうとします。

大量に汗をかくと、体内の水分・塩分が不足することで血液の流れが悪くなります。

そこで適切に水分・塩分の補給や体を冷やさないままでいると、脳や消化管、肝臓への血流低下や臓器自体の温度が上がってしまいます。

その結果吐き気や全身のだるさといった症状があらわれるのです。[4]

関連記事:熱中症による吐き気の対処法は?なぜ吐いてしまうのか原因も解説

寒気がする

熱中症になったときに寒気を感じるのは、体温調整機能に異常をきたすためと、水分不足により血行が悪くなるためです。

体に熱がこもる状態が続くと、体温調節機能は正しい判断ができなくなり、寒気がおこります。

例えるなら、コンピューターが熱くなり誤作動を起こしてしまうようなものです。

また熱中症により汗を多量にかいた状態で水分をとらないでいると、体内の水分が不足し、血行が悪くなります。

これにより手足が冷え、寒気を感じることがあります。

赤ちゃんが熱中症になったときの初期症状は?

のどの渇きやからだのだるさ、吐き気や筋肉のふるえなどがあらわれます。

ただし赤ちゃんは言葉をまだ話せないため、不機嫌だったり泣いたりといった行動で具合の悪さや不快感をあらわします。[5][6]

  • 元気がなく、ぐったりしている

  • なんとなく機嫌が悪い

  • 頬が赤く、体が熱い

  • 母乳やミルクなど、水分をいつもより欲しがる

  • おしっこが少ない(おむつがぬれていない)

  • ふくらはぎ等の筋肉がふるえる

このような様子がみられるときは、初期の熱中症の可能性があります。

赤ちゃんは体が小さく体温調節がうまくできないため、熱中症に弱いといわれています。[7]

熱中症の進行を防ぐために、周りの大人が子どもの症状にいち早く気づいてあげることが大切です。

熱中症の子どもが病院や医療機関を受診する基準は?

子どもが熱中症になった場合、まず意識がはっきりしているかどうかを確認してください。

意識がなかったり、明らかに応答がおかしかったりする場合は迷わず救急車を呼んでください。

意識はあるが受け答えがあいまいだったり、ぐったりしていたりしている場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

意識がはっきりしている場合は、その場で対応することで症状は徐々に改善します。

どの段階でも必ずおこなうべきことは、「必ず誰かがそばに付き添い、子どもから目を離さない 」ことです。

急な状態の悪化や、水分摂取後に吐いたりむせたりする可能性があります。

異常をすぐに察知できるように、子どもを見守るようにしましょう。[8][9]

 

症状

対応

受診するかどうか

判断のポイント

Ⅰ度

軽症

(熱けいれん・熱失神)

<意識はある>

  • 生あくび

  • 大量の発汗

  • 元気がない

  • 機嫌が悪い

  • 頬が赤い

  • 体が熱い(熱がない場合もある)

  • 母乳やミルク、水などをいつもより欲しがる

  • おしっこが少ない(おむつがぬれていない)

  • ふくらはぎ等の筋肉がふるえる

  • 通常はその場で対応可能

  • 涼しい場所(できるだけ屋内)で安静にする

  • 体の表面を冷やす

  • 口からの水分の補給(水、ミルク、母乳など)

乳児では30-50mL/kg/ 日、幼児では 300-600 mL/ 日、それ以上では 1,000 mL/ 日が推奨される

  • 軽症の症状が徐々に改善している場合は、その場で応急処置と見守りをおこなう

  • 改善がみられない場合はすぐ病院へ行く

Ⅱ度

中等症

(熱疲労)

<意識がはっきりしない>

  • 頭痛

  • 嘔吐

  • 寒がる

  • ぐったりしている

  • 身体に力が入らない

  • 医療機関での診察が必要

  • 体温管理

  • 安静

  • 十分な水分と塩分(ナトリウム)の補給(口からの摂取が難しい場合は点滴にておこなう)

すぐに病院へ搬送する

Ⅲ度

重症

(熱射病)

<意識がない>

  • 声をかけても反応しない

  • 応答がおかしい

  • けいれん

  • 発熱して冷やしても下がらない

  • 汗が出なくなり手足が冷たい

  • 入院して治療(症状によっては集中治療)が必要

救急車を呼ぶ

すぐに病院へ搬送する

(重症かどうかは救急隊員、もしくは病院到着後の診察や、検査により判断される)

軽症の場合は家で安静に

軽症(Ⅰ度)の場合は、その場の応急措置で症状の改善がみられたのちに、家で安静に過ごさせてください。

意識がはっきりしており水分が自分でとれるときは、その場で応急措置をおこない、子どもを見守ります。

すぐに涼しく風通しのよい場所へ移動させて体を冷やすこと、ミルクや水分を飲んでもらい体を休ませることが重要です。

これらの応急措置により症状が改善したときは、自宅で安静してゆっくり過ごしましょう。

症状に改善がみられない場合や悪化した場合は、すぐ病院へ連れて行きましょう。

中等症の場合はすぐに病院へ

意識がおかしい、自分で水分をとれない、応急処置をおこなっても症状の改善がみられない場合は、中等症(Ⅱ度)以上と判断し、すぐに病院へ連れていきましょう。

中等症(Ⅱ度)か重症(Ⅲ度)かの判断は、救急隊員もしくは医療機関に搬送後に医者がおこないます。

中等症(Ⅱ度)は医療機関での診療が必要であり、重症(Ⅲ度)では入院しての治療が必要となります。

重症の場合は入院の必要も

「意識がない」場合は重症(Ⅲ度)であり、速やかに入院して治療を受ける必要があります。

重症の症状は決して見逃さないことが重要です。

子どもの意識がなくなった場合は、すぐに救急車を呼んでください。その際、子どもの状態(意識がない、反応しない)を正確に伝えることが大切です。

また救急車を待つ間も、必ず誰かが付き添って状態を見守ることが必要です。[8]

子どもが熱中症になったときの対処法

子どもが熱中症で発熱した場合は、体温を下げるために涼しい環境に移動させたり、体を冷やしてあげましょう。

嘔吐した場合はすぐに食べ物・飲み物を与えず、安静にさせて様子をみてください。すぐにあげると胃腸に負担がかかったり、吐いたものが喉につまるおそれがあります。

水分補給は熱中症の改善にも必要であるため、飲ませるタイミングは医師に相談してください。

熱中症の症状がみられた場合は、進行を防ぐためにも速やかに対処することが大切です。

対処法をおこなっても下記のような症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。[7]

  • 体を冷やしても熱が下がらない

  • 汗をかかなくなる

  • 手足が冷たい

  • 呼びかけても反応がにぶい

  • 6時間以上おしっこが出ない

  • 翌日になっても症状が改善しない

熱中症で発熱したとき

重要なのは体温を下げることです。

体温を下げるためのポイント

具体的な行動

涼しい場所へ移動する

  • エアコンの効いた涼しい屋内へ移動する

  • 屋内施設がない場合、風通しのよい日陰(木の下、屋根付きのベンチなど)に避難する

衣類を調整する

  • 衣服を1枚脱がせゆるめる

  • 靴下を脱がせる

  • 汗を大量にかいた場合、無理のない範囲で着替える

体を外側から冷やす

  • 濡れタオルや保冷剤などで体の表面に近くにある太い血管が走る部位を冷やす

  • 冷やす場所は首回りや脇、そけい部(太ももの付け根)など

  • 体に水をかけて、うちわや扇子、タオルなどであおぐ

水分や塩分を補給する

  • 意識がありしっかり飲み込みできれば母乳やミルク、水分を与える

  • 経口補水液を与えるときは、味噌汁程度の塩分を目安にする[7]

水分補給や塩分補給をしっかりしないと、うまく汗をかけず、熱中症が進行してしまいます。

汗を大量にかいている場合でなければ、塩分をとらずに水分をとるだけで大丈夫です。[7]

自分でうまく飲めなかったり、嘔吐や吐き気などがあったりする場合は、無理やり飲ませずに、医療機関で対応してもらいましょう。

熱中症で嘔吐したとき

すぐに水分や食べ物を与えないようにしましょう。

嘔吐後は、胃が刺激を受けている状態です。

胃が落ち着いていない状態で水分や食べ物を摂取すると、再び嘔吐を引き起こしたり、吐いたものがのどに詰まったりする可能性があります。

子どもが水分を欲しがることもありますが、自己判断せず、医療機関で医師の指示をあおいでください。

嘔吐後は、子どもの吐き気が落ち着いたあとに衣服や体を清潔にしてあげましょう。[9]

吐いた後の状況

対応

衣服が汚れたとき

吐き気が落ち着いたら着替えさせる

吐いたもので顔や体が汚れてしまったとき

  • 温かい濡れタオルで、汚れてしまった部分をふき取りきれいにする

  • 可能であればうがいをさせる

寝かせるとき

顔を横向きにする(寝たまま嘔吐した際に、吐いたものが気管に入り窒息するのを防ぐため)

吐いた後は、安静にさせ、体を休ませることが重要です。

子どもは熱中症になりやすいの?

15歳以下の子どもは大人と比べて熱中症になりやすいです。

子供が熱中症になりやすい理由

①体温調節が苦手

②地面からの照り返しを受けやすい

子どもが体温調節が苦手な原因は、汗をかく能力が大人ほど発達していないからです。

気づいたら高熱になっており、熱中症の危険な状態に陥っている場合があるので注意しましょう。

また子どもは身長が低く地面に近いため、大人よりも3〜4℃以上も気温が高い環境にいます。とくに照り返し(地面から反射する熱)の影響は大きいです。[10]

子どもは熱中症の予防行動を自分でとることが難しく、外出時には大人が子どもの様子を確認し、こまめに休憩と水分補給を促してあげましょう。[11]

暑い夏を乗り切るために、大人の協力は必要不可欠です。

子どもが熱中症にならないための予防法

子どもが熱中症にならないためには、正しい予防方法を知り普段から気をつけて行動することが大切です。

こまめな水分補給や休憩をとるなど、子どもの熱中症の予防方法は大きく分けて10個あります。

全て大切になりますので、1つ1つチェックしていきましょう。

関連記事:熱中症を予防する方法を詳しく解説!熱中症にならない体づくりとは?

気温と湿度をこまめにチェック

気温が体温よりも高いと、体は空気から熱を吸収するため体温は上昇します。

また湿度が高いと汗がうまく蒸発できず、体の熱を外に逃がすことができなくなり、体温がさがりにくくなります。

このことから、気温と湿度の両方が高いときは、体温は上昇するうえに下がりにくくなるため、とくに熱中症のリスクが高まります。

天気予報アプリを利用したり温度計・湿度計を各部屋に置いたりして、こまめに気温と湿度をチェックすることをおすすめします。暑さ指数も参考にして、日常生活や運動時の熱中症対策を心がけましょう。

暑さ指数や熱中症警戒アラートをチェック

日中の活動を計画する際に役立つのが、暑さ指数(熱中症指数/WBGT)と熱中症警戒アラートです。

まず「熱中症警戒アラートが発表されたときは、外出せず涼しい部屋で過ごすようにする 」ことを知っておきましょう。

熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性がきわめて高いと予想されるときに発表される警報です。

また熱中症警戒アラートが発表されていない場合でも、暑さ指数が28以上の場合は普通に生活していても熱中症がおこる危険性があります。

一日のはじめに暑さ指数と熱中症警戒アラートをどちらもチェックすることで、熱中症を避けた行動計画を考えることができるでしょう。

環境省のホームページや、メール・LINE等の配信サービスで暑さ指数と熱中症警戒アラートを確認できますので、活用しましょう。

暑さ指数

熱中症はただ気温が高いだけではなく、湿度の高さ、輻射熱(日射しや地面、建物から受ける熱)も影響します。

暑さ指数はこの熱中症の3つの要素を合わせて数値化したもので、熱中症のリスクがひとめでわかるようになっています。[12]

暑さ指数

(WBGT)

熱中症の危険性がある

生活活動の目安

注意事項

危険

(31以上)

全ての生活活動で

おこる危険性

外出はなるべく避け

涼しい室内に移動する

厳重警戒

(28以上31未満)

外出時は炎天下を避ける

室内では室温の上昇に注意する

警戒

(25以上28未満)

体操、自転車に乗る、速く走るなどの生活活動でおこる危険性

運動をする際は

こまめに充分な休憩をとる

注意

(25未満)

縄跳び、水泳などの

強い生活活動でおこる危険性

一般に危険性は少ない

激しい運動時には熱中症が発生する危険性がある

暑さ指数が25を超えると熱中症のリスクが高まるといわれてますが、実は25未満の場合でも熱中症のリスクは存在するのです。

たとえば2024年5月27日〜6月2日の東京の暑さ指数(WBGT)は最高でも25以下でしたが、21人もの人が熱中症により救急搬送されています。[13]

暑さ指数が25以下であっても、運動や激しい作業をする場合はこまめに休憩をとり、水分や塩分を補給するようにしましょう。

熱中症警戒アラート・熱中症特別警戒アラート

熱中症警戒アラートは、熱中症の危険性に対する「気づき」を促すことを目的として、気象庁と環境省が共同で発表する情報です。

一方、熱中症特別警戒アラートは、熱中症警戒アラートよりもさらに強い警戒を呼びかけるものです。発表されたときは、普段の予防行動よりもさらに注意深い対応が必要です。

発表される基準やタイミングは、以下のように設定されています。

 

熱中症警戒アラート

熱中症特別警戒アラート

発表される基準

暑さ指数情報提供地点

府県予報区等内でのいずれかの地点

都道府県内における全ての地点

1日の最高暑さ指数(WBGT)

翌日・当日の予測値が33に達する場合

翌日の予測値が35に達する場合

発表されるタイミング

熱中症の危険性が高いと予想される日の

「前日17時および当日5時に都道府県ごと」に発表

エアコンや扇風機を適切に使う

部屋の温度と湿度はこまめに調節しましょう。

室内の温度は「28℃」、湿度は「40〜55%」が適切です。

室温は室外の温度や湿度、日当たりなどによって変化します。

エアコンや扇風機だけでなく、遮光・遮熱機能のあるカーテンやシェードなども活用して、快適な室内環境を保ちましょう。

ただし、子どもを室内で遊ばせる場合でも、油断は禁物です。

日差しがない屋内では大丈夫だろうと思いがちですが、令和5年(5~9月)では熱中症で救急搬送されたうちのおよそ4割が屋内で発生しています。[14]

部屋の温度や湿度を調整したうえで、こまめに水分摂取や休憩させるなど、屋外と同じ対策をとるよう意識しましょう。

またいつもエアコンの効いた部屋にいて汗をかかずにいると、暑さに弱くなります。

暑さ指数28未満の日があれば、短時間ずつでよいので外で遊ばせてあげて暑さに強い身体をつくることも心がけましょう。

のどが渇 いてなくても、こまめに水分補給する

脱水は体内の水分や塩分が不足することで起こり、熱中症のリスクを高めます。

そのため水分補給は熱中症予防に欠かせません。

子どもは以下の5つの理由から、大人に比べて脱水になりやすいという特徴があります。

  • 体の水分量が多いが、皮膚や吐く息によって失う水分も多いため、バランスを崩しやすい

  • 体温調節機能が十分に発達していない

  • 下痢や嘔吐などを起こしやすい

  • 遊びなどに夢中になるとのどの渇きや疲れを自覚しにくく、水分補給を忘れやすい

  • 喉が乾いていることが伝えられない

また、室内では日ざしを浴びることが少なく、汗をかきにくいため、のどの渇きを感じにくいことがあります。

水分補給のポイントは、子どもが「のどが渇いていない」と言っていても、こまめに少量ずつ飲ませることです。

子どもの脱水を防ぐために、周りの大人が声をかけてあげてください。[15]

水分補給のポイント

具体例

飲み物の種類

  • 1歳未満の場合は母乳やミルク

  • 幼児の場合はカフェインや糖分を含まない麦茶や水

1回に飲ませる量

50~100ml

1日に必要な量

  • 新生児:50~120ml×体重(kg)

  • 乳 児:120~150ml×体重(kg)

  • 幼 児:90~100ml×体重(kg)

  • 児 童:60~80ml×体重(kg)

例:体重12kgの3歳児の場合、1日あたり1080-1200mlが目安

飲ませるタイミング

  • 30分~1時間ごとが目安

  • ご飯やおやつ時

  • お昼寝前

  • お散歩や外遊びの前後

  • お風呂の後

子どもにスポーツドリンクなどのイオン飲料を与える場合は、高熱や明らかな脱水症状がみられる場合の緊急の水分補給手段と考えてください。[16]

イオン飲料には糖分が多く含まれているため、習慣化してしまうと虫歯の原因になったり、麦茶などを飲まなくなったりする原因にもつながります。

糖分やビタミン、ミネラルなどの栄養素は食事からとり、水分はお茶や水で補いましょう。[17]

通気性のよ い服装を心がける

服装選びも、熱中症を予防するためには大切です。

子どもの衣服は、通気性がよいもの、脱ぎ着しやすいもの、明るい色のものを選ぶのがポイントです。

衣服を選ぶポイント

具体例

理由

通気性がよい

  • 綿100%の肌着

  • 綿は熱の伝導と吸収率、通気性がよく、発汗時に湿気を吸収し心地よさをもたらす

  • 子どもの皮膚は弱く、刺激に対して未発達なので繊維の中で一番柔らかい綿素材がよい

  • 肌着以外は、綿とポリエステルの混合素材のもの

  • スポーツウェアや体操着のような素材の服

  • ポリエステル100%は綿よりも蒸発と通気性がよいが吸湿性は悪いため、両方のよさをあわせもつ綿とポリエステルの混合素材を選ぶとよい

脱ぎ着しやすい

  • 伸縮性があるもの

  • ボタンのないTシャツなど

  • 首元や袖口にゆとりがあるもの

  • 暑くなったときに子どもが自分でも脱ぎ着できるものがよい

  • ゆとりがあると風通しがよく熱を逃がしやすい

明るい色

  • 白やベージュなど

  • 黒や紺など濃い色は避ける

  • 濃い色の服は太陽からの熱を吸収するため、体に熱がこもりやすい

色の違いによって、服の表面温度が大きく変化することはご存じでしょうか?

ある実験では、風がほとんどない気温30℃の屋外でシャツを5分間日光に当てただけで、表面温度は大きく変わりました。

白色のシャツが気温と同じ30℃なのに対し、黒色や深緑色のシャツは50℃を超え、その差が20℃以上になったのです。[18]

熱中症対策として、屋外へ行くときは明るい色の服を選んであげることを徹底しましょう。

帽子で日よけ対策をする

屋外では、子どもに帽子をかぶらせて直射日光を防ぎましょう。

日傘をさしたり、日かげを選んで歩いたりすることも、日差しから身を守る方法のひとつです。

帽子1つでそんなに熱中症対策に効果があるの?と思われるかもしれませんが、効果は絶大です。

ある調査では、外気温30℃で5分間過ごしたとき、帽子を被らない場合の頭の温度は41.4℃まで上昇しました。

一方、同じ条件下で帽子を被った場合の頭の温度を計測すると32.4℃で、気温とあまり変わらない数値でした。

帽子を被ることによって、頭の温度の上昇を9℃も抑えることができるのです。

たかが帽子と感じるかもしれませんが、予防対策としては絶大なので、必ず屋外では子どもに帽子を被らせるようにしましょう。

無理をせず、適度に休憩

子どもに無理をさせず、適度に休憩をとりましょう。

子どもは遊びに夢中になると、のどの渇きや気分の悪さといった、熱中症のサインに気づきにくくなります。

5歳の女の子が熱中症になったある事例は「昼過ぎ1時間ほど公園で遊んでいたところ、一緒にいた友人は汗をかいていたが、本人は汗をかいておらず、顔色が白く、嘔吐をしたため、身体を冷却して受診した。熱中症と診断された。」というものでした。[19]

このことからも、子どもが自分では熱中症の症状に気づきにくいことや、熱中症の予防をすることが難しいことがわかります。

とくに乳幼児は、自分でうまく症状を伝えられないため、大人がしっかりと様子を見て、休憩や水分補給の声かけをしましょう。[2]

十分な睡眠と食事

熱中症に負けないために、十分な睡眠とバランスの取れた食事でじょうぶな体づくりを心がけましょう。

まず、睡眠環境を整えることは、夜間の熱中症の予防につながります。

通気性や吸水性のよい寝具を選び、エアコンや扇風機を使って寝室の温度・湿度を快適に保ちましょう。

次に、食事は栄養の偏りを避け、バランスよく食べることが大切です。

熱中症予防に重要な栄養素は、ビタミンB1、ビタミンC、クエン酸です。

それぞれのはたらきや多く含まれる食材、知っておきたいことについても紹介します。[20] [21]

 

はたらき

多く含まれる食材

知っておきたいこと

ビタミンB1

炭水化物をエネルギーに変える

  • 豚肉

  • 豆腐や味噌などの大豆製品

  • モロヘイヤ

  • 玄米 など

  • 炭水化物と一緒にとる

ビタミンC

免疫力を高め、ストレスへの抗体を作る

  • 赤・黄ピーマン

  • ブロッコリー

  • キウイフルーツ

  • いちご

  • オレンジ

  • レモン など

  • 熱に弱いため、栄養を考えるのであれば生で食べるほうがよい

クエン酸

疲れの原因になる乳酸の発生を抑える

  • 梅干し

  • レモン

  • グレープフルーツ など

  • 酸味があるため子どもが嫌がらない範囲で摂取させる

  • 料理にとり入れるなどの工夫をするとよい

これらをとくに意識して、他の栄養素もバランスよくとっていくことが、熱中症にかかりにくい体づくりへつながります。

子どもが苦手な食材は、細かく刻んで他の料理に混ぜる、ソースにして使うなど、子どもが食べやすい形にすることで少しずつ慣れてもらうことができます。

また、好きな味付けや食材と組み合わせることで、苦手な食材も食べやすくなるかもしれません。

暑いと食欲も落ちやすくなるため、子どもが嫌がらない範囲で少しずつ試してみてください。

車内に子どもを置き去りにしない・降ろし忘れにも注意

外気温が高い日はもちろん、それほど高くない日でも、直射日光の当たる場所に駐車すると、車内温度は上昇します。

日かげでの駐車は、日なたよりも車内温度の上昇をある程度抑えられますが、駐車開始30分で外気温を超える温度まで上昇することがあります。[22][23]

さらにある実験では、車内温度が25℃の車のエンジンを炎天下で停止させて放置しておいたところ、わずか15分後には車内温度は40℃ほどになりました。

さらにそのまま放置すると、エンジン停止から30分で車内温度は約45℃にまで上がったのです。

体の深部体温が42℃を超えると、体をつくる一部のたんぱく質が変性しはじめ、臓器の機能が著しく低下します。また45℃以上になると、短時間でも死の危険があるとされています。

たとえ数分であっても、日かげに駐車した場合でも、絶対に車内に子どもを置き去りにしないでください 。

また、車からの降ろし忘れにもじゅうぶん注意しましょう。

どんなに注意していても、ヒューマンエラーは避けられないこともあります。

子どもを車に乗せる際は、子どもの存在を思い出せるような対策が有効です。

対策の一例を紹介しますので、参考にしてください。

  • 財布やスマートフォン、カバンなどの自分が必ず使うものを後部座席に置くようにする

  • 子どもの荷物やおもちゃなどを助手席に置く

  • 保育園や幼稚園への送迎などの場合、「子どもを車から降ろしたか」を家族間で電話やLINE等を利用して確認し合うようにする

マスクは基本的にはつけなくてよい

コロナ禍を経て、マスクをつける子どもが以前よりも多くみられるようになりました。

しかし、子どもは息苦しさや具合の悪さを自ら訴えることや、自分でマスクを外すことが難しい場合もあります。

マスクをつけることで、次のような危険性があり、とくに2歳未満の子どもは危険性が高いと考えられています。

  • 呼吸が苦しくなり窒息する

  • 嘔吐した場合に窒息する

  • 熱がこもり熱中症のリスクが高まる

  • 顔色や呼吸状態などの異変の発見が遅れる

ただし、医療機関でマスクの着用を求められる場合には、指示に応じてください。

子どもがマスクを着用する場合は、保護者や周りの大人は注意深く体調を観察しましょう。[24]

Q&A

子どもが熱中症かどうかの見分けかたは?

子どもの様子や訴えから、熱中症かどうかを見分けます。子どもは自分の状態をうまく伝えられないため、「気持ち悪い」「お腹が痛い」「疲れた」「眠い」という言葉で具合の悪さをあらわします。

また、体が熱くいつもより元気がない、汗が多く水分を欲しがるなど、周りの大人が子どもの様子をしっかりとみておく必要があります。

軽症の症状:

その場で応急措置と見守りをおこないましょう

  • 大量の発汗

  • 元気がない

  • 機嫌が悪い

  • 頬が赤い

  • 体が熱い(熱がない場合もある)

  • 水分をいつもより欲しがる

  • おしっこが少ない(おむつがぬれていない)

  • ふくらはぎ等の筋肉がふるえる

中等度の症状:

すぐに病院へ連れて行きましょう

  • 嘔吐

  • 寒がる

  • ぐったりしている

  • 身体に力が入らない

重症の症状:

すぐに救急車を呼びましょう

  • 意識がない

  • 声をかけても反応しない

  • 応答がおかしい

  • けいれん

  • 発熱して冷やしても下がらない

  • 汗が出なくなり手足が冷たい

子どもが軽い熱中症になったらどうすればいいですか?

軽い熱中症の場合、その場で応急措置と見守りをおこない、重症化を防ぎます。

応急措置のポイントは3つです。

  • 衣類をゆるめて体温を下げる

  • 屋内の涼しいところに寝かせる

  • 塩分・糖分が含まれた飲み物を、こまめに少しずつ飲ませる

すぐに、涼しくて風通しがよい場所へ移動させて体を冷やします。ミルクや水分を飲ませ、体を休ませます。

これらの応急措置をおこなっても改善がみられない場合は、すぐ病院へ連れて行きましょう。

熱中症の子どもは翌日熱が出ますか?

熱中症の症状がいったん落ち着いたとしても、夜のあいだに熱中症が進行し、翌日に熱が出ることがあります。

原因は、脱水状態が完全に治っていないのに、水分補給や塩分補給を怠ってしまうことです。

翌日熱が出ることを防ぐには、こまめな水分補給が必要です。水分は子どもが飲めるときに少しずつ与えてください。

意識があってしっかり飲み込みできるようであれば、母乳やミルク、水分をとらせます。

汗を大量にかいている場合は、塩分の入った経口補水液を与えてください。

塩分濃度は、味噌汁程度が目安です。

子どもが自分でうまく飲めない場合や嘔吐や吐き気などがある場合は、無理やり飲ませず医療機関で対応してもらいましょう。

こもり熱の熱は何度ですか?

一般的にこもり熱は、37〜38℃といわれています。

小児科では、37.5℃を超えた時に発熱していると判断されることが多いです。

こもり熱は、医学的には「うつ熱」と呼ばれています。

熱中症などによって体温調節機能が低下し、熱は体の中にこもってしまい、体温が上昇することをいいます。

暑い日や、温度の高い部屋に長くいる場合、こもり熱が起こる可能性が高いです。

温度や湿度を調整して体を冷やし、水分をこまめにとらせるようにしましょう。

まとめ

子どもが熱中症になったときの初期症状は、元気がない、機嫌が悪い、汗を大量にかいている、頬が赤く体も熱い(熱がない場合もある)、水分をいつもより欲しがる、おしっこが少ない、ふくらはぎ等の筋肉がふるえるなどです。

初期の段階では、以下の対応をとることで、症状の回復が期待できます。

  • 衣類をゆるめて体温を下げる

  • 屋内の涼しいところに寝かせる

  • 塩分・糖分が含まれた飲み物を、こまめに少しずつ飲ませる

ただし対応が遅れ熱中症が進行してしまうと、ぐったりして水分をとれなくなってしまいます。

中等度以上に進行したときはすぐに医療機関を受診しましょう。

重症まで進行してしまい意識がない場合は、すぐに救急車を呼んでください。

子どもの熱中症は、周りの大人が子どもの様子をよく見ておくことで、早期発見ができます。

そして、気づいたときすぐに適切な対応をとることで、進行を防ぐことができます。

大切なお子さんを守るためにも、日頃から見守りや予防行動をとることを心がけましょう。

熱中症に備えて、アプリをインストールしておきませんか?

熱中症は、気付いた時にはかなり脱水症状が進行していたり、判断が遅れて重症化するケースがあります。

ファストドクターのオンライン診療では、熱中症が疑われる症状への対応が可能です。

緊急性の判断などにもご利用いただけます。

もしものときに備えてアプリをインストールし、情報登録までしておくと安心です。

参考文献

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[2]みんなで見守り「こどもの熱中症」を防ぎましょう!|こども家庭庁

[3]発熱のメカニズム:熱中症と風邪の違い | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[4]頭痛・吐き気も熱中症の症状の一つ | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[5]熱中症(熱射病) | 国立成育医療研究センター

[6]東京都こども医療ガイド | 熱射病(ねっしゃびょう)・熱中症(ねっちゅうしょう)

[7]乳児の熱中症について

[8]熱中症になったときには

[9]熱中症

[10]こんな人は特に注意!「子ども」 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[11]高齢者と子どもの注意事項

[12]日常生活における熱中症予防指針_ver_4

[13]令和6年5月 27 日~6月2日までの全国の暑さ指数(WBGT)の観測状況 及び熱中症による救急搬送人員と暑さ指数(WBGT)の関係について (令和6年度第5報)

[14]令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況

[15]こんな人は特に注意!「室内で過ごす人 」 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[16]子育てコラム~子どもの水分補給のポイント~-鉾田市

[17]イオン飲料水の多飲による ビタミンB1欠乏症

[18]最小スケール気候変動適応策としての被服色彩選択効果について

[19]Vol.593 子どもの熱中症対策を心がけましょう! | 消費者庁

[20]熱中症を予防する食事のとり方とおいしいレシピ | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[21]ビタミンCの多い食品・食べ物と含有量一覧

[22]熱中症からこどもを守る

[23]こんな人は特に注意!「車に乗る人」 | 熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進

[24]乳幼児のマスク着用の考え方|公益社団法人 日本小児科学会

本記事に掲載されている情報は、一般的な医療知識の提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。

具体的な病状や治療法については、必ず医師などの専門家にご相談ください。

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